無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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前回の続き。

作者は最近スプライトを擦りまくっているのですが、だんだん飽きて来ました。
でも、使わないとパワーかなり落ちるので抜くに抜けない。
パワカに引っ張られ過ぎず、面白いデッキを作りたいものです。
なにせフリー対戦しかしないので。

あ、バディファイト全く関係ありません。
分かる人には分かる。

今回もお楽しみください!


帰還、そして報告

三人称side

 

 

亡国企業襲撃作戦の翌日。

一夏達は京都からIS学園に向かっていた。

 

 

朝、疲れが取れたのか取れてないのか良く分からない状態で起床した一夏達。

簡単に朝食を食べ、そのまままったりと、一夏とクラリッサとチェルシーはイチャイチャしながら10時頃まで過ごした。

従業員がほぼいない状態の為、最後に簡単に掃除をして(各々の部屋を掃除していたが結局仕上げは全て一夏が行い、後日確認に訪れた旅館の主は部屋の綺麗さに度肝も抜いた)、旅館を後にした。

 

 

そうして、今は行きと同じ席順で貸し切りの新幹線のグリーン車に乗車していた。

まだ疲れが抜けきっていないのか、楯無達は出発後まもなく夢の世界へと旅立った。

今起きているのは、一夏とクラリッサとチェルシーとマドカ、それと千冬と真耶である。

これまた行きと同様に一夏とマドカは席を180度回転させ、向かい合っている。

 

 

「キャスト、エタニティ・リング。センターのアルドアトラのソウルに入れ、ゲージプラス1、ワンドロー」

 

 

「うっ…まだ使う!?もう逆天したよね!?」

 

 

「したけど。このターンでケリを付けるんだから」

 

 

「付くの!?」

 

 

「付く付く」

 

 

そうして、一夏はテーブルを広げ隣のマドカとバディファイトをしていた。

普通対戦相手は正面にいる状態で行うのだが、まぁこれは些細な事である。

相手の手札が見えなければ特に問題無い。

そんな兄妹の微笑ましい光景を、2人の正面に座るクラリッサとチェルシーはニコニコしながら見ていた。

 

 

自分達の大事な恋人と、その妹が仲良くしている光景は、ある種のリラックス効果がある。

2人とも思春期なので喧嘩したり、もっと言えば罵倒し合ったりしていてもおかしくない。

そんな事が起こらないのは、マドカがブラコンであり、一夏もマドカの事を大事に思っているからだろう。

 

 

「…良い光景ですね……」

 

 

「ああ、良い光景だ」

 

 

「良い光景なんですか?」

 

 

チェルシーがボソッと呟いた事にクラリッサが同調するように頷き、それを聞いていたマドカが不思議そうに首を傾げた。

そんな反応が帰って来るとは思わなかった2人は頬をポリポリと掻きながら視線を泳がせる。

 

 

「やっぱ、未来のとはいえ義妹の楽しそうな場面だから、姉として嬉しいとかじゃない?」

 

 

「「っ!?/////」」

 

 

真顔でハチャメチャに恥ずかしい事を言う一夏。

その言葉を聞いた2人は顔を真っ赤にする。

 

 

「可愛いなぁ。アルドアトラでアタック」

 

 

「…負けたぁ!」

 

 

一夏はニコニコしながら、まるでついでのようにマドカにとどめをさした。

マドカは悔しそうな表情を浮かべながら自分が使っていたデッキを纏める。

 

 

「お兄ちゃんやっぱり強いね」

 

 

「まぁ、マドカが使ってるのも俺のデッキだし」

 

 

「それを除いてもだよ」

 

 

「そう…なのかなぁ?」

 

 

マドカの言葉に、若干首を傾げながらそう返す一夏。

その脳裏には、牙王やタスク、キョウヤといったバディファイターの姿があった。

自分よりも圧倒的に強く、経験も豊富な人達。

 

 

「いやぁ…俺はまだまだだよ」

 

 

一夏は苦笑を浮かべながら自分のデッキとマドカが使っていたデッキをケースに戻す。

そんな一夏を見て、3人は「俺はまだまだ」という言葉は、バディファイトの事だけでないというのを察した。

 

