無限の成層圏と煉獄騎士   作:ZZZ777

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大変お待たせしました。
いやぁ、まさか他小説含め2ヶ月も更新できないとは……
申し訳ありません、時間が無さすぎて……

次は言い訳にならないよう頑張ります。

お待たせしてしまったのに拙い内容ですが、どうぞお楽しみください!


掴むべき未来

 「ふぅ、到着」

 

 

 ISの世界からダークネスドラゴンWを経由してヒーローWへ到着したエクスピア一行。

 そのまま暫く飛び続け、はかせの研究所へと到着した。

 エクスピアも一夏の姿に戻り、背筋を軽く伸ばす。

 

 

 「んん……少し疲れたな……」

 

 

 「こんなに遠いなら先に言いなさいよ!」

 

 

 「うるせえ!IS展開してるんだから大丈夫だろ!」

 

 

 千冬達も各々自由に身体を伸ばしている。

 一通り終わったのを確認してから、一夏は研究所の扉を開ける。

 

 

 「はかせ~~!いま来ま《 《マスター!!》 》ごへぅ!?!?」

 

 

 『一夏!?』

 

 

 扉を開けた瞬間、待ち構えていた2つの存在が一夏に飛びついた。

 運悪くみぞおちにクリーンヒットし、一夏はあまり出したことが無い声を漏らすと同時、背中から地面に倒れ込む。

 

 

 「痛ててて……」

 

 

 みぞおちを抑えようと手を出すも、飛び掛かって来た何かが邪魔をする。

 かなり手触りの良い髪……しかもロングヘア―だ。

 触ってから2秒、一夏は気が付いた。

 昔、この髪の持ち主の頭をちょこちょこ撫でていた事に。

 

 

 《マスターはやっぱり頭を撫でるのが上手ですね!》

 

 

 《ご無事で何よりです、マスター》

 

 

 「心配掛けさせてごめん、白式、白騎士」

 

 

 突撃してきた2人……白式と白騎士に謝りながら、再度頭を撫でる一夏。

 ひとしきり一夏の頭撫でを堪能した白式と白騎士は一夏の上から退き、一夏も身体をゆっくりと起こす。

 

 

 《……はかせから聞きました。私達が倒れてから、マスターがどんな行動をしていたのか》

 

 

 《マスター、目を覚ましていなかった私達が言うのもおこがましいかもしれませんが……私達にも相談してくださいよ》

 

 

 「うん、ごめん。でも、もう大丈夫だから」

 

 

 一夏は言いながら後方に視線を向ける。

 白式と白騎士が一夏に突撃してから空気になっていた恋人と仲間達だ。

 多くは語っていないが、それだけで大体のことは察した。

 2人揃ってペコリと頭を下げる。

 

 

 《初対面の時以来ですかね。新生煉獄騎士団 ホワイトタイプ・ドラゴン事白式です。元ISの現モンスターです、改めてよろしくお願いします》

 

 

 《同じく、元ISの新生煉獄騎士団 ホワイトナイト・ドラゴン事白騎士です。みなさま、よろしくお願いします」

 

 

 

 『……はいぃ!?!?』

 

 

 2人の自己紹介の中に含まれている、どうしても聞き逃せない単語。

 初対面の時なんとなく察していた千冬以外が驚きの声をあげる。

 

 

 「もっと正確に言うと、元ISコア人格で、現武装騎竜/白竜/ブレイブマシン/ISのモンスターだ」

 

 

 「いや、そう問題じゃなくてね!?!?」

 

 

 一夏の補足になっていない補足にシャルロットがツッコミを入れる。

 そういう反応が返って来るのは想定の内。

 アイコンタクトで誰が説明するかを瞬時にきめ、一夏が口を開く。

 

 

 「当時既に会社所属を表明してたのに日本政府が送り付けて来たISがあったんだけど」

 

 

 「えぇ……」

 

 

 「ドン引きするのも無理は無い。だが事実なんだ。簪ごめん」

 

 

