ウマ娘、チョクセンバンチョー!   作:狐の行商人

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第二十六走:秋の初風、色なき風

チームスピカ視点

 

天皇賞秋を制したスペシャルウィークを始めそれぞれ出バしたレースにて勝利を納め合宿前の不調から一気に立ち直って来たチームスピカ

サイレンスズカの復帰戦の日程も決まり、益々活気あふれるその部室であったが・・・その日は最近の好調ぶりが嘘のようにしん、と静まり返っていた

 

ジャパンカップに備え、東京レース場にて練習を行っているフランスのブロワイエ

そんな彼女を視察しに行った沖野トレーナーが、同じく来ていたリギルの東条ハナトレーナーからサイレンススズカの復帰レースに出て来る要注意のウマ娘について忠告されたのだ

1人は最近調子を上げてきている先行バのサンバイザー・・・そして、もう一人は

 

「まっさか、此処でバンチョーの奴とレースが重なるとはなー。将棋や囲碁とかでの勝負なら幾らでも受けて立ってやったのによー」

「センちゃんも私の復帰レースに出て来るんですね、トレーナーさん」

「ああ、シリウスステークスの勝利を以てダートレースからいよいよ芝のレースに向けて切り替えて来たらしいな。だがスズカ、今のお前にとっては手強いライバルの一人だぞ」

「分かっています、彼女のあの独特の走法から来る末脚は脅威ですから」

「でもよトレーナー、バンチョーはダートからやっと芝のレースに切り替えて来たばっかりだしまだスズカ先輩の方が十分勝てると思うんだがなぁ」

「私達が夏合宿してる間タキオンさんの居るコールサックで相当なトレーニングを積んでる筈だから油断は出来ないわよ、ウオッカ」

「あとサンバイザーって言えば、僕達が入学した後直ぐの模擬レースした時にバンチョーと同じレースで走ってたウマ娘だよね?最近調子上げて来てるらしいから注意しないとね」

「確かサンバイザーさんは先行策を得意とするウマ娘でしたわね・・・バンチョーさんが先行で来るか差しで来るかでもレース展開が変わってきますわスズカさん。どうかご油断なされぬ様に」

「・・・大丈夫ですよ、スズカさんなら」

「スぺちゃん」

「センちゃんの事に関しては寧ろ開き直っちゃいましょう!センちゃんが先行で来ても、差しで来ても・・・スズカさんが自分らしく走って、復帰戦を勝利で飾ればいいんですから!」

「・・・ふふっ、そうね。それにセンちゃんの事だもの、細かい策なんてしてこない真っ向勝負・・・ううん、ヒシアマゾンの言葉を借りるならタイマン勝負を楽しみにしてそうだし、私も負けない様に頑張るわ」

「確かにね~、妙な走法するし策がハマった時は怖いけど事レースでの勝負には真っ直ぐだからね~バンチョーはさ」

「ええ、並走トレーニングを共にして感じましたわ・・・挑むにしろ挑まれたにしろ、正面から相手にぶつかっていくのが彼女なりのスタンスなのでしょう。名前の通り、真っ直ぐで熱いのが彼女の強みですわ」

「そんなアイツに負けない様に、今日の練習もしっかり励めよお前等!スぺのジャパンカップもスズカの復帰戦ももう1月も残ってないんだ、此処が頑張り所だぞ!」

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

フランスレース界のトップを張るウマ娘、ブロワイエにジャパンカップで挑むスペシャルウィーク

今期のレースの注目株であるサンバイザー、普段から親しくトレーニングで共に練習した事もあるチョクセンバンチョーの居るキャピタルステークスに挑むサイレンススズカ

互いをライバルとして意識し何時の日にかレースで勝負する約束をした二人の、大一番が迫る

 

 

 

チョクセンバンチョー視点

 

11月も中盤を折り返したし、シリウスステークスまでいよいよ2週間を切った

練習も調整も最終段階に入り気持ちも高ぶって来たぜ、なんせスズカ先輩とサンバイザーの2人と同じレースだからな!

・・・1年と1月ぶりの復帰レースがまさか私とサンバイザーと一緒とはな、此処までやって来た3戦と同じ・・・いや、それ以上かもしれねぇ程燃えるレースになりそうだぜ

ま、それはそれとして今は練習に備えて腹ごしらえといくかね、今日はゲン担ぎで豚カツ定食にすっかな!

