無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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大変お待たせしました!
さて、新章です!

今回もお楽しみください!


堕チル騎士、進ム魔道
宇宙での作戦


???

 

 

宇宙。

 

 

惑星や恒星が浮かぶ、無限に広がる空間。

 

 

そんな漆黒の空間に、一振りの剣が浮かんでいた。

 

 

その剣には、核も無く、もう既に存在する意味も無い。

 

 

このままデブリとなるか、大気圏で燃え、焼失するか1部が星に降り注がれるか。

 

 

そんな未来しかないと、剣の本来の所有者は思っていた。

 

 

 

 

 

 

剣を含む無機物には、本来意思など宿らない。

 

 

だが

 

 

伝説の名を冠する世界では、不滅の剣に意思がある。

 

 

闇竜の名を冠する世界では、終焉の魔竜が死に陥ったとき、その魂は終焉の魔剣へと姿を変える。

 

 

混沌から生み出されし超越者や降魔王剣にも、後に意思が宿った。

 

 

そして、無限の成層圏と呼ばれるパワードスーツのコアにも、意思が生まれた。

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

宇宙の剣に、意思が生まれる。

 

 

ドクン

 

 

組み込まれなかった核の代わりに

 

 

ドクン

 

 

細胞を埋め込まれ。

 

 

ドクン

 

 

失ったはずの存在理由は

 

 

ドクン

 

 

別のものによって与えられ。

 

 

ドクン

 

 

剣は輝く。

 

 

ドクン

 

 

与えられた細胞と存在理由に応えるために。

 

 

ドクン

 

 

剣は蠢く。

 

 

ドクン

 

 

芽生えた意思が、望んでいるから。

 

 

ドクン

 

 

剣自身の力を、存分に発揮する事を。

 

 

ドクン

 

 

その切っ先は、宇宙に浮かぶ青に向けられている。

 

 

ドクン

 

 

剣が振り下ろされるまで、猶予は、あとわずか……

 

 


 

 

三人称side

 

 

イギリス、オルコット家の館。

主人の娘であるセシリア、その従者であるチェルシーがIS学園に向かってから、少し寂しくなってしまったこの館。

だが、今現在は貴族家としての長い歴史を見ても1位、2位を争う程に慌ただしかった。

 

 

「ロバート様とロザリー様、随分と忙しそうでしたが、大丈夫でしょうか…?」

 

 

ここ数日の慌ただしさを間近で見ているエクシアは、自分の部屋でボソッとそう呟いた。

夏休みから時間が経ち、チェルシーがIS学園に向かった為抜けた穴を埋められるくらいには、メイドが板についてきたエクシア。

だが、エクシアは今現在屋敷が慌ただしい理由を聞かされてない。

 

 

それは、従者全体に説明をしていないのか、エクシアだけに説明をしていないのか。

エクシアにそれを確かめる術はない。

 

 

主人に直接訪ねる事はメイドとして憚られるし、他の従者に確認したとしても、その答えが真実かどうかは分からない。

遠巻きに聞こえてくる会話から、ロバートとロザリー、そして従者の中でも位が高い数人は知っているという事だけが、今のエクシアが持つ情報の全てだった。

 

 

「お姉様、お兄様…」

 

 

時刻は20時を回っており、空の色は宇宙と同じように暗い。

エクシアは呟きながら窓に近付き、空を見上げる。

右手を窓に、左手を心臓に当てる。

 

 

自身が敬愛する姉、その恋人にして兄のように慕っている人物に治してもらった心臓。

もし、あの時治療をしてもらえなかったら、もし、出会っていなかったら。

自分は、いったいどうなっていたのだろうか。

今幸せそうな姉は、どんな気持ちで生活していたのだろうか。

 

 

ふと1人になるとき、エクシアはそんな事を考える事があった。

そんな答えの無いIFの話を、ずっと繰り返していたからか。

エクシアは1度、ポロッとその疑問をロバートとロザリーの前で零してしまった事がある。

そして、案外おっちょこちょいな一面があるロザリーがそれに反応してしまった。

ロバートが慌てて止めた為、全てを聞く事は出来なかったが、それでもその1部は聞き取ることは出来た。

 

 

