いざ、宇宙!!
今回もお楽しみください!!
三人称side
「竜王、直伝! ギガ、ハウリングゥゥゥゥゥ・クラッシャァアアアアアアアアアアア!!!!」
ゴォオオオオオオオオオオオオ!!
イギリス。
エクスカリバーを破壊する為に、宇宙へ向かう千冬たち。
一夏が以前発熱をしてバディワールドに運び込まれた際、牙王経由で天武から受け取っていた必殺技、『竜王直伝 ギガハウリング・クラッシャー!!』を発動(経由なのに直伝?とは言ってはいけない)。
その昔タスクがした事と同じように、ギガハウリング・クラッシャーをロケット替わりにして、千冬たちを宇宙へと打ち上げた。
「い、いいいいいい!?」
「う、うわ、すっご!?」
宇宙に行けるだけの推進力や威力があるので、当然中に乗っている千冬たちにもその衝撃は来る。
シャルロットや簪達は、その衝撃に驚きの声を出す。
しかし、束や千冬はそこまで驚かない。
今世界で使用されている宇宙進出用のロケットならば、搭乗者に掛かる負荷や衝撃はもっと激しい。
千冬たちの今の格好は、例外の束を除きISスーツ。
ISを展開していない状態のISスーツは、ぶっちゃけただの水着と大差ない程度の防御力しかない。
しかもシートベルトをしていないのに、特に大きくふっ飛ぶことも無く、振動を感じる程度。
その事実に、束は内心とても興奮していた。
(凄い…!凄い凄い!!流石異世界!!いいなぁ、いっくんは自由に行き来出来てさ!!今度のIS学園の長期休みの時に絶対に連れて行ってもらおう!!)
束は言わずと知れたISの開発者で天災科学者。
なかなかイカれた人物である。
そして、バディワールド…というより、向こうの世界にも中々にヤバめの研究をしていた研究者が数人いる。
改心している人もいるが、未だにバディポリスに捕まってたり、バディポリスから逃走を続けている者もいる。
そんな人達に束が鉢合う可能性がとても僅かながら存在する行動を、果たして一夏がするかどうか。
束の今までの言動が足を引っ張っているのだ。
まぁ、仕方が無いだろう。
「束、興奮するのは分かるが気を引き締めろ」
「え?」
興奮を外に漏らしていないつもりだったが、長年の付き合いがある千冬にはバレた。
珍しく本当に驚いたような表情を浮かべている束に、千冬はため息をついてから言葉を発する。
「お前、今の状況を理解しているか?この作戦に、地球の命運がかかっているのだぞ。そして、私達の命はサポート役のお前に預けていると言っても過言では無いのだぞ?」
「うん、分かってるって。心配しなくても、束さんの覚悟は出来てるって。それに、みんなも出来てるでしょ?」
束のその言葉と同時、2人は周囲にいるマドカ達に視線を向ける。
束は内心興奮しながらも、しっかりと確認していたのだ。
ギガハウリング・クラッシャー起動時は、身に受ける衝撃に驚いていたマドカ達だが、全員が全員千冬の言っている事を理解しているのだ。
この作戦に…自分達に、地球の命運がかかっている事。
そして、一夏が思いを託してくれた事を。
打ち上がってからそう時間は掛からず、全員が落ち着き覚悟を決めていた。
「当然です、束さん。そもそも覚悟が無かったら、此処にいません」
「一夏が私達に託してくれた分もあるんです。最後までやり遂げてみせます」
代表して、クラリッサとチェルシーが覚悟の決まった表情でそう言い、2人の後ろでマドカ達が頷いている。
それを見て束はニコッと笑顔を浮かべ、千冬もフッと軽く笑顔を浮かべる。
「それに、束さんだってただ興奮してただけじゃ無いのさ」
持ち込んだ大量の機材にチラリと視線を向ける。
その1つに束が近付き、ディスプレイの電源を付ける。
すると、そこにはなにやらゲーム等でよく見るパラメーターのようなものが表示された。
「なんだこれは?」