 

「一夏、その『俺はまだまだ』というのはバディファイトだけじゃなくて、実際の戦闘の事も含んでいるだろう?」

 

 

「……まぁ、そうだな」

 

 

クラリッサの疑問に、一夏は若干の動揺を見せながらそう返す。

一夏がそんな反応をするのは珍しい。

だが、言葉にしていない部分までピッタリ当てられると流石の一夏でも動揺する。

 

 

「一夏は今でも、私達なんかより強いだろう」

 

 

「そうかなぁ?」

 

 

「うん、お兄ちゃんはIS学園で1番強いんじゃないかな?」

 

 

「織斑先生がいるだろ。世界最強が」

 

 

「お姉ちゃんも強いけどさ。今戦ったらどっちが勝つか分からないんじゃない?」

 

 

マドカの言葉に、クラリッサとチェルシーは大きく頷く。

これは、3人の本音だった。

千冬が世界最強で、その実力を今でも発揮できることは勿論理解している。

その上で、一夏ならば千冬にすら勝てると本気で思っていた。

 

 

恋人2人と妹からのその評価に、一夏は少し恥ずかしくなり微笑を浮かべながら頬を掻く。

だが、その評価を闇雲に否定はしない。

折角してもらった評価を否定するのは、評価をしてくれた人に失礼だと考えているからだ。

 

 

(…そう言って貰えるのは嬉しいけど…本当にそれに俺は見合ってるのかな……?)

 

 

だが、心の中では首を傾げていた。

千冬とずっと一緒に過ごしてきた身としては、千冬の凄さは周囲の評価以上のものだと勝手に思っていた。

これで酒癖の悪ささえなければ完璧なんだがなぁ、などと若干的外れな事を考えていた一夏に、チェルシーが大真面目に声を掛ける。

 

 

「答えにくかったら答えなくて良いんだけど……一夏って、何処を目指してるの?」

 

 

「守る」

 

 

その疑問に、間髪入れず、そして簡潔に一夏は返事をする。

だが、簡潔過ぎた為3人には上手く伝わってない。

それを一夏も理解している為、笑みを浮かべながら続きを説明する。

 

 

「大事な恋人を、妹を、姉を、友人を守る。勿論、みんなが戦えるのは分かってる。でも、それでも…俺が、俺達が居たら、絶対に安心だと言って貰えるくらい、俺は強くなりたい」

 

 

一夏はダークコアデッキケースからオルコスと白式と白騎士のカードを取り出し、3人に見せながらそう語る。

その表情は笑顔ではあるのだが……どこか悲しみや痛々しさ、そして触れたら壊れてしまうような脆さがにじみ出ていた。

だが、3人は笑顔に何処か違和感があるという事までは感じ取ったものの、その違和感が何かまでは理解できなかった。

 

 

「「「……」」」

 

 

思わず黙ってしまい、この場に重たい空気が流れる。

 

 

「おいおい、止めてくれよ。俺が重たい話したみたいじゃないか」

 

 

そんな空気を変えようと、一夏がさっきまでとは違う、穏やかな笑みを浮かべる。

一夏の雰囲気が変わり、3人も穏やかな笑みを浮かべる。

 

 

「……今更だけどさ、バディファイトしても良かったのかな?」

 

 

「今更だな。まぁ、良いだろ。俺はこれが無きゃ戦えないんだ!」

 

 

マドカの言葉に、一夏が持ったままだった3枚のカードを強調しながらそう言う。

すると、その内の1枚…オルコスが若干震える。

それだけで、相棒である一夏はオルコスが何を言いたいのかを察した。

 

 

(《スタードラゴンWのカードは使えないがな》)

 

 

「…確かにそうだけどさぁ……」

 

 

ごもっともな意見だった。

一夏はため息をつき、3枚をダークコアデッキケースに戻す。

マドカ達から見ると、一夏が急にため息をついただけにしか見えなかった。

若干驚いた様子で一夏を見る。

 

 

「……引いた?」

 

 

「いやいや、全然!」

 

 

