無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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本当にお待たせしました……
まさか約2ヶ月かかるとは……
投稿ペース戻せたらいいんだけどなぁ……

今回もお楽しみください!



下準備は大事です

三人称side

 

 

エクスカリバー破壊計画の会議から2日後。

今日はIS学園を出発する日である。

流れとしては、IS学園出発後、フランスに寄りデュノア社にてISの最終調整を行う。

その後イギリスへ移動し、宇宙へ打ち上げる、といったものだ。

 

 

そんな日の早朝。

一夏はIS学園の整備室にいた。

整備室には他にも、千冬を始めとした教師数人、警備員であるオータム、そして、『PurgatoryKnights』社長のスコールと、開発主任である束がいた。

 

 

こんなメンバーが集まっている理由は単純明快。

オータムとスコールの専用機の調整である。

 

 

作戦会議の際に、十蔵に提示した条件の1つ。

追加の戦力である。

本当だったらここでついでにマドカ達のISの調整もしたかったのだが、予備の弾薬などはデュノア社の方が潤沢にあるので、宇宙に行く組はそっちで調整した方が良いと判断したのだ。

 

 

「いぇい!これでスーちゃんとオーちゃんの専用機、最終調整完了、そして初期化と最適化完了だぜぃ!」

 

 

束がニッコニコの笑顔で両手でピースを浮かべながら、一夏達に自慢するようにそう言葉を発する。

だが、一夏はそんな束を潜影のようにスルーし、スコールとオータムに話し掛ける。

 

 

「社長、オータムさん、気分は如何ですか?」

 

 

「ちょっといっくん!?無視は酷いんじゃないかな!?」

 

 

「主任に構ってる場合じゃ無いので。どうしても相手して欲しいんだったら、飛行機か列車でしてあげますよ。流石に暇な時間はあるでしょうし」

 

 

実際にそんな時間があったら、クラリッサとチェルシーとイチャイチャしているので、束に構ってる時間が無いという事実は一夏の胸の中に仕舞っておこう。

 

 

「ふふふ、凄く調子が良いわ。心配いらないわよ、一夏」

 

 

「こっちもだ…ああ、テンションが上がって来たぁ!!」

 

 

スコールは妖艶に笑い、オータムは交戦的な笑みを浮かべる。

2人とも、元亡国企業の実働部隊員なのだ。

根幹に戦闘に対する喜びのようなものがあっても不思議では無い。

 

 

「ははは、戦闘は起こらない方が良いんですけどね。それじゃあ、IS解除してください。バイタルチェックなら俺でも出来ますので」

 

 

束に変わって仕切り始めた一夏。

束は何とも言えない表情を浮かべ、両手をわなわなしながら千冬に泣きつく。

 

 

「ちーちゃぁああああん!いっくんが、いっくんがぁああああ!!」

 

 

「一夏が死んだみたいな反応を止めろ」

 

 

「だってぇ!いっくんが無視するし!束さんの仕事取るし!」

 

 

「仕方が無い。束、お前の技術力が凄まじいのは分かっているが、ああやって指示を出したりするのは一夏の方が安心する。バイタルチェックもな」

 

 

「酷い!なんでさぁ!?」

 

 

「今までの自分の言動を思い出せ!そうなって当然だろう!」

 

 

「そうだそうだー」

 

 

千冬の怒声に便乗するように、一夏が遠くからヤジを飛ばす。

その言葉を聞き、束はぶわっと涙を流し始める。

 

 

「ふぇぇええええ!昔はあんなにちっちゃくて、可愛くて、『束お姉ちゃぁ~~ん!!』って感じで後ろをてくてく歩いていたいっくんがぁあああ!」

 

 

「何!?束、貴様一夏に『お姉ちゃん』と呼ばせていたのか!?」

 

 

「そうだよぉ。ちーちゃんは昔っから『千冬姉』だったから、『お姉ちゃん』とは呼ばれてないもんねぇ~」

 

 

「うぐっ!?」

 

 

「その点~?束さんは~?『束お姉ちゃん』と呼ばれていた。つまり~?束さんの方がいっくんのお姉ちゃんに相応しいのだ~~!!」

 

 

「貴様ぁああああ!!」

 

 

束と千冬のなんといったらいいのか良く分からない言い合いに、周囲の教員達は何と言って良いか分からずアワアワしている。

すると。

 

 

「うるせぇえええ!いい加減黙れこの駄姉と駄兎がぁ!!」

 

 

バァン!バァン!

 

 

「「痛っ!?」」

 

 

我慢の限界を迎えた一夏が、2人の頭を思いっ切り叩いた。

あの篠ノ之束と織斑千冬を同時に悶絶させる攻撃を放てるのは、世界広しと言えども一夏だけだろう。

 

 

「んなことしてる場合じゃ無いんだよ!とっとと準備しやがれ!それとも俺に手伝われないと準備すら出来ないのか!?」

 

 

「えっ!?いっくんが準備してくれるの!?」

 

 

「するか馬鹿が!」

 

 

一夏がもう1度攻撃しようとすると、千冬と束はそそくさと移動の準備をし始めた。

その光景を見て、一夏は思いっ切りため息をつく。

 

 

「はぁ…実力は一級品なんだが…こういう部分のだらしなさと、千冬姉は酒癖の悪さ、束さんはしっちゃかめっちゃかな言動さえ如何にかなれば、手放しで尊敬できる人達なんだがなぁ」

 

 

「あ、あはは…凄いですね織斑君。織斑先生と篠ノ之博士にああやっていえるなんて…」

 

 

「これくらいは普通ですよ。あの2人に長年振り回されていたらね」

 

 

呆然とした表情で呟いた教師に、苦笑を交えながらそう返答する。

その後、放置してしまったスコールとオータムの元へと戻る。

 

