チョクセンバンチョー視点
中山レース場で行われるダートレース、伏竜ステークス
これが南坂トレーナーと私で決めたデビュー戦になった
ダートレースを選択したのは長所を伸ばし短所を補う為と怪我のリスクを減らす為、そしてテイオー達との勝負をクラシックまで伸ばしつつレース経験を積ませる為です、とトレーナーは説明してくれた
私の能力向上を考えつつテイオーとの約束を守れる様に考慮してくれた南坂トレーナーには感謝しかねぇや、ホントに私の背中を押してくれるんだかんなぁ
何時かG1レースの1つか2つ取ってトロフィー取って来て恩返さないとな、その為にも先ずはメイクデビュー戦派手にブッコみ入れて来るか!
『7枠12番、チョクセンバンチョー』
アナウンスが流れて来たので、それに従いパドックへと出て行く
パドックでの観客に向けた挨拶も難なくこなして他のウマ娘達同様に準備運動を始めようかと思ってみれば・・・パドックに居るウマ娘に顔見知りの奴が居た
「ふっふっふ、遂に来たなバンチョー!お前は今日、このウインディちゃんに敗れ去るのだー!」
「ウインディじゃねえか、お前もこのレースに出るんだな」
「そうなのだ!バンチョーが出るって聞いた時からお前を倒す為に気合入りまくっていたのだ!さぁ覚悟するのだー!」
がおー!と私に対して熊が威嚇するように両手を構えてくるウインディ
このシンコウウインディは美浦寮における私のルームメイトである
ヒシアマの姉さんでも手に余る気性の荒いわんぱく娘で、私を始め度々周囲の人間にあれこれ悪戯を仕掛けたり物理的に噛みついたりする様な奴ではある
まぁ、私自身前世ではキメジと出会うまで散々暴れていた馬であるし悪戯程度では怒らないがな・・・時折私のベットに悪戯と称して潜り込んでくるのは最初困惑したが、今では時折一緒に寝てる仲である
案外かまって欲しいから悪戯仕掛けてるんじゃねえかなウインディの奴、ちゃんと反応してやると嬉しそうにしてるしなぁ
そんなルームメイトのウインディであるが、今はターフで戦うライバルとして此処に居る訳だし気合入れにゃあならねぇな
生半可な覚悟じゃあ噛み砕かれちまうだろう、レースで一番大切なのは相手に噛み付く位の闘争心なのだ!と言う様な奴だし、な
「おぉ、そりゃあ嬉しいぜ・・・ウインディが相手なら私も気合入れて走らねぇとな!半端な闘争心じゃあ嚙み砕かれちまうだろうし」
「当然なのだ!のろのろ走ってたらバンチョーに噛みついてやるのだ!」
「なっはっはっ、だろうな!お前に噛み付かれたら痛そうだからそうならん様に走らせて貰うぜ・・・じゃ、私も準備運動してくるから後はターフでし合おうぜ?」
そう言っといてウインディと別れ、準備運動を行っていればパドックからバ場へ移動する為の地下道へと案内され、レース場に選手達が一堂に揃う
ウマ娘となって初のレースか・・・最初の頃は騎手がキメジじゃなくて全然勝てんかったな、定石通りの差しや先行策がどうにも合わなかったというのもあるが今と昔じゃ気性が全く違ったし
キメジと会い、ギンシャリと競い、JWCで多くのUMA達と競って、アイツが居なくなった第5回で覇者となった前世から私はまたこのターフに帰って来た
場所は違えど踏みしめるこのダートの感触は、前の世界とあんま変わんねぇな
観客の声も前と同じだ、流石に今日は曲がれよー!なんて声は聞こえねぇが自分の押しウマ娘や応援したいウマ娘に対してのそれも変わってねぇなぁ
そんな応援してくれる声に手を振り答えつつ、私達はゲート前へと集まっていく
今回のレースは14名のウマ娘が競い合う形で開催されており、私の枠は8枠13番で人気は3番目である
これパドックでの紹介の時に私の親の事を実況の姉ちゃんが言ったから高めなんだろうな、一応重賞にも出てた2人だし
因みに1番人気はウインディの奴である、自信満々な感じで意気込んでいるな
『さぁ、中山レース場伏竜ステークス!続きまして第10レースのメイクデビュー戦、ダート1800です。晴れ渡る空の元開催される本レース、バ場状態は良好。14名で行われる本レース、1枠1番は――』
紹介されたウマ娘達が内枠順にゲートへと誘導されていく
大外から2番目の私は必然的に最後から2番目にゲートへと入る形となる訳だが、流石にメイクデビューを迎える連中ばかりのレースだ、模擬レースと比べて落ち着いてんなぁ
まぁだからって言って負けるとは思っちゃいねぇ、前と同じように身を屈め体勢を整えて開始を待つ
私の隣、最後の1人がゲートに入り少ししてから・・・
