チョクセンバンチョー視点
桜が散り春も大分終わりつつある今日この頃、先日からスピカに臨時の並走パートナーとして雇われた私はスピカのメンバーと共に軽くグラウンドにて柔軟等のストレッチと軽めにゆっくりとした走りでグラウンド内を1周ぐるっと回った後でテイオーとマックイーンの並走を行おうと、した所でゴルシにもう少ししっかり準備運動しとこうぜ!と誘われたので”それ”をする事にした
「まさかオメーがあの二人の並走パートナーとして来るなんてなぁ、バンチョー・・・で?トレーナーからニンジンどんだけ貰う話になったんだ?ゴルシちゃんにも分けてくれよ(パチン)」
「んな訳ねーだろがい、頼まれたから来たんだよ。今年の春からテイオーもマックイーンも本格的にレースに参加していくらしいかんな、その為にデビューが終わってて実際のレースを知ってる相手と一緒にトレーニングさせて実戦の雰囲気やらプレッシャーに慣らしておきたいんだと、さ(パチン)」
「しかしそれならお前じゃなくてネイチャやターボでも良いと思うんだが、な(パチン)」
「うぐっ、手が早えな・・・まぁ、ネイチャはチームのリーダーだし何かあったら動かねぇといけない立場だし、本人が何だかんだ言って拒否したかんなぁ。んでターボは何というかテイオーやマックイーンと競い合うのは良いんだが、それで無理してスタミナ枯渇する度にそっちに世話になる訳にもいかねーだろ?それで私ってぇ訳、だ(パチン)」
「けど、そんだけじゃなくて実際にテイオーとマックイーンの仕上がり具合を近くでしっかりと見ておきたいって言うのも、あるんだろ?(パチン)」
「げっ、其処に置くのか!むむむ、それについては否定はしねぇよ。あー、それと私が逃げ以外の策が一通り出来るからレースの場で相対する多様な相手を想定した練習にも良いらしくてな・・・これカノープスでもやっててな、私が大体逃げ先行差し追込全部やってネイチャとターボがそれぞれ得意の策で並走して練習してる事で、これをスピカでもしてくれってご要望なんだわ。ま、他にも幾つか理由というか目的は・・・あるけど、な!(パチン)」
「ふーん・・・まぁ色々思惑があるのは当然だろうけど、短い間になるがこうしてアタシらの練習に付き合ってくれよバンチョー。それと・・・ほい、王手(パチン)」
「あっ、しまったやられたぁ・・・参りました」
「将棋でゴルシちゃんに勝とうなんて10年と4ヵ月と12日ばかし早いぜ!」
「くっそぉ~」
「・・・貴女達何していますの」
「「えっ、将棋」」
「将棋、じゃありませんわ!今はトレーニング中ですからほらバンチョーさん行きますわよ、並走パートナーとしての仕事をして頂かないと困りますわ!」
「ぐえっ、ジャージの襟首掴んで連れてかれるぅ!あぁ~れぇ~、ゴルシちゃ~ん!」
「ああ~、バンチョ~!行かないでくれぇ~!」
「・・・いや、ホントバンチョーもゴールドシップも二人して何してるのさ」
ゴルシの奴と頭の方の準備運動じゃーい!と誘われたので将棋を一局打ってたらマックイーンに襟首を掴まれズリズリと引き離されちまった
そん時に今生の別れを惜しむかのような芝居掛かった仕草をする私に、ゴルシが項垂れながら右手を伸ばして返してくるのを見たテイオーが困惑してんなぁ・・・うん、おふざけはここまでにして真面目にやりますかね
「いやぁえらい目にあったぜ」
「自業自得ですわ。それよりも折角スピカの並走パートナーとしてトレーナーに呼ばれたのですから、しっかり私やテイオーをエスコートしてください」
「そうだよ、バンチョーとこうして走るの実際のレースまで待たなきゃいけないと思ってたんだから・・・今日から目一杯、僕達のトレーニングに付き合って貰うからね?」
「・・・なっはっは、いやはやえらい目にあうのはこれからか?いやまぁ、こういう練習なら私は大々大歓迎するがな・・・じゃあ、やるか。逃げ先行差し追込、どの策の私で並走すりゃあいいんだ?」
「普段はどの策を良く使いますの?」
「得意なのは先行と差し、だなぁ。その後に追込がまぁ並程度に出来るか・・・流石にゴルシみてぇなすげぇ追込は出来ねぇからそこは覚えといてくれよ?で、逃げに関しては正直何とな~く逃げ策をしている様に見える程度だ、スズカ先輩やターボみてぇな思い切りのいい逃げにはならんから練習では使える位の仕上がりしか出来ないな」
「いや、十分過ぎるんだけど。だってバンチョーだけで全部の策の相手の仕方がある程度でも想定出来る様になれるんだもん」
「ある程度、だぜ?あくまで逃げと追い込みは参考程度にしとけよ?私も二人も将来的にはG1に居るライバル相手に挑むんだ、付け焼刃程度の私の策で考えてたら痛い目見るからな」
「それは勿論ですわ」
「けど、びっくりしたよ。急に並走パートナーとして来たのも驚いたけど、バンチョーにそんな器用な事が出来るなんて思ってなかったよ」
