無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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遂にやって来た。

今回もお楽しみください!


警備力強化

三人称side

 

 

大きなトラブルや襲撃も無く終了した体育大会から少し経った。

あの後一夏はマドカからマスターデータを回収し確認した。

懸念していたように盗撮写真がゴロゴロ出て来たのだが、特に問題が無いような写真しか無かったので、そのままコピーデータの配布を許した。

まぁ正直に言うと仕事があるので削除させるのが面倒くさかっただけではあるのだが。

無論、再発防止の為千冬と虚には連絡を入れて新聞部に説教をしてもらってはいる。

主犯格である薫子は暫くの間

 

 

「もうしません、もうしません…」

 

 

と顔を真っ青にしながら呟いていたとかなんとか。

 

 

ある日の放課後。

IS学園の会議室には千冬を始めとした全教員とオータムを始めとした警備員の代表者、そして一夏と楯無が集合していた。

今日はこれから会議があるのである。

 

 

「それでは、これより亡国企業アジト攻撃作戦会議を開始します」

 

 

部屋の中央に座っている十蔵がそう言葉を発する。

その瞬間に、会議室をピリッとした空気が包み込む。

 

 

「更識会長、お願いします」

 

 

「はい」

 

 

十蔵の指示を受けた楯無は席から立ち上がる。

そうして会議室内にいる人達の表情をぐるりと確認してから言葉を発する。

 

 

「たびたび私達IS学園に襲撃を仕掛けていた亡国企業の日本アジトが判明しました。場所は1年生の修学旅行の行き先でもある、京都」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に、その1年生である一夏がピクリと反応する。

自分達の旅行の行き先であるという事以外にも、なんで1年生で修学旅行に行くんだという疑問も感じているような表情だった。

だが、直ぐに真剣な表情に戻り楯無に視線を向ける。

 

 

「そして、私達IS学園は国際IS委員会の協力のもと現地の下見という名目でそのアジトを襲撃します」

 

 

そんな衝撃的な言葉を聞いても、この場にいる全員が驚きの声を発しなかった。

 

 

「襲撃の目標は、亡国企業の戦力低下と情報の入手です。また、今回の襲撃の全責任は国際IS委員会が負う事になっています」

 

 

説明を聞いている一夏はその表情を嫌そうなものに変えていく。

いくら許可されている事であり、相手が国際的なテロリストだったとしても、そのテロリストと同じような行動をするのはあまり気分が乗らないのだろう。

それに、一夏は1学期から国際IS委員会の大量の仕事を処理していたため国際IS委員会に良い印象を抱いていないのだろう。

しかしどれだけ嫌でも与えられた仕事。

最後までこなそうと表情を元に戻す。

 

 

「更識会長、ありがとうございました」

 

 

十蔵のその言葉を聞いた楯無は席に座る。

 

 

「さて、本日話し合う事はこの攻撃作戦に割く人員、そしてその間のIS学園の警備に関してです」

 

 

「目標は分かっているんですし、全専用機持ちで襲撃しては?」

 

 

「それだと、作戦中に入れ違いで襲撃を受けた場合の対処が出来ません。やはり戦力の何割かは残しておかないといけません」

 

 

「ならば、やはり織斑先生と織斑君は別にしないといけないのでは?」

 

 

繰り広げられる壮大な話し合い。

そんな中、一夏は何処か難しそうな表情を浮かべると右手を上げてから話し始める。

 

 

「……今まで襲撃者の目的は私でした。私が学園外に出たとしたら、恐らくこっちに来る可能性が高いと思われます」

 

 

一夏の言葉を聞いた教員達や警備員達は確かにそうだといった表情を浮かべる。

それを確認してから、続きを話し始める。

 

 

「…私は京都に行きます。そして、京都へ行く部隊は学園警備より多くした方が良いと思います」

 

 

「なるほど…織斑君の意見を採用します。反論はありますか?」

 

 

十蔵がぐるりと全員の表情を確認しながらそう確認する。

反対意見は出ず、一夏のこの案をおおもとの方針とする事が決定した。

 

 

「では次に、京都に行くメンバーの話し合いを開始します」

 

 

「1年生専用機持ちと楯無さん、クラリッサとチェルシーと織斑先生と山田先生でどうでしょう?」

 

 

十蔵の言葉の直後に直ぐ一夏が意見を出す。

まさか名前が出るとは思わなかった真耶が少し驚いた表情を浮かべる。

 

 

「私はその意見に賛成です。何しろ目標は亡国企業です。攻める人数が多いに越した事は無いかと」

 

