チョクセンバンチョー視点
結局日本ダービーは、かつて走った事のある私ですら考えられない結末を迎えた
チームリギル、エルコンドルパサー
チームスピカ、スペシャルウィーク
この両名がほぼ横並びでゴールし、写真判定の結果を以てしても同着と判断されるという馬にしろウマ娘にしろ極めて稀有な決着で幕を閉じるという事態だ
皐月賞勝者のセイウンスカイ、同レース2着のキングヘイローを始めとする強者達を抑えてのこの激闘に会場は沸き立ち、勝者である2人のウマ娘に対して掛けられる歓声や称賛の声は日本ダービー史上屈指の大きさであった事だろうな
「・・・いやぁ、凄いダービーだったねぇ。私も思わず手を握り締めて先輩方を応援してたわ」
「ああ、本当にな。最終直線でのあの大接戦からの同着での優勝は、本当に燃えたよ」
モニターの向こうで、同着となったエルコンドルパサー先輩と共に嬉しそうにトロフィーを掲げ嬉しそうに写真を撮られているスぺ姉ちゃんの顔を見ていると、テーブルの向かいに座るネイチャがそう言って来た
いや、マジで良い勝負を見せて貰ったものである
私とギンシャリの奴の時はアイツに手も足も出ずに逃げ切られて、無敗の2冠を成し遂げられてしまったものだからこういった激闘を魅せられては尚の事羨ましくもあり、また喜ばしいものだ
今頃スぺ姉ちゃんのお母ちゃん達もこのレース結果を見てきっと喜んでいる事だろう
時折スぺ姉ちゃんだけでなくリン母ちゃん達からも便りが届いているとは言えやはり大事な大事な一人娘だからなぁ、親としては遠方に居る娘の無事と活躍の知らせは何よりも嬉しいもんなのだ
「しかしまぁ、あんだけの激闘見せられたら滾るモンがあるなぁ。ネイチャ、私等のダービーもあれだけの激戦繰り広げたいもんだな?」
「うーん、そりゃあ~あんだけの舞台で走らせて貰えるのは誇らしいし勝ちたいとは思うんですけどね?何と言うかこう~・・・同期の出場メンバーにバンチョーとテイオーがいるのはネイチャさんにとっては鬼門なんですよねぇ~・・・あははは、はぁ」
「おっと?そいつぁ私とテイオーが居なければ1着をもぎ取る自信アリ、って事か?流石ネイチャだな」
「いやいや!?其処まではネイチャさん言ってませんから!?誇張!誇張が過ぎるってバンチョー!?」
「なぁんだよ、そこで『テイオーが居ても私が居てもネイチャさんが1着取りますから覚悟しといてくださいね~?』位言ってくれるのかと期待してたんだがなぁ」
「無茶振り過ぎるから!」
いやお前さんなら存外出来そうなんだがなぁ?テイオーにも私にも無い実力をネイチャは秘めているからそこを生かしきれば勝てる程の勝負になるのだ
特にスタミナ面では3人の内で今最も秀でているのはネイチャであろう、私もテイオーも現状は皐月やダービーでは戦えるだろうが最後のレースである菊花賞に関しては最後にバテてしまうのが目に見えているのだし、スピードも決して遅い部類には属さないから油断のならない相手なんだがねぇ
多少は自信持ってもいいんだぞ?え?自分はそんなキラキラしたウマ娘にはなれない?またまたぁ
「あー、もう!この話はお終いにして、他の話しようよ!えーと・・・あ、そうだバンチョー最近走り方変えたけど、あれに関してトレーナーが新しいトレーニングメニュー考えますって言ってたの、結局どうなったの?」
「うん?おお、アレか」
ピッチ走法の事に関しては変えたというより実際は元に戻したというか元に戻ったという感じなんだが、そのスタンスに変更するのに合わせて一部の練習を変更又は追加したいとの事でお任せしているのだが今の所上半身の強化、主に腕や肺活量の強化と足裏のトレーニングを考えているらしい
肺活量は兎も角腕のトレーニングは走法と関係あるのかねぇ?まぁトレーナーがそう言うなら何か理由がある訳なんだろうがな?