ゲートが、開いた
『各ウマ娘揃って綺麗なスタートを切りました! 先頭争いはガールズエラー、メイルローム、2番人気のメイライムラサメ!その後ろに1番人気シンコウウインディとタイアップセレクションが続きます』
『逃げを得意とするメイライムラサメ、先行を得意とするシンコウウインディ共にいい位置につけていますね』
『さぁ3番人気のチョクセンバンチョーは中段前方、タイアップセレクションの後ろにつけています!この位置は先行、或いは差しを意識した位置取りでしょうか?』
『その可能性が高いですね。位置的にも内側、外側どちらにも入り込めるいい位置ですよ』
今回のスタートダッシュはまずまずの出来であるが、位置取りは上手くいったな
私よりも内側の枠だったウインディ、ムラサメの奴の2バ身後ろで内にも外にも動ける好位置だ
おまけに横には誰もおらず大外ぶん回そうが内に切り込もうが好きに出来るなこりゃ
ただ・・・
(快調に飛ばしてるが、風がやっぱつれえなぁ・・・)
晴れ渡ってる空とバ場状態は良好であるが本日の中山はゲートに対して”向かい風”であった
ガタイのいい私はやっぱそれ相応の風を受けざるを得ないし、スリップストリームを使おうにも他のウマ娘達は私よか小柄だ、身を屈めてせまっ苦しいフォームで走ればスピードは落ちるしパワーも出し切れん
かと言ってそのままのフォームだとひょっこり出てる頭にだけ風がモロに来るから困ったもんだ、ターボを追い掛けてる時もよくこうなるがこれも走りにくいもんである
フォームの改良や修正は今後トレーナーと相談しつつやっていくとするとして、今は今のフォームでやるっきゃねえな
幸い、私は差しも出来る・・・というか、第1回JWCは差しで挑んだし一番経験がある策であるからな、ウインディの奴をしっかり追い掛けつつ脚を溜めていく
『向正面から第三コーナーに差し掛かろうかというところですが未だ各ウマ娘動きがありません!』
『これは心臓破りの坂、その後の短い直線での勝負になりそうですね!ガールズエラー、メイルロームは見た所かなり息が上がっています、掛かっているかもしれません!そして此処で来ましたね!』
『あーっとカーブに入ってシンコウウインディ、シンコウウインディスパートをかけてきたー!』
「ぬあああああああ!このまま一気に坂も上り切って一着でゴールしてやるのだー!」
「くううっ、無理ぃー!」
『タイアップセレクション、シンコウウインディを追えない!そのまま先頭のメイライムラサメに迫るー!』
『メイライムラサメも懸命に逃げていますがカーブを越えたこの先に待ち構えるのは中山の心臓破りの坂です、このペースで逃げ切れるんでしょうか?シンコウウインディはここまで脚を溜めていましたから坂を上っても余力がありますから厳しい戦いに・・・あっ!?』
『おおっと第四コーナーを今抜けようとしているメイライムラサメ、シンコウウインディに外から迫る影が!あれは・・・!』
第三コーナーに入る辺りからウインディの奴が仕掛け始めた
既に息が上がってたらしい逃げウマ娘2人があっさり追い抜かれ、タイアップの奴も追い縋るがついて行けてねぇな、先頭のメイライムラサメは・・・余力があるかどうか今の位置じゃ見づらいから分かんねぇな、仕方ねぇ
しかし此処が私にとっても仕掛け所だ、ウインディ達は元より実況もバチバチやり合ってる先頭組に視界が行ってるからこっちには目が向いてない
今の内にこっちもギアを少しずつ上げる、一気に上げないのは中山の坂の為だ
模擬レースの時と比べるべくもない中山のあの坂はダートでも健在だ、まるで小さな山を登らされるかのようなあの坂は生半可な助走じゃスパートすらかけられない、その上此方はまだスタミナには不安が残っているのだ
ゆっくり、ゆっくりとギアをMaxまで上げ切る
ずるずると下がってきたガールズエラー、メイルロームを外側から抜き去り必死な表情のタイアップも追い抜けば既に第四コーナーも終盤に入りきっていた
『チョクセンバンチョーだ!チョクセンバンチョー此処に居た!外から差しに来たぁ!』
『このタイミングでのこの位置、シンコウウインディが仕掛けた時にすぐさま彼女も仕掛けましたね』
『しかし此処で最後の難関として待ち構えるのは中山レース場の名物心臓破りの坂だぁ!各選手どう出るー!?』
(ひえええええ、こ、来ないでー!?)
(来たのかバンチョー!でも、ウインディちゃんは負けないのだー!)
(来たぜェウインディ!メイライもいい走りすんじゃねえか!さぁ気合入れろや、この坂で真っ向勝負だ!)