 「もう気にしてないって」

 

 

 「ありがとう。話を戻して、そのISっていうのが白式だったんだ。なんやかんやあって白式のISコアは煉獄騎士の鎧に移る事になるんだけど……」

 

 

 「なんやかんや!?」

 

 

 「なんやかんや」

 

 

 「あれはなんやかんやとしか形容できないね~」

 

 

 その場にいたISの開発者がそう言うのだから、なんやかんやで飲み込むしか無いのだろう。

 納得はしていないが、続きを聞く事にした。

 

 

 「で、コアが移る時に俺はコア人格と会話することが出来たんだ」

 

 

 《私達がマスターに興味あったからね!》

 

 

 《精神だけこちらに来ていただきました》

 

 

 「……今更だけどさ、コア人格が2つ?」

 

 

 「白式のコアはリセットされた白騎士のコアだったんだ。あ、白騎士事件とかの白騎士で合ってるぞ」

 

 

 『……』

 

 

 驚きで叫びたくなるのをグッと堪える。

 そもそも今自分達がいるのは異世界なんだ。

 それに比べたら伝説のISである白騎士のコアが偶々手元にあったって何ら不思議じゃない。

 無理矢理飲み込んだ。

 

 

 《リセットされたとは言っても、コア人格(わたし)は消滅せず存在し続けられました》

 

 

 《でも、確かに「白式」としてデータが上書きされたから、新しいコア人格(わたし)は生まれた》

 

 

 「そうして、1つのISコアに2つの人格が宿る事になったんだ」

 

 

 『へぇ~~』

 

 

 「なんか雑だな……で、精神世界で会話して、無事に俺は2人に受け入れて貰えてコアが移った。その時からかな、ISコアが搭載されているものに触れると、コア人格の声が聞こえるようになった」

 

 

 『えっ!?』

 

 

 「白式と白騎士とは普通に会話が出来てた。でも、そこまでだと思ってた。そしたら、学園の訓練機とか、束さんに無理言って用意してもらった研究用のやつとかに触ると、声が聞こえた。一言が限界だったけど」

 

 

 今までリアクションを我慢していたが、流石に無視できない。

 コアが移った話題の時は一夏はニコニコしていた束も含め、全員が叫ぶ。

 

 

 「いっくん!聞いた事無いんだけど!?」

 

 

 「今初めて言いましたからねぇ…………ああ、うん。そう。身体が作り替わっていくにつれて、より長く聞こえるようになって……そう、今特に触れていないけど、会話は出来るようになってるでしょ?」

 

 

 《どのような原理かは未だ分からないですけどね……》

 

 

 《本来交わらない異世界同士を繋ぐ存在なんだから、それくらい出来ちゃうって納得もしちゃうけどね》

 

 

 騒いだ束を捌いてから、一夏は唐突に()()と会話し始めた。

 視線は千冬の方を向いている……のだが、千冬というよりかは千冬の近くにある何かを見ているようだ。

 しかも、それに白騎士と白式まで参加しているのだから余計に混乱する。

 

 

 「一夏?さっきから誰と喋ってるんだ?」

 

 

 「さっきの医務室でもそうだったし、私達と戦闘した時もだったじゃない。気になるんだけど」

 

 

 ラウラ、鈴の順で一夏に疑問を投げつける。

 他の面々も2人に同調する様に頷いている。

 

 

 「今は暮桜。医務室ではシュヴァルツェア・ツヴァイクとダイブ・トゥ・ブルー。戦闘時は甲龍とブルー・ティアーズ」

 

 

 『はい!?』

 

 

 今までで一番大きいリアクションが飛び出た。

 特に自分のISの名前を出された5人は、待機形態の事をマジマジと見つめている。

 

 

 「ね、滅茶苦茶違和感あるよね。分かるよコールド・ブラッド」

 

 

 「コールド・ブラッドもっスか!?」

 

 

 「開発者の束さんでも会話出来ないのにぃ!!なんでいっくんだけ!!」

 

