無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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 何時もよりは少しだけ早い!
 成長!

 ……前はもっと早かった?
 はい、そうです。
 もっと頑張ります……

 では、どうぞお楽しみください。


煉獄騎士の帰還

 「なんでこうなってんの!?」

 

 

 一夏の叫び声が夜空に響く。

 戦闘中でも無いのに、ここまで焦りながら叫ぶのは珍しい。

 だが、そうなるのも当然なのかもしれない。

 何故なら。

 

 

 「一夏、暴れると落ちるぞ」

 

 

 「別に何かがある訳じゃ無いんだから」

 

 

 「ある!恥ずかしい!クラリッサとチェルシーにこうやって運ばれるの!」

 

 

 一夏は各々のISを展開したクラリッサとチェルシーに2人がかりで担がれ、空中に担がれているのだから。

 こっちの世界でも向こうの世界でも基本的に自分で飛んで移動したため、こうして担がれて運ぶのは非常に恥ずかしい。

 モンスターになってから、バディスキル等の補助が本当に必要無くなった事、担いでいるのが恋人2人なのが、恥ずかしさに拍車をかけているのかもしれない。

 

 

 「はぁ……」

 

 

 だが、頭の回転と切り替えは早い方の一夏。

 ここ最近迷いすぎてくすぶっていたその能力も、落ち着いた今では発揮できる。

 何言っても無意味だし、そもそも運んでもらう以外だと歩くしか移動の選択肢が無いので、大人しくしているしか無いのだ。

 

 

 2人に身体を預け、夜風を全身で受ける。

 連戦に次ぐ連戦で熱が籠っていた身体がゆっくりと冷やされていく。

 風邪をひかないようにしないと、いや、モンスターって風邪ひくのか?とそこそこどうでもいい事を考える。

 

 

 そんな一夏を見て、クラリッサとチェルシーは嬉しそうな表情を浮かべる。

 学園祭後あたりから、一夏は態度にこそ出さないものの、何かを抱え込んでいる気がしてならなかったし、そこまで長い期間という訳では無かったが全く会えなかった。

 だからこそ、この何ともない穏やかな表情を見るだけで嬉しくなる。

 

 

 会話は無いが、穏やかな時間が流れる。

 ボーッと景色を眺めていた一夏が、ある事に気が付いた。

 

 

 「……ん?IS学園ってこっちじゃ無くね?」

 

 

 一夏の言葉の通り、向かっている方向はIS学園の方向じゃない。

 しかし、2人が堂々としているのでルートを間違ったという訳じゃ無さそうだ。

 

 

 (そりゃそうだ。だってIS展開してるんだぞ)

 

 

 じゃあ何故?

 と一夏が口を開く前に、2人が言葉を発する。

 

 

 「そうだ。向かっているのはIS学園じゃ無くて『PurgatoryKnights』だからな」

 

 

 「会社に?」

 

 

 「そう。だって一夏、あれから身体酷使させてるでしょ?だからいろいろ検査してもらわないと」

 

 

 「……もしかして、束さんとかクロエさん会社にいる?」

 

 

 「そう聞いている」

 

 

 「……お説教ルートか……まぁ、仕方が無いか。やらかし過ぎたからな……」

 

 

 「一回しっかりと怒られた方が良い」

 

 

 「家出するか……」

 

 

 「今度は連れて行ってよね?」

 

 

 「止めないのかよ……」

 

 

 口調は呆れているようだったが、表情は嬉しそうだ。

 こんな事でも、連れて行ってくれるよね?が嬉しかったようだ。

 クラリッサとチェルシーも笑顔を浮かべている。

 

 

 なんてことない談笑を繰り返していたら、いつの間にか会社に到着していた。

 会社では当然のようにスコールと束、クロエが待ち構えていた。

 3人がそれぞれ愛のある説教を手短に行った後、一夏を検査室にぶち込んだ。

 

 

