マジで書くための時間が日に日に少なくなっていくし、執筆スピードも何故か落ちていく……
如何にかしなくては……
取り敢えず、どうぞ。
お楽しみいただけたら幸いです。
三人称side
ガキィン!!ガキィン!!
空で激しくぶつかり合う音が響く。
先程から幾度となく発生しているこの音は、2機のISと1人の少年によって奏でられているものだ。
「う、くぅ!?」
「鈴さん!……きゃあ!?」
「……」
重たい斬撃を受けた鈴を気遣った瞬間、セシリアにも斬撃が飛んでくる。
セシリアは直ぐに回避行動を取ろうとするも、反応が少し遅れてしまい足先を掠る。
たったそれだけで、ブルーティアーズのSEが大きく減少する。
「どうした?その程度か?」
「アンタが強すぎるのよ!ちょっとは加減しなさい!!」
「お前達から吹っ掛けて来た戦闘だろうが」
「わきゃあ!?」
2人と対峙している一夏は、焦った様子も、疲れた様子も見せずに淡々と戦闘を行っている。
3人の戦闘は、事情を知らぬものが傍から見たらあまりにも異常な光景だろう。
第三世代の専用機を身に纏った代表候補生2人が、手に持っている剣以外生身の少年と戦闘しているのだから。
しかも、少年の方は生身で空中に浮いていたり、斬撃を飛ばしていたりするのだから、異常な光景以外に形容する言葉が見つからない。
「こんのぉ!!もう怒ったわよ!!」
「の割には口調は変わってないようだが?」
「常に怒ってる口調だって言いたいわけ!?」
一夏の煽るような口調に、鈴は青筋を浮かべながらスラスターを使用し、超スピードで一夏に接近していく。
口調だけだったら、どう考えても友人達のじゃれ合いに近い。
だが、実際に行われているのは火花散る激しい戦闘だ。
一瞬も気を抜けない。
言ってしまえば気の抜けるような会話を、一夏がわざわざしているのには理由がある。
情報を引きずり出したいのだ。
昔からつるんで来た鈴の性格は大体わかる。
良くも悪くも単純で真っ直ぐな鈴は、ちょっと煽れば直ぐに怒る。
そして、怒り方は感情的で、思った事をなんでも口に出してしまいがちになる。
鈴とセシリアが自分に攻撃を仕掛けてきたという事以外何も情報が無い一夏は、鈴のこの性格を利用して情報を引き出そうと画策した訳だ。
至近距離での衝撃砲を混ぜた猛ラッシュを、軽い顔でいなしながら口撃を続ける一夏。
鈴の攻め筋は悪くない。
双天牙月の二刀流は、以前までよりも鋭く、早くなり一撃一撃の破壊力がかなり上昇している。
それに加え、前までは遠距離から乱射するだけの運用だったが、今は近距離で、斬撃の合間合間で撃っている。
視線でバレやすいという鈴の個人的な弱点も、双天牙月か龍砲かの2択になる事により、相手を撹乱する事に成功している。
だが。
「くっ!このぉ!!」
「遅い」
ガァン!!
「きゃあ!?」
一夏には通用しない。
蚊でも払うかのような涼しい顔で鈴の攻撃を躱し、逆に剣の攻撃をピンポイントで一番ダメージが入るところに直撃させている。
ガキィン!ガキィン!!
手数では圧倒的に勝っている鈴がここまで圧倒されているのには理由がある。
まず第一に、近接戦の技術は一夏の方が上だ。
ドイツ軍でのやり取りからIS学園に入学するまでの間、イギリスでの一件を除いてバディワールドでしごかれ、こっちに来てからもモンスター達との訓練を重ねた一夏。
鈴も相当数な訓練を積んでいるが、一夏の方がレベルも量も桁違いだ。
そして第二に、鈴が一夏の事をまだ人間だと思っているからだ。
一夏の今の姿は、ディミオスやオルコスで言うところのSD形態に等しい。
つまり、今の姿でも人間を超越した身体能力を有しているという事である。
鈴が今まで戦ってきた相手はISだ。
唯一の例外は、多少のパワーアシストしかついていない煉獄騎士だろうか。
それでも、ISコアは有していたし絶対防御やハイパーセンサーなどの最低限の生体保護機能はISと同等だった。
だが、今の一夏はそう言ったものが一切ない。
純粋に自分の力のみで宙に浮き、自分の力のみで周囲を探知し、自分の力のみで戦闘を行っている。
一夏がコールしたモンスターも同じ様なものだったが、モンスター達は見るからに姿が異なっていた。
だが、人間態のまま一夏が戦っている事で、意識の切り替えが出来ていないのだ。
「この!くそ!!」
「ハァ!!」
ガキィン!!