 

 「会話出来てるでしょう」

 

 

 「出来てないよ!!」

 

 

 「ここに2人いるじゃないですか」

 

 

 一夏はポンと白式と白騎士の肩に手を置く。

 

 

 「あっ……」

 

 

 「少し脱線し過ぎたな。話を戻すと……」

 

 

 「今!?なんかこう、会話が起こる展開じゃ無かった!?」

 

 

 「黙れ」

 

 

 「ひぃん!」

 

 

 束の情けない声を聞き、千冬がため息をつく。

 異世界に来ても何時も通りの空気を形成する束たちに、マドカ達は苦笑いを浮かべる。

 

 

 「会話が出来るようになった俺達は、常に一緒に戦ってきた」

 

 

 《戦ってきた……は正しい表現なのかな?模擬戦を含めた戦闘前後に会話するだけだったから》

 

 

 《戦闘中にアドバイスをする事などもありませんでした。マスターは基本1人で判断できましたし、迷ってもディミオスに相談すれば事足りてましたから》

 

 

 「俺としては、あり得ん量の仕事にうんざりして疲れてた時に励ましてくれたり、何時でも頼れる存在が居るってだけでありがたかったんだけど……」

 

 

 《私達が納得出来ていませんでした》

 

 

 《そこである事を提案してくれたのが、はかせだった》

 

 

 白式と白騎士はチラッと後ろを見る。

 未だに入り口前で会話しているため、そこには当然はかせの研究所が。

 

 

 《はかせが、モンスターになって共に戦える方法があるけど、どうするって聞いてくれたんだ》

 

 

 「モンスターに、なって……?」

 

 

 《はい。はかせのお知り合いのジェネシスという方が、身体を造れると》

 

 

 『身体を造れる!?』

 

 

 先程と同じくらい大きいリアクションだ。

 だが、それも仕方が無いだろう。

 身体を造るだなんて、フィクションの世界の話だ。

 異世界だったとしても驚く。

 

 

 ……ISというほぼフィクションみたいなものが日常に浸透していても、だ。

 

 

 「いっくん!それ本当!?」

 

 

 「ああ。ジェネシスさんは人工モンスター作製の第一人者だ。バディの複製模倣兵器 ジェムクローンもジェネシスさんが造ったモンスターだ」

 

 

 「……凄い人が居るもんだねぇ」

 

 

 「ああ。一回ちゃんと投獄されてるくらいには凄い人だ」

 

 

 「えっ!?そっち!?」

 

 

 「ああ、ちゃんと罪を償って出所してるから特に問題ない。今はヒーローWで鏡界戦士(ミラーヒーロー)って言うのを……造った?なった?らしい」

 

 

 「はへぇ……」

 

 

 「なんか気が抜ける返事だな」

 

 

 そういう返事になるのも当然だろう。

 文句を言ってる『風』の一夏もそこの所は理解しているのか、声色は明るめだ。

 

 

 《それで、ジェネシスさんに私達2人分の肉体を造って頂きました》

 

 

 《その身体に、煉獄騎士の鎧に中にあるISコアから意識だけを移して、私達は無事モンスターになれた》

 

 

 「かなり長くなったが、以上がこの2人の出自だ」

 

 

 「……なんだろう、いろいろともっと根掘り葉掘り聞きたいけど、ドッと疲れた気がするよ……」

 

 

 シャルロットの呟きに、一夏と白式と白騎士以外が一斉に頷く。

 

 

 「まだ玄関に入ってすらないんだけどなぁ……」

 

 

 《まぁ、ずっと立ちっぱなしだったし……》

 

 

 《今更ですが、中に入って座ってお茶でも飲みながらゆっくりと話した方が良かったのかもしれません》

 

 

 「だな」

 

 

 一夏が短く肯定した直後。

 施設の奥の方から聞き馴染のある声で

 

 

 「おおぉ~~い!いい加減入らないのか~~い!?!?急に扉開いたと思ったら誰も入って来なくて違和感すごいいんだけどぉ~~!?!?」

 