「エクス、カリバー……」

 

 

アーサー王伝説に登場する剣と同じ名前のもの。

それがなんなのかは、エクシアには分からない。

だが、このエクスカリバーと呼ばれるものが、一夏に出会わなかったら使用されていたものであり、わざわざ隠さなければいけない程の、何かを秘めたものであるというのは、いくら何でも察せられた。

 

 

「……どうか、全てが無事に終わりますように」

 

 

色んな人の無事を願い、祈る。

エクシアには、これくらいしか出来ない。

だが、その祈りは絶対に届くだろう。

 

 

そうして時間は過ぎていく……

 

 


 

 

修学旅行、そして参加できなかった一夏の為に開催された後夜祭から暫くたった、12月のある日の放課後。

1年生専用機持ち全員が食堂に集まり、飲み物を飲んだりスイーツを食べたりしながら雑談をしていた。

 

 

「こういう場面で一夏いるの珍しくない?」

 

 

「まぁ珍しいな。こういう集まりの時、俺は仕事しているか体調崩してるかのどっちかだし」

 

 

「いやいや、今もパソコン操作しながらなのに何言ってるのお兄ちゃん」

 

 

「これは仕事じゃないから良いの」

 

 

一夏はそう言うと、ブラックコーヒーを一口飲む。

シャルロットとマドカの言う通り、ノートPCを操作しつつではあるが、一夏が珍しくティータイムの時間に参加していた。

仕事をながら作業でするほど一夏は馬鹿では無いので、している作業は仕事ではないというのは本当だ。

だが、そうなってくると一夏が何の作業をしているのか気になって来るという訳で。

 

 

「じゃあ何してんのよ」

 

 

「おいおいおい、ナチュラルに画面を覗こうとするな」

 

 

鈴が画面を覗こうとしたが、一夏の反射神経には勝てなかった。

画面を見られる前に一夏はノートPCの画面を閉じる。

 

 

「あ、ちょっと!良いじゃない、画面見るくらい!」

 

 

「駄目だから今閉じたんだろうが」

 

 

なにを言ってるんだと言わんばかりの表情を浮かべながら鈴の事を見る一夏。

 

 

「じゃあ直接質問する。一夏、何をしているんだ?」

 

 

「んー…今、直ぐに必要なものではないけど、何時か絶対に必要になるものを書いてる」

 

 

ラウラの質問に、ふわっとした返答を返す一夏。

鈴達はまだ聞きたかったが、これ以上質問しても明確な答えが返ってくる事は無いと察したため、それ以上質問する事は無かった。

 

 

そこからまた雑談が再開する。

その内容を聞き流しながら、一夏はもう1度ブラックコーヒーを一口飲む。

再びノートPCを開き、作業を再開しようとする。

その際に、マドカ達に気付かれないように右手を心臓に当てる。

 

 

「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー」

 

 

目を閉じ、数度深呼吸する。

 

 

(頼む…今は来ないでくれよ…)

 

 

自分の身体に念押しするように心の中でそう呟いた一夏は、目を開き今度こそ作業を再開する。

そこから10分くらいたった時、

 

 

♪~~♪~~

 

 

唐突に誰かのスマホが連絡が来たことを示すように、音を鳴らす。

 

 

「すまん、俺だ」

 

 

「こういう場面って、大体お兄ちゃんな気がする」

 

 

「それは分かる」

 

 

マドカの言葉に苦笑しながら、一夏はPCを閉じてから食堂から出る。

その間に、画面に映る相手の名前を見て眉を顰める。

 

 

(珍しい…こんな時間に電話してくるのも、そもそも学園にいて電話してくるもの)

 

 

「もしもし?」

 

 

周囲に人が居ない所まで来た一夏は通話に出る。

 

 

『もしもし、すまないな、こんな時間に』

 

 

「別にそれは問題無いですけど、珍しいですね、学園にいるのに電話してくるなんて…織斑先生」

 

 

『ああ、緊急の連絡があってな』

 

 

電話の相手…千冬は一夏の言葉にそう肯定する。

 

 

「何故わざわざ電話を?校内放送なりなんなりで…」

 

 

