バディファイトをする機会というものがゼロになってしまった。
お気に入りとガチデッキだけ残してもう売っちゃおうかな?
今回もお楽しみください!
三人称side
一夏達がマドカ達に襲撃があった事の説明をした日から少し経った。
今日までに職員会議を重ねに重ねた結果、体育大会は開催する方向で決定した。
しかし、例年と比較すると規模の縮小は確実にしなければならない。
それでも体育大会が開催されると分かれば生徒達のやる気とテンションはドンドンと上がっていく。
そのテンションのまま全員が挑んだ中間テスト。
一般生徒達の点数も1学期期末テストより全体的に上がっており、教員達を驚かせた。
そのテスト期間の間、チェルシーはクラリッサに一夏が呟いていた事の説明をした。
説明を受けたクラリッサも驚き、少し不安そうな表情を浮かべた。
テストが終わった後、2人はふんわりと一夏にその事を尋ねた。
「「私達は、一夏とずっと一緒だよね?」」
といった感じで。
それを聞いた一夏は真剣な表情を浮かべて
「当然だろ。俺はクラリッサとチェルシーの事を永遠に愛する。ずっと一緒だ」
と2人に返答した。
その返答を聞いた2人は、いったんは追及するのを止めた。
因みに、そんな質問をされたからかどうかは分からないか、一夏の2人に対する積極性が増して、結構四六時中イチャイチャしている。
ここ最近IS学園における缶コーヒーのゴミの量だったり食堂でのコーヒーの注文量が何故か増えているらしい。
そして中間テストも終わり、あと少しで体育大会本番だというある日。
島根県のとある田舎。
周囲には田畑と森林しかないような場所を、場違いなほどにしっかりとしたスーツに身を包んで歩く集団がいた。
「ふぅ…穏やかなところだな」
一夏と
「ああ、本当に穏やかで、静かだ」
千冬と
「こういう場所が、逆に要人保護プログラムに適しているという事でしょう」
十蔵である。
何故IS学園から遠く離れた此処にいるのには当然のことながら理由がある。
それは……
「…柳韻さんに会うのも久しぶりだなぁ」
そう、千冬の師匠にして束と箒の父親である篠ノ之柳韻と会うためである。
箒は未だIS学園の拘束室にて身柄を拘束されているのだが、もう直ぐ国際裁判に掛けられるため他の襲撃者と共に身柄の輸送が決定しているのである。
そして、千冬の根気強い交渉の結果、父親である柳韻と箒の面会の機会をもぎ取ったのである。
要人保護プログラムによって離れ離れになってから篠ノ之家は1回も再会していない。
その為、柳韻は箒がテロリストになった事すら知らない可能性の方が高いのである。
文書での説明でも良かったのだが、ここまで重大な事はしっかりと口頭で説明した方が良いと判断し、こうやって今柳韻が暮らしているところにまで足を運んでいるのだ。
「しかし、何ともまぁ悲しいですね。家族の再会が、こんな形とは」
「それもこれも、あの馬鹿が引き起こした事です。あんな事さえしなければこんな形にはならなかった」
十蔵の悲しそうな言葉を、一夏はそうバッサリと切り捨てる。
一夏と千冬というIS学園最高戦力2人が同時に此処に来るのは不安でもあるが、究極の事態になったらISの使用やオルコスに運搬してもらえば最短20分で帰れるので問題は無い。
それに、この2人以外の専用機持ちは全員揃っているので戻るのに時間は掛かってもある程度は耐えれる。
そんなスーツ集団は、実は3人だけではない。
3人の後ろには、スーツこそ身に纏っていない人間が1人と、スーツを物理的に着れないドラゴンが1体。
「それにしても悪いな、オルコス」
《気にするな》
珍しくファイト中じゃないのにSDを解除しているオルコスと
「ねぇ~~!いっく~ん!オルく~ん!許してぇ~~!!」
そんなオルコスに引きずられている束である。
そう、折角柳韻に会うのだから束とも再会させようと一夏は考え、千冬と協力し抵抗する束を無理矢理連れて来たのだ。
「束さん、何をそんなに嫌がるんですか。折角の柳韻さんとの再会ですよ」
「だ、だって…あの時から1回も会って無いし、生活を滅茶苦茶にしたのは束さんだから…」
珍しく弱々しい態度の束に、一夏と千冬は意外そうな視線を向ける。
「なんだ、お前もそんな事を考えるのか」
「ちーちゃんは束さんを何だと思ってるの!?束さんだって人間なんだから、それくらい考えるよ!あの愚妹じゃあるまいし!!」
束は結構真面目な表情を浮かべながらそう言っているのだが、オルコスに引きずられているという構図は変わらないのでいまいち格好がつかない。
「篠ノ之博士、1つ宜しいですか?」
「……なんだよ」
そんな束に向かって十蔵が声を掛ける。
若干不機嫌そうな視線を向けて来る束に優しく語り掛けていく。
「…親というのはですね、子供が第一なんですよ。自分達がどうなっても、先ず考えるのは子供の事なんですよ。無事なのか、元気でやってるのか…だから、心配しなくて大丈夫ですよ。きっと、御父上も篠ノ之博士の事を心配していますから」
「………ん、そういう事にしておく」
十蔵の言葉を聞いた束は暫くの間黙っていたが、やがてそう返した。
その表情は少しだけだか、笑みが浮かんでいた。
そんな2人のやり取りを見ていた一夏と千冬は
((学園長…子供いたの!?))
