前回の続きです。
果たしてまだ待ってくれている人は存在するのだろうか……
はい、全部私がさっさと書かないのが悪いんですけどね。
どうぞ、相変わらずのクオリティですが、楽しんでいただけると幸いです。
三人称side
「くっ、ハァ!」
「やぁ!」
「ぜぁああ!!」
ガキィン!ガキィイン!!
ドキュウン!ドキュゥウン!!
夜の海に激しい戦闘の音が鳴り響く。
攻撃が起こるたび閃光が走り、砂浜が抉れ、海が荒れる。
あと1歩で災害と呼べてしまう程の勢いで戦闘しているのは、2機のISと人の形をした1匹の竜。
「ハァア!!」
「ふっ!!」
クラリッサとチェルシーはAICやビットをフル使用。
互いが互いのカバーをしあう見事な連携で、遠距離からの攻撃をし続けている。
「あああ!!」
それに対する一夏は、原形をとどめていないボロボロの外套をたなびかせながら。
四方八方から迫って来るレーザーを避け、時には剣を盾代わりにして防ぎ。
生身の状態で空中を飛び回りAICの拘束を回避し続けている。
「ゼァア!!」
一夏が空中で剣を振るい、2人に向かって斬撃を飛ばす。
幅広の大剣を片腕で幾度も振り回し、弾丸の雨ならぬ斬撃の雨を浴びせる。
「くっ……!!」
「ふっ……!」
クラリッサとチェルシーは襲い来る斬撃を回避する。
通常兵器の実弾や、レーザー弾と比べ飛んでくる斬撃が優れている点は、その幅の広さ。
当たり前の事だが、生身やISなどで使用できる実弾は精々数センチ。
レーザー弾の直系も似たようなものだ。
だからこそ、遠距離武器を扱う者には正確無比な精度が求められるのだ。
弾丸の物量で押すという戦法もあるはあるが、弾丸の消費量が多く狙撃者も大量に必要になるので現実的ではない。
だが、飛んでくる斬撃は、幅も厚さも弾丸とは段違いだ。
速度としては弾丸やレーザーに劣るものの、範囲の広さは圧倒的に優位。
それに加え、ドラゴンへとなった一夏の腕力は、人間態の今でも人間とは比べ物にならないものである。
よって通常ではあり得ない速度で剣を振るい、幾度も斬撃を2人に向かって飛ばす。
そもそもの話だが、通常斬撃は飛ばない。
いったいどのような原理で、目に見える形で斬撃を飛ばしているのかは目の前で対峙しているクラリッサとチェルシーにも分からない。
人間で出来るのは千冬や束くらいだろうと、斬撃の雨を掻い潜りながら考える2人。
そして出来たとしても恐らく一夏程の連撃は出来ないのだろうと考えると、恋人が平然とやっているのを見ると、なんだか笑みが漏れて来る。
それでも動きが鈍らないのが素晴らしい。
「……」
一方、今は攻めている側の一夏の表情は徐々に苦しくなっている。
あまりにも鋭い言葉のナイフで刺していた『織斑一夏』は、未だに暴れている。
クラリッサとチェルシーと対面し、会話をしてからは。
得物がナイフから大剣へと変わり、刺してくる頻度も高くなる。
何処に向かうのかもわからず、ただただ戦っているだけという事実。
あんなに守るだのなんだのほざいておいて、捨て、逃げ、敵に向けていた剣を恋人に向けているという事実。
もはや『織斑一夏』が持つ大剣を構成しているのは、楯無達から掛けられた言葉ではなく、一夏の自問自答による自己嫌悪の言葉だった。
圧倒的に有利な戦況を展開しているのにも関わらず、時間が経過していくにつれて、クラリッサとチェルシーよりも疲労の色が濃くなっていく一夏。
頭の中で暴れている『織斑一夏』もそうだが、連戦に次ぐ連戦で身体的にももう限界が近い。
それに対し、心も身体も万全な状態の2人。
どちらが疲労しやすいかなど、火を見るよりも明らかだ。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
かなり息が荒く、肩で息をしている。
表情も青白く覇気がない。
剣を振るい続けている腕も震えてきており、飛んでくる斬撃は勢いも範囲も弱くなってきた。
「「っ!!」」
その隙を逃すほど、クラリッサとチェルシーは甘くない。
大きくなった斬撃の隙間を縫うように移動。
一夏の死角へと潜り込む。
一夏は現在2人より高い位置におり、今現在煉獄騎士の鎧を身に纏っていない=ハイパーセンサーの使用が出来ない。
「チィ!!」
つまり、死角を確認するには顔の向きを変える必要がある。
一夏の反射神経は見事なもので、かなり疲弊しているとは思えない程素早い動きで身体の向きを変える。
だが、身体の向きを変えたという事は、その間少しだけ、ほんの1秒にも満たない僅かな時間、攻撃も防御も出来ない隙が生まれるという事で。
「ふっ……!!」
ドキュウン!!