「なぁに・・・私の同期に”簡単には負けられねぇ天才肌の絶対的な好敵手”が居たからな、ソイツを相手にする為に出来る事は出来る様にしただけさ」
「そ、そうなんだ?成程ねぇ~、そうかぁ~、じゃあ仕方ないねぇ~♪」
「ふふっ・・・さ、そろそろ並走をお願い致しますわ。先ずはバンチョーさんの得意な差しを想定した動きで走って貰います、構いませんねテイオー?」
「うん、僕はそれでオッケーだよ」
「私もだ、んじゃ・・・3人で走りますか」
グラウンドの中のコースに内から順にマックイーン、テイオー、私で並び特に合図はせずに3人でゆっくりと走り出す
暫くはゆっくりと走って、全員がスピードに乗って来た所から仕掛けるとして・・・だ
(全く、スピカでの練習だけならもっと気楽だったんだがなぁ。沖野さんに頼まれたからやっちゃあいるが、あんまこういう監視みてぇな事は正直やりたかねぇぜ)
前を走るマックイーンとテイオーの背中からちらり、と少しの間だけ横目で同じ様にグラウンドで練習しているとあるウマ娘の様子を見る
その様子を見る相手は足の具合を確認しながら軽めの調整を行うにスズカ先輩・・・の、傍で練習をしているスぺ姉ちゃんだ
沖野トレーナー視点
やっぱリンさんとキシさんの娘だなぁ、とテイオーとマックイーンの二人と今日何度目かの並走トレーニングをするバンチョーの走りをじっくり見ているとつい思っちまう
あの豪快な走り方はリンさんの走り方に所々似通った所が結構あるし、末脚の鋭さはキシさんのそれに良く似ている・・・あの最後の加速の時に使った蛇行走法は、流石にどっちのものでも無かったが
しかしまぁ、テイオーとマックイーン、ウオッカにスカーレットはバンチョーが練習に合流してから大分モチベーションが上がったな、やっぱ同期がレースで活躍してるのを知ってるからか負けたくなっていうウマ娘としての負けん気が影響しているのかガンガン並走トレーニングを行ったり同じメニューを消化する早さを競ったりしてやがる、こっちとしてはやる気があって宜しいがな
スズカの天皇賞での一件以来、少し落ち込んじまったチーム内の雰囲気は正月の新年会で盛大に、そう・・・盛大に楽しんだから払拭出来たとはいえ完全とは自信を以て言えない
スズカの怪我はチームにとってそれだけ大きい事件だったからな
だから本格的な夏を迎える前にここいらでもう一回気分をガラリと変える為の方法を模索した俺が行き付いたのが、南坂君のチームカノープスに居るチョクセンバンチョーの短期間の並走パートナー協力の打診だ
アイツならスぺを始めとしてウチのメンバーとの仲は良好だし、バンチョーと同じクラスの面々が多い
加えてテイオーとは何時の日かクラシック三冠で戦うと約束を交わした程のライバル関係だ、これで燃えない訳がないだろう
そう、思ってた矢先の事だ
ここ最近、スぺの様子が可笑しいという話が俺の耳に入って来たのはリンさんと一緒に馴染みの店での酒の付き合い中の事だった
「スぺの様子が、普段と違う?」
「ああ、どうにも普段と違う感じがするよ。一応言っておくが、別に食べる量が減った訳じゃ無いから其処は安心して欲しい」
「そっち方面じゃないって事はまぁ分かりました。で?どう可笑しいんですリンさん?」
「そうだな・・・立場上、食堂であの子が食事をするのをよく見るんだがどうにも此処最近、早々と食事を切り上げたり食堂にも居ない事が多くなった。グラスやスカイ、今海外遠征中のエルを始めとしてクラスの友人の子達と仲良くなって共に食事をしている時が多くて、幼少の頃を知る私としては嬉しかったんだが・・・ここ最近食堂にも居ない事も多くてね、心配しているんだ。君の方で何か何時もとは違う行動をしていないかい?」
「・・・練習中に少しスぺの奴がスズカの様子を気にする素振りが多い、ように見えます。アイツが慕っていたスズカが去年の秋の天皇賞で怪我をして以来、心配しているからだと思ってた・・・不味いかもしれないな、ただ単純に心配性になっているだけならいいんですが」
「良くも悪くも、あの子は優しい子だ。沖野君、もしもスズカの事で練習所かレースに集中出来ない様ならスぺが出るこの次の宝塚記念、危ういと思う」
「余分な事を考えながら走れる程レースは甘くないし、メンタルも重要な要素だ・・・確かに、スぺもこのままだと負ける可能性はある。だが・・・リンさん、先に謝っておきます。済まないけど俺は、その忠告をアイツに、スぺに今は伝えるべきじゃないと思う。もしリンさんの忠告通りスぺがここ最近スズカの事ばかり考えているのなら、それはつまりスぺの奴が本当に一番大事な目標すら見失いかけてるって事ですから」
「一番大事な目標・・・日本一のウマ娘になる、か」
「それを思い出せるなら、俺は・・・宝塚記念で負けてもいいと、そう思います」
「沖野君、宝塚記念は天下のG1レースだぞ?」