と内心驚愕するのだった。
そうして束が自分で歩き始めためオルコスはカードになり一夏のスーツの胸ポケット。
その場から歩き続けて約20分。
一軒の平屋の前に着いた。
そこそこ年季が入っているその平屋。
表札は無く、一見すると空き家にも見える。
しかしこの場にいる全員が察知している。
人の住んでいる気配を。
「……ごめんくださ~い!!」
呼び鈴なんてもの存在しないので、一夏がそう大声を発する。
暫くすると、家の中から足音が聞こえてくる。
束は思わず千冬の背中に隠れる。
千冬は一瞬無理矢理引きはがそうとも思ったが、自分からしっかりと出る方が良いと思いそのままにした。
「こんな田舎の一軒家になんのよ……!!」
そうして、その一軒家から出て来た男性は言葉を途中で止め、驚きで目を見開く。
「……一夏君、千冬ちゃん」
その男性…柳韻はそう一夏と千冬の名前を呼ぶ。
「はい、お久しぶりです。柳韻さん」
「お久しぶりです」
一夏と千冬は笑みを浮かべてそう返事をする。
「2人とも、なんで此処に…」
「本当だったら世間話に花を咲かせたいところなんですが、今回はとても重要な事があって尋ねさせて頂きましたので後にさせてください」
「っ…成長したね、一夏君……」
一夏の言葉を聞いた柳韻はそう反応する。
幼かったころしか知らなかったら、この成長具合は驚いて当然だろう。
そんな柳韻に、十蔵も声を掛ける。
「初めまして、篠ノ之柳韻殿。IS学園学園長、轡木十蔵です」
「あ、ああ。初めまして…」
IS学園学園長。
その肩書を聞いた柳韻は若干緊張した面持ちになる。
嘗ての教え子2人に、学園長。
そんな人達がわざわざ自分を尋ねて来た事に緊張しているんだろう。
「さて、じゃあ早速本題に…っていきたいんですけど、その前に1つ」
一夏はそう言いながら千冬の方に…正確に言うのなら、千冬の背後に視線を向ける。
それにつられ、柳韻もそこに視線を向ける。
「……束さん、出て来たら如何ですか?」
「なっ…」
一夏の言葉を聞いた柳韻は驚きの声を発する。
「……」
束は、ひょこっと千冬の背中から顔を出す。
「束…束なのか…?」
「う、うん…そうだよ、お、お父さん……」
柳韻の絞り出すかのような声に、束はそう返答する。
その瞬間に、一夏、千冬、十蔵はスッと離れていく。
「束…束ぇ!!」
「っ!」
柳韻は目元に涙を浮かべながら束に抱き着く。
抱き着かれた束は驚いたような表情を浮かべる。
しかし、感じる柳韻の懐かしい匂いや温かさに束も涙を浮かべながら柳韻に抱き着き返す。
「束…!お帰りなさい…!!」
「うん…!ただいま、お父さん……!!」
そうして暫くの間、篠ノ之親子は泣きながら抱き合い、久しぶりの再会を噛み締めるのだった。
「それで、いったい何の御用ですか?わざわざこんな場所にまで来て…」
それから暫くして、一夏達は家の中に入れて貰った。
柳韻に案内してもらい机の前に座る。
柳韻はお茶を人数分出しながらそう尋ねた。
「…先程も軽くお話ししましたが、とても重要な事です。嘘だと思うかもしれませんが、これから話すことは全て真実であることをここに誓います」
「そこまでの事…分かった。全てを信頼しよう」
一夏は柳韻の目をしっかりと見ながらそう言い、そんな一夏の様子に少し驚いた柳韻だが一夏の目を見ながらしっかりとそう頷く。
その事を確認してから一夏達は説明をした。
先ず、箒は1回刑務所に入れられたが脱獄した事。
テロ組織に加わり、何度もIS学園を襲撃した事。
そして今回捕まり国際裁判にかけられる事。
その、全てを説明した。
「…そう、か……」
説明を聞き終えた柳韻はそう呟いた。
その表情は悲しそうではあったが、驚いている感じも取り乱している感じもしないものだった。
「その…驚かないんですか?箒が…自分の娘がこんな状況になって……」
「…驚いていない訳じゃない。でも、何処かあの子は何か重大な事をやらかすんじゃないかと考えていた。あの子は幼い頃から、暴力で解決をするような子だったからな…」
