チョクセンバンチョー視点
「雨かぁ・・・」
「雨だなぁ・・・」
「雨、ですわね」
私がスピカにテイオー・マックイーン両名との並走パートナーとして参加して暫しの時が流れた
時には逃げ、時には追い込み、時には先行そして差しの策を仕掛けて二人のメイクデビュー戦に備えた実践的な練習は日々熱を増しているが、今日は3人して外で走るにはあまり好ましくない天気になっていやがるぜ
「今日はあまり外で走りたくはありませんわね・・・春とは言えまだ雨が冷たくて風邪をひいてしまいそうですわ」
「だねぇ~、僕も雨の中走るのはあんまり好きじゃないな。脚に撥ねた泥とかがへばり付いたり、髪が濡れて首にへばりついた時の感じがね~」
「二人の気持ちは分からんでも無いが、グラウンドでの練習の日やレースん時はそうも言ってられんだろ?幸いなのは今日が私達のグラウンド練習の日じゃなかったって事だがな」
季節は夏の前、梅雨の時期にに突入し、日増しに雨の降る日が多くなってきた
それ故にグラウンドも振り続いた雨で連日重バ場と化し、学園の窓の外には普段よりも走りにくくなったターフを駆ける生徒達も脚に纏わりつくような泥と滑りやすくなった芝で練習に集中しきれないのかやりづらそうだなぁ
「ああして走ってる皆には悪いけど、今日が室内のトレーニングルームでの練習で良かったってホント思うよ僕」
「私もですわ・・・ああ、所でバンチョーさん少し宜しいでしょうか?」
「ん?何だマックイーン」
「練習と言えば、普段カノープスではどんな練習をしていますの?スピカで特徴的な練習と言えばあのツイスターゲーム、でしたか?アレを使った練習をしているのですが・・・その時にふと他のチームでもやはりそのチーム特有のトレーニングがあるのでは?と思いまして・・・もしバンチョーさんが宜しければ、差支えの無い程度で教えて頂けますか?」
「ふむ?カノープス特有のトレーニングねぇ」
マックイーンから問われたので、それに応えるべく南坂トレーナーの練習メニューを思い出してみるが思い返してみればウチのチームは基礎こそが最重要なチームだ
走り込みや坂道の走り込み、タイヤ引きに筋力トレーニング等々基礎にして基本なトレーニングに重点を置いている、最近ではプールでのトレーニングや体幹トレーニングも追加されたが・・・
(・・・ウチの特徴的な練習って、何かあったかぁ?)
最終的には悲しいかなこれに帰結する、過度なトレーニングや無理なトレーニングが無いのは美点ではあるのだが如何せん特別な練習と呼べるものは何も・・・・・・待てよ、確か”アレ”だけは特徴的かもしれんな
あの練習はガキん頃から”彼女”の見様見真似だけど、子供の私でもやれてた数少ないトレーニングだ
カノープスに入った後も今日までずっとしてるし、何ならダービーの後に肺活量トレーニングの話を南坂トレーナーとした時見せたら効果的なので今後も是非続けてくださいと推奨された奴だったな・・・これならいいかな?
「あるにはあるぞ、ウチのチームだけしかやってねぇような特有のトレーニング」
「本当ですの?」
「えっ、何ソレ?僕も気になるから教えてよバンチョー」
「教えるのは構わねぇけども一応うちのチームだけやってる特別な練習かもしれねぇからさ、南坂トレーナーに教える許可貰ってからな?その代わり二人には先んじて準備しといて貰いたいモンがあっからそっち頼むわ」
「分かりましたわ、何が必要ですの?」
「何々~?」
「んーとな、ティッシュペーパーと空の500mlペットボトル用意しといてくれ」
「ティッシュペーパーと空の500mlペットボトル室内でするトレーニングぅ?随分変わったトレーニングがあるんだな南坂君のトコには」
「いやこれの発案元は私。で、更に言うと実際には私の知り合いの演歌歌手がやってたボイストレーニングだよ」
トレセン学園内にあるトレーニングルームの一角、其処で片手に空のペットボトルを持って不思議そうにしてる沖野トレーナーをよそに私達は今日の練習の為に先ずは準備運動をしていく
本当はトレーニングルームにある機材を使ったトレーニングを予定していたらしいんだが、事情を話したら別のチームがやってる練習に興味が湧いたらしく実演して欲しいと乞われたので見せる事にした・・・と言っても、派手な練習とかじゃあないんだがな
「さて、ボイストレーニングっつったけど、このトレーニングはちゃんと走る事に関してのトレーニングにもなるぜ?主に鍛えるのは体の内側、まぁ呼吸器官の肺活量だ。肺活量は一朝一夕では中々鍛えられねぇトコだ、けどどうしても走るという事に関して肺活量は切り離せない重要なモノになる・・・だろ?沖野さん」
「そうだな、そもそも俺達がよく使うスタミナと言われるモノは実際は” 疲れにくさ”を表す言葉で心肺持久力・・・要は心臓と肺を中心とする全身の循環系能力があるって事を指し示すものだ。実際肺を鍛えれば体内に循環可能な酸素量が増えて疲れを感じにくくなるし、全力で走り続けられる時間も伸びるだろうな」
