「トウカイテイオー奇跡の復活だぁぁぁぁぁぁぁ!!1年ぶりの出走ながら今期最強格のビワハヤヒデを下し有馬を手中に収めたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
レース場が大歓声に包まれる。1年を締めくくる大レースの有馬記念を制したのは最有力候補のビワハヤヒデではなかった。出ただけでも万々歳と誰もが勝利を予想さえしなかったトウカイテイオーだった。誰かは言った「帝王は皇帝を超えたかもしれない。」そんな言葉を聞いた時に俺は思った。超えたかもしれないのではなくて超えたのだと。少なくとも俺の中では超えた。テイオーはとっくにシンボリルドルフを超えた存在になったのだ。
「トレーナー...僕勝ったよ。」
目に涙を浮かべながらテイオーは俺にそう伝える。気づけば最終コーナーで俺の目に浮かんでいた涙は頬を伝って零れ落ちていた。
「あぁ、良かった、良かった。」
「もう、僕より泣いてどうするのトレーナー。」
テイオーは笑いながら俺の顔を見る。俺はというと涙を拭きとるのにいっぱいでテイオーの顔を見ることはできなかった...
3度の骨折はテイオーの心を折るには十分だった。だけどテイオーは立ち直った。1度目の骨折でシンボリルドルフと同じ3冠の夢を途絶え、2度目の骨折で親友であり、ライバルのメジロマックイーンに敗北し、無敗を失い。3度目の骨折で走ることを諦めかけ、有馬で奇跡の復活を遂げた。
「ほんとに...ほんとに良かった。」
有馬記念から帰ってきて次の日、俺は物思いに老けていた。外はすでに夕方で窓からは夕日が部屋へ差し込んでいた。思えば出会ってからここまでいろいろあった。テイオーとの出会いからクラシックへの挑戦。1度目の骨折後の復帰トレーニング、春天後のトレーニング、そして3度目の骨折であきらめかけたテイオーを必死に励まし、何とかここまでこれた。そして俺はいつの間にかそんなテイオーに惚れるようになっていた。
「次はURAかぁ..」
URAファイナルズ。突如理事長が言い始めた日本最強のウマ娘を決めるレース。有馬記念を制したテイオーはそれの出場権を得た。このレースには確実にシンボリルドルフが出てくるだろう。テイオーが憧れた無敗の3冠ウマ娘、正直言って不安だ。勝てるのだろうか...テイオーが力不足というわけではない。今のテイオーなら度のウマ娘でも勝てる。だがルドルフのような異次元の強さを誇るウマ娘に勝てるのだろうか...あいつの考えを尊重したいとも思うがもし負けて壊れてしまったらという考えもよぎってしまい、不安に駆られる。
「...何弱気になってんだろな俺。あいつは3度の骨折を乗り越えたんだ。きっと勝てる。あいつは不屈のテイオーだぞ。」
弱気な自分を言葉で叩く。そうだ、テイオーは骨折を乗り越えたのだ。きっと勝てる。そう思っているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「トレーナー。入ってもいい?」
テイオーの声だった。俺はすぐさまいいよと伝えるとテイオーはゆっくりとドアを開けて入ってきた。彼女はなぜか頬を赤らめていた。
いつからだろう。トレーナーを見てると変に顔が熱くなるのは。トレーナーの動作一つ一つにドキッとするようになったのは。トレーナーと一緒にいるのがレースと同じくらいに楽しいと感じるようになったのは。なんだろう。この気持ちは。初めてだった。
「ふふ~ん。テイオーちゃんったら子供ねぇ。」
「何がさ。こう見えても真剣なんだよマヤノ?」
マヤノの茶化しに少しまじめに返答する。するとマヤノはニヤッと笑いながらこういった。
「それは恋だよ。テイオーちゃん。テイオーちゃんはトレーナーちゃんに恋してるの。」
「こここ恋なんて...恋なのかな...これ。」
否定しようとしたけど思い当たる節が多すぎてこれが恋なのかと思い始める。確かにパパの上半身裸の姿見ても何とも思わなかったのにトレーナーだとドキッとするし、トレーナーといると妙に安心するし...