 

 と呼びかけられた。

 

 

 「まぁ、後でいろいろと聞いてくれ。行くぞ」

 

 

 この場を締めくくった一夏を先頭として、施設の中を進んで行く。

 マドカ達はキョロキョロと視線を周囲に向ける。

 この施設はそこそこ現代的で、言ってしまえばIS世界の建物とあまり変わらないのだが、それでもやはり気になってしまうのだろう。

 

 

 コンコンコン

 

 

 「は~い」

 

 

 部屋の前に到着した一夏一行。

 ノックをすると、部屋の中から間延びした返事が返って来た。

 扉を開け、中に入る。

 

 

 「どうもはかせ。お久しぶりです」

 

 

 「あの時以来だね、元気してた?」

 

 

 モニター前の椅子に座っていたメンジョ―はかせが立ち上がり、一夏達の方に近付いて来る。

 

 

 「まぁ、元気……にはしてなかったです。でも、もう大丈夫なので」

 

 

 一夏は爽やかな笑みを浮かべる。

 恋人2人が惚れ直し顔を赤くさせているのを傍目に、はかせは満足そうに頷いた。

 

 

 「いやぁ、前に来た時はねぇ。何時つぶれてもおかしくないくらいには追い詰められてたから。無事に解決できて良かったよ」

 

 

 「はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

 

 

 「いやいや、気にしなくて良いって」

 

 

 はかせはポンポンと一夏の頭を撫でる。

 一夏はくすぐったそうにしているが、特に振り払ったりはしない。

 

 

 「ところで……随分と大所帯だねぇ」

 

 

 一夏の背後を見ながらはかせはそう呟いた。

 アポなしで当然訪れて来たと思ったら、初対面の人間をこんなにも連れて来たのだ。

 こんなリアクションになるもの当然と言える。

 

 

 「あーえっと、こちらはですね……」

 

 

 一夏は順繰りに、ザックリと千冬達との関係の説明を開始する。

 クラリッサとチェルシーの説明の際、ついつい惚気そうになる以外はかなり素早く説明は終了した。

 はかせは理解力が高いため、全部を説明しなくてもある程度察してくれるのが時間短縮に大きく役立っただろう。

 

 

 「それじゃあ、今度はこっちかな。どうも!バディファイトを研究して100年とちょっと!メンジョ―はかせです!気軽にはかせって呼んでくれ」

 

 

 「……100年!?」

 

 

 「そこを深く追究してはいけない」

 

 

 「あ、うん」

 

 

 「それで一夏君。今日尋ねて来た目的は?」

 

 

 「それはですね……」

 

 

 一夏は以前、自暴自棄になっていた時に此処に来てからの動向を説明する。

 すると、はかせは少しだけ得意げな笑みを浮かべた。

 

 

 「なるほど。つまりはそっちの世界だと分からない数値があるから改めて検査をすればいいんだね?」

 

 

 「はい、お願いできますか?」

 

 

 「もうはかせに任せなさいって!」

 

 

 一夏の背中をバシバシ叩きながら明るい声で肯定するはかせ。

 軽やかな足取りで先程まで座っていたモニター前に戻る。

 

 

 「それじゃあ、少しだけ準備するから。一夏君は着替えて検査室に行っててくれ」

 

 

 「着替える必要あります?」

 

 

 会社の医務室から直接こちらに来た一夏は、このまま検査を受けても問題が無さそうな格好だ。

 手術をする訳でも無いのだから。

 

 

 「一応ね、一応」

 

 

 「分かりました」

 

 

 一夏ははかせに軽く頭を下げると部屋の外へと出て行った。

 夏休みごろから訪れる機会はあったし、なんなら一度人間の限界を軽く超えている発熱をした際には、そこで検査を受けている。

 検査着の場所含め、完璧に把握している。

 

 

 「そして、一夏君の彼女さん達だが……まぁ、色々と話したい事があるだろう。白式、白騎士、応接室使って良いから、いろいろと詳しく話してあげな」

 