「そういう事になるかな。ステイヤーとして走る距離が長いマックイーン、スピードが自慢のテイオーにもお勧めの練習だよ。何よりも身近にあるモンで出来るのがデカいぜ?やり方は簡単だ、テッシュなら壁に貼り付けてそれに向かって息を吐き続けれるだけ吐き続けてテッシュ落とさない様に維持する。ペットボトルは逆に息を吐き出して、吐き切ったらペットボトルに隙間なく口を付けて中の空気を吸い込むんだ。効果が表れるまでは時間が掛かるかもだが、大分鍛えられるぞ」
「へぇ~、何かこういうトレーニングって新鮮・・・少なくともトレーナーに普段やらされてるツイスターゲームや急なよりしっかり効果が出そう!ちゃんと鍛える理由も教えてくれるし!にしし」
「なっ!?テイオー、お前なぁ・・・!」
「高山トレーニングに似た鍛錬法、でしょうか。バンチョーさん、こういったトレーニング他にもありますの?」
「高山トレーニングみたいな事がしたいなら短く切ったストローを口にくわえると吸える空気量が減るから似た様な効果があるらしいぞ?こっちは南坂トレーナーが教えてくれたぜ?・・・だがな、肺活量のトレーニングってのは実はマックイーンにとって重要で大事な効果があるんだ、何だと思う?」
「な、何ですの一体・・・!?」
ふざけ合い始めた沖野さんとテイオーは置いておいて、私はマックイーンに対してこの肺活量を強化する練習で得られるとある効果を説明しなければならねぇ・・・コイツはマックイーンにとって極めて重要なモンだからな、しっかり教えといてやらねぇと
マックイーンも私が真剣な様子を受けて、多少恐れた様子はあれども聞き返してくる・・・これ言うと何か後が怖いんだが隠すのもアカンだろうし、言うしかねぇな!
「・・・肺活量が上がって体内に取り込まれる酸素が多けりゃそれに比例して代謝が上がって痩せやすい体になるらし『是非、詳しく、教えてください』アッ、ハイ」
・・・何か、普段以上に掴む力上がってる気がするし、眼光がマジ過ぎやしませんかねマックイーンさん?
沖野トレーナー視点
随分と変わったトレーニングを知っているもんだな、とティッシュを落とさない様に息を吹き続けるテイオーとペットボトル内の空気を吸い出して凹ませるマックイーンを見てると思っちまう
こいつ等と同じ様に一学生、しかもまだまだジュニアクラスである筈のバンチョーだが今の練習の事と言いスぺや俺達に料理を振る舞った時の負けるという事に関しての覚悟の座り方と言い、まるで既に重賞で戦い続けてるシニアクラスのウマ娘がジュニアに紛れてんじゃねえか?と思わなくもない
今も練習する二人を立ったまま鏡面の壁に背を預けて見守る様はまるで練習熱心な後輩を指導する先輩の様な雰囲気だ
だがまぁ、両親が両親だしな・・・ガキの頃から熱心に指導されてりゃあこうもなるかもしれねぇな
「中々いい練習方法を知ってるんだな、教えて良かったのか?」
「ん?何だよ沖野さん、心配してくれてんのか?」
「ああ、心配してるよ。お前がアイツ等に負けるかもしれない、ってな」
「なはは、言うねぇ。ま、御心配無く・・・天才相手に挑むのは私慣れてるもんでね。寧ろそっちの心配はテイオーやマックイーンにしてやってくれよ?独特の走法があるって意味じゃあ私もだがテイオーもそうだろ?独特って事は他のウマ娘の走法と比べれない、ってぇ事だから不調や怪我の前兆にも気付きにくいだろうしな。マックイーンはステイヤーとしてスゲェ奴だと思ってる、けどその分歩数がどうしても増えるから脚に負担が行きやすいだろ?そこんとこしっかり見といてやってくれよ」
「・・・時たま思うんだがお前、本当にアイツ等と同い年だよな?見た目もそうだが年齢詐称して学園に来てる訳じゃあ、ないよな?」
「それ言い出すと私だけじゃなくてスカーレットもそうなるんじゃねえの?ゴルシは・・・まぁゴルシだしカウント外だけどもよ」
バンチョーと同じ様に俺も壁に背を預け、いつもの飴を口に含みながら二人の練習を監督しながら俺はバンチョーに気になっていた事を問う事にする
「スぺの事、どう見る?」
「正直言わせて貰えりゃ、練習に熱が入ってないと思う。あの調子じゃ十中八九グラス先輩に差されて負けるんじゃねえかと考えてんだが、沖野さんはそれを分かった上で静観してるのか?」
「そうだ・・・って言ったら?」
やはりスぺの奴が練習に身が入っていない事と、現状のままだと負ける事は理解しちまってるよな・・・そして、それに対して俺が特に指導をせずに静観している事も
なら俺も正直にそれを肯定する、下手な誤魔化しや嘘をつくのはどうせバンチョーには通じないだろうしな・・・さて、どう反応する?怒るか、呆れるか・・・それともスぺに何か言いに行くのだろうか?