自分が傍から見たら変な行動を取っていたとはいえ、流石にそんな反応をされたら一夏でも傷つく。

マドカが慌ててワチャワチャ身振り手振りしながら誤魔化そうとしている中、クラリッサとチェルシーは頷き合うと席を立ち、マドカに視線を向けたままだった一夏に同時に抱き着いた。

 

 

「うぇっ!?」

 

 

急な事で一夏は動揺しながら視線を2人に向ける。

 

 

「あれくらいで引く訳無いだろう?私達は、お前の恋人だぞ」

 

 

「多分だけど、オルコスソードと会話したんでしょ?それくらい分かってるわよ」

 

 

チェルシーの言葉にマドカが「えっ?」っといった表情を浮かべている中、一夏は苦笑を浮かべると降参を示すように両手を上げようとして……2人にガッチリ掴まれている事でそれが出来ない事を理解した。

 

 

「降参降参。そして、ありがとう。大好き」

 

 

一夏は言葉で降参を伝えると同時、ニコッと笑みを浮かべると感謝と愛を伝え、体勢を変えずに器用に2人の事を抱きしめる。

2人は嬉しそうな表情を浮かべ、更に身体を密着させる。

新幹線の車内で、1人は席に座ったまま3人で抱き合うという、なんでも無いように見えてそこそこ難しい事をしているその横で。

3人だけの世界を構成された事ではみ出たマドカは砂糖を吐き散らしていた。

 

 

そんな光景を見て、行きの時と同じような視線を向けるのは、4人以外で起きている教師2人組だ。

行きの時の新幹線でした会話を思い出した2人。

どうしても一夏の様子が気になってジッと視線を向けているのだ。

 

 

「……私はやっぱり変なところなんて無いように見えます。4人とも、昨日戦闘したとは思えない程元気です」

 

 

「ああ、4人とも元気だ。だが……」

 

 

真耶の言葉に千冬はそう頷くが、視線は4人から逸らされていなかった。

ジッと4人を…その中心ともいえる一夏を見つめていた。

 

 

「何というか、今の一夏はとても脆い気がするんだ」

 

 

「脆い…ですか?」

 

 

千冬の言葉を受け、真耶は再び一夏達に視線を向ける。

そこでは、クラリッサとチェルシーが一夏の頬に同時にキスしていた。

一夏の隣のマドカはもう甘々空間(側にいるだけで精神が削れる攻撃)にやられたようだ。

少し離れた位置にいるのに、キスを見て恥ずかしくなった真耶がいるのだから間違いない。

だが、そんな甘々空間を見ても、千冬は狼狽える事は無い。

一夏の幸せそうな表情のその奥にある、隠している何かを感じ取っていた。

 

 

「一夏……」

 

 

具体的に言葉にすることは出来ない。

それに、見る限りはとても元気。

なのに、何故こんなに不安が拭えないのだろうか。

 

 

「大丈夫だ、一夏なら」

 

 

「…私が簡単に言えることでは無いかもしれませんが、織斑君なら大丈夫だと思います」

 

 

千冬の言葉に真耶が同調する。

 

 

一夏は強い。

それに、何時でも頼れる相棒や恋人がいる。

勿論自分だって助けに行く。

それは理解してるのに、千冬は考えを切り替える事は出来なかった。

 

 

(……千冬姉、そんなあからさまに見られると流石に気付く)

 

 

一方、ずっと視線を向けられている一夏は流石に視線に気が付いた。

クラリッサとチェルシー、マドカには気付かれないように自分の恋人とイチャイチャし、3人の注意を引いていた。

 

 

(多分、千冬姉は俺が隠してる気付いてるな…クラリッサとチェルシーにもバレてないのに。流石は世界最強。でも、俺が隠してるものまでは分かってないな……)

 

 

一夏はそう考えながら、イチャイチャを続ける。

こうして、織斑姉弟がそれぞれ思考を巡らせる中、新幹線は東京へと向かって行く…

 

 


 

 

「みなさん、お帰りなさい」

 

 

新幹線は問題無く東京に着き、一夏達はモノレールに乗り換え、IS学園へと戻ってきた。

敷地内に入り、最初に一夏達を出迎えたのはナターシャだった。

ニコッとした綺麗な笑顔で、一夏達の元に駆け寄ってくる。

 

