無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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堕チル騎士、進ム魔道

三人称side

 

 

千冬達専用機持ち達が宇宙にてエクスカリバーと戦っているなかで行われたIS学園への襲撃。

人数を考え、襲撃者の半分を引き受けた一夏と煉獄騎士団たち。

順調に撃破をしていったが、最後の1人を倒した時、銃火器で構成された機械竜のような外見のISだと思われる何かを身に纏っている深夜が現れた。

 

 

深夜に対しては攻撃は全くと言って良いほど効かず、煉獄騎士団は一夏、オルコス、白式、白騎士、シルバースタッフ、クロスボウ、ニードルクロー、ホーリーグレイブの8人を除き戦闘が不能になってしまった。

 

 

それでも奮起し、立ち向かおうとする一夏達を嘲笑うかのように。

 

 

「っ――――――!!」

 

 

「がぁああああああああああ!!」

 

 

深夜の咆哮と共に銃火器の機械竜の全身が発光。

その光は放射状に広がり続け、IS学園の敷地全てを飲み込んだ。

 

 

「う、ぐぅ、ぐ、がぁあああああああああああ!?!?」

 

 

その光に飲み込まれた途端、襲ってくる衝撃波。

もう身体の関節が無くなりバラバラになってしまうのではないか。

思わずそう考えてしまう程だ。

 

 

一瞬遅れて襲ってくるのは熱と恐ろしいまでの浮遊感。

深夜に向けて構えていたエクスピアソードを地面に突き刺し耐えようとするも、未だに続く衝撃波、そして熱によって遅れてしまった思考と反応。

抵抗する事もかなわず、煉獄騎士は一度上空まで持ち上げられた後、思いっきり地面に叩きつけられた。

 

 

カツ―――――――――ン

 

 

「カハッ……!?」

 

 

ヘッドパーツが吹き飛び、髪が伸びた一夏の素顔が晒されると同時、肺に残っている空気が一気に漏れる。

物理基礎の授業で使えるんじゃないかというくらいに綺麗に数度地面を跳ねた後、ゴロゴロと転がっていく。

 

 

「う、ぐぅ……っ!!」

 

 

漸く停止し、苦悶を漏らす一夏。

すぐさま上体を起こそうとするも、身体が言う事を聞かない。

 

 

「くっそ…そういう全体を吹っ飛ばす攻撃は1回じゃねぇのかよ…!」

 

 

悪態でも何でもいいから言葉を発しなければ、全身の痛みで意識を失ってしまいそうだった。

 

 

ズシン!ズシン!ズシン!ズシン!

 

 

深夜が再び歩みを進めて来るのが音と振動で分かる。

 

 

(まぁ確かに全体除去を連発する事も出来るっちゃ出来るけどさ…ゲージ消費しろよこの野郎…!)

 

 

心の中で不満を漏らしながら、身体を半回転。

仰向けからうつ伏せになってから、全身の力を振り絞り、なんとか立ち上がる。

 

 

先程はなんとか離さなかったエクスピアソードは、今回の攻撃で紛失してしまった。

アイテムが無ければバディファイターは攻撃に参加出来ない。

つまりは、今の一夏はただ魔法で耐えるだけしか出来ない状況だ。

 

 

それでも。

一夏は立ち上がるしか無かった。

 

 

一夏は誓ったのだ。

嘗ての相棒に、そして、今の相棒に。

守るべきものを、全力で守ると。

ならば、自分が何時までも寝っ転がっている場合ではない。

 

 

自分を守るために散ったディミオスに。

今もなお共に戦ってくれているオルコスに。

この後も、胸を張れるように。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……うぉおおおおおおおおおお!!」

 

 

一夏は雄叫びと共に立ち上がる。

 

 

ズシン!ズシン!ズシン!ズシン!

 

 

その機械竜の巨体は、未だに進行を続けている。

胸部から肩から先だけが露出した深夜は、未だ生気の無い目で破壊されたIS学園を、そして目の前でフラフラになりながらも立っている一夏を見下ろしている。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

立っているだけで息が上がってくる。

エクスピアソードを杖代わりにもできないし、未だに全身が痛い。

それに、煉獄騎士の鎧もボロボロになってしまっている。

それでも、一夏は腕に力を籠め、ファイティングポーズを取る。

普段から考えると何とも締まらない感じになってしまうが、今はこれが限界だった。

 

 

《いち、か…!!》

 

 

「っ!オルコス!」

 

 

一夏と同様、遠くの方にふっ飛ばされていたオルコスがここで合流した。

1回目吹き飛ばされた時、もう既に結構消耗してしまっていたが、もう1回吹っ飛ばされてしまった為、その度合いは更に酷くなってしまっている。

マントはビリビリになっていたり、その身に纏う鎧も罅が入っていたり、所々が欠損してしまっている。

オルコス最大の特徴とも言って良い、頭部のソード部分が欠けていないのがほぼほぼ奇跡だ。

 

 

「…いけるか?」

 

 

《…当然……!!》

 

 

その返答を聞いた一夏は、カードを1枚取り出し天に掲げる。

 

 

「俺とオルコスの絆の力!」

 

 

その瞬間、両肘と両膝から先を残し、ボロボロだった煉獄騎士の鎧が弾け飛び、一夏の周囲に白いエネルギーが集まり衣を作る。

 

 

 

 

 

「ドラゴンフォース“煉獄の型”!解、放ぉ!!」

 

 

 

 

 

ドラゴンフォースを解放し、その黄金に輝く両目を見開き、改めて深夜に視線を向ける。

先程までより格段に身体が軽い。

今ならば、十分に戦える。

 

 

「行くぞオルコス!」

 

 

《おお!》

 

 

2人は同時に地面を蹴り、深夜に接近する。

ほぼほぼ万全の状態の煉獄騎士団の総攻撃で、銃火器で構成されたその身体には傷一つ付かなかったのだ。

いくらドラゴンフォースを解放しているとはいえ、オルコスと2人では普通に攻撃していたのではたちまち返り討ちだ。

となると、狙うは当然。

 

 