 検査の途中で限界が来た一夏は眠りに落ちてしまい、検査は一時中断。

 医務室のベッドへと運ばれた。

 もう遅い時間という事で、クラリッサとチェルシーも会社に泊る事になり、医務室のベッドの上で一夏を中央に3人並んで寝る事にした。

 

 

 医務室のものゆえ多少広いが、

 少々寝苦しかったが、それでも幸せだったと後に2人は語った。

 

 

 ~~~~~

 

 

 翌日。

 一晩恋人にサンドされながら寝た一夏は復活した。

 それはもう、昨日の戦闘時の疲弊が嘘のようで、クラリッサとチェルシーが一夏と同じタイミングで起きなかったら、朝のトレーニングをしていただろうには元気だ。

 

 

 そんなこんなで社員食堂で特別に作ってもらった朝食を食べた後、検査が再開された。

 一夏の調子が良くなったので、本来の予定では無かったところの検査まで一通り行われた。

 そんなこんなで、一夏の検査が終了したのは12時を少し回ってからだった。

 

 

 「あああ……やっと解放された……!」

 

 

 昨晩寝泊まりしたベッドの上で。

 検査が終了した一夏が入院着姿で横になっていた。

 

 

 「あはは、ごめんねいっくん。長くなっちゃった」

 

 

 「全くですよ……」

 

 

 「でも、一夏様が無茶しまくるのが悪いんですからね?」

 

 

 「すみません、クロエさん」

 

 

 「あれぇ?なんだかいっくんが束さんよりもクーちゃんを上の方に見てる気がするぞ~?」

 

 

 「事実ですが」

 

 

 「いっくん!?」

 

 

 「日常が戻ってきた感じがするな」

 

 

 「嬉しい限り♪」

 

 

 「クラちゃんにチェルちゃん!?うぅぅ、いっくんに染まってる……」

 

 

 「「今更ですか?」」

 

 

 「このバカップル~~!!」

 

 

 束の叫び声に、他4人が思わず笑いだす。

 医務室とは思えない程賑やかだが、他に医務室にいる人などいないのでさほど問題じゃない。

 

 

 一夏のベッドの側に置いてある椅子にクラリッサとチェルシーが座っており、書類を持った束とクロエが立っている。

 検査終了後、恋人3人が雑談していたところに、束とクロエが検査結果の報告に来たという訳だ。

 

 

 「んん!じゃあ、改めて。いっくん、検査お疲れ様。早速だけと、結果が出たよ」

 

 

 「早くないですか?血液検査とか、どう考えても半日じゃ結果出ないのとかありましたけど」

 

 

 「ふふん。束さんに不可能など無いのさ!」

 

 

 「相変わらず技術だけはスゲェな……」

 

 

 ドヤ顔の束に対して、一夏は思わずため息を漏らす。

 技術以外は凄くないと暗に言われているのに気が付いていないのか、上機嫌のまま一夏に結果が書いてある書類を手渡す。

 クラリッサとチェルシーにも見えるようにしながら、一夏はパラパラと書類を捲る。

 

 

 ISを動かせる男という特殊な立場故、ちょこちょこ検査を受ける機会が多かった一夏。

 学園祭で吐血してからそれも顕著だったため、検査の結果を確認する事なんて慣れてしまった。

 

 

 (あんまり慣れたくない事だったなぁ……)

 

 

 どこか悲しい表情をしながら確認を進める一夏。

 クラリッサとチェルシーも手際の良さに一夏と同じような表情を浮かべながら、同時に一夏の事を軽く抱きしめる。

 一瞬だけ驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうな表情を浮かべながら確認を進める。

 

 

 (なんだが、以前までよりもイチャつき度が上昇した気がします)

 

 

 (甘ったるいなぁ……いや、3人が仲良いのは凄く良い事なんだけどね?……束さん誰に言ってるんだろう?)

 

 

 そんな事を考えながら温かい眼差しで見守っていると、一夏が怪訝そうな表情を浮かべた。

 

 

 「束さん、この空欄はなんです?」

 

 

 一夏が指差す場所は、確かに空欄だった。

 そこ一か所だけではない。

 他にもちょこちょこと空欄の箇所がある。

 以前の検査では確かに何かが記載されていたと記憶しているため、検査していない箇所だという訳では無いだろう。

 

 

 「あー、それはね……」

 

 

 束は分かりやすく動揺している。

 視線は泳いでいるし、声の大きさは小さくなっていく。

 

 

 「束様、素直に説明した方が良いと思われますが」

 

 

