時は2010夏・・・
かつて、世界で最も強い馬を決める戦いがあった
JRA JAPAN WORLD CUP・・・
日本を始め世界各国からめい馬を集め、東京レース場芝1600mで繰り広げられた知る人ぞ知る”めい”レースである
無敗の三冠馬、ギンシャリボーイ
フランス牝馬クラシック3冠 ピンクフェロモン
ケンタッキーダービー覇者 ハリウッドリムジン
スペインブルホーン バーニングビーフ
アフリカより来たる刺客 サバンナストライプ
凱旋門賞制覇のハイネック ジラフ
夢とロマンのサラブレッド? ハリボテエレジー・・・
後に幾度となく繰り広げられた栄光あるレースの第一回出走馬はもはやレジェンドと言っても過言ではなく、東京競馬場の敷地内の一角にモニュメントが飾られ、そこには今尚多くの観客達が足を運んでいる・・・
そんな伝説の第一回レースより幾ばくかの時が流れたとある牧場
JRA JAPAN WORLD CUP創世記に日本代表馬として、同じく日本代表のギンシャリボーイ達と多くの”めい”勝負を繰り広げた一頭の荒馬が、最後の時を迎えようとしていた
その馬の名はチョクセンバンチョー、かつて打倒ギンシャリボーイを掲げレースに挑んだ暴れ馬である
既に好敵手であったギンシャリボーイは第四回JWC以降スシウォーク・スシウォークターボの多用によると思われる負荷がたたりとある病を発病し第四回JWC終了後引退を余儀なくされ、更にその後に心不全から17歳という年齢でバンチョーに先んじて死去している
また第一回大会の強豪ピンクフェロモン、ハリウッドリムジン、バーニングビーフ、サバンナストライプ、ジラフ始め大会にて凌ぎを削った好敵手達もその多くがそれぞれの故郷において亡くなってしまった
唯一創世記から長い月日が流れた現在において、現役なのはハリボテエレジーのみであり彼等は今だレジェンドとしてターフの上を走りやはり曲がれずに転倒する日々を繰り返しているが、存命なのは彼等と最早チョクセンバンチョーのみであった
かつて、ハマッたときの末脚は国内最強馬ギンシャリボーイをも凌ぐと言われた末脚は最早自身の体を支える力もなく、危篤の報を聞いて駆け付けた騎手の反川キメジに何とか首を起こし、顔を寄せるだけしか出来ない。そんな相棒に、キメジはかつてを懐かしむ様に最初に出会った頃からの事を語りかけた
手綱で御されるのを嫌い多くの騎手を振り落とす、或いはレース中に暴走していた日々の事
そんなある日自分と出会い、その背に自分に乗せる為に幾度となくタイマンを張った日々の事
殴り合った末に互いを認め合い、キメジ考案のハンドル型手綱を付けてレースに挑んだ日々の事
そして・・・日本の誇り、松岡正海とギンシャリボーイに幾度とも無く挑み続けた日々の事・・・
チョクセンバンチョーは嘶きもせずにそれを語るキメジをじっと見つめていた
走ってきた道の軌跡を1つ1つ辿る様に語り、その話の最後を締めくくる様にキメジはバンチョーに言った
「オメーは今まで乗ってきた・・・いや、これからも乗るであろうどんな単車よりもスゲー奴だ。俺はオメーの最高のマブで、相棒だ・・・ありがとよ、ダチ公」
かつてはバンチョーの顔に叩きつけられていた、熱く重い一撃を放った拳でキメジは彼の頬を撫で続けた
そしてそれより少しして、チョクセンバンチョーは彼の最高のダチに顔を寄せたまま、眠る様に息を引き取ったのであった・・・
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ウマ娘、と呼ばれる存在が居る世界
人とは異なる耳と尾を持ち、超人的な健脚を誇る彼女達は、その世界には存在しない名馬の名と魂を受け継いでレースを駆ける
そんな世界に今、彼・・・いいや、既に彼女になった1人のウマ娘が新たに降り立つ
東京競馬場のモニュメントに刻まれた彼のかつての二つ名は、『日本総番』
ウマ娘チョクセンバンチョー、これはその始まりの物語である・・・そこんとこ夜露死苦!