カキィン!!
「しまっ……!」
チェルシーがビットを飛ばし、あらゆる角度から射撃。
一夏の持つ大剣に直撃させる。
疲弊し、剣を持つ手が震え始めていたところにこの攻撃だ。
衝撃に耐えきれず手を開き、剣を弾かれてしまう。
「ハァ!!」
「ぐぅ!?」
的確に剣だけを撃ち抜かれた。
つまり、チェルシーがしていないだけでもう身体中の全てを撃ち抜ける状態に追い込まれた。
『織斑一夏』が暴れているのと疲労で碌に働かない頭を回転させようとした瞬間に、クラリッサがAICを発動。
それによって空中に縛り付けられるように動きを制止させられた。
「くっそ……!」
なんとかAICから逃れようにも、無理だ。
今の一夏には、クラリッサの集中力を乱す事も、強引にAICを突破するだけの馬鹿力を発揮することも出来ない。
「くっ……!?」
しかも、あからさま見せつけるようにビットの銃口が一夏に向く。
武器もなく、身動きも取れず、更には近距離で武器を突き付けられている。
もはや成す術無しか。
一夏はもがくような表情を止めた。
クラリッサとチェルシーは警戒と集中を解かないまま一夏に接近する。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
目の焦点が定まっていない一夏は、荒い呼吸を繰り返す。
傍から見れば、あまりにも重症。
さっきまで生身で空中を飛び、剣を片腕で振るって斬撃を飛ばし、戦闘を行っていたとは到底思えない。
「一夏……」
クラリッサがAICを解除する。
一夏の身体を縛っていた枷が無くなり自由になる。
一夏に反撃の意思があればまたとないチャンス。
だが、一夏は両の足で砂浜を踏みしめることなく、その場にうつ伏せで倒れ込んだ。
ドシャ
激しい戦闘により、綺麗だった海岸は荒れ果てている。
が、それでも砂はクッションとなり、一夏の身体を受け止める。
「「一夏!!」」
クラリッサとチェルシーは慌てて一夏に駆け寄ろうとするが、
「あああああ!!」
「「っ!?」」
AICで囚われていた時、焦点のあってない虚ろな目をしていて、荒い呼吸を繰り返していた人物と同じだとは到底思えないほどの咆哮をあげる。
クラリッサとチェルシーが近寄るのを止め、警戒し身構える。
そのさいの一瞬の隙を付き、一夏は全身の力を振り絞り跳躍。
2人から距離を取った場所に着地する。
だが、やはり身体に力が入らないようで右手で頭を、左手で胸を抑えながらその場に蹲る。
「ぐぅ……!?」
もう先程のような跳躍は絶対に出来ない。
それどころか、ゲートを開いてダークネスドラゴンWに逃げ込むことも、ましてやこの場から自分の足で動くことも出来ないし、空中に浮遊することも出来ない。
完全に移動手段が無くなった。
「一夏!」
「大丈夫か!?」
チェルシー、クラリッサの順で叫び、慌てて一夏に駆け寄ろうとする。
目の前で恋人が苦しそうにしている。
動き出さない訳がない。
だが
「来るなぁ!!」
一夏が、普段よりも低い声でそう叫ぶ。
もう身体はフラフラなのに、覇気のある声。
「「……」」
2人は思わず動きを止め、一夏の事をジッと見つめる。
一夏は身体に力を入れ立ち上がろうとしているが、もはや身体が言う事を聞いてくれない様だ。
高熱を出した時でも、腕を上げるくらいの事は動かせた。
だが、今回は全くと言っていいほど動かせないようだ。
未だに大剣を振るい続けて来る『織斑一夏』によって精神もガリガリに削られている。
なんで「来るな」と叫んだんだろう。
なんで痛む身体で無理に跳躍したんだろう。