 

「いやぁ~、まさかスズカ先輩とバンチョーが同じレースに出る事になるなんてねぇ・・・それに、サンバイザーってこの前ターボに勝った時に勝負挑んで来た子だよね?」

「そうだな、入学した時にも一緒にレース走ってたからそん時に目ェ付けられてたみたいだ」

「最近凄く速くなってるって聞いたけど、あのバイザーのお蔭なのか?ターボも付ければ早くなれるかな?」

「んー、あのバイザーはターボにゃあちょいと合わないと思うぞ?それにほれ、お前さんのこの前髪に重なっちまって前が見えにくくなったりバイザー自体の据え付けが不安定になるかもしれんしなぁ」

「そっかぁ、じゃあターボこのままでいいや!」

 

あのバイザーをターボの奴が被ってもこの交差するようなお前さんの前髪じゃあ押さえつけられて目元が塞がっちまって見えにくくなっちまうしアブねぇんだよなー、なんて思いながらターボの奴の頭を撫でてやる

しかしまぁ、スズカ先輩も気にはなるがサンバイザーの奴も油断は出来ねぇよな・・・ここ最近連戦連勝と随分調子を上げて来ていやがるからな

今回のレースまでぶつかる機会も無かったし、最悪クラシックの時まで出くわさねぇかもしれねぇと内心思ってたが此処で戦えるのは有難いぜ

折角向こうから私と戦いたいと啖呵を切って来たんだ、答えねばバンチョーの名が廃るってもんよ!

 

「大分待たせちまったしなぁ、此処でサンバイザーの奴とも一篇勝負してみてぇな」

「それは私としても望む所よ」

「うおっ!?」

 

急に後ろから声掛けるんじゃねえよサンバイザー!びっくりして食おうとしてた豚カツ落としかけたじゃねえか

その上さらっと生姜焼き定食を私達のテーブルに置いて相席してきやがったぞコイツ、ちゃっかりしてやがんなぁ

 

「で?わざわざ相席して来たって事は私に言いたい事でもあったんだろ?バンチョーさん怒んないから言ってみなさい」

「それ大体怒ってる人が言う常套句じゃないの?まぁいいわ、やっと貴女とレースで勝負が出来るみたいだから宣戦布告をしに来たの」

「前大観衆の前でしたじゃねえかよ・・・けどこっちも大分待って貰ってたからな、その勝負受けて立つつもりだ。いい勝負が出来る様に最後の追い込み掛けようぜ?」

「ええ、お互いにね。レースの主役はサイレンススズカ先輩じゃなくて、私達だって事を観客の皆に教えてあげましょう」

「ん?今回のレースってそういう感じの前評判なのかネイチャさんや?」

「あー、まぁバンチョーやサンバイザーよりも1年と1ヵ月ぶりの復帰レースのサイレンススズカ先輩の方が注目が集まってるって聞いてるね」

「ほーん、そうなのか」

「ほーん、そうなのか・・・じゃないわよ!貴女分かってるの?私達は完全に引き立て役の前座扱いされているのよ!?大体・・・」

 

もぐもぐと豚カツを食い直しながらサンバイザーの愚痴を聞いてやるが、これに関しちゃあ私は元よりサンバイザーも心の中では理解しているだろう

そもそもウマ娘という存在はレースで走るモンだ、故に怪我をするなら大概脚の怪我が多い

そしてその怪我の度合いが深刻になればなる程走る事への恐怖や不安が圧し掛かってくるし、引退を考える者も多いらしい

そんな中天皇賞秋での怪我による離脱から長期に渡るリハビリの果てに、漸く復帰レースが決まったスズカ先輩を多くのファンや生徒達は待ち望んでいたのだ

一時期は引退や復帰しても本来の走りは出来ないのではないかという噂も流れた、それを否定するかの様な復帰戦にどれ程の注目が集まっているかを物語る前評判と言っても良い・・・故に

 