「恋...だったらどうすればいいのかな。」
「そしたらもうアタックするしかないよ!早く言わないとどんどん恥ずかしさとか緊張とかで言えなくなっちゃうんだから!」
「さすがマヤノだね...でも...」
本当にそれでいいのかな...確かにもっと先への関係になれたらうれしいけど...今のボクがそこまで行って大丈夫なのかな..まだレースは残っているし、カイチョーとも闘うだろうし。もしトレーナーと先の関係にまでなってレースに集中できなくなってしまったらどうしよう....
「...決めた。ボク今からトレーナー室行ってくるよ。」
「頑張ってねテイオーちゃん!」
「うん。」
その後テイオーはURA予選、準決勝を難なく突破した。そしてURAファイナル決勝の出場者一覧を見た時。そして...
『さぁいよいよやってまいりました!第1回URAファイナル決勝戦!予選、準決勝と勝ち抜いてきたウマ娘たちが最強を求めて走りかけます!1枠1番に入るのは...』
控室から聞こえるアナウンサーの声を澄まして聞く。ボクは3枠5番からの出走となる。緊張で体が強張る。ボクは勝てるのかな...そう考えつつあの日のことを思い出す。
あの日、ボクはマヤノと相談した後すぐにトレーナー室に向かった。トレーナー室の窓からは夕日が差し込んでいる。ボクはトレーナーを見つめながらこういった。
「トレーナー。ボク、URAファイナル決勝に勝ったらトレーナーに言いたいことがあるんだ。もし勝ったら聞いてくれる?」
これがボクが出した答え。URAファイナルでカイチョーを倒すまでは絶対は僕ではない。絶対のテイオーになるまでは告白しない。それは絶対になるにはトレーナーの力が必要だし、これ以上の関係の近さはきっとまだ行ってはいけない。行けば一生絶対へとは届かないと思う。絶対のテイオーになって初めてもっと先へと進められる。トレーナーはボクを見つめ返しながら笑みを浮かべてこういう。
「いいよ。勝てよ、皇帝に。」
「うん。」
もしカイチョーに勝てなかったらボクは告白できない...今更ながら自分に課した制約がとてつもなく大きいものだと実感していた。
「自分で言っておいてあれだけど、今思えばとんでもないほど大博打をしてるんだね...」
こんな時にトレーナーがいればどれだけ落ち着くんだろう。誰もいない部屋でそう思いつつも目の前の鏡に映る自分を見つめていた。
「やっぱりURAファイナルとなると豪傑ぞろいだな...」
そう思いつつもパンフレットに書かれている出走表を見る。無敗の3冠ウマ娘「シンボリルドルフ」 シャドーロールの怪物「ナリタブライアン」 名優「メジロマックイーン」 黄金の不沈艦「ゴールドシップ」 史上最強牝馬「ウオッカ」 刺客「ライスシャワー」 女帝「エアグルーヴ」 異次元の逃亡者「サイレンススズカ」 ダービーウマ娘で数少ない逃げの「アイネスフウジン」 テイオーが負けないとはいえ1つのレースに半数が化け物なのはさすがに不安になる。
「ずいぶんと焦燥と不安に圧されてるな。お前。」
一緒に見に来ていた同期のマヤノトップガンのトレーナー(石口)がそういう。おそらく今の自分は不安が顔に出ているのだろう。
「そりゃ焦るし不安になるだろ...こんな化け物ぞろいのレースに出るんだぞ...」