『緊急の連絡ではあるのだがな。あまり大事だと他生徒に思わせたくないし、そもそも校舎内にいるとは限らないからな』

 

 

「なるほど、それでご用件は?」

 

 

『緊急会議だ。至急会議室まで来て欲しい』

 

 

「分かりました」

 

 

会議で何を話し合うかは、今聞いてもそこまで意味が無いと判断したのか一夏はそのまま肯定する。

 

 

「今、1年生の専用機持ち全員と一緒に食堂にいるんですが、連れて行った方が良いですかね?」

 

 

『それはちょうどいい。ああ、頼む』

 

 

「分かりました。では至急向かいます」

 

 

一夏は電話を切ると、そのまま早足で食堂に戻る。

雑談を続けていたマドカ達は、戻ってきた一夏に視線を向ける。

 

 

「一夏、お帰り」

 

 

「みんな、緊急会議だ。会議室に行くぞ」

 

 

『っ!』

 

 

簪の言葉に、一夏は簡潔にそう返す。

その瞬間に、全員の表情が一気に固いものに変わる。

ノートPCを置いていくわけには行かないので、一夏はブラックコーヒーのペットボトルと共に、回収する。

それを見たマドカ達も、緊急事態だと察し机の上を片付け始める。

片付けが終わり、一夏達は迅速に会議室に向かう。

 

 

(PC持ってって良いのかな?いや、食堂に置いていくわけには行かないから仕方が無いか)

 

 

一夏がそんな事を考えながら移動していると、ほどなく会議室にたどり着いた。

扉を3回ノックする。

 

 

「織斑一夏、織斑マドカ、シャルロット・デュノア、セシリア・オルコット、ラウラ・ボーデヴィッヒ、凰鈴音、更識簪、来ました」

 

 

『入って下さい』

 

 

入室許可を貰ったので、一夏が扉を開け、会議室へと入っていく。

会議室の中には、もう既に教師達や一部警備員、楯無を始めとする上級生の専用機持ちにクラリッサやチェルシーとほぼ全員が揃っていた。

 

 

「遅れて申し訳ありません」

 

 

「いえ、急な呼びかけだったんです。わざわざ来てくれてありがとうございます。席に座って下さい」

 

 

「はい」

 

 

十蔵に言われ、一夏達は開いている席に座る。

会議室での会議の場合、一夏は普段クラリッサとチェルシーに挟まれるように座るので、この席順には若干の違和感がある一夏なのだが、文句言えないのでそのまま大人しく座る。

一夏の隣はマドカ、その反対は千冬という織斑家が集合している席順になっているのは偶然である。

 

 

(本当に偶然か?織斑先生が端に座ってるのかなり珍しい気が…いや、俺に電話してたんだから端になったのか?分からん…まぁ、如何でも良いか……)

 

 

「それでは、緊急会議を開始したいと思います」

 

 

一夏が考えるのをやめたタイミングで、十蔵がそう声を発する。

その瞬間に、会議室内の空気が一瞬にしてピリッとしたものへと変わる。

 

 

「早速ですが、今回の会議の議題を説明させていただきます。みなさん、これをご覧ください」

 

 

(あ、学園長が説明するんだ。これもまた珍しい。今日は珍しい事しか起きないな)

 

 

一夏がそんな事を考えていると、とある映像が流れ始める。

その映像は、技術が進んだ今では少し違和感を覚える荒さだったが、その理由は直ぐに分かった。

 

 

まるで暗黒のような真っ黒な空間に、煌びやかに輝く星々。

そして画面中央に存在する、巨大な羽のようなソーラーパネルを持つ衛星。

そう、宇宙の映像である。

 

 

いくら技術が進んだとはいえ、やはり地上の映像と宇宙の映像では、解像度に差があってもおかしくはない。

それに、この映像が何時撮ったものなのかの説明を受けていないので、もしかしたら古いものなのかもしれない。

その為、全員すぐさま映像の違和感を思考から捨てた。

 

 

「この映像は?」

 

 

「約3ヶ月ほど前に撮影されたものです。そして、そこに映っているのは『エクスカリバー』と呼ばれているものです」

 

 

「「っ!」」

 

 

エクスカリバー。

その単語が出た瞬間にセシリアとチェルシーの表情がこわばるのを、一夏は見逃さなかった。

 