なんで武器を向けて戦闘をしていたんだろう。
湧き水のように止まる事が無い思考。
どうにかまとめて言葉にしようにも、次々と溢れて来るのだから纏まる筈も無い。
ただただ無言の時間が流れていた。
夜風や波は、一夏の心情を表しているかのように激しい。
ともすれば全員を飲み込んで行きかねない。
「一夏、聞いて欲しい」
そんな荒れ狂っている空気を切り裂き、声が掛けられる。
もはや視線を動かすことも、声を出すこともしない。
リアクションが無いのを、話してもいいと解釈したクラリッサが言葉を続ける。
「一夏。もうやめよう」
「……やめ、る、か……」
ボソッと反応する一夏。
2人はゴクリと唾を飲み込む。
1つでも対応を間違えてしまったら、崩壊する。
そんな危うさを直感的に感じ取っていた。
「一夏。この一通りの戦闘で何が行われたのかは把握しているつもりだ。隊長たちとの戦闘ではモンスターの姿になっていたが、私たちとの戦闘ではそんな素振りすら見せなかっただろう」
「一夏、もう限界なんでしょう?モンスターの姿になれるほどの体力なんて、残っていないんでしょう?」
「……」
一夏は無言だ。
だが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
クラリッサとチェルシーの指摘は事実だ。
セシリアと鈴との戦闘は、エクスピアの姿で行っていた。
その後も、休憩などで一夏の姿に戻る事はあれど、戦闘は基本的にエクスピアの姿で行ってきた。
だが、連戦に次ぐ連戦で体力が消耗していたうえにナターシャとイーリスとの戦闘地点から少々離れたここまで、自分で飛んできた事によっても体力を消耗していた。
(あそこで、この姿にならなければ……)
一夏は非常に後悔している。
一夏の姿とエクスピアの姿を入れ替えるのも体力を使う。
全く違う姿へと肉体を変化させるので当然と言えば当然だ。
だが、その体力消耗具合は平時ならば気にならないくらいの僅かなものだったのだが、この極限状態では話は別。
もうエクスピアの姿になれない。
後悔先に立たずを、今までの人生で一番実感していた。
「だから、なん、だ……」
その声量は小さい。
荒れている波と風のせいで、目の前にいる2人にも殆ど聞き取れない程の声量の筈だ。
しかし、何故かクラリッサとチェルシーにはハッキリと聞こえる。
これが愛のチカラかと2人は何処か遠くの方で考える。
「一夏!もう一夏は戦えないし、戦う必要も無いのよ!」
「そうだ一夏!だから、帰ろう!私たちと一緒に!」
しっかりと一夏に届くように大きく。
しかし全てを受け入れ、包み込むように優しく一夏に語り掛ける。
ただでさえ苦い表情を浮かべていた一夏は、クラリッサの言葉の後更に辛そうな様子に変わる。
リアクションがあった。
少なくともこちらの声は届いている筈。
だが、様子が変わった以外特に動きも無く、言葉もない。
クラリッサとチェルシーは視線を合わせ頷き合う。
そして一夏に向かって1歩踏み出そうとした時、
「―――にな――がわか―る――」
一夏がボソッと何かを呟いた。
波と風に消され、所々しか聞き取ることが出来ない程の声量。
先程の言葉もかなり小さかったが聞き取れてはいたので、それよりも更に小さいという事。
2人は一夏に近付くのを中断する。
今の一夏は触り方を間違えたら一瞬で壊れてしまう。
何を言っているのかの把握は優先されるべきだと判断した結果だ。
まるで何か大いなる存在の意思が介入しているかのように、中々一夏の近くに行く事が出来ない事に若干の焦りを覚えながら、一夏の口元に集中する。