 「そうだよねぇ……」

 

 

 「何かがあったという事は分かりました。さっさと説明しやがれこのポンコツ駄兎」

 

 

 「ひぃん!?もはやただの暴言!?」

 

 

 「束さん、早くしてあげた方が良いですよ」

 

 

 「私達としても気になりますし」

 

 

 「クラちゃんとチェルちゃんはまだ良心だよ……いっくんは昔あんなに可愛かったのに……」

 

 

 「……失礼な態度を取った事は謝罪します。それに、ここ最近酷い事言い過ぎましたね。ごめんね、束お姉ちゃん」

 

 

 「「「「!?」」」」

 

 

 「なので説明w「いっくん!!」わっぷ!?」

 

 

 まださっきと言って良い時間まで、別行動だった一夏。

 愛のある説教をしてくれ、更には身体の検査までしてくれた束に今までのような態度で接するのは流石にいかがなものかと思った一夏(束の態度にも問題はある)。

 

 

 昔のいっくんというワードがよく出て来るので、朧気ながら覚えている昔の話し方をしてみた。

 これで機嫌を直して、さっさと説明して欲しい。

 そんな打算も含んでいたのだが、感激した束がベッドの上の一夏に突撃した事で失敗したと理解した。

 

 

 「いっくん!束お姉ちゃんだよぉ!!」

 

 

 「離れろ鬱陶しい!!」

 

 

 折角変えた言葉遣いも、何時も通り毒のあるものに戻ってしまう。

 

 

 「いくら何でも、許されませんよ!?」

 

 

 「一夏から離れてください!」

 

 

 一夏の束お姉ちゃん呼びで思わず動きを止めていたクラリッサとチェルシーが慌てて一夏から束を引き剝がそうとする。

 いくら優しい2人でも、恋人に別の女性が思いっ切り抱き着いて何の感情も抱かない訳が無いのだ。

 

 

 無事引き剥がされた束は医務室の床に倒れる。

 宝物を取られまいとする子供の様に、一夏を抱きしめるクラリッサとチェルシー。

 その強い力が嬉しくて、口元に笑みが浮かぶ一夏。

 

 

 「束様、そろそろ真面目に……」

 

 

 床に突っ伏した束にクロエが声を掛ける。

 束が立ち上がろうと腕に力を入れた時、医務室の外からドタバタと走る音が聞こえて来る。

 

 

 「なんだろう、知ってる人な気がす「誰がお姉ちゃんだって!?」」

 

 

 一夏の言葉を遮る形で扉が開かれ、怒りに満ちた声が飛び込んでくる。

 全員の視線が部屋の扉に向けられる。

 そこに居たのは、怒り心頭といった表情を浮かべている千冬だ。

 その瞬間に束も立ち上がり、千冬に対して挑発的な笑みを浮かべる。

 

 

 「一夏の姉は私だけだ!」

 

 

 「フンだ!いっくんが自分から、()()()()!!束さんの事をお姉ちゃんって呼んだんだ!束さんの方がお姉ちゃんだ!」

 

 

 ぎゃーぎゃーと2人が争い始める。

 なんともどうでもいい事で幼稚に喧嘩する2人を見て、何とも言えない表情を浮かべる一夏達4人。

 すると

 

 

 「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 

 「マドカ!?なんで会社に……」

 

 

 医務室の入り口からひょこッとマドカが顔を見せる。

 

 

 「私だけじゃないよ」

 

 

 「一夏、元気?」

 

 

 「元気そうなんじゃない?」

 

 

 「……どういう状況っスか?」

 

 

 「みんな……」

 

 

 マドカの言葉と同時、シャルロットを始めとした昨日一夏と戦闘を行った面々+真耶が姿を見せる。

 それを認識した時、一夏は背中にダラダラと冷や汗が流れるのを感じた。

 

 

 「えー、そのー」

 

 

 珍しく歯切れの悪い一夏。

 クラリッサとチェルシーの背中をトントンと叩き、いったん放してもらう。

 

 

 「この度はご迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした!!」

 

 

 今まで見て来たどんな土下座よりも、完璧できれいな土下座をベッドの上で披露する一夏。

 その側で言い争う世界最強と天才科学者。

 それを見る学友たちという、混沌とした空間を何とも言えない空気が支配する。

 

 

 (ああ、自暴自棄になんてなるんじゃなかった……)

 

 

 クラリッサとチェルシーとの戦闘後からずっと思っていた事だが、改めて思った一夏だった。

 

 