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俺・・・いや"私(あたし)"チョクセンバンチョーがこの世に生まれ変わって早や数年・・・
黒毛で腰まで伸びた長いストレートヘアーと、神社の鳥居みたいな綺麗な紅色の前髪
右耳の根元には黄色のリボンを付け耳と尾は漆黒のような黒い艶やかな毛並みに、綺麗な二重の目と活発そうな顔立ちの小娘になったのが今の私だ。うん、どうしてこうなったと最初は思ったもんだ
私の騎手であり相棒であった反町キメジを始めとするスタッフに看取られながら意識を手放して眠って、気付いて見りゃあこの人間のようでそうでない体のちびっ子になってやがった
随分昔にキメジの舎弟だったカルキン坊主が初めてターフに立った時の姿のような背丈で馬の頃の耳と尻尾が生えて女になってるとか呆然としたぜ
かつて国内最強と言われたアイツに勝るとも劣らぬ馬であったのに、第二の生はまさかキメジのような人間によく似た存在になるとはなぁ・・・
しかもまさかまさかの女に生まれ変わっちまった、未だにスカートとか言うヒラヒラしたもん穿くのは苦手だ
何かその、落ち着かねぇしな・・・元牡馬としちゃあどうしても、さ
まぁ・・・こんな姿になっちまってもやはり前世と同じく走るのは楽しくて、毎日公園で友人達と遊び回り走り回り二人の『母ちゃん』に微笑まれている
そう、『母ちゃん』である
私も自身がウマ娘になっていたのには驚いたが、まさか私の両親もウマ娘になっていたのには更に驚いたもんだ
父であったガソリンテンゴクは私のような黒髪を太股まで伸ばしたストレートヘアーのスタイルのいい黒目のキリっとした感じの女性だし?
母であったオキシドールは長い白髪を三つ編みにした赤目のこれまたグラマラスな女性になってやがるとかどうなってんだ・・・
ウマ娘ってのは大体種族的に美女か美少女になるのが普通なのか・・・
だがこれがこの世界での一般的な流れならしゃあねぇか、新しいウマ生楽しんでいくとするかね
さて、差し当たって今の私の現状を語るか
まだ馬の頃キメジが暴走族になる前に『俺も通っていたんだぜ?』とあれこれ言っていた学校なる場所に今現在通って学年の中ほどまで上がってきた
自宅からウマ娘の足で走って15分程の場所にあるリトルスクールは大多数は人間だがウマ娘も少しは居たので学業の他レースの練習等で年上・年下のウマ娘の方々とも仲良くさせて貰っている
特にこの学校入学当初より居た風変わりな髪色のわんぱく娘と、去年に転校して来たミドルツインテールのウマ娘とはよく一緒に練習をしている
わんぱく娘との出会いは彼女がその風変わりな髪のせいかは分からんが、遠巻きにされていた所に声をかけて以来どうも懐かれてしまったらしい
話してみれば素直で分かりやすい賑やかな奴であるから、私と行動を共にしている内に段々友達を増やしていっていた
親しくなって以来、練習を一緒にしているがコイツは持ち前のスピードを活かした逃げが得意なんだが・・・スタミナ管理に問題がある所にどうにもシンパシーを感じるな
まるでかつての自分を見ているようだぜ
特にレース事に関する熱の入り様はとても好ましく、競争しようと言われて嬉しくなりお互いバテバテになるまで公園を走り回ったのは笑い話だ
んでわんぱく娘達と友情を育んで共に汗を流し二人して苦手な勉学に四苦八苦していると、スクールの学年の折り返しの春にうちのクラスに転校生がやって来た
それが2人目の親友のミドルツインテ娘である・・・長いからツインテ娘だな、うん
このツインテ娘とはよく両親と一緒に買い物に行く商店街で出くわす事が多かったのだが、そこで起きたとある一件で随分と親しくなった
商店街で行われていた一定額以上の買い物をする度に貰えるスタンプを集めて引けるくじ引きのスタンプが溜まり、引かせて貰ったのだがこれで3等商品の1つである白い猫の大きなぬいぐるみを引き当ててしまった
あまり狙ってもおらず、しかもこういう可愛いものの扱いに前世は雄だった私はさして興味もないからどうしたものかと考えていた時たまたま向こうの親と共に件のツインテ娘がやって来た
私が抱えていた猫のぬいぐるみを見て落ち込んだ様子の彼女にどうしたのかと聞いてみれば、どうにもこのぬいぐるみを当てたかったらしい
片手にはスタンプで一杯になったくじ引きの券を握り、耳と尾を元気なく垂れ下げたこの子を見ていた私は何だそういう事なら譲るぞと彼女に言った
えっ、と言う言葉と一緒に伏せていた彼女にぬいぐるみを差し出す
するとどうして、と聞かれたので私も猫は好きだが私の狭い自室ではこの子を置くには狭すぎると思っていたが、そこにこ奴を欲しがるお前が現れたので狭い部屋で雑に扱ってしまいそうな私よりも大事にしてくれそうな者に貰われた方が、この白猫も嬉しいだろうと思っただけだと誤魔化しながら答えてやった