唯一露出している深夜の肩から上の部分だ。

もはやその機械竜がISなのかそうじゃ無いのかは一夏に判断は出来ない。

だけれども、この機械竜に取り込まれているような深夜は、核に近いものである可能性が高い。

重要なパーツでなければ、わざわざ搭載しないだろう。

 

 

……まぁ、ならば露出させる訳が無いという考えも当然あったのだが、もう深夜に攻撃するしか手掛かりは無いのだ。

仮に罠だったとしても、そこに攻撃を仕掛けるしか無いのだ。

 

 

ギロリ

 

 

そんな擬音が聞こえて来るんじゃないかと言わんばかりに、表情が動かない筈の3つの竜の顔が一夏とオルコスを睨みつけた。

ように感じた。

 

 

その瞬間に、機械竜を構成している全ての銃火器の銃口が2人に向けられる。

 

 

「《っ!》」

 

 

2人も当然それに気が付き、回避行動に移ろうとした直前に

 

 

ババババババァン!!ババババババババババァアアアン!!!!

 

 

超密度の銃撃が開始された。

 

 

「うぉお!?」

 

 

《くぅ!?》

 

 

当然、回避行動を取ろうとしていたので、そのまま行動に移すが、その濃密な弾丸の雨に進行は妨げられてしまいもうこれ以上深夜に近付けなくなる。

チェルシー達のBT機が有するビットのように、四方八方から射撃してくるわけではない。

問題なのはその密度だ。

 

 

もはや弾幕シューティングのゲーム画面を見ているかのような気持ちになってくる。

しかし、その手のゲームの攻撃は一般的なシューティングゲームの敵の攻撃よりも遅い場合が多いが、この攻撃は普通に超速で弾丸やレーザーが襲ってくるのだ。

更には2次元ではなく3次元で。

 

 

「キャスト!『誇りを(むね)に、刃は不滅』!」

 

 

一夏は防御魔法を発動。

ドラゴンフォースの右腕の刃で弾丸を弾き返す。

 

 

だがしかし、足りない。

1回攻撃を防いだだけでは、状況を打破できない。

 

 

(くぅ…!?考えろ…!考えろ考えろ考えろ!!)

 

 

あの日、ディミオスと出会ってから始まった煉獄騎士として始まった戦いの道。

その中で1番だと言ってもいい程に激しい動きをせざるを得ない。

ドラゴンフォースを解放し、尚且つ大量のアドレナリンが分泌されているのにも関わらず、身体の奥底に眠っている激痛が襲ってくる。

少しでも行動選択を誤れば、即THE ENDだと言っても過言ではない。

 

 

そんな極限状態の中、一夏は状況打破の為に脳のリソースを割かないといけない為、オルコスよりも何度か怪しい場面が多い。

 

 

《一夏!》

 

 

オルコスの呼びかけにも、反応出来ない。

この攻撃の一発の威力がどんなものかは分からない。

それでも、一撃で戦闘不能に…引いては、死亡すると考えなければならない。

よしんば一撃なんとか持ちこたえても、この弾幕密度だ。

すぐさま二撃目三撃目……と、体勢を立て直す前に次々と攻撃ををくらってしまう可能性が高い。

となると、やはり攻撃を受ける訳にはいかない。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」

 

 

(くっ…体力が…このままでは思考力が……!!)

 

 

一夏の体力の限界が近付いてきた。

息も上がって来た。

これ以上時間が掛かると、もはや回避など出来ない。

 

 

《一夏!意識をはっきりとさせろ!》

 

 

もはや、オルコスの声は一夏に届いていない。

限界が近い身体、状況打破の為にフル回転させている脳。

もう、駄目だった。

 

 

《っ!一夏!!》

 

 

「しまっ……」

 

 

一夏の身体がぐらっと傾いた。

 

 

「がぁああああああああああ!!」

 

 

その瞬間に深夜が生気の無い表情のまま咆哮をあげ、3つの竜の視線が一夏に向けられる。

 

 

「くぅ…!!」

 

 

(回避…いや、間に合わない…!防御魔法…も、無理か……!?)

 

 

もはやどうすることも出来ない。

一夏はやって来るであろう弾丸の衝撃に耐えようと、残り僅かな力を全身に籠め両目をつぶる。

だが、何時まで経っても深夜の攻撃が行われることは無かった。

 

 

《マスター!忘れてもらっちゃ、困ります!》

 

 

《さっき、あんなに格好良く並んで気合い入れたんですから!》

 

 

《っ!白式!白騎士!》

 

 

絞り出すような声と共に、一夏とオルコスに気を取られ周囲を気にする事など微塵もしなかった深夜の背後から。

一夏がドラゴンフォースを解放した時からずっとタイミングを伺っていた白式と白騎士が、深夜に渾身の一撃を叩き込んだ。

 

 

「がぁああああ……!?!?」

 

 

深夜がもがくような声で身体を180°回転させようとする。

だが、行動に移る前

 

 

《だから、俺らもいるんだよ!!》

 

 

《へっ、団長と一夏だけに銃口を向けたのが間違いだったな!!》

 

 

白式と白騎士と同じように、息をひそめタイミングを見計らっていたシルバースタッフ達も攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「がぁああああああ……!!」

 

 

深夜は悶えるような声を漏らす。

今の今まで一夏とオルコスに向かって撃たれていた大量の弾丸の雨が止んだ。

 

 

《一夏ぁ!今だ!》

 

 

「あぁ…!分かってる!!」

 

 

オルコスの3度目の呼びかけに、一夏は漸く反応する事が出来た。

キッと視線を鋭くすると、フラフラだった身体を無理矢理動かし一気に深夜に接近する。

 

 

「深夜ぁああああああ!!」

 

 

一夏が深夜の名を叫ぶ。

白式たちの不意打ちにいちいち反応し、その方向に身体を向けようとしていた。

つまり……

 

 

「がぁあああああ!!」

 

 

深夜は一夏の叫び声に反応。

身体の向きを…その胸部の露出している肩から上も含め、突っ込んで来る一夏に向ける。

 

 

深夜は攻撃の意思を向ける相手には、先ず攻撃の前に身体の全面を向けようとする。

そしてその間は、発砲や尻尾のような部位での殴打など…およその攻撃を一切しない。

機械竜の身体はその大きさからは想像できない程はやく動けるが、それでもやはり通常のISなどと比べると鈍い。

 

 

「おらぁあああああああああ!!」

 

 

バキィ!!