『真っ先に坂に突入したのはメイライムラサメ、続いてシンコウウインディ、チョクセンバンチョーの順で入る!約5バ身程の差の中での戦いだー!』
『メイライムラサメ、苦しそうです!こうなっては脚を溜めていたシンコウウインディ、チョクセンバンチョーの両名がやはり有利ですね!』
(む、無理―――――!)
(これで、1位なのだ!)
坂の中腹近辺で遂にメイライがウインディの奴に追い抜かれた
下がってきた彼女の横を私も追い抜き、坂を上り切る直前に、ウインディの横に並ぶ!
横目でウインディの奴を見ると、向こうもこっちを見ようとしていたのか、目がばっちりと合う
ニィ、と小さく笑みを浮かべりゃアイツもギザ歯を覗かせながら笑みを浮かべる
次に頭ん中に出て来た言葉は、アイツも私も同じだったろうな
((こっから先は!コイツとの気合と闘争心の勝負だぁ!))
一歩、前へ 譲らない
二歩、前へ 譲れない
三歩、前へ 負けられない
『メイライムラサメを抜き坂を上り切ったシンコウウインディ、チョクセンバンチョー互いに躱せずにゴールに向かって走り続け残り50を切ったー!どうなる、どうなるー!』
『いえ、これは・・・!』
(ぬああ~、く、悔しいのだー!)
(今回は、私の・・・勝ちだ!)
最後の最後、勝敗を分けたのは私が差し策で何とか残していたスタミナであった
ラストスパートをかけれた私と、かけれなかったウインディの差は結果として最後の最後に形となって現れ、2バ身の差をつけてゴール板を駆け抜けた・・・私の、勝利である
『チョクセンバンチョー!シンコウウインディとの激闘を経て1着でゴール!素晴らしい激闘でした!』
私とシンコウウインディのメイクデビュー戦とは思えない激闘に、会場は歓声に包まれている
応援してくれた観客に向けて模擬レースの時同様右腕を高く掲げガッツポーズをすれば、更に歓声は大きくなった
その後のウイニングライブに関しては、練習期間も結構あったしネイチャが色々教えてくれていたのでまずまずの出来に収まり安心してた、主に南坂トレーナーが
こうして、私のメイクデビュー戦は予想していなかった強敵シンコウウインディと競い合いながらも無事に勝つ事が出来たのであった・・・
・・・その日の夜、美浦寮の一室
「ぐ~や~じ~い~の~だぁ~」
「・・・悔しいのは分かったから、頭を私の腹に押し付けて来るんじゃないウインディ、寝れん」
レース後にウイニングライブをこなしてカノープスの面々やスピカの面々、ヒシアマの姉さん達に祝って頂いた後、寮に帰って来て飯食って風呂に入ってくたびれたから寝ようとしたんだが・・・ずっと部屋で唸っていたウインディの奴がいざ寝ようとした私のベットに潜り込んできて頭を腹に押し当てて来た、何がしたいんだ・・・
「また勝負するのだ、今度はバンチョーには負けないのだ!」
「それは構わないけど、今日は自分のベッドで寝るつもりはないのか?」
「ふっふっふ、ウインディちゃんに勝った喜びのまま直ぐに寝れるとは思わない事なのだ、寝れない様に邪魔してやるのだ!ガブッ!」
「いててて、腕を噛むな噛むな、コイツめ・・・暫くはダート路線らしいからお前とレースがダブる事もあるだろ、そん時はまた一緒に走ろうな?」背中ポンポン
「今度は勝ってやるのだ!」
「ああ、今度は勝って見せてくれよウインディ」
再戦の約束をしてやると、嬉しそうな笑顔になって私に抱き着いて来るウインディ
やっぱコイツかまって欲しいから悪戯仕掛けてるんじゃねえかな?存外寂しがり屋なのかねぇ?
まぁ暫く好きにさせれば自分のベットに戻るやろ
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・ん?
「・・・ぐぅ」
「・・・嘘やん、また寝たんか・・・」
何でコイツは私のベッドに入ってくると普段以上に直ぐ寝ちまうんだ?まるで意味が解らんぞ・・・
―――――――――
チョクセンバンチョー
メイクデビュー戦、思った以上の接戦を経て勝利
ルームメイトが同じレースに出てるのは知らなかった(南坂トレーナーの方もウインディが同室とは知らなかった)
時折ウインディがベットに潜り込んでくるのが不思議でならない
シンコウウインディ
チョクセンバンチョーのルームメイト、美浦寮の結構な問題児
ヒシアマの姉さんを始めとするウマ娘に対して悪戯を仕掛けたりしているが、それは本人が寂しがり屋で構って欲しいが為である
バンチョーにも多々仕掛けたり噛みついたりして追いかけられているが、怒られるという事はあまりない(俺もヤンチャしてたしキメジにめっちゃ噛み付いたなー、とか懐かしがられてはいる)
シンコウウインディのヒミツ?
チョクセンバンチョーのベットに時折潜り込む事がある
その時は普段より何だか早く、そして良く眠れるらしい
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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