 

「ああ、ただいま」

 

 

代表して上司である一夏が1歩前に出て挨拶をする。

 

 

「お疲れ様でした。明日の午後3時から、学園会議で報告をして頂きたいのですが…」

 

 

「明日…休み1日も無いんですか?」

 

 

「はい、すみません。ですが、それまでは自由時間なので…」

 

 

「いや、ナターシャが謝る事じゃない。わざわざ教えてくれてありがとう」

 

 

ナターシャ、マドカ、一夏がそう会話する。

鈴達も今日帰って来たばっかりで明日直ぐに会議なのは少し面倒だと思ったが、午後の3時までは自由時間なので、絶対にギリギリまでダラダラしようと誓った。

 

 

「この用紙の指示に従って記入をお願いします。明日提出してもらいます」

 

 

ナターシャは全員に報告用紙を手渡していく。

当日殿ような動きだったか、自分は何をしたのか、発見した事などなど、まぁ一般的な報告用紙に近いものだった。

 

 

「ファイルス、IS学園の警備状態は如何だった?」

 

 

「襲撃や、不審者の侵入等、並びその未遂も無く平和でした」

 

 

千冬が不在の時のIS学園の状況を聞き、ナターシャが問題無しを伝える。

その瞬間に全員がホッと安心の息を吐いた。

自分達の方が大変な状況だったとはいえ、やはり学園には沢山の級友がいるので、心配していたのだ。

安心の息の一つや二つ吐くだろう。

 

 

「それじゃあ、今日は解散!お疲れ様でした!」

 

 

『お疲れ様でした!!』

 

 

「お前が仕切るな!?」

 

 

「もうシャルたち帰り始めてるぞ」

 

 

一夏の解散の合図に、生徒達全員が返事をする。

自分が合図を出そうとしていた千冬が一夏に文句を言うも、もう既に一夏を除く生徒全員が生徒寮の各々の部屋に向かって歩き始めていた。

千冬はなんとなく悲しそうな表情を浮かべ、真耶は隣で苦笑いを浮かべていた。

 

 

「千冬姉、なんか柔らかくなったな」

 

 

「む、そうか?」

 

 

「ああ、前までだったら絶対に表情変えなかったし、俺出席簿で殴ってただろ」

 

 

「……確かにそうかもしれないな」

 

 

「1年1組名物、『一夏が出席簿アタックを避け、織斑先生の暴露をしそれを冗談だと誤魔化す』も無くなったし」

 

 

「名物にするな!」

 

 

「……やっぱ柔らかくなったな」

 

 

教師と生徒ではなく、弟と姉として会話する2人。

その会話内容を聞き、真耶は懐かしいものを思い出す表情を浮かべ、名物が無くなってからIS学園に来たクラリッサとチェルシーは首を傾げる。

 

 

「あ、そっか。2人は知らないのか。あー、1年1組名物というのは…」

 

 

「説明せんで良い!!」

 

 

「……しょうがないなぁ。今回は見逃してやろう。そろそろ俺達も帰ろう、休めるときに休んどきたい」

 

 

「そうだな、疲れが残っていたら会議にも影響は出る」

 

 

「今日もほぼ休憩みたいなものだったけど、新幹線での移動も多少疲労が溜まるしね」

 

 

一夏、クラリッサ、チェルシーの順でそう言い、この場に残った5人も解散となった。

千冬は生徒寮の寮長室に、一夏達は教員寮へと向かい、各々の部屋へと入る。

 

 

「ただいまー」

 

 

バタン!ガチャ

 

 

返事が返ってくるわけが無いのだが、昔からの癖で声を発する一夏。

玄関の扉を閉め、鍵をかける。

そこで、限界に達した。

 

 

「うっ!?げっほ!ごっほ!がほっ!」

 

 

一夏は咳き込み、玄関に座り込む。

その拍子にポケットからダークコアデッキケースが落ちる。

 

 

《マスター!?》

 

 

《マスター、しっかりしてください!》

 

 

白式と白騎士が慌てて人間態になり、一夏の背中をさする。

 

 

「み、水……」

 

 

《水ですね!分かりました!タオルも持ってきます!》

 

 