 

「すみません」

 

 

「気にしなくて良いわよ。それにしても、2人は相変わらずねぇ」

 

 

「そうなんですよ。全く成長が見られない」

 

 

「ははは、手厳しいな」

 

 

「今まで『忙しそうだし』と甘やかしてきたので、厳しくしないと」

 

 

一夏のその言葉に、『どっちが年上か分からない』といった表情を浮かべる2人。

それを無視し、一夏は改めて声を掛ける。

 

 

「それじゃあ、社長、オータムさん、不在の間、学園をよろしくお願いします。まぁ、俺は直ぐに帰って来るんですけど」

 

 

「ええ、任せなさい。一夏、あなたが守って来たものは、私達も守るから」

 

 

「ああ!見くびって貰っちゃ困るぜ!」

 

 

「はい、任せました。まぁ、交戦が起こらない方が良いに決まってるので、イチャイチャでもしておいてください」

 

 

一夏がサラッと言い放った一言に、スコールとオータムは面食らった表情を浮かべる。

 

 

「なっ!?一夏、それ何処で…!!」

 

 

「何処でも何も、IS学園に入学する直前くらいには気付いてましたよ?お2人が恋人同士な事くらい」

 

 

その指摘に、2人は珍しく恥ずかしそうに顔をそむける。

一夏は苦笑をしながら、言葉を続ける。

 

 

「まぁ、昨今同性のカップルなんて珍しく無いんですし、恥ずかしがることじゃないんじゃないですか?俺の方がよっぽど普通ではない恋愛してますし」

 

 

「ああ、そうだったわね。じゃあ、もうクヨクヨするのはやめようかしら。オータム?今夜は寝かせないわよ?」

 

 

「うぇっ!?お、お手柔らかに……」

 

 

何時も強気なオータムの珍しい姿に、一夏はニヤニヤとした笑みを浮かべる。

此処で、漸く千冬と束が準備を終えた。

 

 

「一夏、いってらっしゃい」

 

 

「頑張って来いよ!」

 

 

「はい。いってきます」

 

 

最後に3人は笑顔でそう言い合い、一夏は教師達にも挨拶をしてから、千冬と束を引き連れ外に。

スコールとオータム、そして教師達はアリーナに移動し、早速訓練を開始する。

 

 

「全く、どうして準備も時間がかかるんだ」

 

 

「ごめんごめん。束さんが道具散らかしちゃってたからさ」

 

 

「はぁ…クロエさんの方が絶対に優秀」

 

 

「うっ!?クーちゃんを褒められて嬉しい気持ちと、蔑まれて悔しい気持ちが…!」

 

 

「とっとと行くぞ。時間が無い」

 

 

「いっくんから言っておいてそれは無いんじゃないかな!?」

 

 

まだ校舎内なので、一夏は走ってはいない。

だが、かなりの速度の早歩きで移動していく為、千冬と束も慌てて後を付いて行く。

2人とも身体能力はチートレベルなので、引き離される事は無い。

だが、ある一定の距離を保ち、一夏に聞かれないレベルの小声で会話する。

 

 

「束。さっきの一夏の攻撃、分かったか?」

 

 

「ううん。全く。受けて初めて分かったよ」

 

 

「やはり、か……」

 

 

その反応で、千冬もまた一夏の攻撃を受けるまで、認識する事すら出来なかったと、束は理解した。

 

 

「ちーちゃんはやっぱり現役の時よりは鈍ってるし、束さんも最近身体動かしたりして無かったから、鈍ってる。それは間違いない。でも…」

 

 

「ああ。流石に自分に向けられている攻撃くらいは対応できる。事実として、私もお前も、一夏以外の人間からの攻撃だったら対応くらい出来る」

 

 

「って事は、やっぱり…」

 

 

「ここ最近、一夏の身体能力が更に上昇している、という事だろう」

 

 

2人の間に、沈黙が流れる。

後ろでそんな会話がされていると知らない一夏は、何も気にせずに歩いていく。

一夏が気付いていないのを確認してから、会話を続ける。

 

 

「…あの、学園祭の後から。異常な速度で身体能力が向上している」

 

 

「そうだねぇ。あのEOS…だっけ?欠陥まみれのポンコツを軽々動かしてたしねぇ」

 

 

「…それをどうやって、とは聞かん。だが、事実として、一夏の身体には、明らかに異常が起きてる」

 

 

「それはそうなんだよねぇ。ただ、学園祭の時に身体検査したけど、特に異常は見つからなかった」

 

 

「……束。一夏の事、十分に注意しておいてくれ」

 

 

「もちろん」

 

 

会話が終わったとき、もう既に校舎の外、尚且つマドカ達が集まっている場所の近くまで来ていた。

そこにいるのは、マドカ達フランスに向かう専用機メンバーたちに、一夏の荷物を預かっていたオルコス、そして見送りの十蔵だ。

 

 

「すまん、遅くなった」

 

 

《気にするな。まだ許容範囲内だ》

 

 

オルコスから自分の分の荷物を受け取りながら、会話をする一夏。

 

 

「それでは、全員揃いましたね」

 

 

それを確認してから、十蔵がそう口を開いた。

全員の視線が十蔵に集まり、続きを話し始める。

 

 

「今回のミッションは、かなりの危険が伴います。全員、誰も怪我したりすること無く、無事に帰って来てください」

 

 

『はい!』

 

 

「《了解》」

 

 

「分かっています」

 

 

十蔵のその声に、(正確には)学園関係者出ない束以外が気合いの籠った返事をする。

そうして、エクスカリバーを砕くため、一夏達は1歩踏み出したのだった。

 

 


 

 