「そうかい、じゃあ私からは何も言わねぇよ」
「・・・何?」
怒りもせずにそう静かに告げて来たバンチョーの方に思わず顔を向ける、其処にあったのは少し寂しそうな笑みを浮かべながら横目で此方を見上げるバンチョーの横顔だった
「何だ、もしかしてその事で私が怒るとかでも思ってたのか?生憎だが其処まで度量は狭くねぇさ、沖野さんにゃ沖野さんの考えがあるだろうし今のスぺ姉ちゃんがスズカ先輩に盲目的になっちまうのも解かるからな。第一他のチームの内部事情にまであんまズカズカ入り込む様な野暮な真似はしねぇよ・・・それによ、『居なくなった誰かを真似る事は出来るがその誰かに自分がなる事はどうやっても出来ねェだろうが!』って、昔腑抜けてた時にブン殴られちまってるしなぁ私」
「あー、ぶん殴られたって辺りはこの際置いとくとしてだな・・・その台詞を言った奴の言う通りの状況が今のスぺだ。それに対してお前は何も思わないのか?」
「あれこれ言いたい事はあるよ、けど前にも言ったろ?レースの結果としちゃあ確かに負けちまったがその負けを次のレースに生かせりゃあいい・・・皐月の時みてぇに今回もそうなる事を信じてるさ、なんせ私の姉貴分だからな。きっと今回の事で何かに気付いて今以上に速くて強い日本一のウマ娘になってくれるさ」
「あー!こらバンチョー!自分だけトレーナーと話して練習サボらないでよー!もー!」
「おっと、ワリィワリィ。今行くよ!・・・ま、もし負けた後でも腑抜けてるようなら沖野さんがスぺ姉ちゃんに喝を入れてやってくれよ。私ん時も盛大に叱られたお蔭で気合入れなおせたからな」
「・・・ああ、分かったよ。そっちの心配はしなくていい、お前はこのままテイオーとマックイーンの練習に最後まで付き合ってやってくれ」
「おうさ。うっしテイオーどっちが長くティッシュ落とさずに維持出来るか競争するか・・・お、そうだ、どうせならマックイーンも一緒にやらねぇか?最初に落とした奴が他の2人にドリンク奢るって事でよ?」
「良いよ!じゃあ僕はいちごオレね!」
「私はミルクティーでお願いしますわ」
「いや待てや何でもう頼むもん決めてかかってるんだよ、まだ勝負してねェだろうが」
「だって僕が勝つし・・・ねぇ?」
「ええ、私も勝ちますから必然的に負けるのは・・・」
「よーしその喧嘩買うぞお前等コノヤロー、私は飲み物要らねぇから代わりに負けた奴の頭グリグリすっから覚悟しろよー」
ええー!?と悲鳴をあげる二人にほら早く準備しろ準備ー!と手を叩きながら急かすバンチョーに心の中で礼を言う
全く・・・妹分にああまで言われちまったんだ、俺がしっかりとスぺの奴を宝塚の後にきちんと基本に立ち直って貰う為の計画を考えとかねぇとな・・・
―――――――――
チョクセンバンチョー
スタミナ強化の為の長期的なトレーニング法をスピカに伝授した(南坂トレーナーに許可は得た)
知り合いの演歌歌手はまぁお分かりかもしれませんがダチ公の恋女房のあの方です、彼女の活躍も多少は、ね?
マックイーンの眼光に流石に恐怖を覚えた、なんてメンチ切ってきやがるんだ御令嬢・・・!
負ける事よりも負けた後の事が大事と前世のレースから理解している
トウカイテイオー&メジロマックイーン
スタミナ強化の為の長期的なトレーニング法を伝授された(特にマックイーンはかなり熱心に教わった)
3人での競争は結局僅差でテイオーが最初に脱落した為頭をグリグリされる事に、尚1位はマックイーンである
身近かつ場所を取らない上にちゃんと効果がありそうな練習を提示され素直に喜んでる
これならパクパクしても・・・構いませんわね?
沖野トレーナー
怒られなかった事には安堵したが、スズカの事だけじゃなくスぺの事もしっかりと考えておかなきゃなと気合を入れ直す事に
いやしかしコイツ本当にテイオーとマックイーン達と同い年か?と若干思ってる
というかバンチョーをぶん殴るとか度胸あるな・・・一体どんな奴だよ
スタミナってこういう意味だったんかぁ・・・(調べて初めて知った)
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
-
チームスピカの話
-
チームリギルの話
-
チームカノープスの話
-
チームコールサックの話
-
生徒会の話
-
親や他のウマ娘との話
-
JWCの面々の話