 

「私もです。真耶は連絡要員としても優秀だが、1人のIS操縦者としても優秀だ。連れて行って損はないでしょう」

 

 

一夏のその意見に、楯無と千冬が賛成の意見を述べる。

 

 

「しかし、その場合IS学園の警備はウェルキンさん、サファイアさん、ケイシーさんの3名だけになってしまいます。それでは手薄過ぎになってしまうのでは?」

 

 

今回の作戦、攻める人数が多めに確保しておきたい。

しかし、IS学園の警備が手薄になり過ぎるのは当然看過できない。

 

 

「…せめて専用機持ちがもう1人いれば……」

 

 

教員の1人がそう言葉を漏らす。

それと同時に、この部屋にいる殆どの人間がその教員と同じような表情を浮かべる。

そんな中唯一の例外…一夏は顎に手を置き思案する。

 

 

(『専用機持ちがもう1人』ね…さて、こっちに呼べるかどうかだが…いけるな。この間の報告で少し余裕が出来たと聞いたし、新しい人員も補充できたから2人くらい抜けても問題無いだろう)

 

 

そうして顎に置いていた手を上げて声を発する。

 

 

「学園長、学園が許可をくださるのなら『PurgatoryKnights』から専用機持ちを1名、その専用機持ちと同レベルの腕前のIS操縦者1名、計2名の派遣が出来ますが」

 

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 

一夏の言葉を聞いた十蔵は思わず身を乗り出しながらそう反応する。

他の教員達や警備員達も同じ様な反応をする。

専用機持ちというのは、そう簡単に確保できるものではない。

それなのに専用機持ち、そして同レベルのIS操縦者を派遣できるといわれたらそんな反応をするだろう。

 

 

「はい、1つ問題があるとするのなら…」

 

 

「するのなら?」

 

 

「……今海外にいるのでこっちに来るのに1週間はかかる事ですかね」

 

 

一夏は微笑を浮かべながらそう言葉を発する。

来るのに時間がかかる事を問題として語るという事は、それ以外には問題が無いという事。

 

 

「……では、その方向で決定したいと思います。異論はありますか?」

 

 

十蔵のその言葉に、誰も反論はしなかった。

それを確認した十蔵は軽く息を吐くと

 

 

「それでは、これで決定します。今日はこれで解散です。お疲れ様でした」

 

 

この場を解散させた。

そうして教員達と警備員達は続々と会議室から出て行く。

一夏も会議室から出ると、直ぐに会社との通信端末を取り出し通信を掛ける。

 

 

「…あ、社長。ご無沙汰しております、織斑一夏です。実は、折り入ってお話がありまして……」

 

 

そう話す一夏の表情は、この上なく真剣なものだった。

 

 


 

 

会議からピッタリ1週間後。

日本最大の国際空港には公欠扱いの一夏、マドカ、シャルロット、そして出張扱いの真耶がいた。

 

 

会議で話し合われた内容は、あの後会議に参加していなかった専用機持ちにも伝えられた。

いきなりの事で驚いてはいたものの、全員がしっかりやる気を見せていた。

それと同時に一般生徒達には建前である修学旅行の下見に行くという説明をした。

生徒達は修学旅行が問題なく開催されることに歓喜した。

 

 

そして今、一夏達が空港にいる理由。

それは例の2人を迎えに来たからである。

 

 

「さて、あの2人の乗ってる飛行機は…到着までまだ掛かるか」

 

 

スーツを着用し腕時計で時刻を確認するというどう見ても社会人にしか見えない行動をしながら一夏がそう呟く。

そんな光景を見た3人は思わず感嘆の息を漏らす。

それは当然一夏にも聞こえており、一夏は半眼を浮かべながら3人の事を見る。

 

 

「なんです?」

 

 

教師である真耶がいるため一応敬語を使う一夏。

3人は視線を泳がせながら言葉を発する。

 

 

「い、いやぁ~、その~」

 

 

「お、お兄ちゃんのその仕草があまりにも様になってたから……」

 

 

「一夏があまりにもスーツを着こなしてるからかな?」

 

 

「はぁ…まぁ、良いや」

 

 

ため息をついた一夏はスタスタと歩いて行ってしまう。

3人は慌てて後を付いて行く。

 

 

「お兄ちゃん、何処に行くの?」

 

 

「取り敢えず飯。まだ朝ご飯食べてない」

 

 

「織斑君?もう11時なんですけど…?」

 

 

「まだ朝ご飯食べてない」

 

 