剣を大きく振るう事で双天牙月を1本吹き飛ばす。
一夏は振り抜いた剣をそのまま身体の後方に持っていき、幅広の刀身を盾のように構える。
そこから1秒の間を置かず、剣にエネルギー弾が着弾する。
「浅いな」
「きゃあっ!」
一夏は呟くと同時、射撃された方向とはまた違った方向に剣を振り抜く。
斬撃が飛んでいき、一瞬の後セシリアの短い悲鳴が聞こえて来る。
だが、一夏はクリーンヒットしていないと直感で理解していた。
一夏と鈴が接近戦を行っている間、セシリアは当然ながら一夏への射撃を試みていた。
一夏が鈴との対面に集中すればするほど、周囲への警戒が疎かになる。
ビットとライフルを併用し一夏を囲えば、どれか1つは直撃させれる。
そうすれば、生まれた隙を鈴が付いてくれる。
そう思っていた。
だが、全く上手く行っていない。
「ハッ!このっ!!」
「……」
鈴が苦悶や苛立ちをのぞかせながら果敢に攻めていくも、一夏は涼しい顔で避けていく。
この立ち回りが、セシリアの射撃が上手く行っていない原因だった。
一夏を囲っている5つの砲門。
その射線に、鈴が誘導されている。
ビットの位置をどう動かそうとも、一夏はその動きを完全に理解しているかのように一夏が動き、また狙撃の邪魔をするように鈴が誘導されている。
射撃を強行する事も出来るが、フレンドリーファイアをしてしまう可能性が高い。
そうなれば形勢は一気に一夏有利に傾くだろう。
せめてもの救いは、セシリアが睨みを利かせている事で、一夏が完全に攻めの姿勢に出れていない点だろうか。
ガキィン!!
「っ……!!」
「ハァ!!」
「きゃあ!!」
もう1本の双天牙月も弾かれた。
その直後、懐に深く潜り込んで振り抜く。
甲龍のSEが大きく減少し、鈴はバランスを崩してしまう。
その隙を付き甲龍を蹴り上げ身体を回転させる。
「っ!!」
セシリアが慌てたように射撃を行うも、遅かった。
ドガドガァアン!!
甲龍のスラスター全て破壊し、セシリアの射撃の盾にする。
「フンッ!!」
「なっ!?」
セシリア本人が要る方向に鈴ごと甲龍を投げつける。
本来のISバトルではあり得ない行動に、セシリアは一瞬反応が遅れ、鈴に衝突してしまう。
生んでしまった隙は大きく、一夏は空中を移動しながら斬撃を飛ばし、自身を囲っていたビットを全て破壊する。
ドガドガドガドガァアアアアン!!!!
鈴と激突しバランスを崩していたセシリアは、ハイパーセンサーでしかビットの破壊を確認できなかった。
セシリアと鈴が混乱を脱し、なんとか復帰しようと体勢を整え始めたのはほぼ同時。
だが、そんな必死の行動を嘲笑うかのように。
「ハァア!!」
人の姿をしたドラゴンが、団子状態の2人に接近し、出せる瞬間火力で剣を振るった。
ズアガァアアアアン!!