「今んとこ上半身や肺活量を増やすトレーニングを考えているんだとさ。ただ、腕とか鍛えて意味あるのか正直よく分からんのだがな」
「んー、そこはほら、ピッチ走法って歩幅が短くなって歩数も必然的に増えるから腕も振る回数が自然増えるからじゃないのかな?」
「あぁ~、成程な!だからかぁ」
あ、そっかそう言われてみりゃ確かに腕振る回数が増えるから腕の筋力つけて振り続けないといけなくなるんだ!確かにそれは大事になってくるな
やっぱ体の構造が馬とウマ娘じゃ違うのは大きいなぁ、常時4つ動かしてるモンと連動して動かさざるを得ない2on2のモンじゃ感覚が違うわ
となると足裏のトレーニングも何か関係してくるんだろうか?
「後は足裏のトレーニングらしいが、ネイチャは何か心当たりあるか?」
「うーん・・・ゴメン、ちょっとそれは私には分かんないなぁ」
「構わねぇよ、それに腕を鍛える理由が分かっただけでもトレーニングに対してのモチベ上がるし助かってるよ。サンキューネイチャ」
「いえいえどういたしまして。けど、感謝してくれるならその代わりにまた私の並走トレーニングに付き合って貰おっかな?」
「なはは、お安い御用よ」
えー、はい、今私はトレセン学園内の一角にある研究室っぽい部屋の前に居ます
ここ色々噂で聞いた事がある場所なんだよなぁ・・・何でも此処から七色に光り輝くウマ娘が出て来た、とか夜誰も居ない筈のこの部屋の明かりが急に灯ったかと思ったら点滅しだした、とか他にも異音とか悲鳴が聞こえて来たとか嘘かホントか良く分かんねぇ話が諸々さぁ?あるんだよな
・・・大丈夫なん入っても?怒られたりしない?何かやべーの居ない此処?
「・・・なぁ南坂トレーナー?」
「はい?何でしょうかバンチョーさん」
「私な、今日ダービー見てたんだよ」
「ええ、スペシャルウィークさんとエルコンドルパサーさんのあのレースは見ていてとても熱くなりましたよ?同着1位には僕も驚きましたし」
「そうか、アンタも見てたのか?なら私も負けない様に練習に熱を入れたいと思ってるのも理解して貰えると思ったんだよ、今日はどんな練習するのかな?ってさ」
「はい」
「・・・で、ネイチャとターボに練習指示しといて私だけ別んとこに行くって行った時さぁ、何か特別な練習さしてくれんのかって期待したんだぜ?」
「あはは、すいませんご期待に沿えずに。でも大事な事なので是非協力して頂けますか?」
「それでこの部屋にってのがよく分かんねぇのよ・・・」
「大丈夫ですよ、この部屋に普段居るチームの方達には話をしてありますから」
「え?ここチームの部屋なのか?」
嘘だろ、この部屋チーム用の部屋だったのか?
普通私等みたいに屋外の一角にそれぞれ一室分用意されてるもんだと思ってたんだが例外があったんだな・・・
にしたって特例過ぎるだろ、一体どんなウマ娘の居るチームなんだよ
「チームコールサック、規模としてはリギルやスピカには劣りますがその実曲者揃いのチームとして有名なチームですよ?因みにトレーナーは・・・」
「私です、よく来ましたねセン」
「げぇっ!?キシ母ちゃん!?」
ガラリと横引きの扉を開いて出て来たのは何とレディーススーツに白衣を着たオキシドールことキシ母ちゃんじゃねえか
いや一応トレーナーとは聞いていたがキシ母ちゃんアンタまさかチームトレーナーだったのかよ!?
しかも曲者揃いのチームとか予想外過ぎるわ!えぇ・・・とんなメンバーなんだろ
「すいません、急なお願いをしてしまいまして」
「いえ、我が娘の事でもありますからね・・・まぁ立ち話も何ですから入って下さい南坂トレーナー、セン」
「お、おう」
私、一体何されるんだろうか?正直帰りたくなってきたわ
いやでもキシ母ちゃん居るしそ、其処までひどい事にはならんだろ~多分
そう思いながら部屋に入るとまぁあるわあるわ訳の分らん機材や薬品棚の数々、更に何らかの書籍が詰まった本棚にコ゚ポコ゚ポ音を出している薬品が入ったフラスコに試験管が並べて置かれたテーブルと正に研究室と言わんばかりのお部屋でございます
そしてその部屋の中央、正に今実験中でしたと言わんばかりに白衣を着た栗毛のふわふわショートヘアのウマ娘が試験管を片手に振り返ってニッコリと笑みを浮かべているじゃあございませんか
「おやおや、チームコールサックへようこそ来てくれたねぇチョクセンバンチョー君?」
「スイマセン帰らせて貰います」
「待ちなさいセン、帰ろうとしない」
入室して秒で回れ右して帰ろうとしたら容赦なく肩を掴まれてしまったで御座る
いやそう申されましてもキシ母ちゃん、入室して初遭遇した栗毛のふわふわショートヘアウマ娘さんが奔放すぎるアホ毛をピコピコ左右に揺らしつつかつ如何にもな白衣着てハイライトオフな目でニッコリ微笑んでりゃ逃げようとしても可笑しくないと思うんだがな!?(早口)
やべーよアレお薬打たれるか血液採取されるか分らんけど何れにしろモルモットにされる奴じゃないですかね!?