真耶の困惑したような言葉に、一夏は全く同じトーンでそう返す。

 

 

「じゃ、じゃあ私達は早めのお昼ご飯にしましょう!」

 

 

「そ、そうだね!僕達もご飯食べよう!」

 

 

少し重たくなった空気を振り払うようにマドカとシャルロットが無理矢理明るくそう言葉を発する。

そうして4人は空港のちょっとお高いレストランで朝食と昼食を取る。

会計を一夏が全員分払い(3人は自分の分を払おうとしたが、気が付いたら一夏が払ってた)、レストランを出る。

 

 

「まだ時間あるな…」

 

 

「そうなの?もう直ぐ着く予定なんじゃ?」

 

 

「本当はそうだったんだが、さっき確認したら空路の途中の悪天候で飛行機が遅れてる」

 

 

「なるほど。天候ならしょうがないですね」

 

 

「そういう訳で、いったん自由時間なんだが…やる事が無い」

 

 

一夏が呟いた事に、3人は苦笑いを浮かべる。

今日空港に来た目的は2人を迎える事。

自分が飛行機に乗る訳でも無ければ、飛行機マニアという訳でもない。

そして一夏は買い物に楽しさを覚えるタイプではない。

暇を覚えるのも仕方が無いだろう。

 

 

「3人とも、買い物してきていいですよ。30分後にもう1回此処に集合で」

 

 

「え、でも…」

 

 

「いいからいいから。金が無いなら1人2万までは出せるけど…」

 

 

「自分達で払うからそれは大丈夫!じゃあ、お言葉に甘えようかな?」

 

 

「おう、甘えろ甘えろ」

 

 

一夏が最後にそう言うと、3人はお土産等が売っているエリアに歩いて行った。

3人の背中を見ていた一夏は近くにあったベンチに座ると心臓を押さえ込む。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

そうして、顔中に脂汗を浮かべながら荒い呼吸をする。

口元や足元は震えており、一目見て体調が悪いのが分かる。

事実、周囲の一般客はさっきから一夏にチラチラ視線を向けていた。

しかし今の一夏にそれに反応する余裕は残されていない。

 

 

「み、水…」

 

 

そう呟くと、フラフラした足取りで自販機に向かう。

 

 

「なんで水が120円するんだよ…」

 

 

空港の自販機の高めの値段設定に文句を言いながら水を購入し、そのまま500㎖を一気に飲み干す。

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

 

ゴミ箱にペットボトルを捨て、元のベンチに戻る。

 

 

「ヤバいな…早く息を整えないと…」

 

 

以前誕生日にサラから貰ったハンカチで汗を拭きながら一夏はそう呟く。

 

 

(くっそ…症状が出る頻度が……半年…いや、4ヶ月、3ヶ月…?分からない…俺は、俺は……)

 

 

表情を歪ませながらそんな事を考える。

そうしてなんとか息を整える事約30分。

 

 

「お兄ちゃ~ん!」

 

 

「ん、おお、マドカ」

 

 

マドカ達3人が戻ってきた。

ベンチから立った一夏は3人の元に駆け寄る。

 

 

「あれ、一夏どうしたの?なんか疲れてるみたいだけど…」

 

 

シャルロットの質問に一夏は一瞬視線を泳がせると言い訳を開始する。

 

 

「いや、ほら、俺は世界で2人しかいない男性IS操縦者だから。いろいろ注目されて視線で疲れた」

 

 

「織斑君も大変ですね…」

 

 

「大変ですよ。それじゃ、そろそろ時間なので行きましょう」

 

 

一夏は真耶との会話を終わらせ到着ロビーに向かって歩き始める。

3人も一夏に続くように歩き始める。

到着ロビーにはもう既に乗客を待つ人達が集まっていた。

 

 

「まだ時間はあるんだが、少し出遅れたか…まぁ仕方が無いか」

 

 

一夏はそう言うと、荷物の中から『PurgatoryKnights』と書かれたプレートを取り出す。

 

 

「準備いいね」

 

 

「当然だろ?」

 

 

身長が1番高い一夏が持つ事で後方にいるこのプレートも見やすくなるだろう。

そんな準備をしていると、到着ロビーに飛行機から降りてきた人達が続々とやって来た。

かなりたくさんの人が居るため、簡単に目的の人物を見つけられない。

しかし、一夏達はかなり簡単に見つけられた。

何故なら目的の人物であるその2人がかなりの美人であり周囲の人物がチラチラ視線を向けていたからだ。

 

 

「ナターシャ!イーリス!」

 

 