「「きゃああああ!?!?」」
2人は悲鳴を上げ、地面に落下していく。
地面にはクレーターが生成され、土煙が発生する。
「セシリア、ごめん……もう、SEが……」
「私は、SEはまだありますけど、駆動系が……」
2人はプライベートチャネルで会話をする。
つい数分前までは一夏と拮抗できていたはず。
だが、一瞬にして形勢が傾き敗北してしまった。
「ねぇ、セシリア。時間、稼げたかな?」
「ええ。むしろ、想定よりも少し多く稼げました。みなさん問題無く、準備できている頃かと」
セシリアの返答を聞き、鈴はニヤッと口元に笑みを浮かべる。
その直後、
ザッ、ザッ、ザッ
土煙の中から、肩に剣を担いだ一夏が姿を現した。
戦闘中と全く変わらない冷たい瞳で、鈴とセシリアの事を見下ろしていた。
「終わりだ……」
一夏はそう呟くと、肩に担いでいる剣を頭上に掲げる。
「まちな、さいよ……!!」
振り下ろされる直前、鈴が叫んだ。
ピタッと一夏の動きが止まる。
「アンタは今、何をしているのよ……!!」
「鈴さんの、言う通りですわ。貴方は今、何処に向かっているんですの……!!」
「……」
2人の言葉を聞いた瞬間、戦闘中微塵も表情を変えなかった一夏の表情が変わった。
奥歯をギシリと噛み締め、頭上に掲げていた剣を下ろし、左手を顔の前に持ってくる。
「黙れぇ……」
「「っ!?」」
間近で聞いた2人が思わず恐怖を感じるほどに。
一夏の声はドス声だった。
「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!!!」
一夏は叫ぶ。
もう鈴とセシリアは何も言葉を発していないのに。
「しつこいんだよ!!」
再び頭上に剣を掲げる一夏。
さっきまでの冷徹な表情と違い、焦って余裕が微塵も感じられない表情だ。
その視線は間違いなくセシリアと鈴に向いている。
だが、見られている当人2人は、自分を見られている感じがしなかった。
そう、一夏が見てるのは、自分達が身に纏っているものに向けられているような……
「あああああ!!」
「「きゃあああああ!?!?」」
一夏は叫びながら2人の事を斬り付ける。
甲龍とブルーティアーズのSEは無くなり、2人は遠くの方へ吹っ飛んでいく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
一夏は肩で息をしながら、2人が吹っ飛んでいった方向を見る。
恨みがましい視線を向けていたが、直ぐにハッとして視線の方向を上の方に変える。
気配がする。
よく知っている気配が。
「ラウラに、簪……この距離じゃ、もうロックされてるか……」
遠くの方を見ながら呟く一夏。
焦っていたような表情から、驚きと困惑を微かにのぞかせる表情になる。
鈴とセシリアの撃破直後。
タイミングを狙ったかのように現れたラウラと簪。
何が目的なのか、何人の規模なのか。
一夏には微塵も分からない。
自分が一方的に切り捨てたはずなのに、何故自分に構ってくるのかも。
「……」
2人がドンドンと近付いて来る。
だが、一夏は動く事が出来なかった。
セシリアと鈴を地面に落とすまでは何も問題は無かったのに。
とどめをさす直前に言われた言葉だけで、ここまで心を揺さぶられている。
だが、それは当然なのかもしれない。
だって一夏が心の中でずっと自問自答を繰り返してきたものを、他人から叩きつけられたのだから。
「……潰す」
一夏は短くそう呟くと、向かってくるラウラと簪に向かって跳躍したのだった。
~~~~~
いったいどれくらいの時間が経ったのだろうか。
《はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……》
肩で息をしながら、エクスピアは呆然とそんな事を考えていた。
鈴とセシリアを倒した直後にラウラと簪が姿を見せ、戦闘を開始した。