「テイオーも化け物といってもおかしくないじゃねぇか。1年もレースに出てないで才覚を現していたビワハヤヒデをちぎったんだから。」
「だとしてもさ...石口だってマヤノがこんなレースに出るとなったら勝てるか不安になるだろ。」
「いーや。俺の愛バなら勝つね。」
石口が自信満々に答える。石口とマヤノは相思相愛であり、こっそりながら交際も始めている。ロリコン...と言いたいが俺と石口は高校を出ると同時にトレセンのトレーナーになったから大して年齢差はないのだ。テイオー達が中学部2年の時に俺たちはトレーナーになったから年齢差は4年とカップルとしては少なくない年齢差だ。
「相変わらず言い切るよなぁおまえ。」
「当たり前だろ。あいつを疑うのはトレーナーとしても彼氏としても絶対やっちゃいけねぇ。マヤノもそう思ってるだろうし。」
そういいつつ石口は真顔になる。いつもそうだ。こいつは唐突にマジになる。
「突然マジな顔になるのやめてくれよ...お前、マヤノから告られたんだよな。」
「そうだけどどうした?」
「いや、告られた当初はどう思ってた?」
「なんだよ突然。まぁ、最初はちょっと悩んださ。大体トレセン学園の生徒とトレーナーが交際を始めるなんて今までに聞いたことのないことだったからな。」
「とにかく猪突猛進するお前がなぁ。」
「けど結局俺は猪突猛進するしかできないからな。一日だけ考えてオーケーした。」
「はは、いかにもお前らしいや。」
「そういうお前はどうなんだ。テイオーのこと好きなんだろ?」
「...まぁ、そうなんだけどさ。」
「告ればいいじゃねぇか。以外とうまくいくもんだぜ。ソースは俺ら。」
「お前らは異例すぎて参考にならねぇよ。」
「はは、マヤノから聞いたんだけどさ。テイオー、このレースに勝ったら告るらしいぞ。」
石口から出てきた言葉に頭が真っ白になる。
「え?あいつ好きな奴いるの?」
「あぁ。」
「ど、どんな奴なんだよ。」
「いっつも一緒にいる人らしいぞ。」
「いっつも...あいつ寮住まいなのにそんなこと...」
「それにいっつも自分のことを考えてくれて励ましてくれる人だってさ。」
「そんな奴がいたのか...」
驚愕する。テイオーにそんな奴がいたとは思ってもなかった。というかそんな素振りもしなかった。どこでそんな人と出会ったのだろう。まさか...
「その...さ。テイオーはネットで彼氏作ろうとしてるのか?」
「は?」
「だって俺そういうところ見たことないぞ...さすがに自分から見せに来るのはないとしても感づけられるような行動とかはあるでしょ...」
「お前それ本気で言ってんの?」
「それ以外ないじゃないか...ほかに出会う方法とかないだろ。」
「...お前はほんと鈍感だな...なんか見てて悲しくなってくるよ。」
「は?」
「いいか、テイオーが恋してるのはお前だ!」
「...ほんとかそれ。」
「いや何でそんな不安な顔になるんだよ。お前、このレースにテイオーが勝ちたいのはルドルフに勝ちたいのとお前に告白したいからなんだよ。」
「そうか...」
「せめてお前だけでも勝てると信じてやれよ...それが惚れた女にするべき男としての最低限の使命だぞ...」
「...だよな、トレーナーとしてもそうするべきだよな。」
勝てよ、テイオー...
