無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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宇宙編、ラスト!

「この瞬間」という言葉を聞くと、どうしても宵闇の使者が最初に出て来てしまう。
これが理解できる人とは仲良くなれそうだ。


宇宙での決戦

三人称side

 

 

「ここからが本番だ!!行くぞ!!」

 

 

宇宙。

地球に向けて攻撃態勢をとっている人工衛星、エクスカリバーを破壊する為、一夏が発動したギガハウリング・クラッシャーに乗り込み、千冬たちがやって来た。

エクスカリバーに接近した際に、エクスカリバーから生えてきたドラゴンの頭部のようなものに包囲され、全員が集中砲火を受けるという危機的状況の中、千冬の咄嗟の機転により状況を打破した。

 

 

『『『『『『『『『『『はい!!!』』』』』』』』』』』』

 

 

千冬の号令に、全員が同時に返事をし、各々の行動を開始する。

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

ギャォオオオオオオオオオオ!!

 

 

エクスカリバーから絶叫が響くと同時、ドラゴンの頭部へと変わる前の触手のようなものが再び大量に生えてきた。

だが、この触手を放置してはいけない事。

そして、この触手がどのようなプロセスで変化していくのかを、もう把握している。

 

 

「させませんわ!」

 

 

「壊れろ!!」

 

 

後衛のチェルシー、マドカ、セシリア、サラが触手の先端を的確に撃ち抜いていく。

BT機を使用しているイギリスの3人はビットを展開し、フレンドリーファイアをしない程度で大量に狙撃していく。

後衛の中で唯一ビットを使えないが、ライフルの威力は1番高く、射程も1番長いマドカは、チェルシー達が狙撃しにくい位置のものを撃っていく。

 

「後衛が弾いている間に、自滅が狙える位置にまで接近しきる!」

 

 

『『『『はい!!』』』』

 

 

千冬の号令に返事をし、前衛の千冬、鈴、楯無、ダリル、フォルテが接近する。

零落白夜を持つ千冬、そして熱と冷気の合わせ技で内部への攻撃の切っ掛けを生み出せるダリルとフォルテはあまり消耗させたくない。

 

特に千冬は先程の状況打破の為に無理矢理零落白夜を発動させており、多少ではあるが消耗している。

それに加え、零落白夜の弱点を補う武装の暁星の光も、この状況ではあまり効果を発揮できない。

暮桜・明星の残りSEは6割強。

 

その為、前衛の中でも先頭なのが楯無と鈴である。

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

ギャォオオオオオオオオオオ!!

 

 

ガァアアアアアアアア!!

 

 

もう装甲まで目と鼻の先というところまで来た時、再びエクスカリバーから絶叫が鳴り響く。

それと同時、今までとは比にならない量の触手のようなものが生えて来る。

 

 

「うげぇ!?」

 

 

「なんで急に!?」

 

 

「お前達、後衛に任せろ!!」

 

 

ダリルとフォルテが素直に面倒くさそうな表情を浮かべながらリアクションを取り、千冬が慌てて指示を出す。

 

 

「くらえっ!!」

 

 

「このぉ!!」

 

 

先頭にいた鈴と楯無は各々の武装である、衝撃砲とアクアナノマシンによって自分達に向けられそうな触手を弾き、後衛が破壊しやすいように調整する。

そのサポートにより、後衛もドンドンと破壊していく。

 

 

「くっ、このっ!」

 

 

「数が多い…!」

 

 

だがしかし、先程に比べ圧倒的に増えた触手に、次第に対応が難しくなってくる。

それに加え、エクスカリバーも学習してきているのか、射撃の回避行動を取るようになってきて、破壊が難しくなってきた。

次第に破壊が追いつかなくなり、遂にドラゴンの頭部が2つ完成してしまった。

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

ギャォオオオオオオオオオオ!!

 

 

咆哮と同時、ドラゴンの頭部がレーザーの発射準備態勢に移る。

その発射口たるドラゴンの口が向いているのは、一番エクスカリバーに接近している鈴と楯無だ。

 

 

「「っ!!」」

 

 

2人は迫るレーザー発射に備える為、回避行動の準備をする。

 

 

だが、結果として2人が回避行動を取る必要は無くなった。

何故なら。

 

 

「させん!」

 

 

「何のために、待機していたと思っている!!」

 

 

この時の為に待機していた中衛が動いたからだ。

ラウラとクラリッサがAICを発動。

ドラゴンの頭部の動きを止める。

 

 

「「今!!」」

 

 

「分かってる!」

 

 

「任せて!」

 

 

その瞬間、2人が自身の武装でドラゴンの頭部に攻撃すると同時に放った言葉に、同じく待機していたシャルロットと簪が反応した。

シャルロットの高速切替を多用した大量の一斉射撃、簪による山嵐の48発のミサイル一斉攻撃は、AICによって動けなかったドラゴンの頭部に全てクリーンヒット。

ドラゴンの頭部はバチバチとスパークを散らし、直後に爆発した。

 

 

「前衛!」

 

 

「ああ、任せろ!」

 

 

クラリッサの言葉に、千冬が力強く頷く。

前衛の5人はそのままの勢いで更にエクスカリバーに接近し、第一目標であるエクスカリバーによる攻撃が自滅になる位置にまでやって来た。

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

ギャォオオオオオオオオオオ!!

 

 

ガァアアアアアアアア!!

 

 

グォオオオオオオオオオオ!!