 

 《分かりました!》

 

 

 《紅茶等もお出しして大丈夫ですか?》

 

 

 「うん。好きに使って大丈夫だよ。それじゃあ、はかせは一夏君の検査に行ってくるね」

 

 

 「あ、あの!」

 

 

 「うん?」

 

 

 「一夏の事、お願いします」

 

 

 クラリッサとチェルシーの真剣な瞳。

 それを見たはかせは一瞬だけキョトンとした表情を浮かべた後、フッと笑顔になる。

 

 

 「任せなさい!はかせの手腕を~、チェック・ディス・ワン!!」

 

 

 はかせはサムズアップをしながら一夏の待つ検査室へと向かって行った。

 それを見送ってから、白式と白騎士の案内によって応接室へと向かうのだった。

 

 

 ~~~~~

 

 

 「ああぁ……終わったぁ……」

 

 

 数時間後。

 検査室となりの休憩室のベッドの上で、一夏は凝り固まった身体のストレッチをしていた。

 

 

 束にやってもらった時も途轍もなく疲れたが、今回はそれと同じかそれ以上に疲れた。

 もう既に数値が出てる部分は検査しなくていいと伝え忘れてしまったので、ありとあらゆる検査を受ける羽目になってしまったのだが、それを考慮してもなお尋常じゃないくらい疲れた。

 

 

 「まぁ、しょうがない。お願いしたのはこっちなんだし。アポなしで突然やって来て、検査してくれっていう常識無しへの罰だと思おう」

 

 

 一通り身体をほぐし終えた一夏。

 ボスっと音を立てながらベッドに倒れ込む。

 

 

 「しかしまぁ、これからどうするかねぇ……」

 

 

 京都での戦闘、学園での戦闘を受け、対亡国企業はとっくのとうに本格化している。

 一夏が迷走していたせいであやふやになってしまったが、そこに間違いは無い。

 だが、一夏が女権等を襲撃した際に流出させた証拠により、亡国企業と繋がりのあった団体はかなりつぶれた。

 

 

 これから先亡国企業は資金や武器の調達が難しくなる可能性が高い、とヒーローWに着く前に束が言っていた。

 そう考えると、今回の暴走は決してマイナスしか無かった訳では無い。

 

 

 「言い訳すんなって話ですね、はい、すみません……」

 

 

 罪悪感からか、少し思考を巡らせるとネガティブな答えに行きついてしまう一夏。

 こんな事を考えている場合じゃないと頭を振り、再度思考を巡らせる。

 

 

 資金に加え、ISコアの横流しも不可能になった。

 これで、亡国企業の戦力がこれ以上拡大しないのかというと、否だろう。

 

 

 一夏の脳裏に思い起こされるのは、IS学園での戦闘。

 圧倒的な深夜の戦闘力に意識を持っていかれがちだが、忘れてはいけない事がある。

 

 

 深夜が戦闘に参加する前。

 空を覆い尽くすほど大量の黒いISが襲撃してきた。

 半分を一夏と煉獄騎士団、残りの半分をスコールや教員達が引き受けて漸くどうにかなるほどの物量。

 

 

 結局襲撃者全員の身柄を拘束することは出来なかったので確証はない。

 これはただの勘だ。

 だけれども、正しいという確信がある。

 

 

 あのISに使われているコアは、束製ではない非正規コアだろう。

 

 

 常識的に考えれば、それはあり得ない。

 全世界が血眼になって束の事を探しているのは、ISコアが束にしか作れないからだ。

 製作可能な人物がもう1人現れるだけで、世界のバランスは一気に崩壊する。

 

 

 「……」

 

 

 一夏は自分の掌を見つめる。

 京都での作戦の日、人間を辞めた日。

 2度行われた深夜との戦闘。

 

 

 今でも鮮明に思い出せる。

 銃火器によって形作られた、3つ首の機械竜。

 

 

 (今になって思うが……あのシルエット、アジ・ダハーカ様みたいだな……っ!!)

 

 