『レース至上最大人数の40万人が来場したURAファイナル!出場するウマ娘たちも最強格ぞろいとなりました!細江さん。このレース大波乱になりそうですね。』
『そうですね。ここまで豪勢なレースは一生に見れるかどうかです。』
『やはり勝つのは無敗の3冠馬のシンボリルドルフでしょうか。』
『ほかのウマ娘たちも十分勝機がありますけど、現時点では最有力候補ですね。』
『奇跡の復活を遂げたトウカイテイオーもいますがどうでしょうか。』
『このレースについてこれるか不安ですね。彼女に勝ってほしい気持ちもありますが。』
「これが...URAファイナルズ。」
地下道を出てターフを歩く中、ボクは観客席を見渡した。見渡す限りいる人、人、人。有馬や天皇賞春もたくさん人がいたけどこんな数は初めてだった。
「すごいや...」
あまりの人の多さに圧巻する。圧巻して観客席を見ているとカイチョーが横から声をかけてくる。
「テイオー。」
カイチョーが僕の方へと歩み寄ってくる。ボクはカイチョーの方をみてすぐに体をカイチョーの方へ向けた。
「カイチョー。」
「やっと、やっと勝負ができるな。」
「うん、ボク勝つから。」
そういってカイチョーの目を見る。カイチョーはそれを見て少し笑うが、すぐ真顔になってこういう。
「全力でかかってこい。帝王。この皇帝、全力で相手しよう。」
その言葉にはすごい重みを感じ、顔は覇気をさらしだしていた。カイチョーはそういうとゲートへと向かっていった。その姿はまさしく皇帝の姿だ。
「僕も負けないよ。勝たなきゃいけない理由があるから。」
カイチョーの背中を見つつそう呟く。少しカイチョーの後ろ姿を見つめてボクもゲートへと向かっていった...
ウマ娘たちが全員ゲートに入って少しするとスタートする。先頭はサイレンススズカ、ついでアイネスフウジン、少し離れてメジロマックイーンにライスシャワー、そのほかのウマ娘を2人挟んでエアグルーヴ、ナリタブライアンと続いてボク、そしてシンボリルドルフにウマ娘3人を挟みウオッカ、ゴールドシップ残りのウマ娘たちとなった。正直ペースがとてつもなく早い。おそらく後ろ2人はペースに追いついていけないのだろう。徐々に離されていく。
「2200メートルとはいえ、この速さはおかしい。」
そういいつつも集団に食い込む。第一コーナー、第二コーナーと続いて順位が激しく変わりながら走り抜ける。ボクはコーナーを曲がっていくうちに2人集団から崩れて言った上にそれに巻き込まれたエアグルーヴを抜いて6位へと上がっていた。スズカのペースは変わらない。いつも通り大逃げとなっている。自分自身でよくこのペースについてこれてると感心する。けどずっと走ってて後ろから視線を感じている。多分カイチョーがこっちを見ているんだろう。正直言ってこんなに走りづらいものはない。そう考えているうちにレースは残り半分となった。すると後ろからゴルシの足音がドンドンという音が近づいてきた。ゴルシの恐ろしいところは後ろからくるときの威圧感だ。これに耐えられるウマ娘はそうそういない。けどこのレースではほとんどのウマ娘が気にせず走る。歴戦の猛者というべきだろうか、このレースにはそう言うにふさわしいウマ娘たちが出走しているのだ。ゴルシは徐々にスピードを上げていき、第3コーナーを抜けたあたりでボクを追い抜いた。ゴルシは徐々に順位を上げていく全員最後のストレートに向けて準備を始めていた。
そして第3コーナーを抜けるとき、皇帝はボクの前に現れた。
「テイオー、何とか集団につけているな。」
石口がそういう。レースは半分を切り、すでにウマ娘の中にはペースについていけず脱落したウマ娘たちが何人かいる中、テイオーは集団に食らいついていた。
「あぁ、このままうまく出れればいいんだけどな...」
「その前にルドルフが出てくるだろな。どこからだと思う。」
「第4入る頃には確実に来ている。正直サイレンススズカがこのままだとそれより早く出てくるな。」