「天下のG1レースだからこそ、そこで勝てない様じゃ日本一のウマ娘になんてなれっこない・・・でしょう?」
「・・・済まない、酷な事を頼んでしまう様だね」
「いえ。俺はアイツの、アイツ等のチームのトレーナーですからね。叱るのも俺の仕事ですよ・・・・・・ただ」
「うん?」
「・・・スイマセン、今日俺銭持ってないんでお会計お願いしても良いですかね?」
「・・・・・・現時点で財布の中の全財産7円とか沖野君、毎回思うんだが君そういう所は私駄目だと思うぞ?」
結局、その後全く仕方のない奴だな君はと笑いながらリンさんが代金を支払ってくれたんだが、帰路につく道中でもう一つ問題があった事に俺達は気付いた
それはチョクセンバンチョーの事である
アイツはスぺと相当仲が良い、それこそ幼少の頃からの仲らしいしスぺの夢の事も当然知っている・・・そんなバンチョーがもしスズカにかかりっきりのスぺの現状に気付いて色々と言ってくるかもしれない
それが俺やリンさん達相手ならいいが、今のスぺの奴にもしバンチョーが直接あれこれ言った場合どうなるか想定出来ない・・・それでスぺの奴が気付けば御の字にはなるが、それこそお互いの練習やレースに影響を及ぼす程の事態に発展したらかなりヤバい
だが既にバンチョー本人にも南坂君にも来て貰う日まで約束してしまったので、今更断るのも色々とマズイ
其処で『ここ最近スぺの様子が可笑しい気がするから、練習がてらで良いのでお前もそれとなく見てやってくれ。そして何かあれば俺にだけ教えてくれ』と頼んでおく事で直接言ってしまう様な事態を避ける予防線を張っておいた、これなら問題は多分ではあるが起きないだろう
当然訝しんでそういうのはチームの誰かに頼めばいいんじゃねえか?とバンチョーに言われたが、ウチの面子はそういう事に向いてないしチーム内では既に見慣れ過ぎた光景だから違和感が持ててないんだ等と色々理由立てて言ってかなり無理矢理に納得してもらっているが・・・
「・・・最悪ん時は、バンチョーに頭下げるか」
もしもそうして隠した事でスズカにもスぺにも、そしてバンチョーにも悪影響が出る様なら・・・こんな頭で良ければ幾らでも下げる事にしよう
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チョクセンバンチョー
チームスピカからの突然な並走パートナー依頼には驚いたが、皆と練習出来るのはいい経験にもなるし互いの仕上がりを確認出来るいい機会かと割とノリノリだった
ただ、その後にスぺ姉ちゃんの最近の異変について聞かされ、それを見てもあれこれ言わないでくれと頼まれて若干モヤモヤしてる
将棋は打てるには打てるが強くは無い、故に中盤以降は完全にゴルシ優勢で押されまくった
自分の姉貴分が現状のままだとかなりの確率で負けるかもしれないレースに出る事はまだ気付いてない・・・
同期の”簡単には負けられねぇ天才肌の絶対的な好敵手”は、当然テイオー1人の事だけを差してはいない
トウカイテイオー&メジロマックイーン
チームカノープスからの突然な並走パートナー登場に驚いたけど、此方も後のライバルとなるバンチョーと練習出来るのはいい経験になるし互いの仕上がりを確認出来るいい機会かと乗り気
二人を始めスピカメンバーは日頃のスズカとスぺの仲の良さに見慣れてしまったのか、宝塚記念後の合宿中までその辺に特にあれこれ言っている様子は見られない
逃げも先行も差しも追い込みも出来ちゃうバンチョーに素直に感心している、お蔭で良い練習が出来てるし
沖野トレーナー&ガソリンテンゴク
どの時点で明確にこのままじゃ宝塚ダメかもしれねぇな、と思ったか分らないので(多分週末に宝塚が迫ってる時期だと思われるが)今回は食堂での出来事に詳しくスぺの普段の様子を見慣れているリンさんから聞いた事に
正月にお財布を犠牲に天皇賞秋の一件からチームの空気を入れ替えたが、念には念を入れた模様
スピカにしろバンチョーにしろプラスになるだろうと思って計画したら、実行直前になってまさかの地雷に2人しててんやわんやしてる
何事も起きないでくれよー、頼むから・・・
1月17日のデイリー総合最高11位、二次創作最高14位とかでも身に余る光栄なのに翌日18日にはデイリー総合最高7位、二次創作最高9位とか震え上がりました
何時も読んでくださる皆様、評価感想をして頂いた皆様、また誤字指摘して頂きました皆様本当にありがとうございます
拙い作品ですが今後もどうぞヨロシク、お願い致します
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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チームスピカの話
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