 

(チェルシー…セシリア…なにか知ってるのか?サラさんが反応してないあたり、もし知ってるならイギリス全体というより、オルコット家が関係してるっぽいな……)

 

 

一夏が眼を鋭くしながら考察をしていると、十蔵が続きを話し始める。

 

 

「今から2時間ほど前に、国際連合からこの映像が送られてきました。『IS学園で、エクスカリバーを破壊せよ』という指令付きで」

 

 

『…はぁっ!?』

 

 

十蔵の言葉に、会議中だという事を忘れ思わずそう叫んでしまう一夏達。

だが、それも仕方が無いほどその内容が衝撃的だった。

叫んでいないものなど、事前に知っていたであろう数人だけだった。

 

 

(あ、警備員の人達とか先生たちとかダリル姉とかも知らなかったんだ。まぁ、情報を小出しすると漏洩のリスクも高まるし、纏めて言った方が都合が良いか)

 

 

その中で1番早く冷静に戻った一夏は周囲の反応を見て、そんな事を考えていた。

 

 

宇宙にある衛星を破壊するのは、かなり難しい作業である。

ISがあるとはいえ、それを1つの学園に依頼するなど馬鹿げた話である。

しかも、今は亡国企業との戦闘が頻発しているこの状況で。

 

 

全員が落ち着いたのを確認し、一夏が右手を上げながら口を開く。

 

 

「何故破壊する必要があるのですか?」

 

 

その質問にが出る事は分かり切っていたように十蔵は頷くと、説明を開始する。

 

 

「エクスカリバーは、普通の衛星ではありません。攻撃機能を持っており、仮に地球に着弾した場合、周囲に甚大な被害を及ぼすという予測があります」

 

 

十蔵がそういうと同時に、映像が切り替わり、被害予測図が表示される。

その生々しくも現実的な図に、そこそこな人数が表情を歪める。

 

 

「次に進んで大丈夫ですか?」

 

 

そう尋ねながら、会議室内を見回す十蔵。

反応が無かったため、次に進める。

 

 

「このメイン攻撃ともいえる砲撃だけでなく、接近したものを追尾攻撃する機能もあります」

 

 

「なるほど…だからISを使用しないと破壊が難しく、訓練機も専用機持ちもそこそこ確保されているIS学園が対処を?」

 

 

「そういう事になりますね…」

 

 

一夏の言葉を肯定しながらも、十蔵はため息をつく。

理解は出来るが、納得など出来るはずが無いからだろう。

その感情はこの場に居る全員が、同じものを抱いていた。

 

 

「質問があります」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

クラリッサが右手を上げながら質問があると言い、十蔵が許可を出す。

その瞬間に会議室の中の視線が集まるが、特に気にせずクラリッサは声を発する。

 

 

「何故今になっての破壊なのですか?この映像を撮ったのが3ヶ月前なら、その時点でエクスカリバーへの接触は少なからず出来ていたはず。そこで連絡等はあったのですか?」

 

 

「破壊依頼や、映像、エクスカリバーの情報などはまさしく今日届きました。それ以前には、名前すら出て来ていなかったです。今になっての破壊依頼が来た理由は……申し訳ありませんが、分かりません」

 

 

十蔵は申し訳なさそうに眉をひそめながらそう言葉を発する。

十蔵が知らないとなると、他の誰も知らないだろう。

この場に居るほぼ全員が同じ事を同時に考えた。

このまま考えても仕方が無い、モヤモヤするが次の話題に映らないといけない。

そうして、話題を切り替えようと十蔵が言葉を発しようとした……その直前。

 

 

「1つ、よろしいでしょうか?」

 

 

「オルコットさん?どうかしましたか?」

 

 

セシリアが手を上げた。

全員の視線がセシリアに集まる。

 

 

「お嬢様…」

 

 

「大丈夫です、チェルシー。私たちが説明しなければ」

 

 

チェルシーが心配そうにセシリアに視線を向けるが、セシリアは真剣な表情でそう返す。

 

 

「何か知っているのですか?」

 

 

「はい。エクスカリバーは、元々は私たちオルコット家のものでしたから」

 

 