白騎士がタオルと水を取りに行く。

そうして空いたスペースにオルコスがSDで出現する。

 

 

《荷物が邪魔だろう、我が持っていく。白式、一夏の様子を見ていてくれ》

 

 

《うん!》

 

 

オルコスは一夏からリュック等の荷物を受け取ると、そのまま部屋へ運び込む。

丁度それと入れ替わりで白騎士が水の入ったコップと洗濯済みのタオルを持ってきた。

取り敢えず先にコップを一夏に渡す。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

水を受け取り、それを一気に飲む一夏。

 

 

《もう1杯持ってきます》

 

 

《マスター、身体拭きましょうか?》

 

 

「あ、顔だけで良いから、お願い……」

 

 

《分かりました》

 

 

一夏からコップを受け取り、白騎士はもう1杯水を注ぎに行き、白式がタオルで一夏の顔を拭く。

そうして大体10分後。

なんとか落ち着いた一夏はフラフラした様子で立ち上がる。

 

 

「ふぅ…はぁ…」

 

 

《一夏、大丈夫か?》

 

 

「……大丈夫じゃ、無い……」

 

 

一夏は弱々しく、悲しそうな表情でそう返答すると、簡単に手洗いうがいをしてから完全栄養食のパンを無理矢理胃の中に押し込む。

 

 

「寝る…明日の昼の12時までには起こしてくれ……」

 

 

フラフラしながらベッドへと行き、そのまま倒れ込むように横になる。

そこから5分もしないうちに、一夏は夢の中の世界へと旅立った。

 

 

《…取り敢えず、荷ほどきをしてやろう》

 

 

《そうだね、私達で出来る事をしてあげよう》

 

 

バディモンスター3人は、手分けして出来る事をしていく。

全てが終わった後は、苦しそうな寝顔を浮かべながら寝る一夏の側に交代で寄り添うのだった。

 

 


 

 

翌日、14:55。

IS学園の会議室には、京都に行っていたメンバー全員、十蔵を含めた教員全員、ナターシャやイーリス、オータムなどの一部警備員が揃っていた。

 

 

「まだ3時にはなっていませんが、会議に出席する全員が揃いましたので、報告会を開始したいと思います」

 

 

十蔵のその言葉に、会議室内の空気が重たいものへと変わる。

 

 

「先ず、代表して織斑先生、報告をお願いします」

 

 

「はい」

 

 

千冬は立ち上がり、全員の顔を1回見回す。

そして、自分で記入した報告書に視線を落とし、読み上げる。

 

 

「亡国企業アジト襲撃作戦当日、織斑一夏、更識楯無、クラリッサ・ハルフォーフ、チェルシー・ブランケットからなるAチーム、ラウラ・ボーデヴィッヒ、織斑マドカ、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、凰鈴音からなるBチームに分かれて行動を開始。私、山田真耶、更識簪は旅館に待機しました」

 

 

「此処までに間違いはありますか?」

 

 

十蔵のその言葉に、一夏達は首を振る。

それを確認し、十蔵は視線で千冬に続きを促す。

千冬は頷き、報告を再開する。

 

 

Aチームが情報収集、Bチームが正面戦闘を担当し、Bチームが戦闘を行っている隙にAチームが侵入した。

当初は何方のチームも問題無く作戦を進行していたが、Bチームの前に行方不明だった深夜が現れ、交戦を開始。

Aチームがその場に駆け付けた時には、Bチーム全員が気絶しており、深夜はAチームと交戦開始。

途中で一夏が被弾し、気絶。

その直後待機していた千冬と簪が突入。

交戦し、撤退させることに成功する。

その撤退の際、何処からともなく『化け物の創造主』を名乗る人物の声が聞こえ、その声は化け物は深夜のことでは無いと言い、それっきり聞こえなくなった事。

 

 

千冬の報告が終わった後、Bチーム代表としてラウラが、Aチームを代表して一夏、一夏が気絶した後の出来事は楯無がそれぞれ自分達の主観での報告をした。

 

 

「以上です」

 

 

楯無はその言葉を残し、座る。

 

 

『……』

 

 