 ~~~~~

 

 

 数十分後。

 医務室にやって来たみんなからも愛のある説教を受けた一夏。

 土下座を止め、喧嘩している千冬と束を叩き伏せてから、クラリッサとチェルシーとの戦闘終了後から今に至るまでに起こった事の大筋を説明した。

 

 

 「まぁ、兎にも角にも。お兄ちゃんが無事に帰って来てくれて本当に良かったよ」

 

 

 笑顔のマドカが、心底安心したような声色で呟く。

 うんうんと頷くみんなを見ると、やはり心配と手間を掛けさせてしまった事が申し訳なくなってくる。

 

 

 「本当に申し訳ございませんでした……」

 

 

 「もう気にしてないって。ねぇ、みんな」

 

 

 「一夏、顔上げてよ。私とお姉ちゃんみたいに、蟠りが出来る事は誰だってあるって」

 

 

 「そうよ。一夏君がしてくれた、蟠りの解消。今度は、私たちがそれをしただけ」

 

 

 「あの時は切っ掛けを作っただけなんですが……まぁ、そう言ってくれるなら、あまり掘り返さない事にします」

 

 

 「その方が良いわよ」

 

 

 更識姉妹を始めとしたみんなからの説得で、一夏の表情は少し明るくなる。

 

 

 「それで、1つ気になっていたんですが」

 

 

 「なんだセシリア」

 

 

 「織斑先生と篠ノ之博士の喧嘩の原因はなんでしょう?」

 

 

 「あー、えー」

 

 

 セシリアの問いに、一夏は明言できなかった。

 直接的な理由を聞いた訳では無いが、医務室に入って来た時の会話から、どうしようもなくしょうもない理由だとは察せれる。

 

 

 身内のしょうもない事を説明するのは気が進まない。

 だが、

 

 

 「僕も気になってたんだよね。なんか織斑先生が急に走り出したと思ったら、医務室で喧嘩してるし」

 

 

 「因みにさ、その前に何か聞こえた?」

 

 

 「え?あ、うん。何処か遠くの方から小さく『…ねお姉ちゃん』って」

 

 

 「聞こえてたのか……」

 

 

 なんと言う事だろうか。

 冷静になってから振り返ると黒歴史レベルのやらかしを、よりによって聞かれていたとは。

 

 

 「お嬢様、実はですね……」

 

 

 「チェルシー!?」

 

 

 なんて誤魔化そうかと思案していると、恋人からの暴露が。

 メイドとして、主からの要求を蔑ろにできないというチェルシーの心情を理解しているが故、強く止める事も憚られる。

 そんなこんなで、チェルシーとクラリッサから推測を含む流れの大筋の説明がされた。

 

 

 「なるほど……」

 

 

 「把握した」

 

 

 「俺らもダリル姉とフォルテ姉って呼ばれてるんだが」

 

 

 「今声を大にすると拗れるから黙った方が良いっス」

 