「ん~?ちーちゃんと暮桜・明星の状態。しっかりとリアルタイムで反映されるし、ちーちゃんだけじゃなくて他のみんなのも用意してるよ」
「何時の間にそんなものを…」
「フランスでISの調整した時に決まってるじゃん!!」
束はさも当然と言わんばかりの、そして最大級のドヤ顔をしながらそう宣言する。
それを見た千冬は
「何故だ。何時も以上にイライラする」
右手で作った拳を左手の掌に数発打ち付けながらそう呟いた。
「ちーちゃん!?物騒だよ!?」
「五月蠅い。取り敢えず黙るか私に殴られろ」
「教師が言う事じゃないよ!?」
「フン」
「なんでそこで終わるのかな!?」
束は逃げようと周囲に視線を向けるも、此処はギガハウリング・クラッシャーの中。
隠れられるスペースなどなく、ISを持たない束には外に出ること等出来ない。
そして、千冬との立ち位置もあまり良くない。
束の背後には大量の機材、そして目の前には千冬。
多少の時間も稼ぐことが出来ない。
「あはは、あの2人は相変わらずだなぁ」
「緊張感がどうのこうの言ってた人達の言動とは思えないな」
「それ言っちゃう?」
それを見て、マドカ達が思わずそんな言葉を漏らした。
命の危険がある作戦中、しかもこれから宇宙に出るという状態なのにかなりリラックスしている。
だが、これで良いのだ。
変に緊張しすぎると、作戦中に視野が狭くなったり、思いもよらないミスに繋がったりする可能性もある。
だからこそ、適度にリラックス出来ているこの状況の方が、ガチガチに緊張しているよりも好ましい。
「っ!みんな!そろそろ大気圏!!構えて!!」
そんな中、千冬にジリジリと迫られていた束が唐突にそう叫んだ。
『っ!!』
千冬、それにマドカ達も来る衝撃に備え、身体を伏せたり壁や束の持ち込んだ機材に捕まる。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
ガタガタガタガタ!!!
「う、うわっ!?」
「くぅっ!?」
「流石に…!キツイ…!!」
「お前ら!喋るな!舌噛むぞ!!!」
さっきまでとは比べ物にならない程の衝撃に、マドカ達は思わず驚きの声を発するも、千冬の叱責によってサッと黙る。
千冬の言う通り、こんな激しく揺れている中で喋ったら…と言うより、口を開けたらうっかり舌を嚙み千切りかねない。
すぐさま黙るように千冬が指示を出すのも当然と言ったところだ。
(おおっとぉ!?く、流石の異世界でも大気圏突入の衝撃は流石にか!!いや、専用の服じゃないし、シートベルトも無くてこの程度で済んでるの凄いんだけどね!?)
束はやはり興奮しているようだ。
そんなこんなで、数舜後。
激しかった揺れが収まり、全員が同時に息を吐く。
「……突破したね。宇宙!みんな!宇宙だよ!!」
一息つく暇もなく、興奮したような…いや、明らか興奮している束が、キラッキラの表情を浮かべながら千冬たちに声を掛けていく。
こんな反応になるのも仕方が無いだろう。
元々、束は宇宙に憧れてISを制作した。
だがあまりにもオーバーテクノロジーだったISは、世界で兵器として見られるようになり、宇宙からは逆に遠のいてしまった。
そんな状況から巡り巡って、(バディワールドと一夏の力を借りてだが)今宇宙に居るのだ。
興奮しない訳が無い。
その瞬間に、まるで束の興奮に呼応するかの様に、束達の前方…外から見ると、ギガハウリング・クラッシャーの拳にあたる部分に、外の光景の映像が映し出される。
何処までも続いている、深い闇。
そして、夜でも地上が明るくなったので、見る機会が少なくなった煌めく星々が、様々な場所で輝いていた。
(凄い…!凄い凄い凄い!!宇宙!束さんは今、宇宙にいる!!いつか、絶対に束さんの大事なISと、束さん達が自力で此処に来るんだ!!)