 

 

その事に怒ってなのか、それともただただ条件反射なのか、より一層の叫び声を無理矢理聞かせて来るエクスカリバー。

それと同時に大量の触手が再び生えて来る。

 

 

「ふん、何度だっで破壊してやる!!」

 

 

「やってやりますわ!」

 

 

後衛が触手を破壊し、破壊しきれずドラゴンの頭部へと変化したものを中衛が2人以上で破壊をしていく。

仮説通り、自滅の可能性が高い前衛には攻撃が来ない。

これで、エクスカリバー本体への攻撃が可能になった。

 

 

「このぉ!」

 

 

「ハァ!」

 

 

前衛の中でもいち早く到達した鈴と楯無は、各々の武装でエクスカリバーへと斬撃を与える。

だがしかし、その装甲に刃が入るどころか傷一つつかない。

武装を通じ、振るった際の勢いがそのまま衝撃として返って来る。

 

 

「痛っ!?」

 

 

「これは…普通の物理攻撃じゃ通用しないわね。攻め方を変えないと」

 

 

楯無のその言葉の直後、千冬たち3人も到着した。

千冬が零落白夜を発動し切り裂くも、先程の鈴達の攻撃と同様、傷一つ出来なかった。

これで、何かエネルギーシールドの類で防御力を上げているのではなく、ただただ物理的な防御力が高いという事が判明した。

 

 

「俺達の出番だ!行くぜフォルテ!!」

 

 

「分かってるっス!」

 

 

となれば、ここは炎を操るヘル・ハウンドと冷気を操るコールド・ブラッドの出番だ。

 

 

物体を熱すると分子運動の変化によって膨張する。

これを急速に冷やすと、冷やされた部分は急に縮もうとするが、冷やされなかった部分は膨張したままなので歪みが生じ、ものが割れる。

 

 

だがしかし、金属はそう簡単にいかない。

金属は展性(叩くと広がる)や延性(引っ張ると伸びる)という加工がしやすい特性を持つ。

ガラスなどのように温度の差では簡単に割れず、2人がそのまま熱して冷やすだけでは突破は難しい。

 

 

ちょっとやそっとの温度差はでは割れない為、かなりの高温にまで加熱した後、氷点下まで冷やす必要がある。

だここまでしても割れるかどうかは賭けになってしまう。

だが、やるしか無いのだ。

 

 

ダリルがエクスカリバーの装甲を焼き溶かすという手段もあったのだが、そっちの方が時間がかかるだろうと判断し、この作戦で行く事にした。

 

 

「しゃオラァ!」

 

 

独特な叫びと共に、ダリルが過熱を開始する。

何時もの模擬戦や訓練では火球の生成、もしくは双刃剣である『黒への導き(エスコート・ブラック)』の斬撃に炎を纏わせることによって、攻撃にその炎を使用している。

だが、今回はヘル・ハウンドの特徴的な両肩の犬頭から吐かれる炎を、ただ一点に集中させている。

 

 

「今のところどんな感じだ!?」

 

 

「ふつーの金属とかより、熱による変色が全然無い…こりゃあ骨が折れるぞ」

 

 

宇宙空間はそもそも気温が低く、燃焼する為に必要な酸素も無い。

ヘル・ハウンドが発生させる炎だけが、

その為、ただでさえ熱し続け温度を上げるのが

 

 

「出来るだけ早くしてくれ!後衛と中衛の限界が来る前に!」

 

 

「分かってますよ!!俺とヘル・ハウンドに、焼き尽くせないものは無いって事を見せてやりますよぉ!!」

 

 

千冬の言葉に、ダリルは口元にニヤリと笑みを浮かべてそう叫ぶ。

その瞬間、両肩の犬頭が吐く炎の勢いが激しくなる。

 

 

「くっ!このっ!」

 

 

「しまった!?」

 

 

「カバーは任せろ!」

 

 

後衛と中衛が、未だに激しく触手やドラゴンの頭部との交戦をしている。

千冬の言う通り、出来るだけ早くしなければ、いずれ限界が来てしまう。

呼吸を忘れてしまう程に目を見開きながら、炎で熱し続ける。

 

 

徐々に徐々に、温度が高まってきている事を示すように、炎に炙られている箇所の色が変わっていく。

それを確認したダリルは口元に浮かべている笑みを濃いものにし、千冬、鈴、楯無は各々の武装を構えなおす。

 

 

そこから更に熱し続け、遂にそのタイミングがやって来た。

 

 

「フォルテ!!」

 

 

「任せろっス!」

 

 

ダリルと入れ替わり、フォルテが今さっきまで加熱していた箇所を急速に冷やしていく。

 

 

ビシビシビシ!

 

 

大気がある状態だったら、恐らくそんな音が聞こえる感じで、バキバキと罅が入っていく。

ダリルによって熱せられていなかった箇所に冷気が触れると、ドンドンと凍っていく。

変色していた箇所も急速に温度が下がり、表面が凍る。

 

 

ドンドン罅は大きくなっていくも、エクスカリバーの装甲が厚い為、貫通し穴が開く事は無かった。

だが、その装甲に罅が入った。

この事実が大切なのだ。

 

 

「楯無!」

 

 

「任せて!」

 

 

フォルテが横にズレながら楯無の名を呼び、楯無がそれに応えると同時、構えているランスを罅の中心に向かって放つ。

もとより高い楯無の実力は、ISのサポートがあれば宇宙空間でも地上と変わらない。

その切っ先は正確に中心を捉え、急速な加熱と急速な冷却によってボロボロになっていた装甲に穴を穿いた。

 

 

「織斑先生!鈴ちゃん!」

 

 

「任せてください!」

 

 

「行くぞ!」

 

 

楯無と入れ替わる形で、鈴と千冬がその穴に自分の武装を突っ込む。

物理攻撃では傷一つ付かなかったが、切っ掛けが出来れば話は別だ。

感覚としては、包丁でジャガイモの皮をむくとき、半分に切ってからするとやりやすいのと似ているだろうか。

 

 

ともあれ、さっきまでまるで意味が無かった刃での攻撃が、漸く通用するようになった。

熱と冷気とランスによってボロボロになっており、面白いほど斬撃によって崩れていく。

数度斬撃を繰り返す事で、IS1機ならば通れる程度の穴が貫通した。

 

 