 そこに気が付き、一夏は思い出した。

 今まで何で忘れていたんだろう。

 亡国企業の戦闘員が使用していた装備、アクワルタ・グワルナフ・レプリカ。

 

 

 アレのオリジナルは、アジ・ダハーカの力によって作られるものだ。

 そんなアクワルタ・グワルナフのレプリカと、アジ・ダハーカのシルエットによく似た機械竜。

 

 

 どう考えても、製作者は同一人物。

 あの量のレプリカを製作できるのなら、アジ・ダハーカの細胞は培養されているだろう。

 ここまでは、今までも考えていた事。

 

 

 何故今までその考えに至らなかったのだろう。

 培養された細胞の使い道は、1個な訳無いって。

 

 

 あの3つ首の機械竜。

 ISに銃火器をくっつけただけであんなに強力な戦力が生み出せる訳無い。

 

 

 恐らくだが、表面の銃火器よりも深いところ……

 コアにより近い部分に、アジ・ダハーカの細胞が組み込まれているんじゃないか。

 

 

 「はぁ……俺だけで考えても意味無いな。あとでみんなと相談しよう」

 

 

 ベッドから身体を起こし、ため息をつく。

 どうにも思考が纏まらない。

 ランニングでもしようかと思ったが、今勝手に施設の外に出るのはマズい……というか、はかせに部屋から出るなと言われてしまっている。

 

 

 何もする事が無くなってしまった。

 もう1回寝ようかと思いベッドに身体を向ける。

 その瞬間、

 

 

 コンコンコン

 

 

 部屋にノックの音が響いた。

 

 

 「はーい」

 

 

 一夏は間を開けず返事をする。

 はかせか白騎士あたりだろうと思いながら入り口の方に向けた視線は、驚きで大きく開かれることになる。

 

 

 「デスシックル……それに、サタンフォースに、クルーエル・コマンド……」

 

 

 《我々だけではない》

 

 

 《他の団員達もいるぞ》

 

 

 部屋に入って来たのは、療養中の煉獄騎士団の団員達だ。

 白式と白騎士があんなに元気になったのだ。

 そりゃあ他の団員も元気になっているだろう。

 

 

 煉獄騎士団本部に居なかったのでここにいるだろうと思っていたが、はかせに団員達の状態を聞く暇が無く、あの日以来今漸く顔を合わせた形だ。

 

 

 「……」

 

 

 何かを言おうとしても、一夏の口からはただ空気が漏れるだけだ。

 煉獄騎士団の歴代の団長……ディミオスと、オルコス。

 すなわち一夏のバディの死因は、ISの世界での戦闘だ。

 

 

 つまり、つまりだ。

 『一夏と関わったせいで死んだ』

 と言われても、100%否定が出来ないのだ。

 

 

 無論、一夏と団員達の間にも信頼関係はある。

 その絆は、そんじょそこらの友人などよりもよっぽど強固だ。

 

 

 それでも。

 大事な、故郷であるドラゴンWを捨ててまで付いて来る選択をしたほど慕っていた団長を、2回、2回も失ったのだ。

 

 

 取り敢えず団員全員から一発ずつ殴られるだろう。

 最悪死んでも文句は言えないと、一夏の覚悟は決まっていた。

 

 

 (処刑前にクラリッサとチェルシーに一言……いやまて、みんなが宇宙に行く前からの奴も……まぁ、そっちは良いか……)

 

 

 遠い目をしながら、呆然と一夏はそんな事を考えていた。

 

 

 そこそこ広く、一夏1人では持て余していた医務室は団員たちでパンパンだ。

 はかせはもしかしてこれを見越してこんなに広い部屋をあてがってきたのかと勘ぐってしまう。

 

 

 「……それで、いったい何の用……?」

 

 

 これ以上現実逃避もしてられない。

 一夏は神妙な表情で要件を聞く。

 ぐるっと室内を見回せば、団員達が揃って一夏に視線を向けていた。

 

 

 何を言われるのだろうか。

 正直に言うと、怖い。