束がキラッキラの目でその映像を眺めているその後ろで、千冬たちは軽く準備体操のような動きをして、身体の調子を確認していた。
「良し、全員特に問題は無いな」
『はい』
千冬のその声掛けに、全員が同時に返事をする。
束の体調確認はしていないが、あのはしゃぎっぷりなら問題があるとは思えない為スルーした。
「それにしても…なんか、宇宙って実感ないね」
「確かに…今、無重力じゃ無いからかな?」
「ああ、なるほど」
マドカがポロッと零した疑問に、シャルロットがそう返答する。
そう、宇宙には重力が無いというのはもはや常識。
宇宙に対する漠然としたイメージの1つに、『身体が浮く』というものは誰でも持っているものだと思う。
だが、今マドカ達の身体は重力から解放されていない。
先程まで立っていたところに、今も立ち続けている。
宇宙に来たという実感が湧かないのも無理は無いかもしれない。
「まぁ、重力装置働いてる(らしい)からねぇ。なんなら、宇宙に出る前からこの向き…地表と垂直のこの向きだったでしょ?余計にそう感じるかもね」
そんな会話に、何時の間にやら戻ってきた束が横から割って入った。
「どうした束、興奮状態のお前は鎮静剤を投与しないと24時間はそのまんまじゃ無かったのか?」
「そんなこと無いよ!?ちーちゃんは束さんを何だと思ってるのさ!!」
「ISの開発当時お前がそう言ったんだろ!!」
「あれぇ?そうだっけ?」
束はとぼけているのではなく、本当に自分の過去の発言を忘れてしまったようだ。
だが、それは大した問題ではない。
「って、それはどうでもよくて。みんな、見えたよ」
『っ!!』
その言葉を聞くのと同時、全員がさっきまで束がかじりつくように見ていた映像に視線を向ける。
何処までも続いているような闇の空間に、太陽や他の恒星からの光を受け輝いている人口衛星が1機。
作戦目標であるエクスカリバーである。
瞬間、一気に空気がピリッとなる。
まるで剣のように誇らしげに掲げられている砲台は、地球を向いていた。
マドカ達は、漠然と剣を振り下ろす直前の人間がイメージ出来た。
この時、楯無達は暮桜を纏い雪片を振り下ろす千冬をイメージしたのだが、その千冬本人とマドカ、束、クラリッサ、チェルシーは、煉獄騎士の鎧を身に纏い、エクスピアソードを振り下ろす長髪の一夏をイメージした。
「良し、それでは作戦の最終確認を行う」
『はい』
千冬のその言葉に、束を含めた全員が返事をする。
「我々の目標は、あのエクスカリバーを破壊する事。今現在エクスカリバーは、地球に向けての攻撃態勢をとっている。だが、それ以上の情報は無く、今現在エクスカリバーがどんな状況になっているのかは誰にも分からない」
千冬は改めて現状を確認する言葉を述べていく。
「それでは、配置の確認に移る。エクスカリバーには護衛用の攻撃機能がある。エクスカリバーの現状が不明な為、それが作動しているかも不明だ。その為、交戦を前提として動く」
『はい』
「更識姉、凰、ケイシー、サファイア、私が前衛。デュノア、ボーデヴィッヒ、ハルフォーフ、更識妹が中衛。オルコット、ブランケット、ウェルキン、マドカが後衛。束が此処に残ってバックアップだ。異論は?」
その言葉には、誰も声を出すことは無かった。
そもそも、これは最終確認。
事前に何度も議論を重ね決定した事だ。
今更異論なんてある訳無い。
「全体指揮は私が持つが、中衛ではボーデヴィッヒに、後衛ではブランケットにも指揮権を渡す。各々の判断で指揮を出して貰って構わない」
「「はい」」
「我々前衛は、エクスカリバーに近付き攻撃を行う。前衛がどれほどダメージを与えられるかで、作戦成功率は変わって来る。それに、最後に破壊するのも恐らく我々だ。最初から最後まで気を抜くな!!」
「「「「はい!!」」」」
「後衛は、遠距離武器を使用し、前衛のサポートをメインに行動してもらう。攻撃できるチャンスがあれば積極的にエクスカリバーへ攻撃し、エクスカリバーの攻撃機能を引き付けてくれると助かる。離れているからと言って、油断はしないように!!」
「「「「はい!!」」」」
「中衛は、前衛と後衛の間の距離で待機しつつ、各々の武装を活用し妨害を行いつつ、状況によって前衛に加勢したり、逆に後衛に加勢したり…まぁ要は、臨機応変に対応して欲しい。キツイとは思うが、最後までやり通せ!!」
「「「「はい!!」」」」
「束!お前は此処に残って、情報の収集を行い、我々に伝えろ!どんなに細かい事でも構わん!!」
「あいあいさー!!」
千冬が順番に気合を入れるような言葉を掛けていき、全員が気合いの籠った表情でそれに返事をする。
「良し、行くぞ!!」
「みんな、頑張って!!」