AICとマルチロックオンミサイルを身体能力と1回の防御魔法だけでしのぎ、2人を撃破した。
だが、それで終わりでは無かった。
また新しく人がやって来て、同じように戦闘になった。
それを倒しても、また新しく戦闘が開始される。
倒して、戦闘になって。
倒して、戦闘になって。
倒して、戦闘になって。
その繰り返し。
人間では無くなり、身体能力と共に体力面でも文字通り人間離れしたものになった一夏。
それでも、ここまでの連戦となれば流石に消耗は激しい。
エクスピアは剣を杖替わりに立ち上がると、フラフラと歩き始める。
《はぁ、はぁ、はぁ……》
肉体以上に消耗している所が、今のエクスピアにはある。
精神だ。
戦闘を行った相手全員が、エクスピアに言葉を投げて来る。
もともと単独行動を取り始めてから精神面がボロボロだった。
その状態で、セシリアと鈴に言葉で刺された後、繰り返された戦闘でも言葉で刺され続けた。
ラウラに、簪に。
マドカに、シャルロットに。
ダリルに、フォルテに。
楯無に、サラに。
スコールに、オータム。
織斑一夏と関わった事がある専用機持ち達が、続々と姿を現しているのだ。
よく知っている、親しい人達から突き出される言葉のナイフは、何よりも鋭い。
そんなもので連続して弱っている所に刺された。
そりゃあもうメンタルはボロボロのボロボロになるに決まっている。
《う、くぅ……はぁ、はぁ……》
数歩歩いただけで、まだまだ消耗していると実感する。
肉体は疲労しているが、こんなフラフラになるほどではない。
精神的な疲労が蓄積し過ぎて、身体の疲れへと変わっているようだ。
肉体はモンスターに変わっても、精神は変わっていない。
それが一種の弱点になっているようだ。
エクスピアは休憩のために、山の亀裂なのか洞窟なのかの判断が付かない場所に身を滑り込ませると、一夏の姿に戻る。
そして、背中を岩肌に預けながら、ズルズルと座り込む。
「はぁ、はぁ、キッツ……」
特徴的な黄金の瞳は、何処か焦点が定まっていない。
一夏は暫くの間荒い息を繰り返している。
数分後にある程度は落ち着いたが、やはり疲労感は全然拭えていない。
「何処に、進んでるかだって……?」
そう呟きながら、一夏は右腕を振るわせながら地面と水平となるように上げる。
その後、手のひらを自分に向ける。
「んなの、俺にも分かんねぇよ……」
疲れ切ったような自嘲気味の笑みを浮かべ、手のひらを顔の前に持って来て握りこむ。
その手を数秒見つめていたが、直ぐに脱力し右腕もダランと地面に置く。
その後、少し顔を上の方に向ける。
未だ微妙に焦点が定まっていない瞳。
頭の中で思考が纏まらない。
ぐるぐると同じ事を考え、放棄し、また考える。
もう限界だった。
思考の放棄と再試行を繰り返すたび、刺された言葉のナイフが、より鋭く、より大きくなる。
そして、その殺傷力が上がったナイフを刺してくるのは、『織斑一夏』だった。
発狂して無いのが不可解に思えるほど、何度も何度も『織斑一夏』が自分を刺してくる。
耐えて耐えて思考を続ける。
それでもなお、思考は纏まってくれなくて。
「俺って、こんなんだったっけ……」
頭をガリガリと掻き毟りながら呟く一夏。
掻き毟る音が頭に響くが、それでも『織斑一夏』は刺してくる。
呼吸はドンドンと荒くなっていく。
こんな時、バディがいてくれたら。
ぶん殴って厳しい言葉を浴びせてでも、一夏を叱咤激励しただろう。
そうじゃなくても、団員達の誰かが一夏の事を気遣い、一夏のメンタル面は幾分かマシになり、話し合いなりなんなりが出来る余裕が生まれるだろう。
だが悲しいかな。
一夏がこんな行動をする選択をしたのはバディが死んだからだし、団員たちは未だ目を覚まさない。
一夏のメンタルを癒すことが出来るのは、もう……
ガリガリガリ
頭を掻き毟るのが止まらない。
それと同時、自分を刺してくる『織斑一夏』の手も止まらない。
もうこのまま血が噴き出て来るんじゃないかという勢いだったが。