時間は経ち、数時間後。

無事にフランスにたどり着いた一夏達は、列車に乗りデュノア社に向かっていた。

一車両を丸々貸し切っており、一夏達以外の乗客はいない。

ついでのように束は変装をしているのは、仕方が無い。

 

 

「…俺らだけしかいないのに、そこそこ人数がいるように感じるな」

 

 

日本で買った500㎖のペットボトルに入った乳酸菌飲料を飲み、PCで作業をしながら一夏が不意にそう呟いた。

だが、そう思ってしまうのも仕方が無い。

 

 

一夏、千冬、束、クラリッサ、チェルシー、マドカ、シャルロット、ラウラ、セシリア、鈴、簪、楯無、ダリル、フォルテ、サラの計15人。

当然修学旅行などよりは人数が少ないが、忘れてはいけないのは束を除く全員が専用機持ちであるという事。

そして、束は束で世界で唯一ISコアを造れる人物である為、この車両にいる全員で、何処かの国と全面戦争して簡単に勝利出来るだけの戦力が集まっているのだ。

 

 

因みに15人の内、起きているのは一夏と千冬と束とクラリッサとダリルの5人であり、残りは時差ボケに耐えられず眠ってしまった。

クラリッサとダリルもついさっき起きたばっかりなので、3人だけがずっと寝ていないのである。

 

 

「こんな重大ミッションなんだ。これくらいは必要だ」

 

 

「何回も話し合いをして決めた事だ。文句を言ってる訳じゃないさ」

 

 

千冬の言葉に、右手で目頭を押さえ、左手で右肩を叩きながら一夏がそう返答する。

 

 

「あははは、いっくんおじさんっぽ~い!」

 

 

「うるせえ黙れ」

 

 

「だからさぁ!何でいっくんは束さんにそんな辛辣なのかな!?」

 

 

「本当に黙って下さい。此処に篠ノ之束がいるってバレたらマズいんですから」

 

 

「……は~い」

 

 

なんとなくまだ納得出来ていなさそうだが、一夏の言う事も最もなので大人しく黙る束。

その光景を見て、ダリルがケラケラと笑い始める。

 

 

「ダッハハハ!スコール叔母さんの会社は面白れぇなぁ!代表になれなかったら、入るのも十分選択肢だな」

 

 

「叔母さん…確かにそうですし、親戚同士の呼び方にいちいちツッコミを入れたくないんですけど、社長が聞いたら怒りますよ?」

 

 

「お前が言わなきゃ問題ねぇよ」

 

 

「確かにそうですけど…ダリル姉はやっぱり大雑把だ」

 

 

一夏ははぁ、とため息をつき、ダリルはにやにやと笑みを浮かべる。

 

 

「それにしてもケイシー嬢、随分とテンションが高いですが、何かありましたか?」

 

 

そんなダリルに、クラリッサがそう声を掛ける。

2人は学園でそこまで関わりがある訳では無い(クラリッサが一夏とイチャイチャしてるのをダリルが見かけるか、ダリルがフォルテとイチャイチャしているのをクラリッサが見かけるかくらいな)のだが、それでも何回か会話をした事はあるので、こういう質問くらいは出来る間柄だ。

 

 

「まぁ、こういう場面、俺とフォルテとサラは居ない事が多かったからな!テンションも上がるってもんだ!」

 

 

「ああ、確かに。ダリル姉達は基本IS学園でお留守番の事の方が多いですもんね」

 

 

ダリルの言葉に一夏はそう返答すると、再び乳酸菌飲料を飲み、PCを操作し始める。

 

 

「ところで一夏、さっきから何をしているんだ?」

 

 

「ん~~?なんだと思う?」

 

 

クラリッサの質問に、一夏ははぐらかすような返答をする。

 

 

「それが分かってたら、こんな質問してないぞ?」

 

 

少しだけ拗ねた様子で、上目遣いになりながら改めて尋ねるクラリッサ。

その攻撃をモロに喰らった一夏は、ダメージを受けたかのように胸に手を上げ、天を仰ぐ。

暫くの間そうしていたが、やがてポリポリと頬を掻きながら苦笑を浮かべる。

 

 

「ごめん、今は喋れない事なんだ。大事な事だから、さ」

 

 

「そうか…すまない、無理に聞こうとして」

 

 

「いいよ、誤魔化そうとした俺も悪いし。だからさ」

 

 

一夏はそこまで言うと身体を前に出し、

 

ちゅっ

 

っと、クラリッサの額にキスを落とす。

 

 

「今日はこれくらいで勘弁してくれ」

 

 

そして、ニコッと笑顔を浮かべる。

それを見たクラリッサは、キスをされた場所を触り一瞬恥ずかしそうな表情を浮かべるも、直ぐに優しく微笑む。

 

 

「ああ、そうしておく」

 

 

「……一夏、クラリッサ、あまり私達の前でイチャイチャするんじゃない」

 

 

「あ、そろそろ着くな。チェルシー達起こさないと」

 

 

「無視をするな!」

 

 

「ちーちゃん、それが束さんの気持ちだよ…」

 

 

「くっ、これが…」

 

 

千冬と束がなんかやってるのを横目に見ながら、一夏とクラリッサとダリルは未だに寝ているメンバーを起こす事にした。

 

 

「マドカ、シャル、起きろ。イギリスついてからも仮眠の時間あるから」

 

 

「隊長、起きてください、隊長」

 

 

「ほら、フォルテ、そろそろ着くぞ。起きろって」

 

 

ゆさゆさと身体をゆすり、時には頬をぺちぺちしながら起こしていく。

そんな中、一夏はチェルシーを起こすことを少し躊躇ってしまった。

理由は単純。

チェルシーの寝顔があまりにも綺麗で、幸せそうだったから起こす気が起きないからだ。

 