会議室内には、重苦しい空気が漂っていた。

実際に対峙した千冬たちですら困惑した事を、説明だけ聞いた教員達がすぐさま飲み込めるはずがない。

そんな事、一夏達が想定していない訳が無い。

ISをディスプレイとスピーカーにつなげ、残っている戦闘ログと音声を再生する。

映像を見て、音声を聞いた事で漸く飲み込めたようだ。

教員達は驚きの表情を浮かべている。

 

 

「橘君が……」

 

 

「はい、音声を聞いて頂いたのでお分かりだとは思いますが、声の主は橘深夜に帰還指示を出していました。少なくとも、声の主の部下、あるいは兵器である事は間違いなさそうです。亡国企業所属なのかどうかは、確定しかねますが」

 

 

教員の誰かの呟きに、千冬がそう反応する。

部下、あるいは兵器。

普通だったら人間相手に使う言葉ではない。

だが、映像の深夜の様子を見るに、兵器という言葉はあながち間違っていないので、誰も声を発さない。

 

 

「次に、Aチームが入手した亡国企業アジトのデータです」

 

 

千冬はそう言うと真耶に視線を向ける。

真耶破頷くと、机の上に置いてあるノートパソコンを操作する。

ノートパソコンはもう既にディスプレイと繋がっており、また一夏達がデータを入手する際に使用していたメモリーも刺さっていた。

 

 

一瞬後、ディスプレイには抜き取ったデータの内容が表示される。

入手をした一夏達も内容を確認するのは初めてだ。

 

 

『京都支部人員一覧』

 

『アジト位置一覧』

 

『各施設研究内容』

 

『新兵器開発計画』

 

『没兵器、廃棄兵器一覧』

 

 

などなど、かなり重要そうなデータがゴロゴロと出て来た。

 

 

「このように、入手したデータは多岐にわたり、どれも解析すれば亡国企業の全容を暴く手掛かりになりそうなものばかりです。ですが」

 

 

真耶はそう言うと、『京都支部人員一覧』を開こうとする。

しかし、データは所々が文字化けしていたり、欠けていたりしている為確認することが出来ない。

 

 

「如何やら、正規の手段以外でデータを抜こうとすると、自動で壊れる仕組みの様です。ですが、大部分は無事ですので修復すれば解析可能だと」

 

 

「修復にはどれくらいかかりそうですか?」

 

 

「IS学園でするとなると、1ヶ月ほど…」

 

 

「なるほど」

 

 

真耶と十蔵がそう会話する。

話を聞いている教員達や楯無達も、真剣な表情を浮かべている。

 

 

そんな中、ディスプレイに映っているデータのとあるところをジッと見つめている3人。

千冬と、一夏と、マドカ。

3人は『没兵器、廃棄兵器一覧』の文字から、視線を離せないでいた。

織斑計画によって生み出された千冬と一夏。

そんな千冬のクローンであるマドカ。

自分の生まれと、なんで生み出されたかは分かっているものの、どんな組織が、どんな人間が行ったのかは全く分からない。

だからこそ、気になるのだ。

もしかしたら、自分達を造ったのは亡国企業で、そこに自分達の生まれの起源があるかもしれない。

そう考えると、どうしても気になってしまうのも仕方が無い。

 

 

「「……」」

 

 

「っ!」

 

 

そんな一夏の様子に気が付いた両側に座るクラリッサとチェルシー。

とても自然な動作で一夏の手に自分の手を重ねる。

一夏は少しだけ表情を驚きのものに変え、元に戻る。

元に戻ったとは言っても、若干嬉しそうな雰囲気がにじみ出ていた。

 

 

そんな一夏の雰囲気の変化を察した千冬とマドカだが、口に出すわけにはいかないので視線をジッと向ける。

 

 

「以上が、今回の襲撃事件で分かった事です」

 

 

「ありがとうございました」

 

 

だが何時までもそうしている千冬ではない。

真耶の説明の終わりに、襲撃組としての報告終了を伝え、十蔵がそれに対して礼を言う。

 

 

「今回入手した情報ですが、国際IS委員会に提出する必要があります。ですが、この状態では提出が出来ませんので、山田先生を始めとした解析班でデータの修復をお願いします」

 

 