 だが、真正面から受け止めなければならない。

 それが、団長とバディを組んでいたものの責務だ。

 

 

 一夏は覚悟を決め、無意識に閉じていた両目を開いた。

 その瞬間。

 

 

 ザッ!!

 

 

 空気を切り裂くような鋭い音と共に。

 全団員が同時に、その場に片膝をつき一夏に向かって頭を垂れた。

 

 

 「………………はぇ!?」

 

 

 唐突な団員達の行動に。

 タップリ間を取った後、何とも言えない声を出した。

 てっきり罵倒や拳が飛んでくると思ったら、敬意を示す行動を地面に向けられたのだから、混乱してしまうのも仕方が無い。

 

 

 《一夏、いや、エクスピア》

 

 

 「っ……」

 

 

 モンスター名で呼ばれ、一夏は否応なしに表情が引き締まる。

 

 

 《我々煉獄騎士団は今、団長がいない。長が居ないのだ》

 

 

 「ああ。そう、だな……」

 

 

 あまり声色に出さないようにしているが、どうしても震えてしまう。

 それでも、一夏は視線を逸らさず、団員達の事を見つめる。

 

 

 《だからこそ、あなたにお願いしたい事がある》

 

 

 「お願いしたい事……?」

 

 

 なぜわざわざ敬語なのだろうかとも思ったが、そんな事よりもお願いの内容が気になる。

 こうして改めて、自分なんかに膝をついて頭を垂れながら言うのだから、相当な事なのだろう。

 

 

 「それは、いったい何?」

 

 

 ゴクッ、と唾を飲んでから疑問を投げかける一夏。

 デスシックルは一夏の眼を見ながら、口を開く。

 

 

 《我々の団長になって頂きたい》

 

 

 「…………え?えええええええ!?!?」

 

 

 思わずでた一夏の絶叫に、団員達は『分かってた』と言わんばかりの表情を浮かべる。

 唐突な事に混乱した一夏も、持ち前の冷静さによって時間は掛からずに現実に復帰する。

 

 

 しかし、しかしだ。

 デスシックルの言っている事の理解は出来たが、納得が出来た訳では無い。

 

 

 「俺が、団長……?」

 

 

 《はい、その通りです》

 

 

 《ディミオス様とオルコス様の後を継ぎ、我々の事を導いて頂きたい》

 

 

 《今はこの場に居ない者も含め、我々煉獄騎士団全員の総意です》

 

 

 「っ……」

 

 

 その言葉を聞き、一夏は息を詰まらせる。

 この場に居ない者……つまりは白式と白騎士も含めた、煉獄騎士団の総意。

 

 

 一夏は自分に向けられる視線に、先程までよりも一層重みを感じた。

 ディミオスとオルコス。

 それぞれ団長だった期間は違えど、一夏のよき理解者にして、よき団長だった。

 それを後を、継ぐ。

 

 

 (俺なんかに、出来るのか……?)

 

 

 特に命の危機が迫っている訳では無いのに、背中にジトッと嫌な汗な流れているのを感じる。

 一夏にとって……煉獄騎士団と関わって来た者にとって、団長という役職はそれ程までに重たいものなのだ。

 

 

 「……なんで、俺なんだ?」

 

 

 一夏の口から出て来たのは、疑問の声だった。

 無言で一夏の事を見つめる瞳が、少しだけ細くなったような気がする。

 

 

 《……質問に、質問で返してしまうが……何故、そう考える?》

 

 

 スクラップドリルから投げかけられた言葉。

 少し間を開けてから、一夏は答える。

 

 

 「……ディミオスも、オルコスも。俺の世界で死んだ。俺が戦いに巻き込んだせいで、死んだ」

 

 

 《……》

 

 

 「俺が、巻き込んでしまったから……本来だったら死ぬはずが無いのに、殺してしまった。俺が、殺したも同然だ」

 

 

 先程、1人で考えていた事。

 漏らすつもりなんて無かったが、考えていた時とは状況が違う。

 

 