 

「んぅ…いち、かぁ…」

 

 

「なんだ、俺の彼女可愛すぎるぞ」

 

 

寝言で自分の名前を呼ばれ、一夏は思わず思った事をそのまま口から出した。

願わくば、ずっとこうして眺めていたいが、そんな訳にもいかないので、覚悟を決め起こす。

 

 

「チェルシー?起きて起きて」

 

 

「ん、うぅ…?一夏…?」

 

 

「うん、おはよう、チェルシー」

 

 

「おはよう…」

 

 

寝起きが故、まだ頭も呂律も回っていないチェルシーに、一夏は優しく微笑む。

 

ちゅっ

 

額にキスをしてから、一夏は自分の席に戻る。

チェルシーは暫くボーッとしていたが、メイド故朝には強く、今しがた一夏にされた行為を直ぐに理解した。

 

 

「っ!?///」

 

 

一瞬にして顔を真っ赤にする。

 

 

「さて、みんな。寝起きの所悪いが、もう直ぐ着く。自分の荷物を纏めてくれ」

 

 

「一夏、それは私の仕事…」

 

 

「どっちでも良いでしょう?それに、俺の事名前で呼んでる時点で」

 

 

「くっ…駄目だ、舌戦では一夏にどうしても勝てない…!昔はよく勝っていたのに……!」

 

 

「人間は成長するんだよ。あんたらもとっとと準備しろ」

 

 

一夏に言われ、千冬と束も大人しく準備を始める。

それを見て、はぁ、とため息をついてから自分も荷物を纏め始める。

 

 

そうして、降車予定でおり、そのままデュノア社へと向かう。

今は『PurgatoryKnights』傘下の企業だが、元はIS世界シェア3位の大手企業。

アクセスは非常にしやすい。

その為、最寄り駅や道中には大量に人が居る。

 

 

「あれ…ブリュンヒルデの千冬様…!?」

 

 

「えっ!?本物!?」

 

 

「それに、あれは織斑一夏!?」

 

 

「なんでフランスに居るの!?」

 

 

などと、周囲が騒ぎ始める。

千冬や一夏がかなりのネームバリューを持っているのは全員理解していた。

だが、まさかここまでとは。

マドカ達は周囲の勢いに若干引き、騒がれている本人である一夏と千冬は若干イライラしたような表情を浮かべる。

 

 

だが、これでいいのだ。

千冬と一夏がここまで注目されれば、変装している束に注目が集まる事は無い。

束が此処にいるとバレた場合、騒がれるだけではすまない。

高確率で作戦が中断される事態になり、最悪『PurgatoryKnights』と束に繋がりがあるという事までバレてしまう。

その為、一夏と千冬に注目を集める為にわざと堂々と歩いているのだ。

 

 

その後、特にトラブルもなくデュノア社に到着した。

 

 

「此処が…」

 

 

「うん、デュノア社。懐かしいな…」

 

 

「ああ、シャルさんは夏に1回帰ってますし、そもそも学園に来る前は此処に居ましたもんね」

 

 

「驚いてる場合でも、思い出を振り返っている場合でも無い。行くぞ」

 

 

一夏がそのまま先頭で社内へ入っていき、それに続きマドカ達も入っていく。

ロビーは広く、綺麗。

だが、マドカ達は少しだけ違和感を感じた。

何故なら、必要最低限の警備員以外、人が1人もいないからだ。

 

 

そんな中、一夏は奥へと続く通路の前に立っている警備員に、自身の『PurgatoryKnights』の社員証を見せ、

 

 

「話は通っているな?」

 

 

その一言だけ伝え、奥へと向かう。

一夏の大物感に、社内での一夏の権力を詳しく知っているマドカとシャルロット以外は面食らった表情を浮かべるも、置いていかれたらマズいので慌てて後を付いて行く。

 

 

「さてシャル」

 

 

「うん?どうしたの一夏」

 

 

「特別整備室は何処だったっけ?」

 

 

『……』

 

 

さっきまで自信満々に歩いていた一夏だが、その実デュノア社に来るのは初めてだ。

待ち合わせの場所の名前は覚えているし、大まかな場所は事前に説明を受けているものの、詳しい場所は知っている人間に聞いた方が早い。

 

 

「えっと…2つ先を左に曲がった後に、3つ先を右に曲がって、後はそのまま真っ直ぐだけど…特別整備室って、僕でも1人じゃ入れないよ?」

 

 

「大丈夫大丈夫。行くぞ」

 

 

再び歩き出す一夏。

シャルロットは首を捻りながらも付いて行く。

 

 

「…なぁ、チェルシー」

 

 

「どうかしたの?」

 

 

そんな2人の後を追う中、不意にクラリッサがチェルシーに話し掛けた。

チェルシーが少しだけ視線をクラリッサの方に向けると、それを確認したクラリッサが続きを話す。

 

 

「一夏、何か隠してるように感じないか?」

 

 

チェルシーは一瞬だけ驚いた表情を浮かべた後、すぐに頷いた。

 

 

「やっぱり、クラリッサも感じてたのね」

 

 

「ああ。本当に何か隠してるのかは分からないし、隠していたとしてもそれがなにかすら検討もつかないがな」

 

 

2人は感じ取っていた。

ここ最近、一夏が自分達に何かを隠しているというを。

 

 

「だけど、一夏が私達に何か不利益な事を考えている訳が無い。だから……」

 

 

「ああ。多分、個人的なものなのだろうな……」

 

 

その言葉の後、2人の表情が少しだけ暗いものになる。

一夏が2人を大事にしているのと同じかそれ以上に、2人は一夏の事を大事にしている。

だからこそ、自分達に何か話してくれないのか不満なのだ。

 

 