「中衛!後衛!聞こえるか!?」

 

 

「聞こえてます!」

 

 

「同じく!」

 

 

「これから前衛は中へと突入する!後は頼んだぞ!」

 

 

「了解しました!」

 

 

「織斑先生たちも、どうかご無事で!」

 

 

中衛と後衛の返答を聞き、千冬たちはエクスカリバーの中へと侵入する。

 

 

電子基板を思わせる特徴的な模様が床や壁や天井に張り巡らされている。

なんとも異質な空間だ。

しかも、その基盤の線の1本1本に光が流れている。

 

 

「もしかして、エクスカリバー全体が何かコンピューターの基盤のような役割を担ってんのか…?」

 

 

ダリルが後頭部を掻くような動作をしながらそう呟いた言葉に、この場に居る全員が険しい表情になる。

 

 

「可能性は多いにあり得るな…まぁ、考察は後で良い。エクスカリバーの核に当たる部分を破壊する。それだけを考えろ」

 

 

「とはいっても織斑先生、右なのか左なのかすら分かんないっスよ。どうやってそんな大事な部分見つけるんスか?」

 

 

フォルテの言い分はもっともだ。

セシリア達も、エクスカリバーの設計などに直接関わっていたわけではないので、内部構造を詳しく把握している訳では無い。

オルコットの屋敷に着いた時も、時間の無さゆえ核を破壊すればエクスカリバーは止まる、と言った情報しか聞けなかった。

虱潰しをするという選択肢が無い訳では無いのだが、時間がかかり過ぎる。

中衛と後衛の事を考えると、無駄な時間を使いたくない。

 

 

すると、床や天井を観察していた楯無がある事を発見した。

 

 

「この模様を流れているような光…もしかして、等間隔で、全てが同じ方向に流れていませんか?」

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

その指摘を聞き、全員が改めて確認をする。

確かに、床、天井、壁に走る線の光は、一定の間隔で、同じ方向に流れていた。

 

 

「これをたどれば、核に辿り着けるかもしれないって事ですか?」

 

 

「その可能性が高いな」

 

 

「でも、向かって行く先と向かってくるところ、どっちに向かえばいいんスかね?」

 

 

「途中で枝分かれしている可能性もある。根本をたどる方が安易だろう。行くぞ」

 

 

「「「「分かりました」」」」

 

 

この先も、罠のようなものが無いとは言い切れない。

何が来たとしても、取り敢えず対応が可能な千冬が戦闘で奥へ奥へと進んで行く。

重力などは、外と変わらず存在せず、放っておいても慣性の法則で速度は落ちないし停止もしない。

しかし、エクスカリバー内部という事で壁や天井は存在する為、少しでも間違えるといろいろなところに激突し、大変な事になってしまう。

普段以上に慎重になりながら、エクスカリバーの奥の方へと進んで行く。

 

 

移動する事数分。

ついに光が流れて来る根本の場所へと辿り着いた。

そこにあったのは1枚の扉。

 

 

中央に縦線が1本入っており、そこから両側に開くのだろうと言うのが簡単に想像できる。

扉が位置しているのは、エクスカリバーの本当に中央。

今さっき千冬たちが歩いてきた方とは別に、扉の向こう側にも通路がある。

その通路にも電子基板のような模様があり、線に光が流れている。

 

 

だが、扉から千冬たちの方向に向かって光が流れているのに対し、向こう側から扉に向かって光が流れている。

 

 

「どうやら、この扉から光が出て、エクスカリバーを1周した後此処に戻って来るみたいですね」

 

 

「ああ、その用だ」

 

 

「って事は、此処がエクスカリバーの核…!!」

 

 

楯無、千冬、鈴の順番でそう言い、全員の表情が一瞬にして険しいものになる。

 

 

「……お前達、覚悟は良いか?」

 

 

千冬が改めて確認するように4人の表情を見ながらそう質問する。

 

 

「当然です!」

 

 

「勿論です!」

 

 

「良いに決まってるっス!」

 

 

「愚問だな!」

 

 

その問いに、一瞬の迷いもなく返事をする4人。

それを聞き千冬は口元に笑みを浮かべると、大きな扉の前に立ち、雪片を構える。

 

 

「突入する!」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

その言葉と同時、扉を無理矢理こじ開け、中に突入する。

 

 

扉の中はかなり開けた円柱の内側といった感じの空間。

先程までいた空間と同じく、壁や天井に電子基板のような模様が張り巡らされており、それが全て円柱の中心に向かって伸びている。

 

 

そして、その中央。

そこにあったのは、千冬たちが予想していた、只のコンピューターでは無かった。

 

 

「こ、これは…!!」

 

 

誰かが、()()を見てそう呟いた。

コンピューターの制御用である有線が大量に背中から生えており、床や天井に繋がっている。

まるで岩石のようなごつごつした表面。

 

 

だが、そんな細かな要素など全く気にならないくらいに、()()全体のインパクトが強かった。

そこそこ広い空間の天井まで届く程の大きさ。

巨大な足に尻尾、巨大な翼。

そして、扉の方向を睨んでいるかのような表情を浮かべている頭部が、3つ。

 

 

終焉魔竜 アジ・ダハーカ。

 

 

亡国企業が散々使い回してきたアクワルタ・グワルナフ・レプリカの大元にして、太陽神の片割れ。

世界を滅ぼす程の力を秘めた、破滅の竜。

その、石像だった。

 

 

一夏やオルコス達ならば、一瞬も関わらずにそれが何かを理解しただろう。

だが、この場に居る全員アジ・ダハーカの存在を知らないし、唯一その名を知っている千冬も、臨海学校の際ディミオスからチラッと話を聞いた程度だ。

これが何かなど、直ぐには理解できない。

 

 

「これが、エクスカリバーの核…?」

 

 

「…その様だな……」

 

 

「何というか…かなり独特…」

 

 

ダリル達が思い思いの感想を漏らす中、千冬は思考を巡らせる。

 

 

(わざわざこんなものを核として設計するはずがない…つまり、これは後付け…オルコットのコントロールから外れた後に、造られたもの…恐らく、亡国企業。何故こんなものを…)

 

 

「まぁ良い、考えるのは後だ。取り敢えず、コイツを破壊する!」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

兎にも角にも、この石像を破壊するしなければ話にならない。

全員が各々の最大出力の攻撃を繰り出す為の構えに入った、その瞬間。

 

 

ゾクッ!!