『えええっ!?』

 

 

セシリアの言葉に、会議室内で本日2度目の絶叫が響く。

先程直ぐに冷静に戻った一夏でさえ、今度はそこそこの間驚いた表情をしていた。

それでも、千冬とほぼ同時に冷静になっていたので、全体から見ると早い方である。

 

 

この会議室にいるメンバーに馬鹿は居ない。

セシリアの発言を、しっかりと聞き、正しく認識していた。

『元々は』『ものでした』

過去形。

つまり、今は違うという事。

 

 

ほどなくして全員が落ち着いた。

しっかりと説明して欲しい事は山のようにある。

だがしかし、何から聞いて良いのか分からない。

ともなれば選択肢は1つ。

 

 

「オルコットさん、続きをお願いしてもよろしいですか?」

 

 

「はい」

 

 

説明者に全投げである。

セシリアもそう来ることは予想していたので、すぐさま切り替え説明を開始する。

 

 

「エクスカリバーには、攻撃機能が搭載されていますが、この機能は自己防衛の為に過ぎないものでした。そして、エクスカリバーが開発されたのは、延命目的でした」

 

 

延命目的。

その言葉は、この場に居る殆どの人間の首を傾げさせるものだった。

そんな中、本人達以外の唯一の例外が声を発する。

 

 

「もしかして……エクシアか?」

 

 

「その通りですわ、一夏さん」

 

 

セシリア達以外にエクシアに会っていて、かつて心臓病を患っていた事を知っている人間は一夏しかいない。

千冬たちが『誰?』といった表情を浮かべるもの仕方が無い。

 

 

そこからセシリア達は説明し始めた。

チェルシーの妹であるエクシアが、かつては心臓病を患っており、エクスカリバーはエクシアを組み込むことで延命させる為の人工衛星だったこと。

その後エクシアの心臓病は完治したが、エクスカリバーはもうエクシアを取り込んだらすぐにでも発射できる状態で、今から中止させることが不可能な状態にまでなっていた為、核となるものを搭載しないまま打ち上げられた。

そこから暫くの間は問題も、存在理由もなく宇宙に佇んでいたのだが、ここ数日で状況は一変する。

 

 

エクスカリバーはオルコット家が何時でも状態等を確認出来、多少の制御が可能であったのだが、それが不可能になってしまったのだ。

制御は完全に操作を受け付けず、状態確認ももう既に行う事は出来ない。

最後に確認できた際には、エクスカリバーのメイン攻撃システムが、地球に向けて発射準備をしているという事が分かったのだが、その直後にアクセスが出来なくなってしまった。

 

 

核が存在していないので、本来起動するはずの無い攻撃能力。

オルコット家は慌ててイギリス政府に連絡を入れた。

 

 

「その後、様々な会議が急ピッチで行われた結果、巡り巡ってIS学園に依頼が来たという事です」

 

 

「なるほど……説明ありがとうございました」

 

 

「この責任は私たちオルコットにあります。処罰は何なりと受ける覚悟です」

 

 

セシリアは覚悟の決まっているといった表情でそう話す。

チェルシーもまた言葉にはしていないものの、セシリアと同じような表情を浮かべている。

 

 

「……いえ、IS学園からは処罰は与えません。責任は確かにオルコットにあるかもしれませんが、IS学園生セシリア・オルコットと、警備員チェルシー・ブランケット個人に責任はありませんから。何か異論は?」

 

 

十蔵のその言葉に反論するものは居なかった。

一夏は使える権力という権力の整理をいったん止め、セシリアに質問する。

 

 

「それで、そうなった原因は分かってるのか?」

 

 

「いえ、ハッキリとは分かってません。ですが、原因と思われるものに1つ、心当たりがあります。アクセスが弾かれる直前に、とあるテキストが表示されていたらしいんです」

 

 

「テキスト?」

 

 

「はい。『PHANTOM』と表示されていたようです」

 

 

『っ!!』

 

 

PHANTOM。

なんの情報も無ければ、更に謎が深まる単語。

だが、会議室にいる人間にとっては、その単語は原因を思い付かせるものだった。

何故なら、IS学園は何度もファントムと名のつく組織と何度も戦っているのだから。

 

 