一夏のその声掛けにその2人…ナターシャとイーリスも一夏達に気が付いた。

プレートを頼りに2人が一夏達の所にやって来る。

 

 

「2人とも、久しぶりだな。急に呼んで悪かったな」

 

 

「はい、お久しぶりです」

 

 

「気にしないで下さい。これも仕事ですので」

 

 

「そう言ってくれて気が楽だよ。元気してたか?」

 

 

「はい、それはもう元気にやってました」

 

 

「向こうの子供達も元気です」

 

 

業務時間なので仕事モードで話す3人。

それを見て、マドカとシャルロットは気まずそうに視線を泳がせる。

 

 

「どうした?」

 

 

「い、いやぁ~、さっきから普通にプライベートな感じで話しちゃってたから…」

 

 

「僕達も敬語使った方が良いかな?」

 

 

「本当だったら今日は学園だ。学園では敬語使わなくていいって言ってるだろ」

 

 

会話をここで終わらせて、一夏は真耶に視線を向ける。

それに合わせるように、ナターシャとイーリスも真耶に視線を向ける。

 

 

「山田先生、この2人が『PurgatoryKnights』から派遣するIS操縦者、ナターシャ・ファイルスとイーリス・コーリングです。2人とも、この人がIS学園の教員で俺の副担任の山田真耶先生だ」

 

 

「ナターシャ・ファイルスです。この度はよろしくお願いします」

 

 

「イーリス・コーリングです。よろしくお願いします」

 

 

一夏に紹介されたナターシャとイーリスは真耶に向かって頭を下げる。

それを見た真耶も慌てて頭を下げる。

 

 

「あ、山田真耶です!この度は私達へのご協力ありがとうございます!」

 

 

「いえいえ、気にしないで下さい。特に私はあなた達IS学園にも大きな恩がありますので」

 

 

「恩…?」

 

 

「はい、臨海学校の際に私の事を助けて下さったでは無いですか」

 

 

「あ、ああ!あの時の!」

 

 

ナターシャに言われ、彼女の事を思い出した真耶。

両目を見開き驚きの表情を浮かべる。

 

 

「2人とも、それは機密事項だからここで終わりだ」

 

 

「了解です」

 

 

「あ、はい!そうですね!」

 

 

プレートをしまっている一夏に言われ、直ぐに黙る2人。

そんなやり取りの側では、マドカとシャルロットがイーリスと話していた。

 

 

「初めまして、イーリスさん。織斑マドカです」

 

 

「シャルロット・デュノアです」

 

 

「初めまして、先輩方。イーリスです」

 

 

ナターシャをスカウトしたマドカとシャルロットであるが、イーリスの存在は一夏から聞かされるだけだったので初対面なのだ。

 

 

「敬語とか使わないで良いですよ。私達の方が年下ですし」

 

 

「え、ですが…」

 

 

「普通に年上と年下の関係で行きましょうよ」

 

 

「おい待て。その言い方だと俺が権力で言わせてるみたいじゃないか」

 

 

「お兄ちゃんは立場が私達なんかより上じゃん」

 

 

「取締役のみなさんと同じくらいの社内権力なんでしょ?」

 

 

「何故それを!?クラリッサとチェルシー以外には昇格の事言ってないのに!?」

 

 

「普通に社長に聞いたよ」

 

 

「…そりゃそうか」

 

 

一夏、マドカ、シャルロットのコミカルなやり取りに真耶、ナターシャ、イーリスは笑みを浮かべる。

 

 

「……話をそらして悪かったな。だがイーリス、マドカとシャルがこう言ってるんだ。何時も通りで大丈夫だぞ」

 

 

一夏にそう言われ、イーリスは少し考えるように目を伏せる。

全員の視線がイーリスに注がれる中、息を吐いてから言葉を発する。

 

 

「…分かった。そうさせてもらう。よろしくな、マドカ、シャルロット!」

 

 

笑顔を浮かべ2人に突撃する。

 

 

「わっちょ!?」

 

 

「まっ!?」

 

 

「全く…イーリは相変わらずねぇ」

 

 

マドカとシャルロットは短い悲鳴を発し、ナターシャはやれやれといった表情を浮かべる。

そんなやり取りを見て笑みを浮かべていた一夏だったが、パンパンと両手を叩く。

 

 

「移動するぞ。いつまでもこうしている訳にはいかないからな」

 

 

「「分かりました」」

 

 

「そ、そうですね!早く行きましょう!」

 

 