「大丈夫よ、この子はサボり気とムラッ気があるけれど度の過ぎたマッドじゃないわ」
「おや、マッドの所を否定しないとは初対面の娘さんに中々言ってくれますねぇ”先生”」
「貴女とは長い付き合いですからね・・・全く、困った”生徒”ですが」
「え?何二人はそういう仲なの?」
「バンチョーさんに説明しますと、オキシドールさんがトレーナーになって初めてスカウトしたのがタキオンなんですよ」
「マジでか」
えぇ、うちの母ちゃんが最初にトレーナー契約したのがこのウマ娘なのか
案外科学者というか医学者的なシンパシーで仲良くなったのかもしれんが本当に大丈夫なのかね?
けどまぁ先生と生徒と互いに言っているし、クスクスと笑うアグネスタキオンさんとやれやれとした苦笑いを浮かべるキシ母ちゃんを見てると其処まで仲が悪そうには見えんから大丈夫、だろうか
ま兎も角だ、先ずは私が此処で何すりゃいいか聞いとかねぇと不安でしょうがねえや
「そこんとこは少し気になるが今は後にしといて・・・南坂トレーナー、私此処で何すりゃいいんだ?」
「先日の走りを見た後も暫くの間バンチョーさんの走りを見させて貰っていたんですが、実は気になる事がありまして・・・その確認の為に専属医のオキシドールさんに診て貰おうかと思ったんです。まぁ、アグネスタキオンさんも居るとは思いませんでしたが」
「ふふ、バンチョー君はデジタル君と同じく芝もダートも行ける稀有なウマ娘と聞いてね?それに先生達の娘さんだからか優れた肉体を持っているようだし、前々から興味があったんだよ。いい機会だし色々調べさせて貰おうかと思ってねぇ」
「と、言うので変な事をしない様に監視も兼ねて身体検査に同席させようかと思います。データを取れば多少は満足するでしょうし、それ以降の検証を行う際には貴女にも許可を得る様に言い含めておきますから安心しなさい」
「まぁ、そういう事ならいいけども」
「決まり、ですね。では南坂トレーナー、少し席を外して貰っても構いませんか?」
「ええ、僕は外で待っていますので終わったら教えて頂ければ」
「ああ、分かっているとも。さて、では色々と調べさせて貰おうかバンチョー君?フフフ・・・」
ニコニコと笑みを浮かべながら私を寝台へと案内するタキオンさんに私の顔が引き攣ったのは、言うまでもない事であろう
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チョクセンバンチョー
自分が馬の時のダービーは苦い思い出で終わってしまったが、スぺ姉ちゃんのダービーが余りにも熱くて羨ましがってた
その熱を持ったまんまでさあ練習だと思ってみたらまさかの身体検査でがっかり
タキオンに対して若干の苦手意識を持ち始めている
ナイスネイチャ
バンチョーと一緒にスペシャルウィーク達の日本ダービーを見ていた
アニメ版では日本ダービーには出れず仕舞いだったが果たして・・・
南坂トレーナー
先日からバンチョーの走りを見続けていたが、少し気になる事があった為にオキシドールにバンチョーの身体検査をお願いする事に
この結果を受けて夏合宿のメニューと場所を調整しようと思っている
オキシドール&アグネスタキオン
本作品オリジナルのチーム、コールサックのトレーナーと最初にスカウトされたウマ娘
この2人に関しての詳細は次回に持ち越し
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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チームスピカの話
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チームリギルの話
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チームカノープスの話
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チームコールサックの話
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生徒会の話
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親や他のウマ娘との話
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JWCの面々の話