「別にいいじゃねえか、自分が何番人気だろうが何だろうが・・・何にしろ私達はレースに出てスズカ先輩相手に全力で走るだけ、競うだけだ。それによ、サンバイザー」

「な、何よ」

「レースに主役も脇役もねぇんじゃないか?そもそもよぉ、1人じゃレース何てそもそも出来ねぇし数人程度じゃあ迫力に欠ける・・・同じレースに出るライバル達が大勢居て、思いっきり競い合うからこそ観客の人達も楽しめるってモンだろ。それに私にとって勝ち負けは二の次でな、一戦一戦自分が満足する様な悔いの無いレースが出来ればそれでいいし、見てくれる観客もそういうレースが出来りゃあきっと喜んでくれるさ。後な、そういう前評判ばっか気にしてんのは損だと思うぜ?そんなの気にするなら自分の調子の仕上がり気にした方が何倍もマシだしな」

「・・・何よそれ、バッカみたい」

「なはは、馬鹿で結構。そういう性分なんでな」

「けど、その考え方は嫌いじゃないわ。そうね、アンタの言う通り確かに主役なんて実際決まってない・・・レースでそれを証明すればいいだけなんだから」

「おう、その意気その意気。何ならレースの時に啖呵切っちまうか?なぁんてな」

「それもアリね・・・って何呑気な事言ってんのよ、アンタも同じレースに出るんだから覚悟しときなさいよ?」

「はいはい分かってますよ、その前に早く飯食っちまおうぜー」

 

このままじゃ話をしていた私等2人よか箸を進めていたネイチャやターボの方が先に食い終わっちまいそうだしな、待たせねぇ様に飯をとっとと食い終わんねぇとな

そう思ってご飯をかき込んでたらサンバイザーの後ろのテーブル、私と向かい合わせになる席に座ってた外に跳ねる様な黒鹿毛の長い髪をした小柄なウマ娘と目が合った

はて、こっちを見る理由なんてあったか?と思ってじっと見返してたらそれ気付いたのか慌てて前髪で隠れていない方の左目を逸らして、空になった食器を乗せたトレー持って逃げちまった・・・

乗せてた食器の数から結構な健啖家な様だが、ありゃ一体誰だろうか?・・・まぁ、その内何処かで会う機会もあるかもしれんから覚えておこう

 

 

 

「レースに主役も脇役も無い、かぁ・・・」

「ネイチャ?」

「ううん、何でも無いよターボ」

(私でも、頑張ってみても良いかなぁ・・・?)

 

 

 

それから・・・あっと言う間に2週間が経ち、キャピタルステークス当日へと時間は流れた

―――――――――

 

チョクセンバンチョー

 

何時も1番人気のライバルを追い続けていた2番人気のバンチョー

キャピタルステークスに向けて調子は上々、サイレンススズカとサンバイザーとの対決に気分も上々の仕上がり

ネイチャとターボと飯食ってたら乱入して来たサンバイザーにレースに対する自論、というか自分なりの心構えを説いた

・・・それが後に誰かの心を動かすとは知らずに

 

 

 

サンバイザー

 

サイレンススズカの復帰戦に立ちはだかるウマ娘にして、過去にバンチョーとの入学式後の模擬レースで走った間柄

クラシックまで戦う事は無いかもと言われていたが、オープン特別で偶然?にも出バが重なり喜んでいる所をトレーナーに見られて恥ずかしさから正座させて り飛ばしたとかしないとか

きっと彼女もサイレンススズカの復帰を喜んでいた筈である、じゃなきゃあレース後のあの言葉は言えない・・・そう作者は思っています

 

啖呵ね・・・そういうのもアリね

 

 

 

チームスピカ

 

1期アニメ11話辺りの時間軸中のスピカメンバー

ブロワイエの日本来訪、スぺちゃんのジャパンカップ、スズカの復帰戦と終盤のレース目白押しの時期

バンチョーと言う異端児が混ざり込んだオープン特別の行方は・・・?

 

 

 

ナイスネイチャ&黒鹿毛のウマ娘

 

バンチョーという存在の為に色々と運命が変わりそうな2人

前者は最早お分かりだが・・・

1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?

  • チームスピカの話
  • チームリギルの話
  • チームカノープスの話
  • チームコールサックの話
  • 生徒会の話
  • 親や他のウマ娘との話
  • JWCの面々の話
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