ふと気が付いた。
周囲を飛ぶISの気配。
どう考えても自分を探している。
壁に身体を預けたままズルズルと立ち上がる。
その後、フラフラとした足取りで歩き始める。
顔を俯かせながらの歩みなため、表情を読み取ることは出来ない。
「…………す」
ボソリと何かを呟くが、それは誰にも届かない。
それどころか、ちゃんと思った通りに口が動いたのか自分でも理解出来ないくらいの声量だった。
空を見上げる。
長時間の戦闘の末、もう日付を跨ぐか跨がないかの時間。
都会の喧騒から遠く離れている土地の為、煌びやかに輝く星々がよく見える。
その光は幻想的なまでに美しい。
だが、俯いたままの一夏はそれを認識しない。
「見つけましたよ!!」
そんな一夏に声が掛けられる。
一夏を挟むように、2機のISが陣取る。
顔を見ずとも分かる。
「ナターシャさん、イーリスさん……」
「はい、そうです」
ポツリと発した言葉に、力強い声での肯定が帰って来る。
京都で亡国企業への攻撃作戦の際に、専用機持ちが抜けた穴を埋めるために、急遽アフリカから来てもらったナターシャとイーリス。
作戦後、アフリカに戻って作業をしてもらっていたのだが、今回スコールに呼ばれ再び来日したのだ。
「一夏さん!なんでこんな事をしてるんですか!!」
ナターシャが叫ぶ。
銀の福音は臨海学校の時とは違い、この暗い時間でも悠々と輝いている。
「自分が何やってるのか、分かってるんですか!?」
ナターシャの反対側からイーリスが叫ぶ。
ナターシャとは違い、専用機を支給されている訳では無かったが、今はISを身に纏っている。
一夏にとっては初めて見る機体だ。
どんな設計思考なのか全く分からないが、1つだけ直感で理解したことがある。
どう考えたって、束のお手製だ。
俯いたまま、表情を2人に見せない一夏。
2人の名前を呟いてから、何も言葉を発さず、身体も動かさない。
そんな一夏の様子は、とても不気味で。
ナターシャとイーリスはどうすればいいのか迷ってしまう。
今までの戦闘では、この状態の一夏に攻撃しても、結局IS側が敗北してしまっている。
それを理解していても、やはり生身の人間(の姿の存在)には攻撃しにくい。
どうやって牽制しようかと考えていると……
「はぁ……」
「「っ!?」」
一夏が思いっ切りため息をついた。
ナターシャとイーリスは思わずビクっと身体の動きを止めてしまう。
時間にしたら、1秒にも満たない隙。
だが……
「どうだっていい……潰す」
ぐりん
という擬音が聞こえてきそうな動作で顔を上げる。
その表情はとても痛々しく、そして悲しそうで。
でもどこか達観していて、絶望している表情だ。
顔を上げるのと同時、手に剣を出現させナターシャに向かって思いっ切り振り抜き斬撃を飛ばす。
それが、戦闘開始の合図だった。
エネルギーの球体を作り出し、それを突き破る事で姿をエクスピアのものに変える。
ナターシャは飛んできた斬撃を回避、イーリスと共に各々の武装を構え、攻撃を開始する。
エクスピアは一夏の姿の時と変わらない表情のまま、迎撃行動に移るのだった。
~~~~~
《う、くぅ……はぁ、はぁ、はぁ……》
十数分後。
エクスピアは荒い呼吸をしながらも立っていた。
背中のマントはボロボロになり、全身の鎧もかなり傷んでいる。
だが、どんな状態であろうと、エクスピアは立っている。
それは事実だ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「う、くぅ……」
エクスピアと同じような荒い呼吸をしながら、ナターシャとイーリスが横になっていた。
ISは解除されており、まさに満身創痍だ。
全員が全員、会話が出来る状態じゃない。
暫くの間、荒い呼吸の音だけがその場に響いていた。
《何が、目的だ……》
戦闘の勝者であるエクスピアの方が、息が整うのが早かった。
背筋が凍るような低い声での問いに、2人はどういう対応をすればいいのか悩む。