 

 

何故だか、全員に悪寒が走った。

なにか見落としている。

千冬たちは石像の正面からこの空間に侵入してきた。

だからこそ、千冬たちは見れていない。

石像の向こう側を。

 

 

ISのハイパーセンサーでは特に異常は無い。

だが、それを掻い潜れる何かがあるとするのならば……

単純な死角に潜むのが、なんなら1番効果的だ。

 

 

「全員退避!!」

 

 

千冬の指示と同時、全員が一瞬にしてその場から飛び退く。

その直後、今まで千冬たちが立っていた場所に、石像の向こう側から飛び出て来た()()()の攻撃が着弾し、そして()()()自身が着地した。

 

 

その姿は、IS学園が襲撃を受ける際何度も見た、亡国企業の戦闘員が装着していた黒い改造ISだ。

だがしかし、通常人間が乗っている箇所に人間はおらず、変わりに石像と同じような材質がはめられており、石像の背中と同じようにコードが数本刺さっていた。

そのプラグの反対側は石像に繋がっている。

改造ISは最初に飛び出て来た機体に続くように、同じような改造ISが十数機姿を現した。

 

 

「有線接続の無人機!?」

 

 

鈴が驚きの声をあげると同時、計15機の改造ISが一斉にアサルトライフルを展開。

千冬たちに向かって発砲した。

 

 

「回避!」

 

 

その指令に従い、全員が同時に回避行動を開始する。

回避に成功し、壁に当たった弾丸はそのまま壁にめり込む。

それを見た千冬たちは、自分の頬に冷や汗が流れるのを感じた。

 

この空間の壁の強度が外壁と同じとは限らないが、仮に同じとした場合、傷をつけるのにも一苦労した強度の壁に、ただただ発砲しただけで弾丸がめり込むほどの威力を持つアサルトライフルを、警戒しない訳にはいかない。

 

 

(全く、この改造ISや外のドラゴンを作ったのが同じ組織…同じ人物だと言うんだったら、途轍もない技術者だな…くっ、中々大変だぞ…)

 

 

連続して発砲される弾丸を避けながら、千冬は思考を巡らせる。

恐らく掠った時点でアウトの弾丸の雨を対処しつつ、石像を破壊する事は不可能だ。

だからといって、全員で改造ISに対処していたら時間がかかり過ぎる。

 

 

(理想は誰か1人に石像を対処させ、その他でISの対処だが…誰に石像を頼む?時間を掛けるのは好ましくない…一撃の威力が高い攻撃が出来る者…私は駄目だ。零落白夜が一撃必殺なのは、相手がISだからこそだ。あの体表、恐らく物理的な防御力の高さがまた壁となる…なら……!!)

 

 

千冬は覚悟を決めると、はぁ!と大きな声を出してから(空気が無いから聞こえない)、指示を出す。

 

 

「更識姉!私達で改造ISを引き付ける!その間に、お前があの石像を破壊しろ!」

 

 

「っ!了解です!」

 

 

「ケイシー!サファイア!凰!聞いていたか!?」

 

 

「勿論!」

 

 

「大丈夫っス!」

 

 

「行けます!」

 

 

「良し、行くぞ!!」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

千冬の指示に、4人同時に返事をし各々のやるべき為の行動をする。

楯無は石像の目の前に着地。

自身の最大の攻撃の為の準備に入る。

 

 

そんな隙だらけの姿を見て、改造ISが何の反応も示さない訳が無く。

楯無に向かって一斉にアサルトライフルを構える。

 

 

「させねぇ!」

 

 

「ほらほら、こっちっスよ!」

 

 

ダリルが約半分程を炎で炙り、残りの手元を凍らせることで、楯無への攻撃を妨害。

同時に注意を自分達に引く。

 

 

「今だ!」

 

 

「はい!」

 

 

その瞬間、処理が追い付かない僅かな隙を狙い千冬と鈴が各々1番近い機体に近付き、攻撃を行う。

今までの戦闘とは違い、今回の改造ISは明確な攻撃目標…つまり、弱点がまるわかりである。

そう、石像と繋がっているコードである。

有線接続の場合、無線と異なり指令のラグや誤動作が少ないという利点があるものの、線が切れたら接続も同じく切れるという欠点がある。

なので、この繋がっているコードさえ切断出来れば、それで改造ISの動きは止まる。

 

 

「ハァアア!」

 

 

「フンッ!!」

 

 

加速した際の威力も乗せられた強力な一撃は、機体から出ている数本のコードを一気に切り裂いた。

 

 

バチバチバチ

 

 

切断面からスパークが散る。

恐らく、このコードも一般的なペンチなどでは切断出来ないような、並大抵の丈夫さでは無いのであろう。

だがしかし、改造ISは限られた空間とはいえ動き回る為、柔軟性も確保しなければならない。

その結果として、威力のある一撃ならばそこそこ簡単に切断出来たのだ。

 

コードを切断された2機のISは、切られる直前の姿勢のまま固まっている。

それを見た千冬は再び指示を出す。

 

 

「このまま残りのコードも破壊する!急げ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

千冬が頭1つどころか頭3つぐらい飛びぬけてはいるものの、そもそも専用機を持っている時点でかなりの実力者だ。

次々にコードをぶった切っていく。

 

 

そんな中、楯無はずっと構えていた。

ずっと、ずっと。

この一撃に全てを掛けてもいい。

そんな思いで、ずっとスタンバイしていた。

 

 

「っ!今!」

 

 

そんな中、エネルギーチャージが全て完了し、

 

 

「ハァア!」

 

 

千冬が最後の改造ISのコードを切り裂いた。

 

 

「もう大丈夫だ!」

 

 

「行け!」

 

 

「いっちょ決めてやれっス!」

 

 

「やっちゃってください!」

 

 

千冬、ダリル、フォルテ、鈴の激励を受け、楯無は口元にニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「勿論!ミストルテインの槍、発動!」

 

 

ミステリアス・レイディのアクアナノマシンを一点に集中させる事によって、強力な攻撃となる、零落白夜とはまた違ったアプローチでの一撃必殺の技。

それは適格に石像の中心を捉え、一気に貫いた。

 

 

バキバキバキバキ!!