『分かりました』

 

 

十蔵の言葉に、真耶達が頷く。

だが、ここでいったん空気が固まってしまう。

それも仕方ないのかもしれない。

折角入手したデータは破損していて今すぐに確認できない。

それに加え、分かった事以上に新たに出て来た謎が大きく、分からない事だらけなので下手に考察をして考え方を固定させるのは良くない。

そんな訳で、話し合いをする意味も理由も無くなってしまったのである。

 

 

「……それでは、本日の報告会を終了します。報告書がある人は私に直接提出をお願いします」

 

 

(『これ、自分がこの場にいる意味あったか?』)

 

 

十蔵のその言葉に、この場にいたほぼ全員が同時にそんな事を思った。

自分はほぼ何も喋ってないのだから、そう思うのも仕方が無い。

 

 

教員達や警備員達は続々と会議室から退室し、一夏達は十蔵に報告書を提出しに行く。

その時、一夏は退出するとある人物に視線とハンドサインを送り、その人物は頷く事で応える。

 

 

その後、提出を終えた一夏達も会議室から退出する。

 

 

「終わったぁ!」

 

 

鈴が両手を上げ、身体をググっと伸ばす。

 

 

「この報告会、僕達の出席って必要だったのかな?」

 

 

「形だけでも必要だったんだ。それでは、私達は仕事があるから」

 

 

「はい、頑張って下さい」

 

 

ここで千冬と真耶は別れ職員室に向かう。

残った一夏達はやる事が無いので寮の自室に向かって行く。

 

 

「明日から授業ですわね」

 

 

「そうだね。今日までしっかり休んでおこう」

 

 

「それに、修学旅行本番は2週間後だからね。そこに影響が出たら嫌だし」

 

 

「早く帰ろう」

 

 

そう雑談をしながら歩いていく。

生徒寮組と教員寮組で別れるのだが、校舎内での道のりは一緒なので全員が並んでいる。

 

 

「あー、自販機で飲み物でも買って帰るか…先帰ってていいぞ」

 

 

「ん、分かった」

 

 

「一夏、夕ご飯は私達が作るから部屋に来てね」

 

 

「分かった!ありがとう!」

 

 

チェルシーの言葉を聞いた一夏は笑顔を浮かべると、上機嫌で自動販売機に向かって行った。

ここまで喜んでもらえると、作る側としても嬉しい。

チェルシーとクラリッサも上機嫌になりながら教員寮に向かって行く。

マドカ達は

 

 

(相変わらず甘ったるい……)

 

 

とジト目を向けるも、このバカップルに何を言っても無駄だと分かり切っているので誰も口には出さない。

そしてマドカ達は自分の部屋へと帰って行くのだった。

 

 

 

 

 

それと同時刻。

一夏は自動販売機ではなく、屋上に向かっていた。

誰かに話を聞かれる可能性が少なく、尚且つ誰かの許可もいらず簡単に行ける場所となれば屋上ぐらいしかないからだ。

IS学園の屋上は普段解放されているし、仮に解放されて無くても扉の前ならば滅多に人は来ないだろう。

 

 

「オルコス」

 

 

《どうした一夏》

 

 

その道中、一夏がオルコスに話し掛け、オルコスはSDで姿を現す。

 

 

「もしかしたら、煉獄騎士団にはコールじゃなくてゲートから直接来てもらう場面が来るかもしれない。伝えておいてくれ」

 

 

《了解した。念には念だ、声を掛けられるモンスターには片っ端から声を掛けておく》

 

 

「悪いな」

 

 

《気にするな》

 

 

ここでオルコスと別れ、一夏は引き続き屋上に向かい、オルコスはダークネスドラゴンWに向かう。

そこから暫くもしないうちに屋上に着いた一夏。

鍵が開いている事を確認し、扉を開ける。

こんなにも複雑な状況だというのに、何時もと変わらない清々しい、清々しすぎて逆に憎たらしく思う程の青空が広がっている中、もう既に一夏が呼び出した相手はいたようだ。

 

 

「オータムさん、お待たせしました」

 

 

「おう、一夏」

 

 