「ついていけると思うか。」
「テイオーがか?」
「あぁ。俺も勝つと信じているが、この様子だと...」
「...勝つさ、あいつならな。」
「はは、さすがテイオーのトレーナーだな。」
「俺はもう決めた。どんな時でもあいつを信じて隣に居る。トレーナーとして、それがあいつを好きになった奴としてやるべきことだ。」
レースを見つつ、俺は考えていた。もし負けたら、テイオーは告白できない。そしたらどうすべきか。正直レースが始まるまでそればっかり頭に浮かんでいた。けどあいつが走る姿を見て決めた。俺はあいつが負けても隣に居続けるんだ。
「あいつが勝っても負けても、俺はずっとテイオーの隣に居続けるんだ。」
「いい顔してるじゃんか。」
頑張れよテイオー。お前なら負けない。そう思っているとレースに動きが出始めた。皇帝が動き出した。すると石口が驚きながら言う。
「早い、さすがにここまで早いとスズカたちを抜くのにスタミナを使いすぎてゴール前にスタミナを切らすだろ。」
「いや、わからない。サイレンススズカとアイネスフウジンの足が鈍り始めてる。多分あのままだと足が持たない。正直マイルペースで走ってたから持たないと思ってたがこんなに早いとは...」
そう言ってるうちにレースにまた大きな動きが出る。全員ルドルフが前に出ると同時にスパートへと入っていった。
「ルドルフの動きに全員合わせ始めたな。全員ターゲットはルドルフだったってわけか。」
「そのようだな。果たしてこのペースについていけるのが何人いるか...」
「何人いるとしても変わらない。テイオーは勝つ。」
「そうだな...」
カイチョーが出て少ししてボクもスパートに入る。第4コーナーを抜けると同時にボクは集団を抜けて先頭を目指す。カイチョーはすでにスズカとアイネスを抜いて先頭を走っていた。距離差は3馬身あるか。ボクは直線に入ると同時に一気に加速する。徐々にカイチョーとの差は詰まる。しかしカイチョーはまた加速し、差は元の距離に戻る。
「くっそう!離されるもんか!!」
ボクは死ぬ気でまた加速をする。さすがのカイチョーも加速する余裕はないのだろう。徐々にまた距離を詰めていき、並ぶ。
「よし、このままいけば「テイオー、私を見くびるな。」...え?」
カイチョーの一言に耳を貸したのが間違いだった。カイチョーはまた加速し僕を離し始めた。
「ウソ...まだ加速できるの...」
ボクも追随しようとするが足が限界で加速できない。やっぱり会長はすごい。ボクが追い付いたと思ったらまた話していく。やっぱり勝てないのか...カイチョーの力にひれ伏しかけ、頭が下がっていく...ボクはあきらめかけていた。
「諦めるなテイオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
頭が垂れたその時だった。ふとトレーナーの声が聞こえた。
「そうだ、ボクは勝つんだ。勝ってトレーナーに好きだっていうんだ!」
絶対に勝つんだ。カイチョーがなんだ。ボクは不屈だ。何度挫けてもまた立ち上がるんだ。最後の最後まであきらめるもんか!
「絶対に...勝つんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気持ちが固まり、また加速していく。一歩一歩徐々に加速するのを身に感じる。そして残り200mの標識が横に並び。またボクはカイチョーと並ぶ。
「カイチョーに勝っていうんだ!トレーナーが好きだって!」
「そうか!だが私にも勝たなきゃいけない理由がある!そうやすやすと勝たせると思うな!!」
「だからと言って負けるわけにはいかないんだ!勝つのは僕だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カイチョーとボクはずっと並び続ける。どちらも限界を突破し、もはや執念だけて走っていた。そしてボクが瞬きをしたとき