 

 

「ぎゃああああああああ!?!?」

 

 

深夜の身体が向き直ったその瞬間。

一夏渾身のパンチが生身の深夜の顔面に叩き込まれた。

 

 

一夏の素の身体能力は教職員を含めIS学園で1番であり、勿論パンチ力もかなりある。

確かに今は万全の状態とは言えないが、それでもドラゴンフォースという一種のバフ、そして深夜の元まで突っ込んできた際のエネルギー。

その全てをこの一撃に籠めた。

その結果として、必殺技を除いた中では、今までの戦闘の中で1番の威力が出た。

ドラゴンフォースの打撃力はオルコス達と変わらない2だが、今打撃力はそこまで関係が無い。

 

 

ぐらっ……ドガシャァアアアアアアアアン!!!!

 

 

煉獄騎士団の総攻撃を受けてもびくりともしなかった深夜。

それが、生身の部分に一撃パンチをくらっただけで、いともたやすくバランスを崩し、倒れ込んだ。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…う、ぐぅ……!?」

 

 

殴った後の一夏は、苦しそうな表情を浮かべるとそのまま頭から地面に落下していく。

 

 

《一夏!》

 

 

地面すれすれの所で間一髪オルコスがキャッチに成功。

しかし、その瞬間にドラゴンフォースが霧散し、髪や目の色が元の一夏のものに戻る。

煉獄騎士の鎧は再生しないので、今の一夏は体調が滅茶苦茶悪く、しかもほぼ生身の人間である。

このまま戦場に居させるわけには行かない。

 

 

だからといって、そんな避難行為に人員も時間も割いている余裕は無くて。

 

 

「ま、だ、終わって、無いぞ!!しん、やの状況…かく、にん!!かの、う、なら、深夜を、そこから、引きず、り、出せ!無理で、も、無力化!いそ、げ!!」

 

 

オルコスに抱えられたまま、必死に声を絞り出す一夏。

だが、その直後に激しく咳き込んでしまう。

 

 

「ぐぅ…!まだ、だ!まだ、終わって、ない、ん、だ!!」

 

 

《一夏!無茶をするな!》

 

 

無理矢理にでも立ち上がろうとする一夏を、オルコスが宥める。

それでも、一夏はまだ立ち上がろうとする。

それは煉獄騎士としての、バディファイターとしての覚悟の1つだった。

 

 

今回、煉獄騎士団には危険な方法での戦闘をさせてしまった。

それなのにも関わらず、自分だけが逃げるだなんてこと、出来なかった。

 

 

《だが、一夏…!》

 

 

それと同じく、オルコスにもまた譲れないものがあった。

この相棒は、何故こんなにも周囲の事を考えて、周囲の為に行動できるのだ。

 

 

これはもう、ただの自己犠牲…もしくはそれ以上だ。

仲間の為、友人の為、相棒の為、恋人の為。

織斑一夏という人間は。

自分以外の為に精神も命も擦り減らしてきてしまったのだ。

 

 

何時からだろう、一夏がこんなにも自分を後回しにしてしまうようになってしまったのは。

今だに戦場に残り続けようとする一夏を、必死に説得しながら、オルコスは自然と考えてしまっていた。

数舜もしないうちに、その切っ掛けを思い付いたオルコスの表情は少し悲しそうなものになる。

 

 

《一夏!そんなに自分を犠牲にしなくてもいいんだ!》

 

 

「…でも!この、じょうきょう、で!にげらん、ない、んだ、よ!!」

 

 

バディになって、実はまだ半年も経っていない。

それでも、互いの事を信用し、頼りにしているからこそ。

どうしても、この気持ちを押し通さないといけない状況なのだ。

 

 

2人の主張はどちらも正しく、どちらも譲れない。

だからこそこの言い合いは平行線だ。

 

 

まぁ、偶にはいいかもしれない。

どれだけ信頼し合っているバディであったとしても、時には意見をぶつけ合い、一種の喧嘩をしてガス抜きをするのも大事だろう。

ここが戦場の真っただ中で、そして戦闘が終わったという確証が無い状態じゃ無ければ。

 

 

《うわぁああああああ!?!?》

 

 

ドガァン!ガシャ!ガシャ!

 

 

「《っ!?》」

 

 

急に聞こえてきた、団員たちの悲鳴。

なにかが別のなにかにぶつかる音、吹き飛んでいって地面に転がる音。

一夏とオルコスは言い争いから一瞬にして現実に引き戻された。

 

 

「っ!何が…!?」

 

 

《一夏ぁ!!》

 

 

一夏が状況を取り敢えず認識しようとしたその瞬間。

オルコスによって抱えられ、遠くの方に放り飛ばされた。

 

 

「がはっ!?」

 

 

急なオルコスの行動に、一夏は転がりながら苦悶の声を漏らすことしか出来なかった。

何が起こったというのか。

何故オルコスはこんな行動を取ったのか。

一夏は確認する為に慌てて視線を上げ。

 

 

 

 

 

 

 

「え…………」

 

 

 

 

 

 

 

言葉を失った。

目の前の光景が信じられないと言わんばかりに両目を見開き、動きも止まった。

顔から血の気が引いていき、開いた口がふさがらなくなり、身体がガクガクと震えている。

 

 

だって、だって、だって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ガハッ……!》

 

 

「オルコス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後から腹部に突き刺され、貫通している銃火器が集まって構成された尻尾のような何か。

腹部からは青白い液体…ダークネスドラゴンWのモンスター特有の色の血液が、ぼたぼたと零れている。

一夏が涙を浮かべながらその名を叫ぶと同時、尻尾がオルコスから引き抜かれる。

 

 

《ガッ……!?》

 

 

ドシャア!!