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

崩壊する音と、叫び声が通信に割り込まれる形で聞こえて来る。

 

 

「良し!」

 

 

「やったぜ!」

 

 

「楯無!格好いいっスよ!」

 

 

「凄い!」

 

 

千冬たちが思わずガッツポーズをすると同時、

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

石像があった場所を中心として黒煙が発生し、エクスカリバーが揺れ始めた。

 

 

「な、何この揺れ!?」

 

 

鈴が慌てたような声を発する。

 

 

「核の破壊でエクスカリバーが崩壊し始めた!」

 

 

千冬の声と同時、壁や天井が崩落し始める。

このまま此処に居たら、いくらISを身に纏っていても耐えられない。

 

 

「脱出する!」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

千冬の指示と同時、5人全員が慌ててエクスカリバーの外部へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面変わって、エクスカリバー外部。

此処では相も変わらず触手とドラゴンの頭部と中衛、後衛が戦闘していた。

すると、

 

 

ギャァアアアアアアア!!

 

 

『っ!?』

 

 

急に通信に割り込んで来た叫び声と共に、今の今までうねうねと蠢いていた触手やドラゴンの頭部が動きを止めた。

 

 

「これは……?」

 

 

「もしかして……!!」

 

 

誰かがそう呟き、全員が一斉にエクスカリバー本体へと視線を向ける。

エクスカリバーからは煙が吹き出しており、前衛が破壊したという事を全員が察した。

 

 

「って、前衛戻ってきてない!?」

 

 

「え、ちょ、え!?」

 

 

「大変じゃん!」

 

 

シャルロット、簪、マドカの順で焦ったようにそう声を出す。

兎に角安否確認をしなくては。

クラリッサが千冬に、チェルシーが束に連絡を入れようとしたその瞬間、

 

 

「あ、鈴さん!」

 

 

「織斑先生たちも全員いる!」

 

 

エクスカリバーから千冬たちが脱出した。

 

 

「全員退避!爆発するぞ!」

 

 

『はい!』

 

 

中衛と後衛が無事な事を知った千冬は指示を出し、それに従い全員が一斉にギガハウリング・クラッシャーの方へと移動を開始する。

 

 

ドガァアン!ドガァアン!!ドガガガガァアアアアアアアアン!!!

 

 

全員がそこそこな距離を取った時、触手やドラゴンの頭部を含め、エクスカリバーが大爆発した。

 

 

「うぉお!?」

 

 

大量の黒煙と共に周囲に残骸が飛び散る。

その勢いは凄まじく、しっかりと距離を取ったのにダリル達の元に到達するくらいだった。

別に避けるのは簡単なのだが、背後に自分達の背後にあるギガハウリング・クラッシャーにぶつける訳にはいかないので、弾いて軌道を変える。

 

 

エクスカリバーの爆発、そして散った残骸が所謂デブリとなり、地球に落下していき大気圏で燃え尽きていく。

そんな光景を、全員が暫く呆然と見ていた。

 

 

「なんだか、綺麗だね」

 

 

「そう、かもな」

 

 

誰かが呟いた言葉に、別の誰かがそう返した。

ずっと見ている訳にもいかないので、千冬を先頭としてギガハウリング・クラッシャーの中へと戻り、ISを解除する。

 

 

「みんな!お帰り!!」

 

 

その瞬間に、待機をしていた束が笑顔で出迎える。

 

 

「ああ、ただいま」

 

 

「作戦成功!おめでとう!!」

 

 

パァン!!

 

 

束の声に応じて、全員が右手を突き出し、打ち合わせた。

これにて、エクスカリバー破壊作戦は成功で幕を閉じた。

そうして、千冬たちは地球へと帰還したのだった。

 

 


 

 

「あああ、急に力が抜けるように疲れが……」

 

 

「本当…疲れた……」

 

 

地球。

イギリスのギガハウリング・クラッシャーを打ち上げた地点。

久しぶりに地表に帰って来たマドカ達が、疲れ果てたようにその場に座り込んだ。

この場に置いて立っているのは千冬と束だけだが、リアルチートな2人でも流石に疲れたらしく、ため息をつき疲労の表情を浮かべていた。

まぁ、実際に戦闘していた千冬に比べ待機していた束は幾分か元気そうではあるが。

 

 

全員が無事に外に出ると、ギガハウリング・クラッシャーは役目を終え、キラキラと輝く粒子に変換され、空気に溶けていった。

 

 

「ありがとう、束さん達を宇宙に連れて行ってくれて」

 

 

その光景を見ながら、宇宙に行くという夢の1つを叶えてもらった束は感謝を述べた。

何時かは絶対、自分の力でそこまで行くと誓いながら。

 

 

「みなさ~ん、お疲れ様で~す!!」

 

 

すると、タイミングを見計らったかのように遠くの方から声が聞こえてきた。

全員が一斉にそっちの方に振り向くと、エクシアがパタパタと走りながら近付いてきた。

何時帰って来るのか不明だったので、近くでずっと待機していたとは思えない元気さである。

 