『はい!!』
千冬と束の言葉に、マドカ達が覚悟の籠った表情で返事をし、千冬たちは同時にISを展開。
そのまま宇宙へと繰り出した。
「おおっと。みんな元気だなぁ」
一瞬にしてギガハウリング・クラッシャーの外へ繰り出した千冬たち。
残った束は一瞬にして1人になったこの空間で、ポツリとそう呟いた。
「みんな、絶対に無事でね。誰か1人でも怪我したら、いっくんに怒られちゃうよ」
そう言う束の表情は、絶対に全員が無事に帰って来る事を確信しているかのような、笑顔だった。
場面は変わり、ギガハウリング・クラッシャーの外。
前衛、中衛、後衛に別れ、その順番でエクスカリバーへと向かっていた。
『全員調子はどうだ?』
オープンチャネルで、千冬が全員に呼びかける。
『問題無いです!』
『同じく』
『全員無事です!!』
『良し、このまま接近する!』
問題無しの返答が帰って来た事を確認した千冬は、更に速度を上げながらそう指示を出す。
それに応えるように、前衛のメンバーも同様に速度を上げる。
中衛のメンバーも加速をしていくが、前衛ともある程度距離は取るために速度上昇率は前衛に比べ少し抑えめだ。
全体の状況を確認出来るように、分散し周囲を探索する。
後衛のメンバーも当然のように加速はするが、中衛よりも更に抑えめだ。
各々の武装を展開し、狙撃の準備を行う。
近付くにつれ、エクスカリバーのその巨大さが際立ってくる。
「やっぱり大きいな……」
誰かがそうポツリと呟いた。
その声に反応する者はいなかったが、それは全員が感じている事だった。
それと同時、全員の頭に
(これを破壊するだなんて、自分達に出来るのだろうか?)
という考えが一瞬浮かんだ。
目の前に存在する、あまりにも巨大な建造物。
しかも、その切っ先たる砲台は、地球に向けての攻撃態勢になっている。
それを自分達で破壊しなければならない。
もう既に覚悟は決まっているとはいえ、目の前にすると少し委縮してしまうのも仕方が無いだろう。
だが、いや、だからこそ。
千冬は口を開いた。
「不安か?」
『っ……』
誰かが、恐らく全員がその言葉に息を詰まらせた。
「もう既に覚悟は決めていたのに、今更不安になるなんて?とか考えているか?だが、それは正常な反応だ。こんな時に、不安にならない人間など、束か一夏くらいなものだ」
千冬の冗談をいうテンションでのその言葉、そして脳内で自然と再生された一夏と束の
「「んな訳あるか!」」
というツッコミで、マドカ達は思わず口元に微笑を浮かべる。
なんとなくそれを感じ取った千冬も口元に笑みを浮かべると、続きを喋る。
「だが、大丈夫だ。私達には、この作戦を成功させるだけの力を持っている。今までを思い出せ、私達の戦いを」
その瞬間に、マドカ達は思い返した。
クラス対抗戦、臨海学校、学園祭、キャノンボール、学園襲撃、京都。
いろいろあった。
戦った。
参加していない戦いもあるが、それでも全員が真剣に、命のやり取りをした。
「なに、敵はデカいが1つだ。ここ最近は、敵も多かったからな。寧ろ、今回の方が楽な可能性すらある」
千冬は笑いながらそう言い、それにつられマドカ達も笑う。
だが、直ぐに真面目な表情になると、叫ぶ。
「行くぞ!!」
『はいっ!!』
千冬の言葉に、全員が改めて気合いの籠ったような返事をする。
そうして各々が自分のやれる最適な行動を取る。
元々の速度が速いIS。
そして、此処は宇宙。
地上で抵抗となる空気や地面などが存在せず、推進力などは落ちない。
数舜もしないうちに、エクスカリバーに肉薄できるという距離にまで前衛が到達した。
ここまでエクスカリバーからの音沙汰は無し。
これは、防衛機能が止まっているのではないか。
警戒をしつつも、全員がそう思った。
その瞬間。
キィ―――――――――ン
頭の中に直接響くような、思わず耳を塞ぎたくなる甲高い音が響いてきた。
急に響いてきたこの音に、千冬達は顔をしかめるも、直ぐに違和感に気が付いた。
此処は宇宙。
大気が存在せず、音が伝わらない。
千冬達が会話出来ていたのは、ISのオープンチャネルがあったからだ。
それが無ければ音は一切伝わらない。
それなのにも関わらず、今こうして詳細不明の音が響いて来る。
それが、違和感なのだ。
『みんな!大丈夫!?』
すると束からの通信が入った。
返事をする間も無く、束が早口で喋りだす。
『束さんにも聞こえた!今の音は、ISの通信に無理矢理割り込んで来たんだ!そして、音の発生源はエクスカリバー!!』
『っ!!』
全員がその言葉に息を詰まらせる。
それと同時、今まで音沙汰も無かったエクスカリバーが動きを見せた。
キィ―――――――――ン!!