「一夏に無理に聞いても、多分話してくれない。だから、一夏に関して気付いた事があったら、報告し合おう」

 

 

「ええ。2人で一夏の事を、支えていきましょう」

 

 

クラリッサとチェルシーがそう頷き合った、丁度そのタイミングで特別整備室へと辿り着いた。

特別整備室の扉は大きく、厳重でそう簡単に開きそうもない。

扉の隣の壁に、セキュリティ解除用の操作盤があり、指紋認証や虹彩認証、セキュリティカードを読み取る場所やマイクがある。

 

 

「やっぱり、此処はセキュリティが厳重…無理矢理開けられる重量じゃないし」

 

 

「そもそも無理矢理開けん」

 

 

シャルロットの呟きに一夏がそう反応すると、そのまま操作盤の前に立つ。

自身の社員証を操作盤に挿入し、指紋読み取り版に左の人差し指を乗せ、顔をカメラに近付けると

 

 

「『PurgatoryKnights』所属IS操縦者纏め役、織斑一夏」

 

 

マイクに向かって自身の役職と名前を述べる。

すると、ピーという電子音の後

 

 

『LOOK OPEN』

 

 

その音声と共に巨大な扉が自動でゆっくりと開き始める。

シャルロットでも1人で入れない場所へ入る権利を一夏が持っているという事に、元々知っていた束を除き、シャルロット達は驚いた表情を浮かべ一夏の事を見る。

 

 

男性IS操縦者()は社内においてそこそこ重要人物らしいからな。『PurgatoryKnights』関連の全施設に入る権利を貰ったんだよ」

 

 

一夏の説明を聞き、納得したと同時

 

(重要度が『そこそこ』な訳無いだろ)

 

と心の中でツッコミを全員がした。

 

 

扉が完全に開き、特別整備室の中が見えるようになる。

 

 

ズラッと並んだ装備に、工具。

普段だったらISの研究や開発の為に沢山の人間が作業しているであろうこの場所は、完全に今日の為に模様替えが行われていた。

 

 

そして、装備の近くに立っている男女。

デュノア社社長のアルベールと社長夫人のロゼンタだ。

 

 

2人は当然扉が開いている事に気付いており、一夏達に向かって軽く手を振る。

 

 

「今日はすまなかったな。詳しい説明もしないで、わざわざ特別整備室を開けさせて」

 

 

「いえいえ、丁度特別整備室を使用していて作っていたものが完成した直後なので、都合が良かったです」

 

 

一夏がため口、アルベールの方が敬語で喋っている事に、周囲は驚きを隠せない。

特に、学園祭では一夏の方が敬語だったのを見ている人達は。

学園祭の時は何方もプライベートだったので、年下の一夏が敬語だったのだが、今回は(一応)仕事。

子会社であるデュノアの社長と親会社で取締役と同じくらいの社内権限を持つ一夏では、一夏の方が立場が上なのだ(少なくとも『PurgatoryKnights』では)。

 

 

「それにしても、本当に誰も整備員を用意しなくて良かったのですか?」

 

 

「ああ、問題無い。寧ろ人が居た方が邪魔だ」

 

 

「ほう、それは何故です?」

 

 

「だって、今日此処を使うのはISの開発者だからな」

 

 

一夏はそう言いながら、変装をし続けている束に視線を向ける。

それに一瞬遅れる形でアルベール達が視線を向けると、束はバサッと音を立て、無駄にポーズを決めながら変装を解いた。

 

 

「そうっ!今日此処で作業をするのは、この篠ノ之束さんなのだ!!」

 

 

急な束の出現に、アルベールとロゼンタが驚いた表情を浮かべる。

 

 

「あんまり格好良くないですよ」

 

 

「えっ!?」

 

 

「ああ、そこまでポーズを取るほどではない」

 

 

「えええええっ!?」

 

 

そのセリフとポーズを一夏と千冬に否定され、どうしたら良いのか分からないと言った表情を浮かべる束。

そんな束をクラリッサとチェルシーが宥めるのを横目に見ながら、一夏とアルベールは会話を再開する。

 

 

「それで、これらが私達が提供できるものです」

 

 

「どれどれ…?」

 

 

一夏はアルベールから書類を受け取る。

それに記載されているのは、今まさに横に置いてある武装の詳細だ。

どんな武装があるのか、弾薬などの量はどれくらいか、など。

一目見ただけでは流石に分からない事が書いてある。

 

 

「う~ん…まだ拡張領域に空きがあるな…」

 

 

そこそこ大量に武装があるが、専用機の数も多い。

全員に均等に配ったら、拡張領域に空きが出る。

とはいえ、これ以上無駄に武装を入れても無駄なので、限界まで入れるとしたら弾丸かエネルギーパックになる。

 

 

「もっと弾丸とエネルギーパックが欲しい。在庫はあるだろ?」

 

 

「あ、あるにはありますけど…しかし……」

 

 

「ああ、分かっている。これ以上無料(タダ)では流石に無理なことくらいはな」

 

 

一夏はそう言うと、左の人差し指、中指、薬指を立てる。

 

 

「3億。3億までだったら出せる。どれくらい弾丸とエネルギーパックを追加できる?」

 

 

『3億ッ!?』

 

 

一夏の発言に、流石の束も含めた全員が驚いた声を発する。

 

 

「…因みに、単位は?」

 

 

「フランスに居るのにユーロ以外で話すことあるか?」

 

 

頬に冷や汗を流しながら尋ねるアルベールに、さも当然と言わんばかりに返す一夏。

1ユーロは(作者執筆時点で)約140円ほど。

つまり、単純計算で3億ユーロは420億円である。

その事実を認識した瞬間、金額の多さに慣れていない学生たちは思わずフラッとなり、その他大人組は苦笑いを浮かべる。

 