カイチョーとボクは横並びでゴールした。
『さぁシンボリルドルフ上がってきました!サイレンススズカもアイネスフウジンもすでに限界が見え始めています。』
『この距離でスパートとはかなり賭けに出ましたね。』
『サイレンススズカもスパートをかけようとするもいまいち伸びない!ほかのウマ娘たちもスパートに入るが追い付けない!いや!トウカイテイオー!!トウカイテイオーが抜け出した!加速してシンボリルドルフに追い迫る!しかしシンボリルドルフまた加速!トウカイテイオーは限界だ!このままシンボリルドルフが勝つのか!』
『ここまで出れただけでもトウカイテイオーは素晴らしいですね。やはりシンボリルドルフに勝つのは厳しいでしょうか。』
『シンボリルドルフ距離を開く!いやトウカイテイオーまた加速した!シンボリルドルフに迫る!しかしシンボリルドルフは限界だ!シンボリルドルフは限界だ!両者横に並んだ!トウカイテイオーか!シンボリルドルフか!並ぶ並ぶ!どっちが勝つのか!どっちが先か!』
実況が白熱している。その声が耳に入るも脳は処理せず、たった一言が俺の口から出てくる。
「勝て!テイオー!勝つんだ!」
テイオーとルドルフは横一直線に並んでいる。どちらが先かは全く分からない。だけどテイオーは負けない。絶対に勝ってくれる。
『差が出ない!差が出ない!並んだまま...ゴールイン!』
二人は並んでゴールイン。どちらも気力を使い果たし、ふらふらと歩く。
「テイオー!!」
俺は柵から身を乗り出し、テイオーの元へ駆け寄る。テイオーは前のめりになりながら転倒しかけていた。全速力で走り、テイオーを抱き支える。そしてテイオーを抱きしめたままゆっくりを地面に尻をつけた。
「テイオー!テイオー!大丈夫か!」
「んん...トレーナー...レースは。」
テイオーは絶え絶えの意識と呼吸の中、レースの結果を聞いてくる。すでにすべてのウマ娘はゴールを超えており、順位を待つだけだった。
「結果は...まだ出ていない。」
順位板を見るも順位は表示されていない。するとアナウンスがコース上に響き渡った。
『お知らせします。電光掲示板故障により、口頭にて順位をお知らせします。5着、サイレンススズカ。4着ライスシャワー。3着、メジロマックイーン。1着2着は写真判定のため、しばらくお待ちください。』
「ちょっと待っとけ。写真判定だ。」
「うん...」
テイオーと一緒に順位が判明するのを待つ。立ったちょっとしかたってないのに俺は緊張に飲まれた。緊張で息が苦しい。どっちが勝ったんだ。そればかりが頭に思い浮かんだ。時計では1分程度しかたってないのに何十分もたった気がする。そうして待っているとアナウンスが流れた。
「お知らせします。写真判定の結果...
ハナ差でシンボリルドルフ2着、トウカイテイオーが1着となりました。」
レース場が沈黙に包まれる。それを破ったのは実況者だった。
『トウカイテイオーがとったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!1年ぶりのレースで奇跡を起こした帝王はURAファイナルにて皇帝を墜としたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
実況者の叫びともいえるような声のすぐ後に観客席から今までにない大きさの歓声が出る。その完成はやがてテイオーコールへと変わっていった。
「やった、やったよトレーナー...ボク勝ったよ...」
「あぁ、頑張ったな。テイオー。」
テイオーの顔は辛そうながら笑顔だった。俺はテイオーの肩を支えながらテイオーを置き上げる。
「さぁテイオー。皇帝の時代を終わらせたんだ。お前にはやることがあるだろ。」
そう言ってテイオーを見つめる。テイオーは察したらしく少し笑い、そして人差し指を指したまま腕を大きく空へと上げた。その姿はまさしく王の姿だった。そして歓声に沸く観客席を見ていると横から声がした。