プライベートチャネルで相談しようにも、如何やら正常に作動していない様だ。
各個人の判断でなんとかするしかない。
「そう、ですね……私たちから言えるのは、1つだけ、です……」
まだ完全に息が整っている訳では無いが、イーリスが喋り出した。
こんな状態でも、素の口調ではなく敬語である。
今日は最初からずっと敬語だった。
その事にエクスピアはピクリと反応するも、無言で続きを促す。
イーリスの一言で言いたい事全てを察したナターシャが、続きを話す。
「次が、最後です……そして、可能、だったら……ここから、北北東に、行って下さい……」
《北北東……》
エクスピアはそう呟き、一瞬思案する。
別にナターシャの言葉に従う必要は無い。
『次が最後』とわざわざ伝えた。
それに、今まで戦ってきた専用機持ち達が向こうから向かって来たあたり、放っておいても来るのだろう。
となると、罠、もしくは戦闘相手に有利な状況になっている可能性がある場所へ行くのは、寧ろ悪手でしか無かった。
どこか隠れる場所で体力を回復する。
いや、もうダークネスドラゴンWに帰ってしまえるだけの隙もある。
だがしかし。
何故かそのような選択をするという思考に至らなかった。
次が最後。
そして、まだ戦ってない、関係者の専用機持ちと言えば……
《……いいだろう》
エクスピアは短くそう呟くと、北北東に向かって身体を向けると、地面を蹴り真っ直ぐ飛んでいった。
その光景を見て、ナターシャとイーリスはふぅ、と安堵したような息を吐いた。
「上手く行ったな……」
「そうね……あとは、上手く行く事を願うだけね……」
「なら、大丈夫だな……」
「ええ、一夏さんに一番寄り添えるのは、あの2人……」
ナターシャとイーリスは、口元に笑みを浮かべると、体力の限界が来たのか、眠るように気絶した。
指定された北北東の方向に向かって飛翔しているエクスピア。
方角は指定されたが、距離の指定はされなかった。
つまるところ、何か目につくものがあるという事なのだろうという解釈の元、エクスピアは飛翔を続ける。
今までの間に目に入ったのは木以外何もないと言っても過言じゃない。
もしかしたら通り過ぎているのでは、とも一瞬思ったがそれだったら追いかけて来るだろうと自分の中で結論付ける。
そうして暫く飛び続ける。
方向をミスったかもしれないと不安になっていると、ついに木以外のものが視界に入って来た。
《海……》
エクスピアは自然とそう呟き、速度と高度を落としていく。
森との間の道を超え、海岸である砂浜に辿り着いた。
着地をすると同時、エクスピアの姿から一夏の姿へと戻る。
夜の海は季節関係なく冷える。
冬と言えるこの季節なら尚更だ。
一夏は外套を身に着けているものの、ただでさえボロボロだったそれは、今日の連戦でもはや原型をとどめていない程に朽ちていた。
ビュウ
と強めの風が吹く。
一夏は右手を顔の前に、持っていく。
髪や、外套のギリギリ残っている部分が風にたなびく。
「冷えるな……」
「ああ、そうだな。今日は特に寒い」
「風邪をひかないように、ちゃんと身体を温めないと」
返事を想定していなかった呟きに、2人分の返事がきた。
その声は、一夏が最も大事にしていた2人の声であり……一夏が、今一番聞きたくない2人の声だった。
「っ……!?」
一夏は驚き半分、振り向きたくない気持ち半分といった表情を浮かべる。
暫くの間一夏は身動きすら取れなかった。
自分の後ろに立っている存在も同じく、何もアクションをしていないのに。
何故こんなにも、思考力を奪っていくのだろうか。
そこまで考えて、一夏は苦笑いを浮かべる。
その理由はもう分かってるじゃないか。
最も大事にしていた2人なんだから、思考リソースを占めていくのは当然じゃないか。
苦笑いの表情のまま、後ろを振り向く。
そこに居たのは、予想通りの2人。
「なんだか、久しぶり。クラリッサ、チェルシー」