 

「はぁ、はぁ、ふぅ……改めまして、お疲れ様でした。怪我などをされている方はいらっしゃいませんか?」

 

 

「ええ、全員怪我はしてないわ。ただ、疲労が凄くて……」

 

 

「近くに車を停めさせています。屋敷の方では、入浴の準備やお食事の準備を進めています。歩くのが厳しいようでしたら、ここまで来させますがどういたしましょうか?」

 

 

「私は歩けますわ」

 

 

「私も問題無い」

 

 

「皆様問題無いという事で大丈夫でしょうか?」

 

 

エクシアのその言葉に、全員が一斉に頷く。

 

 

「では、お車までご案内させていただきます」

 

 

ふわりと可愛らしい笑みを浮かべるエクシアに先導され、全員が車に乗り込み、オルコットの屋敷へと向かった。

その車内で千冬が学園に作戦成功の連絡をし、屋敷についてからは入浴をした後に用意してもらったご飯を食べ、ほどなくして全員が夢の世界へと旅立った。

あの千冬でさえも横になってから寝るまで分も掛かっていなかったあたり、相当の疲労だったのだろう。

 

 

そして、寝ている全員の表情は、大きな作戦が終わった安堵感からか、とても穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……安堵するのが間違いだったという事を、直ぐに知る事になる。

 

 

翌日。

少々遅い時間に目を覚ました一行は、同じく少々遅い朝食を食べていた。

 

 

「まだ若干疲れてるね……」

 

 

「仕方が無い。まぁ、数日間は落ち着けるだろう」

 

 

「そうだねぇ…そうだと良いんだけど」

 

 

「お姉ちゃん、なんでフラグ立てたの?」

 

 

「簪ちゃん?今のは言わなかったらフラグじゃ無かったんじゃない?」

 

 

「早くみんなのIS調整するついでに宇宙での活動のデータ取らないと」

 

 

「何故お前は今の流れでそれが言える」

 

 

「それが束さんなのだ~~!」

 

 

この場には、本人達を除けば給仕をしたメイドしかおらず、かなりゆったりとした時間が流れていた。

ただ、チェルシーだけは主であるセシリアと同じ時間、同じ空間で食事して良いのかと内心緊張していたが。

もう少しで全員が食べ終わるといった時、なにやらドタバタと走る音が聞こえてきた。

 

 

『?』

 

 

全員が首を捻ると同時、

 

 

バーン!!

 

 

と、大きな音を立てて扉が開き、はぁはぁと肩で息をしている、とても焦ったようなエクシアが部屋の中に入って来た。

そんなに急いでどうしたのか。

従者が廊下を走ってはいけない。

そんな言葉を発しようとしたが、それよりも前に焦ったままのエクシアが言葉を発した。

 

 

「大変です!IS学園が!!」

 

 

『っ!?』

 

 

その言葉を聞いた瞬間、全員が心臓を鷲掴みされたかのような感覚を覚えた。

 

 

エクシアから聞かされたのは、たった今十蔵からIS学園が襲撃を受けたと連絡が来た事。

その襲撃は今までとは比べ物にならない程の大襲撃で、生徒全員と誘導する為の数人の教員が日本本土の方へ避難した事。

そして、一夏を含めた専用機持ちと、誘導をしなかった教員全員がその襲撃に対応する為に学園島に残り戦闘をしているといった事だった。

 

 

「っ!直ぐに日本に戻る!全員準備を…!」

 

 

「待って!!」

 

 

千冬が立ち上がり、全員に指示を出そうとしたが、束がストップを掛ける。

 

 

「何だ束!学園が、一夏がピンチなんだぞ!」

 

 

「そんなの分かってるよ!でも、みんなはまだ体力が回復して無くて、ISの点検も全くしてない!そんな状態で学園に戻っても、いっくん達の足手纏いになるだけ!だから、今みんながするべき行動は出来るだけ休むこと!束さんは戦えないから、その間にISの整備しとくから!」

 

 

「それは……」

 

 

「そんな判断も出来ないなんて、ちーちゃんらしくないよ!?」

 

 

「……すまなかった。私もまだ疲れているらしい」

 

 

「あはは、そうみたいだね」

 

 

「聞いていたか!?ISを束に渡せ!そして、私達はもう1回寝るぞ!寝れなくても横になっておけ!」

 

 

『は、はい!』

 

 

千冬の指示を聞き、全員がISを束に渡し、先程まで睡眠をとっていた部屋へと逆戻りし、ベッドに入る事になった。

2人の会話から、身体を休めなければいけない事は理解している。

だが、突然の事で心臓はバクバクで、中々寝付けない。

結局、全員がただただ横になっただけで整備が終わり、オルコット夫妻への挨拶もそこそこに日本へと帰国するのだった。

 

 


 

 

日本へと帰国した千冬たち。

束の指導の元時差ボケをしないように半強制的に眠っていたため、活力を取り戻した一行は、避難した生徒達がいるホテルへと向かった。

存在がバレてはいけない束だけは自分のラボへと向かったが。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、学園長!」

 

 

「織斑先生!みなさん!」

 

 

ホテルのロビーに居た十蔵に気が付いた千冬が声を掛けると、十蔵も千冬たちに気が付いた。

 

 

「みなさん、取り敢えず作戦お疲れ様です」

 

 

「そんな事は今は良いです!どんな状況ですか!?」

 

 

「……ここでは話せません、移動しましょう」

 

 

確かに、機密まみれの情報をホテルのロビーなんかで話す訳にはいかない。

ホテルに話しは通してあるので、特に何も言われずとある部屋に入る。

この人数が入ると流石に狭いが、話をするだけなのでこの程度で問題無い。

 

 

「先ず、避難状況ですが、織斑君を除いた生徒全員が避難、このホテルに居ます。大きな怪我をした生徒はおらず、避難する際に転んだ生徒のかすり傷程度です」

 

 

取り敢えず生徒の無事が分かった全員が安堵の息を吐くも、直ぐに続きを催促する様な視線を向ける。

 

 

「そして、私を含めた避難誘導をした教員以外は学園に残り、訓練機を使用して戦闘をしています。それに、織斑君を含めた『PurgatoryKnights』の3人も」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に、全員の表情が一気に重いものになる。

一夏達は無事なのか、戦闘は終わったのか、被害状況はどんな感じなのか。

気になるところを上げたらキリがない。

 

 

ガタッ!!