「亡国企業、か……」

 

 

全員を代表して、一夏がそう呟く。

無論、これだけの情報で判断を確定させるのは危険な思考だが、可能性としては十分に高い。

だが、仮に亡国企業が犯人だったとして、どうやってエクスカリバーを乗っ取り、核が無い状態なのにも関わらず起動出来たのかが分からない。

考えても結論が出るものではないので、考える事を止め次の話題に移動する。

 

 

「それで学園長、エクスカリバーを破壊する理由は分かりましたが、その手段は?まさか、そこまで全部丸投げでは無いでしょう?」

 

 

千冬が手を上げながらそう質問する。

その瞬間に、全員の視線が十蔵に集まる。

 

 

宇宙にある衛星は、当然ながら地上でどうのこうのしたところで破壊出来ない。

破壊する為の特別な手段が必要だ。

 

 

そして、破壊の依頼をしてきたのは国連だ。

千冬の言う通り、何かしらの手段を提案している筈。

 

 

だが、全員の視線を受けた十蔵は気まずそうに視線を逸らす。

その反応を見て、直感的に悟った。

 

 

「まさか…そこも私達で考えろと?」

 

 

「はい……特に具体的な方法が示された訳でも無く、また使える武装等の提供も一切ありませんでした」

 

 

ふざけるな。

この場に居た全員が同時に思った事だろう。

そっちがお願いしてきて、何から何まで丸投げ等通常ありえない。

そのありえない事態が起こっているのだ。

憤りを感じるのも仕方が無い。

まだその依頼を受けると決定した訳でも無いのに。

 

 

そんな中、先程中断した思考を再開し、脳内で数々のシュミレーションを行う人物が1人。

 

 

(そこに行くまでならなんとかなるんだよな…後は……まぁ、()にいるから聞くか。それにしても、牙王さんから貰っておいて助かった…ありがとうございます、牙王さん、天武様)

 

 

「学園長、1つ、考えが」

 

 

右手を上げながらそう言葉を発した一夏に、全員の視線が集まる。

宇宙にあるものを破壊するという難関すぎるミッション。

それに使える考えがあると言われれば、注目してしまうのも仕方が無い。

 

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 

「はい。ですが、今持ってる情報だけだと最後まで行けるか如何か分からないので、取り敢えず詳しい人に聞こうと思います」

 

 

「詳しい人?」

 

 

一夏の言葉に、十蔵が首を捻る。

千冬たちも声には出さないものの、同じような表情を浮かべている。

そんな中、一夏は天井を見上げ声を発する。

 

 

「主任、バレてるんでさっさと降りてください」

 

 

「……アッハハハ!」

 

 

バァン!!

 

 

笑い声の直後、天井から1人の人間が降って来た。

頭に機械のウサミミを着けたその人物、篠ノ之束はニッコニコした笑顔を浮かべながら一夏の目の前に着地した。

 

 

「いやぁいやぁ、まさかバレるとはねぇ。いっくん、何処で分かった?」

 

 

「会議室に入った時からですよ。あんなに気配を駄々洩れにさせておいて、なんで逆に気付かれないと思ったんですか?」

 

 

「いやいやいや!えっ、全力で気配隠してたのに!?ちーちゃんも分からなかったみたいな顔してるよ!?」

 

 

「まさかぁ。織斑先生が分かって無かった訳…」

 

 

「いや、私でも分からなかった」

 

 

「本当ですか?2人とも鈍りましたね」

 

 

「そんな事無いと思うんだけどにゃあ?」

 

 

困惑したように眉を顰める束。

だが、一夏と千冬以外の全員は、もっと困惑したような、それでいて驚いたような表情を浮かべている。

篠ノ之束が急に現れたのなら、驚いて当然だろう。

 

 

会議室にいるほぼ全員から向けられる視線に、一夏は流石に束との会話を中断し、声を発する。

 

 

「この際ですから紹介します。うちの会社の開発担当主任、篠ノ之束です」

 

 

「ハローハロー、ご紹介にあずかりました、『PurgatoryKnights』開発主任の篠ノ之束だよ~!!」

 

 