一夏の恋人2人だった。
一夏は努めて自然に言葉を発した。
だが、動揺などが透けて見える。
「ああ、久しぶりだな」
「1ヶ月とかの長期間だった訳じゃ無いのに、なんでこんなにも久しぶり感がするのかしら?」
「毎日顔を合わせていたんだ。不思議じゃない」
「……」
2人の会話を、一夏は無言で聞いていた。
先程の自分の言葉と同じく、至って普段通りだ。
だが、隠したはずの動揺が透けていた自分の言葉に対して、2人の言葉は本当の意味で普段通りだった。
まぁ、一夏が未だにこの戦闘の意味を理解していないのに対し、クラリッサとチェルシーは戦闘を仕掛けた側という差もある。
でも、それだけじゃない。
未だに自分の進むべき場所が見えない、分からない一夏に対し、2人はもう決まっている、というのが大きい違いだろう。
「……何の用だ?」
先程までの、言ってしまえば朗らかな態度から一変。
今までの戦闘前と同じように、低く冷たい声色で言葉を発する。
対峙する者に恐怖を覚えさせる声を、容赦なく恋人にもぶつける。
だが、クラリッサとチェルシーは一切恐怖心など持たず……それどころか、優しそうな笑顔を浮かべて一夏の事を見ていた。
一夏は未だに自分がどうすればいいのか分かっていない。
『織斑一夏』は未だにずっとナイフで刺し続けている。
その上での連戦。
もう一夏の精神はとっくのとうに発狂していてもおかしくなかった。
今までの、仲間との、恋人との、バディとの思い出だけが、なんとか一夏を一夏たらしめていた。
「何の用だ、か……そんなの、決まってる」
優しい雰囲気は保ったまま、でも覚悟や気迫も感じられる表情を浮かべ、チェルシーが言葉を発する。
それに頷きながら、同じ表情を浮かべているクラリッサが言葉を続ける。
「一夏……お前を、助ける!」
「……!!」
何処までも曇りない、2人の瞳。
まだ何処に進むべきか分からないのに、取り返しのつかない行動をしてしまった自分とは対照的で。
『織斑一夏』が刺してくるナイフが、更に鋭利に、更に深くなる。
「……ってくれよ」
口元を歪め、若干俯きながらボソッと呟く。
真正面で対峙しているクラリッサとチェルシーでも聞き取れないような小さい声だ。
聞き返そうと言葉を発する直前。
「もう!放っておいてくれよ!!」
ガバッと顔を上げながら一夏が叫ぶ。
その表情は、今にも泣きだしそうな、痛々しいものだった。
「「っ……」」
クラリッサとチェルシーは、思わず動きを止めてしまう。
だが、今の一夏には相手の反応だなんて届いていなかった。
ただ自分の胸の内を吐き出すので精いっぱいだった。
「今の俺は!クラリッサとチェルシーに触れられない!触れられるわけが無い!もう、戻れないんだよ!!だからもう、放っておいてくれ!!!!」
はぁはぁはぁと。
泣き出しそうな表情はそのまま、肩で息をする。
「何処か、行ってくれよ……」
絞り出すような声で訴える一夏。
それに対するクラリッサとチェルシーの返答は……
「出来ない……出来る訳がない!!」
「一夏!あなたに譲れないものがあるのと同時に!私たちにも譲れないものがある!!」
「そうかい……なら……」
一夏は手に剣を出現させ、構える。
連戦による疲労などを微塵も感じさせない迫力がある。
それと同時、クラリッサとチェルシーも各々のISと武装を展開。
構えを取る。
雰囲気の変化に同調する様に、穏やかだった海も波が立ち、強く冷たい風が吹き抜けていく。
「「「っ!!!」」」
一夏と2人の視線が交差し、その瞬間に一夏が砂浜を蹴り上げ一気に距離を詰めていく。
こうして。
最愛の恋人同士による、最後の戦いの幕が上がった。
戦う一夏の表情は。
真剣な顔であり……また、
バディファイト新規だぁあああああ!!
いやったぁああああ!!
予約できなかったが、再入荷では負けない!!
はぁ、誰か一緒にやってくれる人いないかな。
全部のカードが印刷プロキシでもいいから。