 

 「うぅ……」

 

 

 友人達に「束お姉ちゃん」呼びがバレてしまった。

 自分以外に4人しかいなかったからやったが、こうなると流石に恥ずかしすぎる。

 

 

 「逃げたい……」

 

 

 思わずそう呟いた一夏。

 一夏に叩き伏せられてからずっと床に突っ伏していた束と千冬を含め、全員の視線が一夏に注がれる。

 クラリッサとチェルシーが一夏に対して口を開こうとした時、

 

 

 「ああ、いや、違うんだ。そう言う事じゃ無くて。ただただ恥ずかしかったからさ」

 

 

 『?』

 

 

 一夏が弁明する様な口調で話しだした。

 誰も何も話してないのに。

 自分の失言に気が付き先んじて言った……という雰囲気ではない。

 

 

 一夏の視線はクラリッサとチェルシーを交互に見ていたが……クラリッサとチェルシーというよりも、2人についている別のものを見ているようだった。

 

 

 「それで、なんかありえないくらい脱線しましたけど、この空欄はなんですか?」

 

 

 一夏に対してもいろいろ聞いたい事はあるが、一先ず優先順位が高いのはこっちだろう。

 視線が注がれる先が束に変わる。

 束は一度深く息を吐くと、説明を始める。

 

 

 「あのさ、その。いっくんってもう人間じゃないじゃん?」

 

 

 「そうですね」

 

 

 言いづらそうにしている束に対し、あっけらかんと答える一夏。

 今回の騒動の発端はまさにソレだったのだが、恋人のお陰で乗り越えたのでもう重たい空気にしたくない。

 なんとなく一夏の考えを理解した束は、同じように明るく喋り出す。

 

 

 「それでね、流石の束さんもドラゴンの身体検査は初めてだったからさ。人間と同じ方法でやったんだけど……」

 

 

 「ああ、なるほど。身体の構成が人間と違い過ぎて、よく分からなくなったと」

 

 

 「正解!」

 

 

 束の言葉を聞き、一夏はこめかみに指を当てる。

 束でも無理となると、もはや頼れるのは1人。

 

 

 「はかせの所に行くか……」

 

 

 そう、ヒーローWのメンジョ―はかせだ。

 向こうの世界にはもともとモンスターが存在しているし、そもそも団員達の治療を請け負ってくれるのだから数値が出ないという事は無いだろう。

 団員達もそろそろ目を覚ましている頃合いだと思うので、確認も兼ねて訪ねて良いだろう。

 

 

 一夏はベッドから降り、身体を伸ばす。 

 

 

 「はかせ……?」

 

 

 「ん?ああ、向こうの世界の人、いや、モンスターだ。団員達の治療もしてくれた人だから、数値が出ないって事は無い」

 

 

 チェルシーの疑問の声に応える一夏。

 一夏の発言と行動から、今からはかせの所に……異世界に行く気だというのは理解した。

 

 

 「一夏、連れて行って」

 

 

 「え?まぁ、良いけど……なんか、別に大それたことはしないぞ?」

 

 

 「さっきの発言」

 

 

 「是非付いて来て下さい!!」

 

 

 「いっくん!いっくん!束さんも行きたい!」

 

 

 「私も!」

 

 

 「僕も!」

 

 

 「分かった、分かったから」

 

 

 異世界。

 一夏以外いった事が無い場所。

 流石に興味が湧く。

 

 

 「では、私は戻りますね。学園長に、織斑君の無事を伝えます」

 

 

 「山田先生、本当にすみません……」

 

 

 「いえいえ、気にしないで下さい。織斑君はまだ学生なんですから。間違えても、別に良いんですよ」

 

 

 「ありがとうございます」

 

 

 一夏は改めて頭を下げる。

 真耶も一礼してから医務室から学園へと戻っていった。

 

 

 「束様、一夏様、私も仕事がありますので」

 

 

 「クーちゃん、頑張ってねぇ~!」

 

 