一夏の言葉に、束はダブルピースをしながら笑顔で肩書を述べる。

その瞬間に会議室内にいるほぼ全員の表情がビシッと固まった。

 

 

「っ!耳塞げ!!」

 

 

この直後に来ると思われる行動を予知して、一夏が耳を塞ぎながらそう叫ぶ。

その声で、前々から束が『PurgatoryKnights』に関わっていると知っていた千冬達、そして当の束本人も耳を塞ぐ。

 

 

『えええええええええ!?!?』

 

 

一夏が杞憂した通り、会議室内に絶叫が響いた。

あの篠ノ之束が、『PurgatoryKnights』の開発主任。

驚かない訳が無い。

クラリッサやチェルシー、シャルロットが自分達もそんな反応したなぁ、となんとなく懐かしい感じになっている中、一夏が口を開く。

 

 

「驚くのは当然だと思いますけど、今はそんな事してる場合じゃ無いのでそうなんだ、と受け入れてください。ああ、それと他言無用でお願いします。いろいろ処理が面倒になるので」

 

 

聞きたい事は色々あるのだが、今は緊急会議中だ。

それに、一夏も詳しい人に聞く、という理由で束の名を呼んだのだ。

妨害をする訳にもいかないので、取り敢えず今は受け入れ、次を促すことにした。

 

 

(『絶対後で根掘り葉掘り聞いてやる』)

 

 

そんな事を考えながらの視線を全身に受けながらも、全く気にならない束が話題を変える。

 

 

「そんでいっくん、束さんに聞きたい事はいったい何だい?いっくんの為なら束さんなんだって答えるぜぃ!!」

 

 

「それじゃあ本題ですけど、主任、今のISって、宇宙に出ればあなたが元々構成していた通りに活動できますか?」

 

 

「え……?」

 

 

自信満々だった束の表情は、一夏の言葉を聞き呆気けに取られたようなものに変わる。

そして、千冬達も同じ様な表情も浮かべている。

一夏の発してる言葉が理解できなかった訳ではない。

それでいてなお、困惑してしまう。

束でさえ理解が追いついていないと察した一夏は、少し言葉を変えもう1度言葉を発する。

 

 

「だ~か~ら~!俺が開発中のアレを使ってみんなを宇宙に打ち上げるから、その先ISを使えばエクスカリバーの破壊は理論上可能か聞いてるんです!」

 

 

『っ!?』

 

 

一夏の言葉を聞いた束以外の全員は驚愕の表情を浮かべる。

人間を宇宙にあげられるものの開発が出来るのか、と。

ただ、マドカとシャルロットは

 

 

((えっ!?うちの会社そんなの造ってたっけ!?))

 

 

といったものだ。

 

 

そう、『PurgatoryKnights』はそんなもの開発していないどころか、企画会議すらされていない。

全て一夏の口から出まかせである。

 

 

(頼む束さん!俺の意図に気付いてくれ!!)

 

 

賭けだった。

でも、一夏は半場確信していた。

この世紀の大天災なら、自分の意図を正確に読み取ってくれると。

 

 

(『PurgatoryKnights』はそんなもの造って無い。でも、いっくんが適当な事をこんな大事な場面で言う訳が無い。つまりは、束さん達が知らないだけで、いっくんは私達を宇宙にあげるだけの何かを持ってるって事……束さんでもそう簡単に出来ない事をやってのける…アハハ、異世界って凄いなぁ!いつか束さんも行ってみたいなぁ~~)

 

 

「うん!アレを使えば行けるねぇ。束さんにISを調整させてもらえれば、宇宙でも活動できちゃうよ~。やっぱり束さんって天才!」

 

 

束はニコッとした笑顔で一夏の言葉を肯定する。

その反応で、一夏も口元に笑みを浮かべる。

 

 

「でもいっくん、いっくんがアレを使うって事は……」

 

 

「はい、俺は制御に全てのリソースを割かないといけないので、言い出しっぺのくせに宇宙には行けません。ですがまぁ、大丈夫でしょう。俺の姉は現役時代より身体能力は多少落ちてるかもしれませんが、専用機は現役時代より格段にハイスペックになった世界最強ですし」

 

 

「……あまり持ち上げるな」

 

 