 

 

尻尾のような何かが引き抜かれると同時、オルコスが苦悶の声を漏らし、その場に倒れ込む。

栓が無くなった腹部の穴からは、どくどくと青白い血が湧き水のように溢れ出て来る。

 

 

「オルコス!オルコスぅ!!」

 

 

さっきまで無理矢理動かしていた身体。

オルコスに放られさ際に受身を十分に取れなかったのか、それとも単純に身体がついに5回目くらいの限界を迎えたからなのか。

指先を少し動かしただけで、雷に打たれたんじゃないかと言うほどの激痛が襲ってくる。

だが、一夏は身体を必死に動かし、這いずりながらオルコスの元へたどり着く。

 

 

「オルコス!しっかりしろ!オルコス!おい!」

 

 

《いち、か……》

 

 

オルコスの身体はキラキラとした紫の粒子になり空気に溶け始めており、薄くなり始めていた。

その光景は、学園祭の時の記憶を……ディミオスが死んだ時の記憶を否が応でも思い出させる。

 

 

《ああ、これが、死か…なるほど、な……》

 

 

「オルコス!何言ってるんだ!おい!」

 

 

《かつ、て、不死、の呪い、に、掛けられて、いた、我ら、が、こうなる、と、は……》

 

 

何処か焦点のあっていない眼で、息も絶え絶えといった様子で、言葉を紡ぐオルコス。

 

 

「オルコス!まだ、まだ間に合うから!直ぐはかせの所に!!」

 

 

一夏の両眼には涙が浮かんでいるし、声も上ずっている。

 

 

《らし、く、ない、な……》

 

 

そんな一夏を見て、オルコスはフッと笑みを浮かべる。

 

 

《われ、は、ディミオ、ス、様、ほど、お前、と共に、居れた、訳では、無いが……それでも、お前の、その、顔、は似合わん、と、思う、ぞ…》

 

 

「っ…オル、コス……!!」

 

 

その言葉の裏に隠れた思いを、一夏はしかりと受け取った。

『最後なのだから、そんな顔しないでくれ』

最後なんかじゃない、と叫びたくなる気持ちをグッと堪え、なんとか必死に笑顔を作る。

 

 

オルコスの身体はドンドンと薄くなってきており、下半身はもはや無いと言っても過言では無かった。

 

 

《いち、か……お前、とバディに、なれて…良かった。我は、後悔、など……していない……》

 

 

「オルコス…俺もだ。お前と過ごした、数ヶ月、は…苦しい時も、あったけど…その度に励まして、くれて…今の俺があるんだ……」

 

 

ここまで言って、2人とも言葉に詰まった。

だけれども、もう時間が無い。

だから。

 

 

「オルコス、今まで…ありがとう…楽し、かった……!!」

 

 

《こちら、こそ、だ……あり、が、とう……いち、か、守、る、べきもの、を……》

 

 

「ああ……おやすみ、相棒。やすらかに」

 

 

一夏が最後にそう告げると。

オルコスは穏やかな笑顔を浮かべ。

 

 

《おやすみ、相棒》

 

 

その言葉を残し、オルコスの身体は空気へと溶けていった。

そうして、一夏の手に残ったのは、丸型の穴が開いたオルコスのバディカード。

 

 

「う、ぐ、ぁ、あ、あ、ああああああああ」

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

一夏は膝を地面につけ、叫んだ。

 

 

「なん、で、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでぇ!!!!!」

 

 

バディカードを左手で持ちながら、右手で頭を掻き毟る。

 

 

「ディミオスもぉ!オルコスもぉ!なんで俺のバディはぁ!こっちで死んじまうんだよぉ!!」

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

一夏の叫びは誰にも届かない。

ディミオスも。

オルコスも。

こっちの世界で死んだ。

 

 

こうなる事を承知で戦った。

否、自分が戦わせた。

自分が戦わせ、その結果として相棒は死んだ。

 

 

自分が、殺した。

 

 

 

 

 

ドゴォン!!

 

 

 

 

 

その大きな音で、思考の海から一気に引き戻された。

 

 

先程まで横たわっていた深夜が、その巨体を起こしたのだ。

深夜の拘束をしようとしていた白式たちは、如何やらオルコスが刺される前に吹き飛ばされ、他の団員達と同じように戦闘不能になってしまったようだ。

一夏からだと、横たわって動けなくなっているまでしか分からず、生死は不明だった。

 

 

ズシン!ズシン!ズシン!ズシン!

 

 

その巨体を揺らしながら、深夜が近付いて来る。

生気の無い目と、3つの機械の竜が一夏の事を見下ろしている。

 

 

「そうだ…俺が殺した…でも……」

 

 

一夏はその場に俯いたままそう呟くと、ぐるりんと首を回し、深夜を見る。

 

 

「お前達が悪い」

 

 

もうドラゴンフォースも、煉獄騎士の鎧も無い一夏はただの人間。

もはや出来る事など、無い。

それでも。

一夏は怒りに我を忘れ…………

 

 

 

 

 

 

る寸前。

一夏の視界は瓦礫とあるものを捉えた。

それは吹き飛ばれる前まで持っていたもので、紛失していた……

 

 

動きを止めた隙を付き、一夏の事を踏む潰さんと言わんばかりに深夜が巨大な足を振り上げた。

その瞬間。

一夏が見つけた()()が、勝手に動き出し生身の深夜の部分に向かって飛んでいった。

 

 

「がぁあ!?」

 

 

急な意識外からの攻撃に思わず深夜は中断。

バランスを崩し、転倒しそうになりなんとか堪えようとする。

なんとか一夏は脱出し、出来るだけ深夜から距離を取る。

 

 

はぁはぁと荒れている息を整えようとしていると、深夜に攻撃を仕掛けた()()が一夏の目の前に突き刺さった。

 

 

「エクスピアソード……」

 

 

呆然と呟く一夏。

その脳裏に、自然とある光景が思い起こされた。

それは、あの時……人間ではあり得ない程の発熱を起こしたあの時。

ヒーローWでメンジョーはかせに診察をしてもらった時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、説明しようか…一夏君、君は……」