 「はい、失礼します」

 

 

 クロエも自分の仕事に戻っていく。

 

 

 「さて、後の面々は付いて来るって事で良いのか?本当に面白い事ないぞ?」

 

 

 「大丈夫よ一夏!」

 

 

 「何が大丈夫なんだ鈴」

 

 

 「異世界っていう状況そのものがワクワクするわ!弾も数馬も絶対にそう言う!」

 

 

 「さいですか」

 

 

 一夏の脳裏に浮かぶは、未だ心が14歳の旧友2人。

 あの2人と同列だと自ら宣言している事に鈴は気が付いていない。

 それで良いのだろうか。

 

 

 「じゃあ、行くぞ」

 

 

 一夏は右手を前に掲げる。

 その瞬間に、バディワールドへのゲートが、()()()()()()()()()()()()()()開く。

 

 

 「っ……!?」

 

 

 「一夏?どうかしたか?」

 

 

 「い、いや、何でもない」

 

 

 少々態度に出てしまった。

 これ以上追及されないように身を屈めながらゲートに身体を滑り込ませる。

 

 

 「ちょっと待ってよ!」

 

 

 他の面々も慌てながら、同じくゲートを身体に滑り込ませる。

 一夏以外の、IS世界の人間が。

 バディワールドへと降り立つ瞬間だ。

 