 

「……分かりました。その範囲で出せるだけの弾薬とエネルギーパックを追加します。直ぐに貯蔵庫から持ってこさせますので」

 

 

「ああ、頼む」

 

 

アルベールは端末を取り出し、部下に連絡を入れる。

一夏は、未だ驚きで固まっているマドカ達に視線を向け、

 

 

「いいか、マドカにシャル、それにみんなも。権力ってのはな、使う場面で使ってこその権力なんだよ」

 

 

《顔がゲスいぞ、一夏》

 

 

「まぁ、偶にはいいじゃん。っていうか、急に出て来るな」

 

 

急に胸ポケットから出て来たオルコスに突っ込む一夏。

オルコスはそれを無視して束に話し掛ける。

 

 

《時間は有限だ。弾薬の追加が来るまで作業は出来ないが、準備はしろ》

 

 

「分かってるって!それじゃあ、束さんに専用機を渡してちょーだい!」

 

 

束のその言葉に従い、マドカ達は自身の専用機の待機形態を渡していく。

 

 

「あ、そうだ。あなた、シャルロットにアレを……」

 

 

「む、そうだな。確かにタイミング的にはちょうどいいかもしれん」

 

 

『ん?』

 

 

最後にシャルロットが束に渡そうとした直前、ロゼンタとアルベールが突如としてそのような会話をした。

その瞬間に、全員が動きを中断し2人の方向を向く。

 

 

「えっと…お父さん?お母さん?それっていったい…」

 

 

「ああ、先程話したと思うが、此処ではもともととあるものを作っていたんだ。それが…」

 

 

「第三世代型の、ISなんです」

 

 

「ああ、そう言えば確かに研究開発費おろしてたな。資金足りてたか?」

 

 

「それはもう十分に。そして、それがつい最近完成したのです」

 

 

そこまでの説明を聞き、皆が直感的に理解した。

その専用機は、シャルロットを操縦者と想定して造られた事を。

 

 

「まぁ、試験パイロットを選ぶのはこっちに任せてある。選んだら連絡が来るようにはなってるがな。シャルがパイロット想定だったら、まだ碌にデータも取ってないし、だから俺にも完成の連絡が来てなかったのか」

 

 

一夏がうんうんと1人で納得している側で、シャルロットがおずおずと2人に質問をする。

 

 

「えっと…それってつまり…」

 

 

「ああ」

 

 

シャルロットのその言葉に頷いたアルベールは、特別整備室端のコンテナに移動し、そのままパネルを操作。

コンテナを開ける。

 

 

「これが、シャルロットの為の新しい専用機、コスモスだ」

 

 

「コスモス…」

 

 

シャルロットは、呆然とそう呟いた。

世界ISシェア(元)3位で、世界で広く用いられているラファール・リヴァイヴの開発元(現在諸々の権利は『PurgatoryKnights』に移った)が作った第三世代型。

篠ノ之束製の次くらいに信頼に値する枕詞である。

 

 

「カッコイイっスね……」

 

 

「うん。かなり洗礼されてる…」

 

 

フォルテやサラがそう呟く。

マドカ達も声には出していないものの、同じく感心したような表情を浮かべていた。

そんな中、当事者のシャルロットは、コスモスに見入っていた。

こんな大事な作戦前に、不意に与えられた新しい専用機。

しかも、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは第二世代型なので、これ以上の強化は武装追加くらいしかなかった中で、だ。

見入らないわけが無い。

 

 

だが、その反面シャルロットはこのコスモスを使うつもりにはあまりなれなかった。

ずっとともに戦ってきた、唯一無二の相棒。

それを手放すというのは、そう簡単に出来るものではない。

シャルロットのその表情から、一夏とオルコスはその事を簡単に見抜いていた。

 

 

「フム…新しい戦力は非常に嬉しいが…慣れてないものを使うのは、些か不安だな」

 

 

「はい。慣れてない最新式より、慣れている旧式の方が圧倒的に扱いやすいですし、これからの作戦を考えるとシャルロットちゃんはリヴァイヴを使ってもらった方が確実ですね」

 

 

千冬が顎に手を置きながらそう呟き、楯無もそれに同調する。

その瞬間に、アルベールが年甲斐もなく残念そうな表情を浮かべたのを見て、一夏が苦笑をする。

 

 

「俺としてもそれは同意見だが、貰っておける戦力は貰っておいて損はない。主任も流石にこの数のIS を調整するには1個のISの初期化と最適化と同じくらいは掛かるから…」

 

 

「いや!束さんならもっと早くでき《だとしても、貴様の場合技術力は信じられるが倫理観が信じられん。しっかりと時間を掛けろ》は、は~~い……」

 

 

束の言葉に、オルコスがギロリと視線を向けながらそういう。

一夏としても、束の技術力を疑っている訳では無いが、この後行くのは紛れもなく宇宙なのだ。

そして、向かうのは大切な恋人や家族、友人達。

安全安心を心掛けた作業をして欲しいのだ。

 

 

「話がそれたな。シャル、受け取るだけ受け取っとけ。使うか使わないかはお前次第だ」

 

 

「一夏…うん、そうするよ」

 

 

一夏の言葉に、シャルロットは笑顔でそう返答する。

そして、話が始まってからずっと持っているままだったリヴァイヴの待機形態を握りしめながら、コスモスに近付いていく。

笑顔でピタッとコスモスに触れる。

 

 

その瞬間。

 

 

シィ―――――――ン

 

 

『っ!?!?』

 

 

リヴァイヴとコスモスが、まるで共鳴するように光りだした。

 

 

「これはっ!?」

 

 

「いったい、何が!?」

 

 

「束ぇ!説明しろぉ!!」

 

 

「わ、分かんない!急に、こんな事!束さんも初めて見る!」

 

 

光がドンドンと眩くなっていき、視界が奪われていく。

全員が目を瞑ったり、顔を覆ったりしている。

それにはもれなく一夏も含まれているのだが、一夏は唯一覆った腕の下で、驚きや困惑といった表情を浮かべていなかった。

何故なら。

 

 

[初めまして、先輩。いや、お姉さん?]