 団員達もその事を把握していると思うし、その上で団長の打診をしてきた。

 それでも、言わざるを得なかった。

 一夏自身もその事を理解していると示すことが重要だと判断したから。

 

 

 不利益が生じる訳では無い。

 それでも、けじめをつけんなくてはならないのだ。

 

 

 一夏の言葉を聞いた団員達は、暫くの間黙っていた。

 沈黙の時間が長引けば長引くほど、緊張感が高まって良く。

 

 

 背中に嫌な汗が流れ、喉の奥が渇いていくのを感じる。

 一夏が半場無意識に唾を飲み込むのと、ガイラムランスが口を開くのはほぼ同時だった。

 

 

 《それだけか?》

 

 

 「……へ?」

 

 

 微塵も予想していなかった言葉が飛んできて、一夏は驚きで両目を見開いた。

 直ぐに周囲を見回すも、団員達はガイラムランスの言葉に賛同するように頷いている。

 

 

 「そ、それだけって……そんな簡単に、流していい事じゃ……!」

 

 

 《何故一夏が悪いという事になる?団長の……ディミオス様とオルコス様の命を奪ったのは、亡国企業とやらなんだろう?》

 

 

 《ディミオス様もオルコス様も、一夏に戦いを強制された訳では無い。一夏のバディとして、共に戦うと自身でお決めになられた。その結果として命を散らすこととなっても、それで一夏を責めるのはお門違いにも程がある》

 

 

 《それに、そんな事で団長方のバディを責めるのは、戦う覚悟を決めた団長方を罵倒する事にもなる》

 

 

 《そして……バディでは無いが、我々も一夏と共に戦ってきた戦友だ》

 

 

 《大切な仲間の事を、責める気持ちが何故湧いて来る?》

 

 

 「……!!」

 

 

 団員達の優しくも力強い言葉と目線。

 一夏は両目を見開いた後、ふと俯く。

 

 

 「くっくっくっくっくっ……あっはっはっはっは!!」

 

 

 数秒後、一夏は笑いながら顔を上げた。

 先程までの思いつめたような、暗い表情ではなく。

 覚悟の決まった、だが同時にやさしさを含んだ、いつもの織斑一夏の顔だった。

 

 

 「ああ、そうだ。そうじゃないか。こんなの、俺らしくないな」

 

 

 暴走の影響をまだ引きずっているのだろうか。

 などとらしくもない言い訳を考えながら、一夏はベッドの上から降りた。

 

 

 「もう迷わない。俺は、亡国企業と戦う。だから、俺に力を貸して欲しい……俺に、付いて来て欲しい!!》

 

 

 一夏の身体はエネルギーに包まれ、ディミオスやオルコスと似た姿の、鎧を纏った竜の姿へとなる。

 エクスピアの姿を確認した団員達は、僅かな動作で体勢を整え、改めて頭を垂れる。

 

 

 《無論》

 

 

 《我々から提案した事だ》

 

 

 《煉獄の果てのさらにその先だろうと、我々はあなたに従い、何処までも突き進んで行こう》

 

 

 《我らが、新たな団長と共に!!》

 

 

 団員達の言葉に、エクスピアは口元に笑みを浮かべた後、剣を天に掲げる。

 

 

 《今、この瞬間から!我、エクスピア・ドラゴンが、煉獄騎士団の新たな団長である!!貴様ら、ついてこい!!!!》

 

 

 《おおおおおおおおおおおおお!!!!!》

 

 

 今、この瞬間。

 煉獄騎士団は1つの転換点を迎えた。

 

 

 自分が団長をやっていけるのか、不安が無くなったと言えば嘘になる。

 でも、もう大丈夫。

 だって、付いて来てくれる団員達がいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ああ、お前なら出来るさ、一夏》

 

 

 《何せ、我らのバディなのだからな》

 

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