 

 ~~~~~

 

 

 ダークネスドラゴンWの、煉獄騎士団本部。

 団員達のいない少々寂しいその場所が、ゲートの繋がった場所だ。

 

 

 「おぉ……ここが、異世界……」

 

 

 「あんまり異世界感ないね」

 

 

 「扉とか天井がそこそこ高いくらい?」

 

 

 「室内だからな。あまり期待するな」

 

 

 ダークネスドラゴンWは、生身の人間には少々過酷な環境だ。

 死地への誘いを始めとする危険すぎる設置魔法や、凶暴なモンスターが跋扈している。

 初手で外にゲートを繋げて、目の前に命の危険がこんにちは、といった可能性も十分にあったため本部内を選んだ。

 

 

 来るのにも配慮が必要なくらい過酷な環境で修行しつつ3年も過ごせば、一夏も強くなるのだ。

 

 

 「……」

 

 

 一夏は閉じていくゲートを無言で見つめる。

 

 

 (今までよりもゲートが小さい……いや、()()()()()。今だって、俺が閉じようと思って閉じたんじゃなくて、時間経過で勝手に……)

 

 

 「一夏、どうかした?」

 

 

 「ああ、いや、何でもない」

 

 

 ゲートが閉じ切っても動かない一夏にクラリッサが話し掛ける。

 少し動揺しているような様子なので何か聞きたいが、異世界関係のこと等微塵も分からないので引き下がった。

 

 

 「はかせの所にはヒーローWへのゲートに飛んでいく必要がある。ISを展開してくれ。束さんは……千冬姉、頼んだ」

 

 

 「……本音を言うと嫌だが……まぁ致し方ない」

 

 

 「ちょっとちーちゃん?嫌ってどういう事?」

 

 

 「そのままだ」

 

 

 「酷い!」

 

 

 年長者2人が漫才をしている間に、残りのメンバーはさっさとISを展開した。

 人間よりも身長が高いドラゴン達が余裕を持って暮らせるだけの広さがあるので、ISを展開しても特に問題ない。

 

 

 「良し、行くぞ》

 

 

 言いながら一夏は肉体をエクスピアの姿へと変える。

 交戦前などにその光景を見てことはあるが、近くでマジマジと見るのは初めてだった。

 ついつい見入ってしまう。

 

 

 《行くって言ったよな?》

 

 

 「あ、ああ!そうだな!行くぞ!」

 

 

 動きを固めていた全員が、ラウラのその声で行動を開始。

 ダークネスドラゴンWの空へと飛翔した。

 

 

 《……ルート知らないだろ》

 

 

 そう呟いたエクスピアは、ため息をついてから同じく飛翔した。

 

 

 空中を飛び交っている黒炎弾や、ISというこの世界に存在しないものに興味を持った野良モンスター達を避けながら、ヒーローWのゲートへと向かう。

 ただただ飛び続けるのは流石に飽きが来るので、途中から雑談が繰り広げられる。

 

 

 「小学生の時の一夏って、そんな子供だったんですね」

 

 

 「そうよ!今思うと、昔から抱え込みがちな奴だったわね」

 

 

 《何処かの世界最強さんと比べられて、虐められてたからな……》

 

 

 「うぐ……」

 

 

 「ぷぷぷ、ちーちゃんがダメージ受けてる」

 

 

 「黙れぇ!」

 

 

 「うわぁ!?落ちる落ちる!!」

 

 

 「分かるよ一夏。私もそうだったから」

 

 

 「うぐぁ!?」

 

 

 《初対面でそんな会話もしたな》

 

 

 「それでアドバイスしてもらったから」

 

 

 「「ぎゃあ!?!?」」

 

 

 「おお……学園でも上位の2人を一瞬で……」

 

 

 「上位……上位か……」

 

 

 ここで一旦会話は終了する。

 もうそろそろで目的地周辺だ。

 

 

 「いっくんいっくん。言いたい事があるんだけど」

 

 

 束が新たな話題を切り出した。

 エクスピアは無言のまま続きを促す。

 

 

 「いっくんさ、大きな声出したりして明るく振る舞ってるけどさ、会話が無くなったりすると思い詰めた表情してるじゃん?」

 

 

 「あ、束さんも気付いてたんですね……」

 

 

 「気が付いたの、私たちだけだと思っていたんですが」

 

 

 「クラちゃんとチェルちゃんよりも気付くの遅れたと思うけどね。で、してるじゃん?」

 

 

 《そう、ですね……》

 

 

 千冬でさえも驚愕の表情を浮かべている中、4人だけで会話が進んで行く。

 

 

 「その理由ってさ、女権とかを攻撃したから?」

 

 

 《……いろいろと真っ黒でしたけど。施設の襲撃には変わりないので》

 

 

 自暴自棄に近い状態だったから。

 一夏はISの悪用をしている団体の施設を襲撃し、コアを抜き取って束に送り届けていた。

 やってた時は何とも思わなかったが、冷静になって思い返すと、とんでもない事をしでかしてしまった。

 

 

 女権を始めとする真っ黒組織の裏を流出したのは、自暴自棄の中での罪悪感からだったのだろうかと、エクスピアがぼんやりと考えていると。

 束が衝撃的な発言をした。

 

 

 「あの襲撃、国際IS委員会、並びに国際連合に認可されたからもう気にしなくて良いよ」

 

 

 《『……はい!?!?』》

 

 

 今まで言葉を発しなかった千冬達を含め。

 束以外の全員の驚きの声がダークネスドラゴンWに響く。

 

 

 「いやぁさ?あんなに裏でISコアの横流しとか、人身売買をしていた組織がつぶれたんだよ?しかも、勝手に。願ったり叶ったりだよね!特に女権は国際IS委員会にも口出すくらいには力があった訳だし」

 

 

 《は、はぁ》

 

 

 「つまりは、真っ黒な組織を自分達で捜査して解体するよりも、今回の無許可での襲撃を認可した方が良いって判断しただけ」

 

 

 《世界の公的機関がそれで良いのか》

 

 

 「どーしても何か罪滅ぼしがしたいんだったら、亡国企業を倒すこと!みんなで、み!ん!な!で!協力してね!」

 

 

 《……はい》

 

 

 エクスピアの声色は、少しだけ明るいものになっていた。

 束を含め、全員の表情が少しだけ優しいものになる。

 

 

 穏やかな雰囲気のまま、一行はヒーローWに到着したのだった。

 

 

 

 




 同じベッドで寝ていた3人がナニしていたかはご想像にお任せします。
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