 

 

一夏の目の前に座るメンジョーはかせ。

固唾を呑んで言葉を待つ一夏。

 

 

そうして、メンジョ―はかせは言葉を発する。

一夏の、身体の事についてを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「徐々にだが、身体が人間のものでは無くなり、バディモンスターのものになっている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

その言葉を聞いた一夏は、呆然とそう呟いた。

 

 

「は、ははははは…は、博士、冗談が……」

 

 

一夏のその言葉は、途中で途切れた。

メンジョ―はかせの表情から、冗談ではないと分からされたから。

一夏の口元は震えており、表情も良いものとは言えない。

 

 

『マスター…』

 

 

「い、何時から…なんですか?」

 

 

白式の声掛けを無視して。

一夏は震える口でなんとかそう呟いた。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

体調は回復しているのにも関わらず、一夏の呼吸は荒い。

その眼には、驚愕と不安、そして不安が見えていた。

 

 

「やっぱりか…」

 

 

そんな一夏の様子を見たメンジョ―はかせは小声でそう呟くと、説明を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何時から、と言われると、最初から、と言うしかない」

 

 

「最初…から?」

 

 

「ああ。一夏君、君はディミオスと出会ったばかりの頃、ダークネスドラゴンWで生活していた。食事を含め、ね。ダークネスドラゴンWの食事は人間が口にする事を考慮されていない。いわば、モンスター専用なんだ。それを長期間接種し続けた事によって、身体が食事に適応していった。その結果として、身体の細胞が人間のものからモンスターのものに置き換わっていったんだ」

 

 

「そん、な、こと、が……」

 

 

「信じられないが、そうだとしか言いようが無い。君の発熱は、一種の拒絶反応に近い」

 

 

「拒絶、反応……」

 

 

はかせの言葉に、一夏は呆然とした返事をする事しか出来ない。

それを見ながら、はかせは説明を続ける。

 

 

「とはいっても…食事を摂取しただけでは、拒絶反応が出るほどの変化は起こらない…ザックリ言うのなら、変化の為の基盤が出来ていた程度だ。恐らく、拒絶反応が出る前に一夏君が寿命を迎えていたはずだ。」

 

 

「なら、なん、で……」

 

 

「……数か月前、君は刺され意識不明になった。その時、ダークコア内に居る白式と白騎士に…ISコアに身体を治療してもらった。ダークコアのエネルギーを使用して」

 

 

「…はい……」

 

 

「君のダークコアは正規品ではない、煉獄騎士団の魔力で再現された品だ。そんな魔力の塊のエネルギーを利用し、大きく欠損した身体を修復した」

 

 

「っ!つま、り……」

 

 

ここまで言えば、一夏でも分かった。

要は、あの臨海学校で深夜に刺された時に負った傷は。

魔力によって治療されたものだと。

そして。

 

 

「君の身体はその時、大量の魔力を取り込んだ。変化の基盤が出来つつあった所にね。その結果、君の身体は一気にモンスターへと変化してしまい…今こうして拒絶反応が出てしまっている」

 

 

「……」

 

 

その事実が、中々受け入れがたくて。

一夏は暫くの間言葉を発する事が出来なかった。

数舜後、一夏はゆっくりと口を開いた。

 

 

「俺は、今後どうなるんですか……?」

 

 

「モンスター化が進行するのは間違いない。となると恐らく、今後拒絶反応の症状が重くなったり、頻度が多くなったりする可能性が高い。メリット…って言って良いのか分かんないけど、身体能力は上昇すると予想される」

 

 

一夏の顔色は非常に良くない。

それでも、最後まで言わなければならない。

 

 

「……完全にモンスターになってしまえば、拒絶反応は起こらなくなる。ただ、自然進行に任せているとますます苦しくなる。だから…どうにもできない程苦しくなったら、こっちで進行を促進させるって手もある」

 

 

《どうやってだ?》

 

 

ここまでずっと黙っていたオルコスが口を開いた。

はかせはオルコスの方を向きながら説明を続ける。

 

 

「それは簡単。また魔力を身体に取り込めばいい。例えば…エクスピアソードとかをね」

 

 

一夏はそのやり取りを、何故か遠くの方で聞いていた。

 

 

そしてこの後、研究所の外で一夏とオルコスは会話をし、バルソレイユからドラゴンフォースの力を授かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

一夏は無言でエクスピアソードを掴み、それを支えに立ち上がると、音を立てながら引き抜く。

 

 

「がぁあああああ!!」

 

 

バランスを崩していた深夜がなんとか態勢を立て直すと、咆哮をあげる。

それを冷めた目で見ながら、一夏はエクスピアソードを掲げる。

 

 

「もう、良いぜ。お前を…お前ら亡国企業を如何にか出来るんなら……」

 

 

一夏はエクスピアソードを両手で掴み、その切っ先を自分に向ける。

エクスピアソードは、ダークコアデッキケースと同じく煉獄騎士団によって造られたもの。

つまり、魔力の塊だ。

 

 

息を吸い、一気に吐く。

 

 

 

 

 

「人間なんてやめてやらぁあああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

その叫びと共に、一夏は自分にエクスピアソードを突き刺した。

 

 

 

 

 

「ぐぅうううう!?がぁあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

刺した箇所からは、血が噴き出ない。

その変わり、刺した箇所からはディミオスやオルコスが死んだ時と同じような、紫の粒子が勢いよく噴き出ていた。

 

 

「がぁあ!あああ!!あああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

紫の粒子が一夏の足元に集まり、大きな魔法陣を作っていく。

それと同時、一夏の髪や肌が白く染まっていく。

それは色が抜け落ちたのではなく、元から白であったかのように白くなっていく。

 

 

「がぁあ!?」

 

 

急な一夏の行動に、深夜が驚いたような声を発する。

 

 

一夏はエクスピアソードを更に奥へと差し込む。

背中側に貫通することなく、一夏の身体に取り込まれていく。

 

 

「ああああああ!!!!!」

 

 

最後の一押しで、完全に一夏の身体の中に入った。

足元の魔法陣からバチバチと電撃と火花が散る。

 

 

《がぁあ!がぁあああああああああああああ!!!!!!!!!》

 

 

最後の一番大きな叫び声をあげると、魔法陣からエネルギーが漏れ出す。

エネルギーはドーム状となり、一夏の事を包み込む。

 

 

ザンッ!