「お前らに!なにがわかるんだ!!」
「「っ!?」」
出会ってから。
一夏はクラリッサとチェルシーに向かってこんな乱暴な口調をした事は無かった。
初対面時は敬語だったし、付き合いだしてからため口になったが、それでも2人に掛ける言葉は優しい言葉だった。
そもそもにして、一夏が乱暴な言葉を使う時は内心が穏やかじゃないときだ。
篠ノ之箒にちょっかいを掛けられていた時など、乱暴になっても致し方ないという時だけだったのに。
大切だと、守りたいと心から願っている2人に対して使っている。
それ程までに今の一夏には余裕が無く、追い詰められているという事を意味している。
「もう俺は人間じゃない!分かるか!?この意味が!お前らにぃ!!」
一夏はクラリッサとチェルシーの事を見ない。
否、見れない。
それは顔を上げれない程身体が痛むという意味でもあるし……こんな自分が2人を見る権利が無いと思い込んでいるという意味でもある。
「ジワジワと身体が作り変えていかれるのが!吐血とかで常に実感させられる感覚が!お前らに分かるのかよぉ!!」
2人の顔を見ないように俯いている一夏。
クラリッサとチェルシー側からも一夏の表情は見えない。
だが、上ずり震えている声。
砂浜にぽたぽたと振って来る水滴によって、一夏が涙を流している事は直ぐに分かった。
「「……」」
2人はもはや視線を合わせる事も必要とせず、同時に一夏に近付いていく。
ザッ、ザッ、ザッ
波も風も荒れている中、砂浜を踏みしめる音が何故か鮮明に聞こえる。
そのため、2人の接近は一夏も気付いた。
咄嗟に身体を動かして距離を取るとするも、やはり身体は動かない。
「来る、なぁ!!」
再び来るなと叫んでみる。
だが、さっきは止まった足音は、今回は止まらない。
ザッ、ザッ、ザッ
足音は大きくなる。
距離を取ろうと身体を動かそうとするも、やはり動かない。
かといって、もう声を発しても意味はないし、顔を上げることは出来ないし……
疲労、焦り。
何処に向かっているのかという問いに対して満足に答えられず、『織斑一夏』が攻撃を繰り返してくる。
何時も冷静沈着で、直ぐに最適解を出せたのに。
もう思考は纏まらない。
気が付けば、俯いたままの一夏の視界にも、クラリッサとチェルシーの足元が入って来た。
つまり、それ程の近い距離にいるという事。
何かしなくては。
咄嗟に一夏が口を開き、言葉を発するその直前。
「「一夏!!」」
「っ!?」
クラリッサとチェルシーが同時に一夏の名前を叫びながら、ギュッと一夏に抱き着いた。
強く、強く。
今まで生きてきた中で1番力を籠めて、強く抱きしめる。
結構痛かったのに、更に強くなった力に一夏は顔をしかめる。
それでも、拒絶の言葉を発せなかった。
分かっているから。
こんなにも力を籠めて抱きしめくれるのは、2人が自分に向けてくれている愛の象徴なんだという事。
そして、『もう放っておいてくれ』より強い拒絶が出来ないくらいには、自分もまた2人を愛している事を。
「私たちは一夏の味方だ。一夏が何者であろうと、未来永劫それは変わる事は無い」
「っ!だから、それは……!!」
ここまでは千冬も一夏に言った事。
それだけじゃ足りなかった言葉だ。
千冬の結果は2人も知っている。
だから。
「一夏。あなたはディミオスソードやオルコスソードと
さらに言葉を重ねる。
受け入れるだけじゃ塞がらない傷を、自分達という存在で埋めるように。
「っ……!」
他でもない自分の事。