 

 

[どっちでも良いでしょ]

 

 

そんな、初めて聞く2人分の声が聞こえて来たからだ。

 

 

(これは…リヴァイヴとコスモスの声?まさか、だってISに触れてないのに聞こえる訳が…いや、現に聞こえている…う、ぐぅっ!?)

 

 

一夏は頭を押さえ、その場に膝をついてしまう。

しかし、すぐそばにいるオルコスでさえ、気が付かない。

 

 

《マスター?マスター!》

 

 

《マスター!しっかりしてください!!》

 

 

すぐさま白式と白騎士がポケットから出て来て、一夏の身体をゆする。

だが、2人の声は一夏に届かない。

一夏に届いているのは、謎の声の方だった。

 

 

[まぁ、それはそうですね。じゃあ先輩、私の考えている事、分かってますよね?]

 

 

[勿論。それで、本当に良いの?私と違って、あなた1回も稼働して無いじゃない]

 

 

[そうですけど。私のマスターとなる人になるためには、こうした方が良いでしょう]

 

 

[いい心掛けね。ただ、私のマスター、大人しそうに見えて結構貪欲よ?]

 

 

[どんとこいです]

 

 

[フフフフ。じゃあ、これからよろしくね]

 

 

[はい、よろしくお願いします]

 

 

その会話の終了後、より一層光が眩くなる。

それは、目を瞑っていたり覆っていたとしても分かるほどの光量だった。

 

 

膝をついていた一夏が倒れ込んだ丁度その時、光が引いていく。

暫くして、漸く視界が晴れると、一夏と白式と白騎士、そして漸く気が付いたオルコス以外の視線は、シャルロットに集まっていた。

シャルロットは、いつの間にかその身にISを展開していたのだ。

だが、そのISは、普段のリヴァイヴでも、ましてやコスモスでも無かった。

 

 

「えっ……」

 

 

「これは……?」

 

 

全員が困惑の表情を浮かべながら、そう言葉を発する。

どことなくリヴァイヴとコスモスを掛け合わせ、進化させたようなデザイン。

シャルロット自身も困惑したよう表情を浮かべさせながらも、目の前にディスプレイに映っている、この機体の名前に視線を釘づけていた。

 

 

「リィン・カーネーション……」

 

 

「……これはいったい、どういう事だ?」

 

 

千冬はそう言いながら、束に視線を向ける。

それに伴い、一夏達以外の他全員の視線も束に向けられるも、束はブンブンと勢いよく首を横に振る。

 

 

「知らない知らない!?えっ!?シャルちゃんそれ何やったの!?」

 

 

「わ、分かんないです!コスモスに触ったら、急にこんな…!」

 

 

ISの開発者、そしてISを展開している本人が混乱しているのだ。

マドカ達は混乱を通り越して思考をいったん停止させてしまっていた。

 

 

「う、ぐぅ…」

 

 

《一夏!無茶するな!》

 

 

《マスター!しっかり!》

 

 

《マスター、大丈夫ですか!?掴まって下さい!》

 

 

『っ!?』

 

 

白騎士とオルコスに支えられ、一夏が苦悶の声を漏らしながらフラフラと立ち上がる。

ここにきて、漸く一夏がぶっ倒れていた事に周囲が気が付いた。

 

 

「「一夏!!」」

 

 

クラリッサとチェルシーが顔面蒼白で慌てて一夏の元に駆け付ける。

オルコスと白騎士よりも体格が一夏に近くよりしっかりと支えられる為、2人と交代する。

 

 

「はぁ、はぁ……如何やら、それは、リヴァイヴとコスモスがくっついたみたい、だな……」

 

 

焦点が定まっていないような目でシャルロットの事を見ながらそう言葉を発する。

 

 

「リヴァイヴとコスモスが…?」

 

 

「確かにな。現にコスモスが無くなっている。そう考えた方が自然だろうな」

 

 

シャルロットが信じられないと言った表情でそう呟き、千冬が一夏の考察を肯定する。

 

 

「いったいなんで、どうやって……」

 

 

「う~ん…それは今は関係ないかな?時間が無いし、こうなっちゃってる訳だし」

 

 

「ああ…しゅ、にん。時間かかって、いいんで、しっかりと、調整、お願いしますよ」

 

 

「勿論!っていうか、そんな場合じゃないって!いっくんどうしたの!?」

 

 

「急に頭痛が……」

 

 

「ロゼンタ!役員用の休憩室に案内をしてくれ!」

 

 

「ええ!付いて来て下さい!」

 

 

「一夏、自分で歩けるか!?」

 

 

「ああ、そこまで問題は…うっ!?」

 

 

「一夏!2人でしっかり支えた方が良い!」

 

 

フラフラと見ててヒヤヒヤする歩き方の一夏を、クラリッサとチェルシーが両脇からがっしりと支え、もはや一夏本人に歩かせないようにしながらロゼンタに誘導され休憩室へと向かう。

オルコス達も心配な為、カードに戻って胸ポケットに入っていく。

 

 

《一夏の事は心配だが、あの甘々カップルの事だ。互いの看病くらい朝飯前だろう。今はこっちだ》

 

 

「うん、そうだね。じゃあ、みんなはいったん休憩!シャルちゃんだけは付き合ってね!」

 

 

「はい!」

 