そうすると貰える事の嬉しさと本当にいいのかという困惑からか少し迷った様子を見せたので、ぼふりと猫のぬいぐるみを押し付ける様な形で渡すとあわあわと受け取り落とさない様に持ち直した後にもじもじしながら小さな声でありがとうと言われたので、是非大事にしてくれよと笑顔で返しておいた
しかしタダで貰ってしまうのは悪いと思ったのか、今持っているくじを引いてそれで当たった商品を代わりにくれると言うので引いて貰い、4等の2000円分商品券で2人分の菓子とアイスを買い、お互いの親と共に帰る道すがらアイスを舐めつつ話していたら親しくなるまでそんなに時間はかからなかった
この二人も将来的には隣町にある「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」を目指すらしく、今後も同じ場所を目指す好敵手兼親友として仲良くしていきたいもんだ
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そんな学友二人を始めとした多くの面々とリトルスクールに通いながら日々レースに向けて練習と勉学を繰り返す最中に、私は2人の母に連れられて故郷より遠く北海道まで行く事になった
連休休みもあるから数日泊まる予定らしい
何でも、かつての母達の同期のウマ娘の家に墓参りに行くらしく、仕事の都合や私の育児で今の今まで中々二人揃ってでは機会が無かったが今回晴れて算段がついたとの事だ
向こうには私よりも少し年上のウマ娘の子供がいるらしく、その子への紹介も兼ねているらしい
一体どんな奴なのか、興味はあるのでそわそわしてたら親父、じゃねえやリン母ちゃんに緊張してるのか?と問われたのでいいや会うのが楽しみだからさ、と答えるとスぺは素直で明るいいい子だから大丈夫さと頭を撫でられた
どうやら相手はスぺという愛称があるらしい・・・私と同じで走るのが好きで共に競い合えるようなウマ娘なら大歓迎なんだがなぁ?会うのがホント楽しみだぜ
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チョクセンバンチョー
JRA JAPAN WORLD CUP、ギンシャリボーイとハリボテエレジーに並ぶ第1回~3回大会皆勤賞のレギュラー馬。
レースに出る度にリーゼントの髪色が変わり、地毛の黒から金、赤へと変わる。
この作品においては前世で馬として生きた期間は最も長く、最後はキメジと牧場スタッフに看取られて没した。25歳没。
前世では暴れ馬で性格も荒々しいクセ馬だったが、子供が出来てからは嘘みたいに大人しくなった。
ウマ娘に生まれ変わった最初は相当凹んだものの、再びターフを走り強者達と競い合える事は非常に嬉しい模様。
ガソリンテンゴク
黒目で黒いロングストレートの髪と黒い耳と尾を持つバンチョーの母親その1。
とある学園のOBにして同学園の料理副主任。前世の記憶はない。
得意距離は中距離と長距離だった。
オキシドール
赤目で長い白髪三つ編みと白い耳と尾を持つバンチョーの母親その2。
とある学園のOBにして同学園の専属医の一人。此方も前世の記憶はない。
得意距離はマイルと中距離だった。
反川キメジ
JRA JAPAN WORLD CUPにおいて全ての大会でバンチョーの騎手を務めたバンチョー唯一無二の騎手。
交通ルールや走り方までバンチョーに叩き込んだ元暴走族総長。
その後もバンチョーの家系が荒馬が多かったので彼らと殴り愛をしながらも騎手を続けていく後のレジェンド。
バンチョーの孫の代にJWC世界最強馬と言われた三代目日本総番『コンゴウバンチョー』が生まれ、彼の騎手を務めたキメジは
松岡を超える夢の八冠を成し遂げた。
わんぱく娘
同級生にして親友その1。一体何ンターボ師匠なのか・・・
何かとバンチョーに絡んでいくが、大抵の事は嫌がらず快く付き合ってくれるバンチョーの事が大好き
ツインテ娘
同じく同級生にして親友その2。一体何スネイチャなのか・・・
貰った猫のぬいぐるみは枕元に置いて時折モフモフしている。少し雑な所もあるが名前の通り真っ直ぐなバンチョーの事は嫌いじゃない。
スぺ???????
バンチョーの両親と同期のウマ娘の娘さん。一体何シャルウィークなのか・・・
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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チームスピカの話
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チームカノープスの話
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チームコールサックの話
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親や他のウマ娘との話
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JWCの面々の話