「テイオー。」
横に来ていたのはルドルフだった。テイオーは手を下げてルドルフの方を見る。
「...私の完敗だ。素晴らしいレースだった。」
そう言ってルドルフは手を差し出す。テイオーはルドルフを見ながらルドルフの手を握った。そのとたんに歓声はまたひときわ大きくなった。
「テイオー。私はまた君に挑戦する。その時には全身全霊以上の力で挑むから覚悟していてほしい。」
「カイチョー...ボクも今以上に強くなるからね。」
テイオーの言葉を聞いたルドルフはそのままクルっと反対方向に向かって歩き始めた。その姿を見届けながら俺は見届けていた。
「ルドルフさん!今回のレース惜しくも2着でしたが感想は!」
「トウカイテイオーとはまた再戦するのでしょうか!」
ターフから離れ、地下道を歩いてると記者団に捕まる。私はそのまま控室に向かって歩きながら答える。
「今回のレースは100%以上の力を出し切れたと思います。しかしトウカイテイオーに負けました。問題のない完璧な走りと思っていましたが彼女はそれを超えてきた。私はまた彼女に再戦を申し込みます。その時にはより強くなるよう粉骨砕身で精進していきます。」
そう言って私は控室に入った。扉を閉じて一息つくと部屋からトレーナーの声が聞こえた。
「お疲れ、ルナ。」
「あぁ、ありがとう。」
「惜しかったな。どちらも文句のつけようがない走りだった。」
「そう...だな...」
「ルナ?」
「...すまないトレーナー。私は君の期待に応えられなかった。勝ったら付き合おうという約束に...」
気づけば私は目から涙を流していた。私は決勝の数日前、トレーナーにこう告白した。決勝で勝利したら私と付き合ってくれ。今思えば驕りだった。テイオーに確実に勝てるという慢心が頭のどこかにあったのだろう。
「ルナ。」
「そういえばテイオー、勝ったら言いたいことがあったんだよな。」
「そういえばそんなこと言ってたね。」
「それで言いたいことってなんだよ。」
「トレーナー。こっち向いて。」
「ん?あぁ。」
テイオーの方へ顔を向ける。するとテイオーは俺の顔を手に取りテイオーの顔へ無理やり近づけ。
テイオーの唇と俺の唇が触れ合った。テイオーは唇を離すとこういった。
「これがボクの気持ち。受け取ってくれる?」
「...もちろんだ。」
こうして俺とテイオーは結ばれたのだった。
URAファイナル決勝でボクがとった行動は大きく報道された。トレーナーと担当ウマ娘が付き合う。前代未聞の事例に各地から賛美と批判が集まった。ボクのところにも取材や人だかりができて街なんて歩ける状態ではなかったほどだ。批判の言葉はずっと出てきた。けど理事長が会見時に発した見解でみんな静かになった。
「快諾!生徒とトレーナーとの恋愛は双方の信頼関係によって成り立つもの!故にここトレセン学園は十分な審査を施したうえでの許可であれば学生結婚も承諾する!」
この一言が放たれてからウマ娘たちの交際宣言は頻発した。当初隠れながら付き合ってたマヤノたちは高々と宣言し、そのすぐ後に結婚報告。カレンはウマスタで交際報告し、ファンの7割が尊死するという事態が発生。ファルコのウマッターでも同様の現象が発生した。そうしてトレセン学園は一気に青い春が咲き乱れた。そして...
「遅刻だーーー!!」
学校までの道のりを全力で走る。すると横からあの子の声が聞こえる。
「だから昨日言ったじゃない。早く寝なさいって。」
「わかってたけど楽しみすぎて!」
そう話しつつ道を急ぐ。そして校門前についてあたしたちは一度止まる。
「いよいよね。キタちゃん。」
「うん。ダイヤちゃん。」
「一緒に頑張ろうね。」
「うん!」
そう。あたしキタサンブラックとサトノダイヤモンドは今日をもってトレセン学園の生徒となるのだ。憧れのトウカイテイオーさんがいるこの学園であたしたちは先輩たちと一緒に切磋琢磨してレースに勝つんだ!