一夏の言葉にナターシャとイーリスが同時に、真耶が1歩遅れてそう反応する。

そうして6人で移動を開始する。

今日一夏達が空港にやって来たのは真耶が運転する6人乗りの車なので、向かうは駐車場である。

 

 

♪~~~♪~~~

 

 

その道中、誰かのスマホが着信音を鳴らしだす。

他の人達の邪魔にならないように壁際により全員足を止める。

 

 

「すまん、俺だ」

 

 

一夏はそう言うとポケットからスマホを取り出し画面を確認する。

 

 

「誰から?」

 

 

「俺の嫁」

 

 

「「嫁っ!?」」

 

 

マドカの質問に特に悩む素振りを見せずに返答した言葉にナターシャとイーリスが驚きの声を発する。

慌てて説明を開始するマドカとシャルロットの事を横目で見ながら一夏は通話に出る。

 

 

「もしもしクラリッサ、どうかしたか?」

 

 

『あ、一夏。実はだな、少しトラブルが…』

 

 

「なっ!?」

 

 

トラブル。

その言葉を聞いた一夏は心臓がキュッと絞られる感覚を覚えた。

クラリッサは、チェルシーは大丈夫なのか。

その事だけが頭を支配する。

クラリッサとチェルシーの2人をそれ程までに大事にしているからこそ、一夏は聞き逃した。

電話の向こうのクラリッサの声色が、どこか困惑したようなものだと。

 

 

『その…教官が、物凄くグロッキーで授業が出来ていないんだ』

 

 

「……………はぁ?」

 

 

一瞬言われた事を理解できず困惑したような声を発する一夏。

しかし、やがて理解をすると

 

 

「あの馬鹿姉がぁ!!」

 

 

と怒りの表情を浮かべドス声を発する。

 

 

「「「「「ヒィッ!?」」」」」

 

 

その時、クラリッサの事を考えスマホから顔を離していたためその場にいた5人が恐怖の声を発する。

だが今の一夏にそんな事を気にしている余裕はない。

直ぐにスマホを耳元に戻す。

 

 

「クラリッサ、あの駄姉は絶対に2日酔いだ。無理矢理にでも授業させろ」

 

 

『だが…それが出来なさそうなほどなんだ』

 

 

「はぁ…すまないが束さんに連絡入れてくれ。2日酔い解消のなんかを持ってるはずだ。お礼をねだられたら俺が飯作るって言っといて」

 

 

実は今までのお礼のご飯作りが溜まってる一夏。

しかし、料理をわざわざ作りに行く余裕が無いのでドンドン溜まってしまうのだ。

冬休みに纏めて作ってやろうと考えているが、果たしてどうなるか。

 

 

『分かった。わざわざありがとう』

 

 

「いや、気にしなくていいよ。あ、そうだ、駄姉に伝えてくれる?『今晩説教』って」

 

 

『ん、分かった。伝えておこう』

 

 

「じゃあまた後で」

 

 

『ああ、また後で』

 

 

通話はここで終了し、一夏はスマホをポケットに仕舞う。

 

 

「行くぞ」

 

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 

一夏の言葉に全員が元気よく返事をする。

今の一夏にはここまでさせる迫力があった。

駐車場に付き、車のトランクにナターシャとイーリスの荷物を乗せる。

運転席に真耶、助手席に一夏、2列目にマドカとシャルロット、3列目にナターシャとイーリスが乗り込む。

 

 

「では、出発しま~す!」

 

 

全員がシートベルトを締めた事を確認したので真耶が車を発進させる。

 

 

「そうだ、ナターシャ、イーリス、時差ボケしてるだろ?向こうに付いたら起こすから寝てていいぞ」

 

 

「そうですか?じゃあお言葉に甘えて…」

 

 

やはり時差ボケが辛かったのか、2人は直ぐに寝息を立て始めた。

2人を起こさないために誰も会話をしない。

マドカとシャルロットはスマホをいじっているし、真耶は運転に集中している。

そんな状況で、一夏は隣の真耶にバレないように心臓を右手で押さえる。

 

 

(まだ、バレては無いっぽいな…くっそ、ずっと心臓に負荷がかかってる気がする)

 

 

少しだけ過呼吸気味になりながら窓から外の景色を眺める。

流れていく景色を何処か呆然と見ながら

 

 

(俺は、俺はまだ、あの2人と一緒に居たいんだよ…)

 

 

辛そうな表情で虚ろな目をし、そんな事をずっと考えているのだった…

 

 

 




実は水を飲んだ後も一夏の不調は改善されておらず、息を整えてなんとか誤魔化していました。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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