甲高い音の勢いが、更に激しくなった。
すると、エクスカリバー全体の隙間から、紫の光が漏れ出してきた。
ギャァアアアアアアアアアアアアア!!
甲高い音は、何処か苦しんでいる声のような音に変わる。
より一層耳障りになった音に、マドカ達は止まってしまう。
宇宙空間では、慣性が抵抗によって遮られないので、それでも前には進み続ける。
しかし、それがいけなかった。
より一層エクスカリバーに近付いた時、更なる変化が訪れた。
砲台やソーラーパネルの根本などから、まるでタコやイカの触手のような何かが生えてくるように姿を現した。
『っ!?』
その異様な光景に、流石の千冬も含めて驚きの表情を浮かべる。
触手のようなものは何本も何本もはい出て来て、まるで意思を持っているかのように蠢く。
パッと見で正確な数が分からない程の触手は、その先端を千冬たちのいる方向に向ける。
ギャァアアアアアアアアアアアアア!!
再び絶叫のような音を無理矢理聞かされる。
蠢く触手はその先端に当たる部分を千冬たちに向ける。
すると、その先端が紫に発光する。
その瞬間に先端から何か粒子のようなものが滲み出て来た。
「あれは……」
誰かがそう呟いた。
だが、他の全員も心理状況が一緒だった。
まるで、先端から漏れ出た粒子に命が吹き込まれるように。
そして、意思が芽生えるかのように。
形を形成していく。
また、誰かが呟いた。
「ドラゴン……?」
そう、ドラゴン。
触手の先から漏れ出た粒子が形成したのは、まさにドラゴンの頭部のようなものだった。
見るだけで人を委縮させてしまうような、鋭い目。
あらゆるものを簡単にかみ砕いてしまうような、鋭い牙。
口の奥では、未だに紫の光が輝いている。
エクスカリバーから生えてきた触手は、その全てにドラゴンの頭部を生やした。
もはや触手というより、ドラゴンの首だ。
いろいろな方向を向いていたドラゴンの頭が、物凄い勢いで千冬たちに向けられる。
そして、まるで深呼吸をするかのようにドラゴンの口が開く。
「っ!攻撃が来る!全員回避!!」
長年の経験から生まれた直感。
千冬は慌ててそう指示を出す。
その指示に従い、全員が回避行動に移る。
ギャァアアアアアアア!!
ギャォオオオオオオオオオオ!!
それと同時に、まるで悲鳴のような、でも威嚇する様な叫び声が響いて来る。
ドキュウゥゥゥゥゥン!!
ドキュウゥゥゥゥゥン!!
ドキュウゥゥゥゥゥン!!