 

丁度そのタイミングで、追加の弾薬とエネルギーパックが来た。

束は全ての武装の状態を確認した後に、早速行動に移すことにした。

その圧巻の作業スピードに、マドカ達はしばし目を奪われる事になったが、この後の事も考え束の言う通りしっかりと休憩する事にした。

一夏の事を頭の半分ほどで心配しながらも、この後の事を考えると今は身体を休める事こそが一夏の為になるので、社員食堂に移動し、しばしのまったりタイムとなるのだった。

 

 


 

 

3時間後。

束が全ての調整を終えた為、マドカ達は再びアルベール同伴のもと特別整備室へと戻ってきた。

 

 

「確かに、何時ものお前よりも時間を掛けていたな」

 

 

「いっくん達にも釘刺されたし、シャルちゃんのリィン・カーネーションという懸念事項もあったからねぇ。流石の束さんでも時間は掛かっちゃうさ!」

 

 

「それでも十分早いと思うのは私だけか?」

 

 

「いや、この場の束以外の全員がそう思っているぞ」

 

 

『うんうん』

 

 

「たっはー、流石は束さんって感じだねぇ」

 

 

周囲からの反応に、何故か照れたような反応を見せる束。

 

 

「褒めてる訳じゃ無いぞ?」

 

 

「えっ!?そんなぁ!?」

 

 

千冬の言葉に、本気でショックを受けたような表情を浮かべる。

その反応にマドカ達が思わず苦笑を浮かべる。

 

 

「それじゃあ、取り敢えずIS返すね」

 

 

整備が終了したISの待機形態を各々に返していく。

 

 

「あ、そうだ。クラちゃんとチェルちゃん居ないじゃん」

 

 

手元のシュヴァルツェア・ツヴァイクとダイブ・トゥ・ブルーの待機形態を見ながらそう呟いた。

その瞬間に全員の表情が少し暗いものになる。

 

 

「お兄ちゃんがどうなってるのかも、やっぱり気になる。確認するついでに、届けに行こう」

 

 

「そうだね。じゃあマドちゃんついて来て……」

 

 

束がそこまで言ったとき、唐突に整備室の扉が開いた。

全員が一斉に扉の方向に視線を向けると、明るい表情を浮かべている一夏と、心底安心したような表情を浮かべているクラリッサとチェルシーがいた。

 

 

「お兄ちゃん!体は大丈夫なの!?」

 

 

「ああ、もう大丈夫だ。心配かけて悪かったな」

 

 

(俺が大丈夫じゃ無かったら作戦中止だし)

 

 

「良かったぁ。本当に良かったぁ…」

 

 

声色も明るくなっている。

マドカは思わず泣きそうになり、シャルロット達も安心したような表情を浮かべる。

 

 

「泣くなって。よしよし」

 

 

「……お兄ちゃん、やっぱり頭撫でるの上手いねぇ」

 

 

「なんか久々に言われたわ。最近頭撫でる事なんて無かったからな」

 

 

一夏がマドカの頭を撫でている隣で、クラリッサとチェルシーは束から各々の専用機を受け取る。

 

 

「それで主任、シャルの専用機、結局どうなってたんですか?」

 

 

マドカの頭を撫で終えた一夏のその質問と同時に、再び束に視線が集まる。

束は大きく頷いてから、隣に立つシャルロットの肩に手を置きながら説明を開始する。

 

 

「いっくんが言ってた通り、リィン・カーネーションはラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡとコスモスがくっついた…もっと正確に言うのなら、融合した、というのが正しいかな?」

 

 

「融合……?」

 

 

「うん。リィン・カーネーションには、ISコアが2つ使用されている」

 

 

『2つ!?』

 

 

束の言葉に、全員が驚いた表情を浮かべる。

だが、予想できていなかったことでは無いので、変に騒ぎ立てることも無く次第に落ち着いていく。

 

 

「いやぁ、束さんも想定してなかった事が自然に起こってビックリビックリ」

 

 

「言葉と表情が一致して無いぞ」

 

 

千冬の指摘通り、束の表情は困惑や驚きといったものではなく、嬉々とした嬉しそうなものだった。

 

 

「そりゃそうだよ!こんなの興奮するに決まってるって!!だって「はいはい、分かった分かった」

 

 

このまま話させると数時間は掛かりそうなので、一夏が強制的に話を終わらせる。

束はふてくされたような表情を浮かべるものの、意図は分かっているので言葉には出さない。

 

 

「良かったな、シャル」

 

 

「うん!これから、この子と一緒にがんばるよ!」

 

 

シャルロットは満面の笑みを浮かべる。

それを見た千冬が時間を確認する。

 

 

「フム、そろそろ出発しないと列車に遅れてしまう。そろそろ行くぞ」

 

 

「ああ。みんな、出発の準備は出来てるか?」

 

 

一夏の質問に、全員が頷く。

それを確認し、一夏はアルベールがいる方向を向く。

 

 

「いろいろとすまなかったな。急にいろいろと」

 

 

「いえいえ、お役に立てたなら満足です。頑張って下さいね」

 

 

「ああ」

 

 

一夏を皮切りに、マドカ達も武装等々のお礼を言っていく。

そして、最後のシャルロットの番。

 

 

「……行ってきます、お父さん」

 

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 

笑顔で親子はそう言い合う。

それを周りは温かい視線で見守っていた。

 

 

その後、一夏達はデュノア社を出発し、イギリスへと向かう。

 

 

宇宙へ飛び立つまで、あとわずか……

 

 

 




作者のフェイバリットドリンクはぐ〇ぐ〇グルトです。

一夏は良いなぁ、400億簡単に動かせて。
今作者が自由に出来るの、2万も無いぞ。

次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにしていてください!

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