柳韻はそう呟くと、十蔵達に向かって頭を下げる。
「私の娘が申し訳ない。幼い頃に、私がもっとしっかり力の使い方について教え切れていれば…!!」
そうして、後悔の念からか震えている声でそう言葉を発した。
そんな柳韻を見て、一夏達は悲しそうな表情を浮かべる。
「お父さん…」
束は心配そうな声色でそう呟く。
「…顔を上げてください」
十蔵がそう呟くと同時に、柳韻は顔を上げる。
「私も親です。あなたの気持ちは理解できます。しかし、今必要なのは後悔ではありません。これから如何していくか。未来が大事なのです」
「…剣を教えていた私でも、まだまだ学ぶべきものがありますな……」
柳韻は若干微笑みながらそう呟く。
そんな柳韻に、一夏が声を掛ける。
「…篠ノ之箒との面会時間は、15分だけ確保出来ます。ですが、会う会わないは柳韻さんの自由です。如何しますか?」
一夏はじっくりと確かめるようにそう言う。
箒の事が大嫌いな一夏だが、柳韻と会話するという行為にその感情は邪魔なので表に出さないように堪えているのである。
そんな一夏の言葉を聞いた柳韻は覚悟の決まった表情を浮かべる。
「…会うさ。会って、親としての
柳韻の言葉を聞いた千冬は学園へと連絡を入れる。
こうして、柳韻と箒の面会が決定したのであった。
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「出せぇ!!出せぇ!!私をここから出せぇ!!」
IS学園、地下拘束室。
他の拘束者の音が聞こえないように各々区切られたこの部屋…というよりも牢屋で、箒はそう叫びながら鉄格子を殴っていた。
「クソォ!クッソォオ!何故だ!何故私が拘束されないといけないのだ!!」
箒は未だに自分が拘束されている事に納得していなかった。
あそこまでにいろいろやらかしたのに、事の重大さを理解していない。
そうして暫く喚く事数十分。
箒はそれを止めはぁはぁと肩で息をする。
「……篠ノ之箒」
「っ!」
そのタイミングを見計らったかのように牢屋の外から警備員の1人が箒に声を掛ける。
実を言うと10分ほど前から鉄格子の前にいたのだが、箒は喚いていたため気が付かなかったのだ。
「お前に客だ」
警備員はその言葉と同時に牢屋の扉を開け中に入っていく。
そうして箒の腕を身体の後ろにまわさせ手枷を付ける。
「くっ!?なんだこれは!?離せ!!」
「黙れテロリスト」
喚く箒に警備員は拳銃を突き付ける。
流石の箒でも銃を向けられたら黙る。
そうして拳銃を突き付けられたまま箒は警備員によって誘導されていく。
「入れ」
そして、とある部屋に入れられる。
部屋の中央が強化ガラスによって区切られた部屋。
その中央には椅子と机が置いてあり、そこだけ強化ガラスに数個の小さい穴がある。
まさに刑務所の面会室といった感じの部屋だ。
そんな部屋の椅子に箒は座らせられ、警備員によって椅子や机の脚とロープで繋がれる。
「くっ!?離せ!!」
「離すわけが無いだろう」
未だに喚く箒に警備員が冷たくそう吐き捨てる。
警備員は入り口近くに移動し箒の事を監視するような鋭い視線を向ける。
そうして、そこから十数分経った時。
ガチャリ
と、箒から見てガラスの向こうにある扉が唐突に開き、部屋の中にとある人物が入って来る。
「なっ!?」
その人物を見た瞬間、箒はそう驚愕の声を発する。
そうだろう。
何故ならその人物は
「久しぶりだな…箒…」
「ち、父上…」
柳韻だったからだ。
久しぶりの親子の対面。
しかし、柳韻と束の再会の時のような温かさは微塵も感じられなかった。
ただただ重苦しい雰囲気が部屋を支配する。
そんな空気の中、柳韻は箒の向かいの椅子に深く座り、話し始める。
「箒…お前のしてきたことは全て聞いた。一夏君達に散々迷惑を掛けた事も、テロリストになった事もな…!!」
柳韻はそう言うと台パンの要領で机の事を殴る。
バァン!