ディミオスは数年前に、自分に切っ掛けを与えてくれた恩竜で。
オルコスは、関わっていた期間こそ短かったものの、亡国企業との濃密な戦闘を共にした。
どちらも大切な相棒との思い出。
楽しかったり明るい思い出ばかりじゃない……というか、重たく暗い思いでの方が多いし印象深いけど。
それは間違いなく
「一夏の隣から見てて思ってた。
「それだけじゃない。一夏と共に戦っていた煉獄騎士団のドラゴン達や、元がISの白騎士や白式とだって」
「……」
大剣を持って暴れていた『織斑一夏』の勢いが無くなっていくのを感じる。
『織斑一夏』を形成していたのは、他人から投げかけられた言葉と、自責の念だった。
クラリッサとチェルシーによって傷が埋まって来た事によって、自責の念が消えかかっている。
だが、まだ完全じゃない。
「一夏が人間の時、モンスター達と絆を結んでいた。一夏の立場は逆になってしまったけれど、隊長達とも出来ると思わないか?」
「それだけじゃない。友情が、絆が結べるんだったら。愛し合う事も。出来るんじゃないか?」
「……けど、俺は……!」
「もう、引き返せない所まで来たから、私たちとは一緒に居れない?」
「それとも、進むべき方向が分かってなくて暴れてるだけの自分に関わってはいけない?」
「っ!?なぜ、それを……」
クラリッサとチェルシーから、『織斑一夏』を構成する自責の念の大部分を言い当てられ一夏は目に見えて動揺する。
今までの戦闘が見られていたのは分かっている。
だが、ここまでドンピシャで内心を言い当てられる程の事は口にしていない筈。
いったいどうやって……
「恋人の考えている事なんだ。大体わかる」
「愛のチカラってやつ」
「ははは……なんだよ、それ……勝てる訳がねぇ……」
なんだそれと言っているものの、かつての自分も同じ事を言った気がする。
言って無くても、心の中では絶対に覚えている
だって、それくらいに2人の事を愛しているのだから。
「もう引き返せない所まで来たって言うんだったら、私たちは同じところまで堕ちる」
「進むべき方向が分からないなら、一緒に探す」
「っ!?」
一夏は思わず表情を固くする。
クラリッサはシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長。
チェルシーはオルコット家のメイド。
そう簡単に自らの立場を捨てれる人間じゃないし、ラウラとセシリアを上司/主として信頼し、忠誠を誓っている2人。
こんな提案をして来るだなんて、思えなかった。
「ふふふ、驚いてる。でも、それだけ私達はあなたの事を愛しているの」
「ああ、その通りだ。私達は、一夏と共にだったら何処までだって行って良い」
「……!!」
一夏は目頭が熱くなるのを感じた。
もう関わるなと突き放したのに、ここまで自分の事を想ってくれる存在がいることが。
とても嬉しくて。
『織斑一夏』の勢いは、更に無くなっていく。
「「でも」」
「……?」
「やっぱり、そう簡単にお嬢様方を捨てれる訳じゃ無い」
「だから一夏」
2人はここで1回言葉を止め、深呼吸する。
互いを見なくても、タイミングを合わせる事なんて簡単だった。
まだ直接顔を合わせてから1年も経ってないけど、同じ人物を愛している仲間なのだから。
「「一緒に帰ろう!!」」
2人の気持ちがこもった渾身の言葉。
この距離だから、当然一夏にも届く。
ポタポタ
クラリッサとチェルシーの肩が濡れていく。
「しょう、じき、まだ言葉、が、まとまって、ない……」
声は上ずり、ハキハキと喋れない。
何時もなら喋れるのに。