 

 

そのドームから翼が出て来る。

一瞬後、剣と尻尾もドームを突き破るように姿を現し、中にいる一夏がドームを払うように身体を動かすと、ドームは霧散した。

 

 

その中から出て来たのは、人間では無かった。

ディミオスやオルコスに似た外見のドラゴン。

身に纏う鎧は、ディミオスの黒でもオルコスの青でもなく、酸化しかけた人間の血液のような暗赤色。

差し色の金もどこかくすんでおり、背中には光を一切反射しない漆黒どころか暗黒のマント。

 

 

「がぁあああああ!!」

 

 

深夜が咆哮をあげ、ドラゴンの事を踏みつぶさんと行動に移す…その直前。

 

 

《……》

 

 

そのドラゴンは無言のまま地面を蹴ると、攻撃モーションに移行する直前の一瞬の隙を付き、胸部の深夜に肉薄する。

 

 

《ハァアアアア!!》

 

 

その手に持つ剣を、深夜と機体の隙間に差し込んだ。

いや、無理矢理ねじ込んだ。

 

 

「ぎゃあ!?」

 

 

深夜が悲鳴を上げるが、ドラゴンにとってはそんなもの微塵も関係ない。

そのまま剣を捻り隙間をこじ開けると、深夜の首根っこを掴み機械の竜から無理矢理引きずり出した。

 

 

バチバチバチバチ!!

 

 

ガッシャアアアアアアアアン!!

 

 

その瞬間に、機械竜が火花を散らしながら地面に倒れ込む。

引きずり出した深夜を地面に寝っ転がしたドラゴンは、そこで違和感に気が付いた。

深夜が露出していたのは、肩から上。

それより下の身体は、失踪する前を除いたら初めて見るのだ。

 

 

《これは……機械……?》

 

 

ドラゴンが呆然とそう呟いた。

そう、深夜の肩から下はどう考えても機械であり、深夜が肉体に改造を受けているのは明らかだった。

 

 

《これはいったい……》

 

 

ドラゴンが思考を巡らせようとしたその瞬間。

悪寒が走った。

バッと地面を蹴りその場から跳躍する。

その瞬間に、さっきまでドラゴンが立っていた箇所に銃弾がめり込んだ。

 

 

遠くに着地したドラゴンは、深夜が倒れていた方向を向く。

するとそこには、先程まで存在していなかった人物が立っていた。

 

 

30代後半といった風貌の男性で、白衣を着用し、その手には拳銃を握っている。

その拳銃で先程の弾丸を撃ち出したのは明らかだが、弾丸の威力と拳銃の大きさがどう考えてもつり合わない。

何かしらの改造を施しているか、1からのハンドメイドなのはほぼ確定だろう。

ISとかいうトンデモ発明が存在しているのだから、そんな事あり得ないと言えないのだ。

 

 

《誰だ、貴様……》

 

 

「ん~~?化け物の生みの親…かな?」

 

 

剣を切っ先を向けられながらも、白衣の男性は飄々とした態度で答える。

「化け物の生みの親」

その言葉に聞き覚えがあった。

 

 

《貴様、京都で……》

 

 

「ああ、そういえば確かにその時にも言った。覚えてたのか、織斑一夏」

 

 

《っ……》

 

 

同じく飄々としながらも、ドラゴンに対しその名を告げると、ドラゴン…一夏は言葉に詰まる。

少なくとも、今の外見からドラゴンが織斑一夏であるという事は分からない筈。

つまり、この白衣の男性は一夏が人間としての姿をしていた頃から見ていたという事になる。

 

 

どんな立場なのかは微塵も分からないが、今は深夜をかばうように立っているあたり、深夜側の人間…引いては襲撃者側の人間だと予想される。

だけれども、何故か一夏が人間の頃から見ていると推測されるのに、深夜が倒されるまでは微塵も姿を現さなかった。

 

 

《貴様…何者だ?》

 

 

改めて問われ、白衣の男性は思考する。

 

 

(フム……予定より少し遅れているな……情報は惜しいが、何よりも確実な帰還の方が最優先か)

 

 

数舜後、しびれを切らした一夏が剣を振るおうとした時、口を開いた。

 

 

「私は、亡国企業の研究者。この2人目の改造をしたのも私だし、とある細胞を培養し、実験中だったISに寄生させたり、そこからブレードを作ったり、なんかの残骸で無理矢理に無人機を作ったのも、エクスカリバーの改造をしたのも、私だ」

 

 

《貴様……!!》

 

 

今年に入ってからの事件。

どう考えてもバディワールドからの流出品が悪用されていたが、それを行っていたのが全て目の前の男だとは。

沸々と湧いてきた怒りに、一夏が今すぐにでも飛び掛からん勢いなのを見て、男は時間を確認しながら次の言葉を発する。

 

 

「……なぁ織斑一夏、私は化け物の生みの親だと言ったな。それはなんの事だと思う?」

 

 

《なに……》

 

 

急な話題転換、そしてずっと気になっている事を言われ、動きを止める一夏。

京都の際、化け物は深夜の事を言っている場合ではないというのは聞いているが、だからといって他の候補が思い浮かぶ訳では無い。

 

 

「時に織斑一夏、君の……いや、君と織斑千冬の出生であるプロジェクト・モザイカ……別名の織斑計画の「織斑」って、何処から来てるんだろうな?」

 

 

プロジェクトと計画は、只の英語と日本語の違いしかないが、モザイカと織斑は=で成立する単語ではない。

だがしかし、今の一夏にとってそんな違和感考えている余裕が無かった。

 

 

《貴様、何故をそれを知っている……!!》

 

 