直後、全てのドラゴンの口から一斉に千冬たちに向け、光線が放たれた。
その1つ1つの速度や太さ、勢いは、今まで見たどんなレーザーよりも高威力であるという事を、着弾を確認していないのにも関わらず直感的に理解する事が出来た。
元々個人個人の間隔は開けていた。
それに加え、前衛、中衛、後衛でも距離を取っていた。
しかも、数が多いとはいえ、多人数やビットなどと対峙した時のように囲まれて集中砲火されている訳では無い。
だからこそ、ある程度は余裕がある人と、余裕が無い人に分かれるかと一瞬誰もが思った。
しかし。
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
「くぅ!?」
「危なっ!?」
その1つ1つの威力の高さ、攻撃範囲の広さ。
そして何より、1度での攻撃の多さ。
もはや周囲を囲まれているとか全くと言って良いほど関係ない。
全員が、避けるのにとても必死だ。
特に必死なのが千冬だ。
零落白夜という癖があり過ぎる単一能力。
文字通り一撃必殺のこの力は、この作戦でも有効な攻撃になるだろう。
だからこそ、千冬は攻撃を受ける訳にはいかない。
そうじゃなくても、此処は宇宙。
ISの強制解除=死を意味する。
全員が真剣に攻撃を避ける。
そうこうしている間にも、エクスカリバーからは新たなドラゴンの頭部が大量に生えて来て、元々あった頭部とはまた違ったタイミングでの攻撃を行う。
休む暇もないとは、まさにこの事。
一瞬の気の緩みが命の危険に繋がる。
だがしかし、ずっとこのままでは駄目だ。
体力と気力、精神力がガリガリと削られていく。
いずれは集中力が無くなり、攻撃を受けてしまい命が散る事となるだろう。
そうなる前にこの状況を打破しないといけない。
この状況を打破するとなると、やはり一瞬の隙を付いてドラゴンの頭部を破壊し、エクスカリバーに肉薄する事が必要になる。
(有線で接続されているとはいえ、接近しきると自滅する可能性があるというのは、オルコット達のビットと変わらない筈…となると、私達前衛が出来るだけ前に出なければいけない…だが、そうすると中衛と後衛にさらに負担が…となると、やはりドラゴンの破壊が必須になるな……)
回避を続けながら千冬は思考を続け、雪片を握りしめる。
出来る限り周囲に視線を向け、状態を確認する。
流石に全員の確認は出来なかったものの、確認できた範囲では全員がもう既に辛そうな表情を浮かべていた。
これではそう長くは持たない。
(あまり消耗したくなかったが…仕方が無い。私は教員で、一夏とマドカの姉だ)
頬を汗が流れていくのを感じながら、千冬は細く長く息を吐く。
そして自らを奮い立たせるように口元に笑みを浮かべる。
「この状況を打破できないで如何する!!」
そうして叫び、零落白夜を発動。
自身に向かってくる大量のレーザーを一閃。
隙を強引に作り出すと、そのまま予備動作無しで瞬時加速を発動。
今まさに切り裂いたレーザーを発射し終え、次弾のチャージを行っていたドラゴンの頭部を破壊した。
『っ……!!』
その光景を見れた後衛と中衛のメンバーたちは集中を切らさないようにしながらも、鮮やかな千冬の突破劇に思わず驚きの表情を浮かべる。
「っ!お前達!!」
集中砲火から一転、この戦場で唯一フリーになった千冬は、宇宙空間故放っておいても落ちない速度の上さらに瞬時加速を行い速度を上げる。
ギャァアアアアアアア!!
ギャォオオオオオオオオオオ!!
エクスカリバーも、自身のドラゴンの頭部を破壊されまた叫び声を流すと、楯無達に向けていた分の頭部を千冬に向け直し、攻撃しようとする。
しかし、それよりも早く千冬が、斬撃の瞬間のみ零落白夜を発動。
制御できる最高速度のまま連続して自身に向けられているドラゴンの頭部を全て破壊する。
元々は楯無達に向いていたものを破壊したことで、前衛のメンバーも千冬と同じくフリーになる。
「このまま中衛と後衛の分も対処する!お前達は新しく出て来る奴を対処してろ!」
『『『『はい!!』』』』
前衛に指示を出し、千冬はそのままの勢いで中衛と後衛の元へと向かい、全てのドラゴンの頭部を破壊した。
千冬はエネルギーを消耗してしまったものの、これで状況は大幅にリセットされた。
「後衛!ドラゴンの頭部になる前に出て来たものを破壊しろ!中衛!間に合わなかったものを数人がかりでもいいから破壊しろ!これ以上アレに攻撃されるとたまったもんじゃない!」
『『『『『『『『はいっ!!』』』』』』』』
千冬の言葉に、各々が返事をする。
「前衛!あとは中衛に任せろ!ここからが本番だ!!行くぞ!!」
『『『『『『『『『『『はい!!!』』』』』』』』』』』』
千冬は改めて雪片を握りしめながら、改めてエクスカリバーへと勢いのまま突っ込んでいく。
それに続くように、楯無達も各々の行動を開始する。
いざ、聖剣を砕くとき……!!
過去一で千冬が格好いい。
普段からこれくらい格好良くしれくれ先生。
次回も何時になるか分かりませんが、楽しみにして入れください!
評価や感想もよろしくお願いします!