一夏のその言葉に、件の最強こと千冬が若干気まずそうにそう呟く。

一夏はその呟きをスルーして

 

 

「それに」

 

 

と言葉を続け、視線をマドカ達専用機持ちに向ける。

 

 

「俺以上に優秀な専用機持ちはいっぱいいますから。まぁ、協力が得れればの話ですけど」

 

 

まるで挑発するかのように笑いながらそう言葉を発する一夏。

その視線と言葉が、専用機持ち達に火をつけた。

その雰囲気の変化は、やる気は、周囲の人間全員に伝わっていた。

 

 

「無論、作戦中のIS学園警備もあるので、全員が行けるわけでは無いですが」

 

 

その直後に出鼻を挫くような発言に、ガクッと肩を落とすも、そのやる気は失われていない。

一夏はにやりと口元を歪ませ、十蔵に視線を向け、改めて言葉を発する。

 

 

「以上の事から、織斑一夏が…いや、『PurgatoryKnights』が提案するのは、選出したメンバーを我々が宇宙に上げ、対処するというものです。此方から提供するのは、宇宙に上げる手段と篠ノ之束によるISの整備、あと……」

 

 

一夏は何かを思い出したかのような表情を浮かべると、改めて束に視線を向ける。

 

 

「主任、とっくのとうに社長とオータムさんの分の専用機完成してますよね?」

 

 

「そりゃあもうバッチリ!今までは稼働させるタイミングが無かっただけだからねぇ。夏みたいに強引にやるとまたいっくんぶっ倒れるし」

 

 

「……そこは言及しません」

 

 

束の視線から逸れるように顔をそむける一夏。

だが、会議室中の視線はこの2人ではなく、端の方に座っているオータムに向けられた。

 

 

「ん、ああ、オータムさんはうちの社長や主任の昔からの一緒に居たんで。ほぼ身内みたいなものなんですよ」

 

 

見かねた一夏がとてもザックリ状況説明をし、助け舟を出す。

オータムは視線で感謝を伝え、一夏は軽く手を動かしそれに応えてからさっきの言葉の続きを発する。

 

 

「えー、宇宙に上げる手段と、ISの整備と、追加の戦力の3つです」

 

 

「束さんも今回は協力するよぉ~。流石にね」

 

 

一夏、束は最後にそう締めくくる。

全員の視線は自然と十蔵に集中する。

 

 

「……」

 

 

突拍子もなかった依頼。

それをこなす為の一筋の光が見えた。

だからといって、そうやすやすと掴んでいい光ではない。

専用機持ち達への負担が大きすぎる。

しかも、この間亡国企業と大きくぶつかり合ったばかりなのだ。

IS学園の学園長として、生徒への負担はこれ以上大きくしたくない。

 

 

「学園長、やらせてください!私が行かなければ、誰が行くというのですか!!」

 

 

そんな中、セシリアが気合いの籠った表情をしながら十蔵に訴えかける。

それに続くように、他の専用機持ち達も十蔵に訴える。

 

 

「お嬢様が行くのなら、私も行きます。それがメイドというものです」

 

 

「私達も当然やるわ!セシリアが行くってのに、行かない訳無いじゃない!」

 

 

「お願いです学園長、やらせてください!」

 

 

その訴えを聞き、十蔵は深ぁ~く息を吐いた。

その後、ゆっくりと言葉を発する。

 

 

「……他に意見が無いのなら、織斑君の提案を採用します。意見は?」

 

 

その言葉に、他意見が出る事は無かった。

 

 

「……では、織斑君の提案を採用。作戦を開始します」

 

 

『はいっ!!』

 

 

十蔵の言葉に、全員が気合いに籠った言葉を発する。

 

 

その後、何時間にもわたり綿密な作戦会議を重ねた。

スコールや、傘下企業の面々にも連絡を取り、使用できる武装の調達も行う。

 

 

その結果、デュノア社で出来る限りの弾丸等の調達と束の整備を行い、イギリスにて打ち上げを行う事を決定。

宇宙に行くメンバーの選定も決定し、IS学園から出発するのが2日後に決まった。

 

 

いざ、聖剣を砕く時……

 

 

 




珍しくバディモンスターが出なかった。
まぁ、そんなときもある。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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