目の前の男はハッキリといった。

一夏と千冬の出生である織斑計画と。

この計画は束の出現で中断され、記録は末梢されている筈。

外部の人間がそう簡単に認識出来る訳……

 

 

そこまで考えて、一夏はとある考えに思い付いた。

何故化け物の意味を問うてから、その話題を出したのか。

 

 

《もしや、貴様……》

 

 

その呟きを聞き、男はニヤリを口をゆがめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑計画の主任は私……そして、「織斑」は私の苗字だよ、化け物君」

 

 

《な、に…………》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられないと言わんばかりの表情でそう呟く一夏。

 

 

《俺が、化け物だと……》

 

 

「ん?何か間違った事を言ったかね?人為的に造られた命で、男なのにISを動かし、今人間じゃなくなったんだから、化け物以外なんと形容すればいいというのだね?」

 

 

《っ……!?》

 

 

その言葉をきいた瞬間、一夏は思わず自分の左手を見つめる。

人間のものでもないその手を。

 

 

「お前は良く分からん奴をバディとかなんとか呼んでたが…果たしてお前以外はどうかな?」

 

 

《何を……言っている……》

 

 

「そのままだが?お前の友人や恋人は、果たしてお前の事を受け入れるかな?人間じゃなくなったお前を。全員が全員、お前と同じ価値観じゃないんだ……拒絶されるかもなぁ、織斑一夏」

 

 

《っ!?それ、は…………》

 

 

その言葉に、一夏は何も返せなかった。

想像してしまった。

友人達に拒絶される光景を。

家族に拒絶される光景を。

何よりも大切な恋人……クラリッサとチェルシーに拒絶される光景を。

 

 

そんな一夏を見て白衣の男……織斑はニヤリを笑みを浮かべる。

 

 

「やっと来たか……コイツは回収させてもらうよ。じゃあね、化け物君、私の子供よ」

 

 

白衣のポケットに手を突っ込み、何かを取り出しながらそう告げる。

一夏が何か反応する前に織斑がその何かを地面に叩きつけると、

 

カッ!!

 

と激しい光が視界を奪う。

 

 

《くぅ……!?》

 

 

思わず視界を覆う一夏。

 

 

「まったく、遅いぞ」

 

 

「申し訳ありませんでした!」

 

 

そんな会話が何処か遠くの方で聞こえる。

光りが止み、漸く視界が確保出来たその時にはもう、織斑も深夜もいなくなっていた。

 

 

《なに!?》

 

 

バッと深夜が抜けた機械竜が横たわっていた場所を見、そこに何もない事を確認。

よくよく周囲を見てみれば、煉獄騎士団が倒し、横たわっていた襲撃者達も姿を消していた。

如何やら先程の織斑じゃない声は、回収班だったようだ。

 

 

こうなってはもう、追う事は出来ない。

 

 

《ぐ、ぅぅううう……」

 

 

体力の限界が来たのと、高まって来た緊張が切れ、一夏はその場に蹲る。

その時、半場無意識にドラゴンだった身体を、角王達のように人間の姿に変える。

 

 

先程ぶりの人間の身体。

だけれども、視界に移る手や髪が明らかに白く、先程まで感じていた苦しさは何もなく、身体の内側に感じる何か大きな力が、自分が人間ではなくモンスターになった事をありありと主張していた。

 

 

「そう、か、俺は、遂に……」

 

 

呆然とした様子でそう呟く一夏。

脳裏に浮かんでいるのは、先程の織斑の言葉と想像してしまった最悪の光景。

 

 

「っ……駄目だ駄目だ、先ずみんなをはかせの所に……」

 

 

気絶してしまっている、煉獄騎士団を1人でヒーローWのはかせの所に運ぶ。

不調の最大の原因だった拒絶反応が無くなったので、体調は万全だ。

そこまで時間を掛けず、しっかりと全員の搬送を終え、いったん学園に戻ってきた。

 

 

穴の開いたオルコスのバディカードを見ながら暫くの間呆然と立っていた。

頭の中でぐるぐると最悪の光景の想像と、亡国企業への怒りが渦巻いている。

 

 

バディカードを仕舞い、頭を押さえ足を引きずり俯きながらふらふらとした足取りで歩き始める。

何故歩き始めたのか、自分でも良く分かってない。

多分、ずっと立っているのが疲れたとか、そんな理由だったと思う。

 

 

暫くフラフラとさまよっていると、不意に人間の声が聞こえた。

 

 

「い、一夏…?」

 

 

「その、肌と髪は…?」

 

 

「っ……!?」

 

 

それは、宇宙で戦っている筈の恋人のもので……

反射的に声の聞こえてきた方向を向くと、そこには恋人の他にも家族や友人達も揃っていて……

 

 

「う、あ、うわぁああああああああああああああああああああ!!」

 

 

拒絶される想像が頭からこびり付いて離れなかった一夏は半狂乱に陥ると、エクスピアソードを出現させ斬撃を地面に叩き付け土煙を発生させた。

みんなが驚いている隙に、ダークネスドラゴンWへのゲートを開くと、聞こえて来る制止を振り切って身を滑り込ませ、急いでゲートを閉じたのだった。

 

 


 

 

「って感じかなぁ」

 

 

『……』

 

 

場面は戻り、現在、ドイツの廃倉庫前。

全てを話し終えた一夏はあっけらかんとしていたが、千冬達は何も言えなかった。

 

 

あまりにも情報密度の高い説明。

そして、嘘だと笑い飛ばしてしまいたくなるほどの情報密度。

言葉を失ってしまうのも、また当然だった。

特に楯無を始めとした一夏の事情を知らなかった組は、先程説明を受けたばっかりだ。

脳の処理が追いついてない。

 

 

ザ――――――――――――――

 

 

話し始めた当初から振っている雨は、今もなお降り続いているどころか、雨脚はドンドン強くなっている。

 

 

「あ、あはは……いっくん、お話、作るの、上手になったね…」

 

 

一夏が話し終えてどれくらいたったのかは分からないが、漸く束が口を開いた。

だがしかし、何時ものハイテンションはなりを潜め、困惑と信じたくないという思いが隠し切れない様子だった。

 