クラリッサとチェルシーは何も言わずに優しい手つきで背中を摩る。
「やっぱり、取り返しのつかない事を、した。何処に、進むべきかも、分からない」
ぽつぽつと言葉を吐き出す一夏。
「嬉し、かった。こん、なに、ぐちゃぐちゃ、で、感情のまま、てき、とうに、こうど、う、した、俺に、こうして、くれ、て」
「「うん」」
「やっぱ、り、巻き込み、たく、ない。こん、な、俺に。で、も、離れたく、無い。愛してる……から……」
「私もだ」
「私も」
「だか、ら、もし、2人、と、いる、のが許され、るん、だったら、一緒に、いたい。何処に、進む、か、一緒に、決め、たい」
「「うん」」
ここで一夏は身体を少しだけ引き、2人の顔を見る。
何処までも優しい、天使のような微笑みの表情。
それに対して、恐らく自分はぐっちゃぐちゃの酷い表情。
「クラリッサ・ハルフォーフさん」
「はい」
「チェルシー・ブランケットさん」
「はい」
2人の名前を呼び、出来るだけ表情を整える一夏。
深呼吸をし、落ち着かせると、丁寧に言葉を紡いだ。
「私、織斑一夏は、2人の事を、愛しています。こんな私ですが、これからも私の側に、居て頂けますか?」
一夏からの、愛の告白。
勿論、答えは1つだけ。
「「はい、喜んで!!」」
クラリッサとチェルシーは満面の笑みを浮かべると、一夏に思いっきり飛び掛かり抱きしめる。
「うわっ!?」
ドサッ!!
その衝撃に耐えられず、一夏は砂浜に仰向けに、2人がその上に乗る形で倒れ込んだ。
「痛っ!?」
「一夏、酷いじゃないか。恋人の私達を放って、勝手に行くなんて」
「ごめん。あの時、織斑とかいう科学者に言われた言葉と、虐められてた幼少期思い出して、ぐちゃぐちゃになっちゃって。今の今まで、暴走してた」
「これからは何があっても絶対、私たちは味方だからね」
「うん、大丈夫。中1の頃から、バディたちと一緒に居るのに見失ってたもの、見つけ直したから」
3人は笑い合う。
暴れていた『織斑一夏』は消えた。
何時の間にやら穏やかに落ち着いていた波と風が3人を包み込んで。
月の光が穏やかに見守っていたのだった。
一夏が恋心を自覚した時、自己嫌悪から救ったのはクラリッサとチェルシーでした。
そして今回、姉の千冬や妹のマドカ、そして一緒に戦ってきた戦友でも出来なかった事を、2人はやり遂げられました。
付き合い始めた時、告白はクラリッサとチェルシーからでした。
ですが今回、改めて一夏の方から思いを伝える事が出来ました。
良かった良かった。
まだ全然解決する事山積みだけど。
クラリッサとチェルシーがヒロインの理由。
①ISのカラーリング
ディミオスの鎧とシュヴァルツェア・ツヴァイクの色→黒
オルコスの鎧とダイブ・トゥ・ブルーの色→青
②一夏が精神的にダメージを受ける事が多い→隣で支えつつ、でも温かく包み込んでくれる人が良い→同学園よりは上だけど、千冬よりかは低い人が良い。
③臨海学校の事を考えると、学園外に居る人の方が良い。
IS×バディファで書こうと思った時、モンスターの候補はいっぱいいました。(ゾディアックとか)
その中で煉獄騎士団を選んだのは、上記の①、そして煉獄騎士団が白竜だったから。
他にも、戦闘スタイルが剣であるとか、一夏が原作とは違う成長をするとき、原作にいないタイプ立場のモンスターにしたかったとか、バディファアニメであんまり触れられてなかったとかの理由もあります。
最終回で書こうと思ってたけど、折角クラリッサとチェルシーが頑張ってくれたので、ここで書く事にしました。