「いっくぞー!!」
ムニュ
「ムニュ?」
謎の擬音を聞くとともにあたしは足元を見た。
「ヴヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥトレーナァァァァァァァ」
「て、テイオーさん!?」
あたしの足元には憧れのテイオーさんが倒れていた...なんかすごい生気を感じられないけど。
「何してるんですか!?ここ校門ですよ!?」
「トレーナァァァァァァァ」
あたしがいくら声掛けをしてもテイオーさんはそれしか言わない。いったいテイオーさんの身に何が起きたんだろうか。
「あちゃー。やっぱりここだったかぁ。」
「トレーナーさんが帰ってくるのは確かに今日ですが、さすがに朝から帰ってこないのは明確でしょうに。」
後ろからそう言いながら近づいてくるウマ娘が2人いた。
「あーごめんねぇ新入生さん。この子今トレーナーロス症候群になっちゃっててさぁ。」
「トレーナーロス症候群...ですか...」
「そうそう。トレーナーが2月あたりから海外に出張いっててさー。まぁトレーナーラブなテイオーさんは2か月トレーナー不在に耐えられるわけなく...」
「は、はぁ...ところであなた方は...」
「あたし?ナイスネイチャでーす。」
「イクノディクタスです。とりあえずテイオーさんをトレーナー室に運びますので手伝ってください。」
「は、はい。」
イクノディクタスさんに言われるがまま私たちはテイオーさんをトレーナー室に運び、トレーナー室内にあるソファに横たわらせる。
「それで...テイオーさんは何でこんな姿に...」
「単刀直入に言いますと、トレーナー不足が深刻的になったためです。」
「トレーナー...不足?それってなんかの病気ですか?」
「いえ、単純に惚気がひどい状況になっているだけです。そして...」
淡々とディクタスが説明する。だがキタサンとサトノは理解できずポカーンとしている。
「...とりあえず、学園を案内しましょう。テイオーさんはここに放っておいても問題ありませんし。」
「「は、はい...(いいのかな...)」」
そうして部屋を出た4人は学園を歩くことになった。
「「...」」
「はい、トレーナーちゃん!あーん♡」
「あーん♡」
「おいしい?」
「うまいぞ!マヤノの作る料理は最高だな!」
「やったー!」
「「...」」
「トレーナー」
「ん?どうしたタイシン?」
「ん...」ウデヒロゲ
「あぁあれね。ほら。」
「ん。」
「今日の夜何にするの?」
「...カレー。」
「そっか...タイシン。」
「何?」
「好きだぞ。」
「...あたしも。」
「「...」」
「痛いところはないですか~?」カキカキ
「ないよ~。クリークの耳かきは気持ちいいねぇ。」
「フフッ。トレーナーさんったら赤ちゃんみたいですね~」
「「...あの...先輩方、これは...」」
「あーうん。テイオーが衝撃の告白をしてから学園内で恋愛が爆発的ブーム起こしちゃって...今ずっと学園こんな感じなのよね。」
「そ、そうなんですか...」
「まぁいずれ慣れるでしょう。」
「だ、だといいんですけど...あっ、あたしトレーナー室に忘れ物したのでちょっととってきます。」
「はーい。にしてもディクタス。同棲してるってほんと?」
「えぇ、トレーニング以外でも一緒にいることはトレーナーが私の調子を逐一確認できるので効率的と判断したので。」
「効率的って...噂だとテイオーに負けず劣らずのイチャイチャ具合だって「調子を整えるためです。何か文句でも?」...ないです。はい。」
そうしてどんどん歩いていく3人。その中サトノダイヤモンドはこう思った。
「私...この学園でやっていけるかな...」
ところ変わってトレーナー室。ナメクジ状態だったテイオーはネイチャたちが出て行った後もソファの上でナメクジ化していた
「トレーナーもう2日も電話出てくれない...もしかして僕のこと...嫌いに...「なるわけねぇだろ。」」
ドアの方から聞きなれた声がする。すぐさま体を起こしドアの方を向くと彼が立っていた。
「ごめんよテイオー。実は飛行機が故障で別の空港に着陸してからずっとそこで待っててさ...代替の機が来るまで電話できなかったんだ。」
彼がそう申し訳なく説明する。ボクはそれを聞き終える前に彼に飛びついた。そして彼の顔を見ると同時にこういった。
「おかえり!トレーナー!」
その後、キタサンはテイオーとトレーナーのいちゃらぶ姿を見てたデジタルと共に倒れているのを発見された。テイオーとトレーナーは卒業と同時に結婚。円満な家庭を作り、もともと知名度のあった彼女たちは“砂糖なしコーヒーが似合う家庭”や“尊死家庭”と呼ばれるようになった。
Fin
正直ここ最近忙しすぎて自分の作品に頭を回せる余裕がなかったと言い訳させてください...後自分にモチベをください()