 

 

マドカ達は立ち上がると、千冬が制止をする前にもう駆けだした。

 

 

「待て!くっ……!」

 

 

「織斑先生!行って下さい!」

 

 

「分かりました!」

 

 

千冬も追いかけようとして、一瞬留まるが、十蔵からの許可を得るとすぐさま同じように駆けだした。

これは言う事を聞かなかったマドカ達を捕まえる為というよりも、マドカ達と同じく学園の様子が気になるから、というものだ。

そうしてこの場に残った十蔵は

 

 

「気持ちは分かります…みなさん、お咎めなどしません。でも、どうか無事でいてください」

 

 

開け放たれたままの扉を見つめながら、そう呟くのだった。

 

 

ホテルから飛び出たマドカ達は、千冬と合流し今出せる全速力で学園へと向かう。

道行く人々の通行量が明らかに普段より少ない。

もしや、こんな場所にまで戦闘音が届いたのだろうか。

不安が全員を駆り立て、速度が上がる。

 

 

学園に向かうモノレールの駅までやって来た。

だがしかし、駅は無人状態で、モノレールも動いていない。

 

 

『っ!?』

 

 

だが、それでも見えてしまったのだ。

何時もなら立派に身構えている校舎が、アリーナが、IS学園が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩れ去り、残骸となって島の上に連なっているのを。

 

 

『っ!!』

 

 

そこから、全員が取った行動は同じで、ほぼほぼ同時だった。

自身の専用機を展開、飛んで学園島へと向かう。

ISを展開したことで、そして近付いていく事で、学園の状態がより鮮明に分かって来る。

 

 

ボコボコになった土地。

なんなら、面積も小さくなっているような気さえする。

 

 

戦闘はもう行われていないらしく、戦闘音は何も聞こえない。

 

 

そして、島の端の方。

残骸が少ない箇所に、ボロボロになったISを身に纏っている真耶を始めとした教員達と、スコールとオータムが居た。

スコール達も、飛んでくる千冬たちに気が付き、なんとか反応を見せようとするも、身体が動かないらしく腕がプルプル動いている。

 

 

「山田先生!」

 

 

「社長!」

 

 

島に着陸し、ISを解除して教員達に駆け寄っていく。

 

 

「ああ、うぅ……織斑先生、みなさん……」

 

 

「あら、お帰り、なさい……」

 

 

声を掛けるも、とても疲労しているようで声すら普段通りに出せない。

なんなら、真耶とスコール、そしてオータム以外は意識すらない。

 

 

「え、ちょ、生きてますよね!?」

 

 

「あ、ああ。いちお、う、全員、生きてるぜ。気絶、して、る、だけだ」

 

 

「みなさん、お帰り、なさ、い。お疲れ、さま、です……すみませ、ん。みなさんは、作戦を、成功させたのに……こん、な、有様で……」

 

 

「山田先生!無理して喋らないで下さい!」

 

 

苦しそうに謝罪をする真耶を楯無が制止する。

 

 

「避難した生徒全員無事だと聞きましたから!誰も死んでない時点で、よくやったと思いましょう!大丈夫ですから!」

 

 

「そうですそうです!全員無事な事を喜びましょう!」

 

 

「は、はい……」

 

 

最後にそう返事をすると、真耶もまた眠るように気絶してしまった。

一先ず呼吸が楽な体勢にさせる。

 

 

「取り敢えず、全員本土に運んで病院ですかね?」

 

 

「そうだな、一先ず学園長と病院に連絡を……」

 

 

そうして、千冬が連絡をしようとした時、クラリッサとチェルシーが気が付いた。

 

 

「「一夏が居ない!?」」

 

 

「なに!?」

 

 

『えっ!?』

 

 

その指摘の声と同時、全員が改めてこの場に居る人間を確認する。

今しがたこの場にやって来た自分達。

ISを身に纏い気絶しているIS学園教員と、気絶はしていないが疲労困憊のスコールとオータム。

十蔵の話から、一夏も学園に残り戦闘をしていた事に間違いは無い。

それなのにも関わらず、一夏が此処に居ない。

 

 

クラリッサとチェルシーは、自分の呼吸が荒くなっていき、顔からも血の気が引いていく感覚を、信じられない程ゆっくりと感じていた。

明らかに体調が悪くなったような様子の自分の部下と従者の様子に、ラウラとセシリアが心配そうに駆け寄る中、シャルロットがスコールの体調を労わりながら質問をする。

 

 

「社長!一夏は、一夏は何処ですか!?」

 

 

「一、夏…?一夏は、此処と真反対の場所で、戦闘をして…私達が、こっち側半分にやって来た、敵を対処して、一夏は、1人でもう半分を……」

 

 

『っ!?』

 

 

スコールのその言葉に、全員が喉元に氷を放り込まれたような感覚を覚えた。

 

 

一夏の実力がかなり高いのは知っている。

でも、いくら何でも1人で半分は流石に敵が多すぎる。

しかも半分を更に分担していたスコール達がここまで消耗しているのだ。

無傷で無事だとは考えにくい。

 

 

そこまで思考が至ったとき、思い出した。

此処に飛んでやって来た時に感じた事。

島の面積が小さくなっている。

削れているのは、此処と真反対だった。

 

 

そしてもう1つ、何時ぞやの襲撃事件の際。

亡国企業の戦闘員が、一夏の身柄を求めていた。

 