 

「主任、あなたには俺がこんな時に嘘をつくような奴に見えるんですか?」

 

 

そんな束に、何処までも冷めたような目で見る一夏。

 

 

「い、いや、あの、その!」

 

 

「まぁ、分かりますよ。目の前に立って普通に話してる奴が人間じゃないと信じられないことくらい」

 

 

そういが否や、一夏は身に纏っているボロボロの黒い外套の懐を探り、あるものを取り出す。

それは、非常によく手入れされているサバイバルナイフ。

取り出したナイフを一夏は逆手持ちすると、開いた左手に振り下ろす。

 

 

「一夏っ!?」

 

 

「待って!!」

 

 

クラリッサとチェルシーの言葉はもう遅く、サバイバルナイフは一夏の左手を散らぬき、勢いよく血液が吹き出す。

その瞬間、全員の表情が驚きで統一されることになる。

 

 

ドクドクと流れ出て、一夏の手や地面を染める血液。

その色は、みなが想像する赤ではなく、青白いもの。

クラリッサとチェルシーと千冬とマドカには見覚えのあるその色は、一夏が人間でない事の何よりの証明だった。

 

 

「そんな反応になるか…」

 

 

一夏はナイフを引き抜き、そこらへんに捨てる。

 

 

『……』

 

 

そこから暫くの間、また無言が場を支配する。

いろいろ一夏に話したい事があったはずなのに。

何も出てこない。

 

 

「じゃ、俺はそろそろ行くわ」

 

 

唐突にそう呟いた一夏。

言うや否や地面を蹴り跳躍し、先程まで座っていた廃倉庫の天井に着地した。

 

 

「い、一夏!待って!」

 

 

本当にこのまま去ってしまいそうな雰囲気を感じ、チェルシーが慌てて制止する。

迷うようなそぶりを見せた後、立ち止まり、こちらを見下ろす。

 

 

「何か、用か?」

 

 

「い、一夏!そろそろ行くって、何処にだ!?一緒に帰ろう!」

 

 

一夏の何処までも冷たい目に若干恐怖を抱きながらも、クラリッサが必死に訴える。

 

 

「ああ、そうだそうだ、説明が長くてすっかり忘れていた……」

 

 

そんなクラリッサの訴えに反応することなく、一夏は一人でブツブツとそう呟いた後、口を開く。

 

 

「今日をもって、俺はIS学園を抜ける」

 

 

『……え?』

 

 

一夏のその言葉に、全員が同時にそう呟く事しか出来なかった。

そんな千冬達を無視し、一夏は言葉を続ける。

 

 

「ああ、安心して良いですよ…亡国企業と戦う際は手を貸しますから…あと、アンタらの許可取らずに勝手に戦い始めますけど、今言ったから特に問題無いですよね」

 

 

有無を言わさぬ形で言う一夏。

 

 

「え、あ、い、一夏……」

 

 

誰かがそう呟いた。

 

 

「もう、俺は織斑一夏じゃ無い…エクスピアソード・ドラゴンだ」

 

 

もう話す事は無いと言わんばかりに、エクスピアは千冬達に背中を向ける。

そして1歩踏み出した時、

 

 

「一夏!待って!一夏ぁ!!」

 

 

「お願い!もっとちゃんと話をして!一夏ぁ!!」

 

 

クラリッサとチェルシーが泣きながら一夏に訴える。

声色で泣いている事を察したのか、流石にエクスピアは足を止める。

 

 

「クラリッサ…チェルシー…」

 

 

 

 

 

「ごめん」

 

 

その言葉を告げ、こちらを見る事も、こちらが言葉を掛ける間も待たずエクスピアは一気に遠くに跳躍した。

 

 

「「一夏ぁああああああ!!」」

 

 

ザ――――――――――――――

 

 

今だに強い雨が降りしきる中、2人の叫びが辺りに響く。

 

 

こうして、こちらの伝えたい思いも伝えられないまま、そして一夏の胸の内も聞けないまま、織斑一夏は……エクスピアソード・ドラゴンは姿を消したのだった…………

 

 

 

 




煉獄騎士団を継ぎし者 エクスピアソード・ドラゴン

ドラゴンW/ダークネスドラゴンW
サイズ2
攻撃力15000
防御力1000
打撃力2
武装騎竜/白竜

■【コールコスト】ゲージ1を払い、君のデッキの上から1枚をソウルに入れる。
■君の場のカード名に「煉獄騎士団」を含む《武装騎竜》全ては、相手の効果で破壊されず手札に戻されず能力を無効化されずレストされない。
■君の場、手札のサイズ1以下の《武装騎竜》が効果で破壊された場合、1枚ドローする。
■【対抗】【起動】このカード以外の君の場、手札の《武装騎竜》1枚を破壊してよい。破壊したら、次の3つから1つを選んで使う。
・破壊したカードをこのカードのソウルに入れ、このカードをスタンドする。
・このターン、君の場の《武装騎竜》の攻撃は無効化されず、与えるダメージは0にならず減らない。
・このターン、君が次に受けるダメージを0にする。
『移動』『貫通』『2回攻撃』『ソウルガード』

フレーバーテキスト
相棒を失った騎士は、煉獄へとその身を堕とす

イラストイメージ
ディミオスやオルコスとほぼ同じ外見。
人間の血液のような暗赤色に何処かくすんだような金の差し色、光を一切反射しない黒いマント。
「魂の渇きを血で潤して」と似たような荒野の崖に立っており、剣を肩に担いでいて、マントが風になびいている。

究極レアver.フレーバーテキスト
「たとえ人間じゃなくなったとしても……お前を倒す!!ああああああああ!!!!」

究極レアver.イラストイメージ
半分黒髪、半分白髪でオッドアイの一夏が叫びながら自分の胸に剣を突き刺している。
その背後で、紫色のエネルギー体のようなエクスピアソード・ドラゴンが咆哮をあげている。



~~~

はてさて、このあといったいどうなってしまうのやら……
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