その相手…オータムの名前を呼びながら駆け寄ると、オータムも視線を一夏の方に移し、片手を軽く上げる事でそれに応える。

 

 

「なんか話すのも、何なら顔合わせるのも久しぶりですね。学園祭以来ですか?」

 

 

「あー、確かにそんな気がするな…顔を合わせる機会がねぇからな」

 

 

同じ学園にいるのだが、生徒と警備員という関係上頻繁に顔を合わせる事は無い。

それに、仲がいいのは間違い無いのだが、絶対に会いたいという関係でも無いので必然的にこういう時じゃないと会わないのだ。

 

 

「それで、何の用だ?告白じゃないだろ?」

 

 

「当たり前じゃないですか。俺にとってクラリッサとチェルシー以外恋愛対象じゃないですから。そんな事冗談でも言わないで下さい」

 

 

「お、おお…わ、悪かった。謝るからその表情止めてくれ」

 

 

一夏は口元は笑みの形を浮かべているのだが、目が笑っていない。

両目を開き、光の籠っていない目でオータムの事を見つめる。

その威圧感にオータムは1歩後ずさり、顔を引きつらせながらそう声を発する。

暫くの間一夏は微塵も表情を変えなかったが、こんな事をしている場合じゃないと気が付いたため、何時もの表情に戻る。

 

 

「本題に入りますが、オータムさんに聞いておきたい事が2つあるんですよ」

 

 

「聞いておきたい事?」

 

 

一夏は頷くと、早速1つ目の質問をする。

 

 

「オータムさん、あのデータの中で知ってることって無いですか?」

 

 

オータムは元亡国企業所属。

データ内容を知っている可能性がある。

マドカやスコールも同じなのだが、社長であるスコールは自分以上に忙しいのが分かっているのでききづらく、マドカには兄として重たい事を喋らせたくないという思いがあるので、消去法でオータムに聞く事にしたのだ。

 

 

だが、オータムは申し訳なさそうな表情を浮かべ後頭部をポリポリと掻く。

 

 

「わりぃ、全く分からん」

 

 

「あ、そうなんですね」

 

 

「ああ。そもそも俺達は実働部隊だったから、研究結果情報とかはなかなか入って来ねぇんだ」

 

 

「あー、なるほど。すみません、分かんない事聞いて」

 

 

「いやいや、元々入ってた奴に聞くのは当然の事だ。そんで?もう1個は?」

 

 

オータムに尋ねられた一夏は一度大きく息を吸うと、空を見上げる。

それにつられ、オータムも空を見上げる。

 

 

「今は平和ですが、またIS学園を舞台にした戦闘が起こってもおかしくありません。っていうか、起こる可能性の方が高いです」

 

 

「まぁ、そりゃそうだろうな」

 

 

「そうじゃなくても、これ以上戦闘が激しくなるんだったら明らかに戦闘力不足です。なので」

 

 

一夏はそう言うと空から視線をオータムに戻し、にやりと笑みを浮かべる。

 

 

「オータムさんにはもうそろそろ戦場に戻ってもらう必要が出て来そうです。覚悟は出来てますか?」

 

 

その言葉を聞いたオータムは両目を開き少しだけ驚いた表情を浮かべた後、交戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「当然。そんな覚悟、とっくのとうに出来てるぜ」

 

 

「それを聞いて安心しました。聞きたかったのはこれだけです。わざわざありがとうございました」

 

 

「気にすんな。じゃあ俺はそろそろ持ち場に戻るぜ」

 

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

オータムは若干上機嫌気味でその言葉を残し屋上から出て行った。

元々が戦闘狂気味のオータム。

戦場に戻る機会があるとなると、やはり嬉しいのだろう。

 

 

一夏はオータムの背中が見えなくなると、屋上のベンチに座り、再び空を見上げる。

相変わらず、空は青く、何処までも続いていそうなほど広い。

 

 

「……空が青いなぁ」

 

 

一夏は呆然とした表情でそう呟く。

その右手は心臓を押さえていた。

 

 

「ヤバいなぁ…嫌だなぁ…クラリッサ…チェルシー……」

 

 

一夏のその呟きは、広い空へと消えていくのだった。

 

 

 




そろそろ章が変わるかもしれない。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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