「っ!?」
急な事に驚いたような表情を浮かべる箒。
だが、そんな事気にしないように柳韻は言葉を続ける。
「一夏君達からその事を聞いたとき、私は今までにないほどの怒りと後悔を覚えたよ!!まさか、自分の娘がこんな重罪を犯すだなんて思いもしなかったからな!!」
「っ!私は何も悪い事などしてません!私は、ただ一夏を取り戻そうとしただけです!」
「黙れ!!まだそんな事を言うか!!」
以前一夏達から聞いていた事と何一つ変わらない事を未だに言う箒に柳韻の堪忍袋の緒が切れた。
「お前がした事は立派な犯罪行為だ!!それを理解しているのか!!」
「犯罪?一夏を取り戻そうとする事のどこが犯罪なのですか?」
箒の言葉を聞いた柳韻は呆気に取られたような表情を浮かべる。
「…お前、本気で言っているのか……?」
「本気も何も、私は最初から真剣です」
柳韻は頭痛を感じ頭を押さえる。
まさか、自分の犯した行動の重さ理解していないとは思わなかったのだろう。
「…お前には失望した。まさか自分の罪を理解していないとはな…でも、良かったと思ってる自分もいる。もうこれで、罪悪感無く言えるな…」
そう呟いた柳韻は、懐から1枚の紙を取り出し箒に見せる。
「なっ!?これは!?父上、これはどういうことですか!?」
「見て分かるだろう?絶縁状だ」
その紙…絶縁状を見た箒は慌て始める。
「もう、お前の事など見てられん!!お前は今日、この瞬間を持って私の娘では無くなる!!」
「なっ!?何でですか!?」
「自分で考えろ!この先もう一生、篠ノ之流の事を口にするなよ」
柳韻がそう言った時、柳韻側に扉が開く。
「お時間です」
「分かりました。ありがとうございます」
警備員に言われ、柳韻は立ち上がる。
「ま、待って!待って下さい!!」
「…罪を償うんだな」
箒は泣きながら柳韻の事を呼び止めるも、柳韻はそんな箒の事を気にすることなく部屋から出て行った。
そうしてこの場に残った箒も警備員によって牢屋に戻される。
箒は後日他の襲撃者と共に身柄を搬送され裁判に掛けられた。
その結果終身刑が言い渡され、纏めて軍事刑務所に収監されるのであった。
「ふぅ…これで、終わったな……」
部屋から出て、警備員に誘導され校舎の外に出た柳韻はそう呟いた。
その表情は少し悲しそうではあったものの、清々しいものだった。
「さて、もう帰っていいんだったかな?…帰る前に、千冬ちゃん達と話をしておきたいが…」
「柳韻さん!!」
辺りを見回しながらそう呟く柳韻にそんな声が掛けられる。
声が聞こえてきた方向に振り返ると、そこには一夏と千冬がいた。
2人はそのまま柳韻の近くに駆け寄る。
「柳韻さん…お疲れ様でした」
「千冬ちゃん…ありがとう」
千冬の言葉に柳韻は笑みを浮かべてそう返す。
弟子と師匠。
この関係には親子とはまた違う、でも深い絆が存在している。
そんな2人を見て一夏もまた笑みを浮かべると言葉を発する。
「この間お宅にお邪魔させていただいたときは積もる話も出来ませんでしたし、私の部屋でゆっくりと話しませんか?夕ご飯も張り切って作りますよ」
「一夏君…本当に成長したね…」
「男子三日会わざれば刮目してみよ…とはよく言います。私が剣道を辞めてからはそれなりの月日が経ってますし、成長しますよ。特に、今は身体的にも成長期なので」
柳韻の驚いた言葉に、一夏はそう返答する。
それに、と一夏は続ける。
「……僕の部屋には既に束さんがスタンバイしています。部外者2人と一緒ですが、親子のディナーを楽しんでは?」
「…部外者とは言わないさ。一夏君や千冬ちゃんともゆっくりと話したいしね」
「……はい!」
柳韻の言葉に、一夏はしっかりと返事をする。
そうして3人は一夏の部屋に移動して束と合流し、一夏の手料理で積もりに積もったいろいろな話をするのであった。
衝撃の事実。
学園長、子供いる。
そして、箒の事大嫌いだけど柳韻の手前それを表に出さない一夏。
大人。
私だったら嫌いな奴の話題になったら不機嫌になっちゃう。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!
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