 

「「っ!!」

 

 

考えるより先に、身体が動いていた。

クラリッサとチェルシーは立ち上がると、誰かが声を発する前にもう走り出していた。

 

 

「ちょ、待て!危、ねぇぞ!」

 

 

「いや、オータム。ここは行く!」

 

 

オータムが震える声で静止を掛けるも、マドカがそれを振り払い、2人の後を追いかけていく。

その後、続々と3人の後を追いかけ、一夏の事を探しに行く。

そうして、最後に残った千冬も、本土の十蔵に連絡を入れ、病院への準備をお願いしてから後を追いかける。

 

 

「一夏!何処!?」

 

 

「一夏!返事をしてくれ!」

 

 

「お兄ちゃーん!!」

 

 

全員が一夏の名前を叫びながら、残骸だらけの学園の敷地を走る。

地面もかなりボコボコで走りずらいのだが、関係ない。

 

 

「一夏さーん!」

 

 

「一夏ぁ!返事しなさいよぉ!」

 

 

悪路を叫びながら走り続ける事、数分。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……居た?」

 

 

「全然…痕跡すらない…」

 

 

いったん全員で落ち着こうという話になり、ボコボコで残骸まみれの地面で、比較的まともな場所に集まって息を整える。

 

 

「「……」」

 

 

そんな中でも、クラリッサとチェルシーは心ここにあらずといった感じで、キョロキョロと視線をいろいろな方向に向けていた。

普段は冷静な2人の珍しい姿に、誰も何も言えなかった。

2人は一夏の恋人だ。

そんな反応になるのは仕方が無いと、全員が理解しているからだ。

 

 

「…もう暫く探したら、山田先生たちを本土に連れて行く。問題無いな?」

 

 

そんな中で、千冬がそう切り出した。

気絶している真耶達を何時までも放って一夏の捜索をする訳にはいかない。

 

 

「……はい、大丈夫です」

 

 

「分かっています、そんな事」

 

 

クラリッサとチェルシーは、冷静にそう返した。

千冬にとって一夏は、大事な弟だ。

それでも、グッと気持ちを押し殺しているのだから、自分達が我儘をいう訳にはいかないと思ったからだ。

 

 

「さぁ、そろそろ息も整っただろう。捜索の再開を……」

 

 

千冬が立ち上がりながら発した言葉は、途中で途切れた。

 

 

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

 

 

と、瓦礫の向こう側から、足を引きずりながら歩いて来る音が聞こえて来たからだ。

千冬たちは全員集まってるし、スコール達は歩けない。

そこから導き出される、その足音の主は……

 

 

「「一夏!」」

 

 

クラリッサとチェルシーは名を呼ぶと、その声が聞こえた方向に走り出す。

千冬たちも2人の後を追いかけるように走り出す。

 

 

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

 

 

瓦礫の向こうからの足音が大きくなってくる。

そして、いろいろな残骸によって生み出された曲がり角から、1人の人物が姿を現した。

クラリッサとチェルシーは笑顔を浮かべ、その人物に向かって行こうとして……

 

 

「「………………え?」」

 

 

思わず足を止め、呆然とした表情でそう呟いてしまった。

一瞬遅れてその人物を見た千冬たちも、同じような表情を浮かべている。

 

 

姿を現したのは一夏だ。

間違いない。

だが、記憶にある一夏と、目の前の一夏の姿が一致しない。

 

 

一夏の髪の色は千冬とマドカと同じ黒で、肌の色はアジア人らしい色だ。

 

 

だけれども、目の前にいる一夏の髪と肌の色は、白かった。

 

 

白、本当に白い。

髪を染めるとか、色を抜くとかそんなレベルじゃない。

元々白という色で存在していたかのように、真っ白だ。

 

 

髪だけだったら、まだ何か声を出せたのかもしれない。

だけれども、肌まで真っ白なのだ。

日本人は、日焼けで黒くなることはあっても、真っ白になる事は無い。

しかも、何かを塗って白くしているのでもない。

 

 

そこまで観察して、気が付いた。

一夏の目の色だ。

 

 

一夏の目の色も、千冬とマドカと同じはず。

だが、今目の前にいる一夏の目は、黄金に輝いていた。

 

 

「い、一夏…?」

 

 

「その、肌と髪は…?」

 

 

「っ……!?」

 

 

フラフラと足を引きずり、俯きながら歩いていた一夏は、クラリッサとチェルシーに声を掛けられた事で、漸く存在に気が付いた。

ビクっと身体を震わせながら、全員がいる方向を見る。

すると、なにやら怯えるような表情を浮かべ、

 

 

「う、あ、うわぁああああああああああああああああああああ!!」

 

 

急に叫びをあげると、煉獄騎士の鎧を身に纏っていないのにも関わらず、その右手にエクスピアソードを出現させ、

 

 

「あああああああああああ!!」

 

 

そのままの勢いで地面に向かって振るった。

 

 

ドガァン!!

 

 

「きゃあ!?」

 

 

「なに!?」

 

 

飛んだ斬撃は地面にぶつかり、土煙が発生する。

だが、急に発生させたものだ。

そう時間を経たず、土煙が晴れていく。

 

 

僅かに目を開けながら、クラリッサとチェルシーが見たのは。

 

 

背後に、バディワールドへのゲートを開き、そこへと逃げるように入ろうとしている一夏だった。

 

 

「一夏!待って!」

 

 

「一夏ぁ!!」

 

 

何時もだったら絶対に反応を示す筈の、大事な恋人2人のその言葉を無視し、一夏はそこに身体を滑り込ませた。

それから1秒も経たずにゲートが閉じ、この場に何も無くなった。

 

 

「「一夏……」」

 

 

クラリッサとチェルシーが、同時にそう呟く。

その呟きには誰も反応を示さず、空気に溶けていった。

 

 

 

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