チョクセンバンチョー視点
私がサイレンススズカ先輩に完敗した翌日の東京競馬場、ジャパンカップもまた前日のレースと同じ様に大歓声に包まれていた
フランスレース界のトップを張るウマ娘、ブロワイエに挑んだスぺ姉ちゃんが終盤に一度は迫られたものの追い越される事は無く彼女を突き放して見事に勝利してみせた為だ
日本一のウマ娘を目指しトレセン学園に来てから此処まで、多くのレースに出走し時に勝利し時に敗北を知って走り続けたスぺ姉ちゃんはこの勝利を以て日本一のウマ娘と言っても過言ではなくなったと言えるだろう
会場に訪れていたスぺ姉ちゃんのお母ちゃんも、一緒に観戦していたリン母ちゃんやキシ母ちゃん共々大泣きしながら喜んでいたぜ
そして今、ウイニングライブを終えてスピカ・リギルそして同期の面々や自分のお母ちゃんに盛大にお祝いされているスぺ姉ちゃんはステージ上で満面の笑みを浮かべていた
因みに私はカノープスの皆とライブ会場の片隅で眺め続けている所だ
流石に学園代表のリギル、スぺ姉ちゃんの所属するスピカの面々に対して私等カノープスが壇上に上がる理由はあんま無いので大人しくガヤ担当であるが・・・
「夢は日本一のウマ娘、か・・・遂になれたなぁスぺ姉ちゃん」
幼少の頃に共に走った時の様な末脚を披露し、ブロワイエに勝利してみせたスぺ姉ちゃんの雄姿をこの目に焼き付けた私は思わず笑みを浮かべてしまっていた
何時の日にか同じレースに出て競い合うその日を夢見て、だ・・・そしてその為にも私は私で今後取り組まなければならない課題が出来ていた
昨日のスズカ先輩とのレースの時にも感じだ”現象”と同じ、終盤での競り合いでスぺ姉ちゃんが見せた驚異の伸びによる”現象”が見て取れた
ただ、スズカ先輩の”それ”が何処とは分からぬ草原であったのに対しスぺ姉ちゃんの”それ”は夜空に輝く流星の様な印象を私は受けたが、な
果たしてこれが何なのか、まではまだ分からないがこれが二人が勝利する際の大きな要因になった事だけは学の無い私でも理解出来た
そして
(恐らくテイオーとマックイーンも、アレが使えるんだろうなぁ・・・)
同じ時期にクラシック期へと突入していくライバル2人も、彼女達に引けを取らない実力者だ
アレが意識して使えるのかそれとも無意識に使えるものなのかは分からないが、自分も持っていなければ彼女達がそれを使えた場合にはスズカ先輩の時と同様に完敗を期すであろう
故に、あの技能がどういうものでどういった条件で発動するのか?そしてそれを私も使えるのかを調べなければならない
しかし、誰に聞くかねぇ?やっぱこういうのは実際のレースで使うモンになるんだろうしなぁ、そうなると南坂トレーナーか経験豊富な会長さんか、或いはキシ母ちゃんやリン母ちゃんに聞くのが明確な答えが聞けそうだが・・・
「んー、明日は午前中授業あるし一番早く聞けるのはカイチョーさんかなぁ?やっぱレースの場数踏んでるし当然の如く使えそうなんだが・・・果たして私に教えてくれっかなぁ?」
「それは
「・・・あ、はぁ、
翌日生徒会室にてカイチョーさんに実体験を元に相談してみた所、随分あっさりと原因を暴露されてしまった私は余りにもあっさりとした答え合わせに思わず真顔になっちまったわ・・・っていうか前から存在してたんかいアレ!
余りにも無学であった自分に対しての恥ずかしさにソファに座ったまま思わず頭を抱えていると、対面に座っていたルドルフ会長がゆっくりと立ち上がる
「最も、誰しもが辿り着ける様なモノではないんだ。周囲の色も、音すらも消え去る程の集中力と己の限界以上の実力を引き出せる精神力・・・そして其処に至るまで積み重ね続けた努力と生まれ持っての素質。それらがあっても真に
何かを懐かしむ様な、或いは誰かを思い出すかの様にゆっくりと語りつつ歩を進めながら壁に掛けてある・・・えっと、何だ?英語の書いてある掛け軸みてぇなモンの前までカイチョーさんは歩みを進め、其処で立ち止まり私に向き直って笑みを浮かべる
「テイオーやバンチョー君達はこれから本格化を迎えクラシック戦線に挑んでいくだろうし、マックイーン君の様に天皇賞に挑む者も居る・・・或いは短距離やマイル、ダート等他のレースを目指す者も居るだろう。そういった中で切磋琢磨、鎬を削り合いながらも成長していけば何時の日か辿り着けるかもしれない。私もクラシック三冠、そしてその後に続くG1レースでの勝利を目指しひたすらに走り続ける中であの領域へと至った・・・今度は君達の番、なのかもしれないな?クラシックに挑める機会があるのはただ1度だけだ、君もテイオーも決して悔いを残さない様に走り抜けてくれ」
「・・・勿論。アイツとの約束ですしねぇ、先ずは皐月賞に向けてって感じになるでしょうが」
その為にも、先ずは弥生賞に向けて仕上げていかないといけねぇか・・・前のレースはスズカ先輩に負けちまったが、ウマ娘として初の芝でのレースという意味では大分感覚は掴めている
にしても弥生賞かぁ・・・もうスぺ姉ちゃんがあのレースで走ってから早や二年も経ってるんだなぁとも思うし、同じレースを経て皐月賞に挑むとか何かこう奇妙な運命を感じるなぁ
んー、テイオーの奴にそう簡単に負ける気は無いが取り合えず食事については気を付けておこうかな!うん!!
「ふむ、皐月賞か・・・」
「ええ、皐月賞ですねぇ。テイオーが自分と同じトライアル競走に出ないんなら皐月賞で当たるんですが・・・どうかしましたか?」
んん?皐月賞に出ると何かあんのかな?カイチョーさんが真剣な顔で何か考えだしてコエーんだけど?え、もしかしてカイチョーさんが皐月賞に出た時何かあったのかな・・・?
忠告があるんなら今の内に聞いといた方がいいなと思って身構えてると、カイチョーさんが意を決したように口を開いた
「皐月賞と言えば、レース会場に向かう時に何だか慌てた様に走っている男性の警察官の方と出くわしたことがあってね。随分な慌て様だったからどうしたのかと、つい聞いてしまったんだ・・・そうしたらどうやら彼は皐月賞の警備任務を仰せつかったのに大寝坊してしまい、先程起床して大慌てで現場に向かっている最中だったらしい。まさに・・・
「・・・えっ」
・・・あぁ~、うん、まだ11月だからか秋だしなぁ、何か木枯らしが吹く音がした気がするぜ
いやまさか、まさかあのカイチョーさんからこんなギャグが飛び出すとか無いよなぁ?ネイチャの奴が好きそうな小話だが、これ私どうすりゃいいんだ!?笑っとけばいいのか?いやでも多分乾いた笑いしか出てこないぞ!?
ならどうする、何か上手い返しをした方が良いか!?えーと、んーと・・・あっ!こうだな!
「あ、あー、な、成程そんな事があったんですか・・・」
「ああ、大分忙しそうだったな」
「しかしその、何というか、当時只の学生ウマ娘だったカイチョーさんが警官を引き留めたのは駄目じゃないですかね?
「ッ!!・・・ふふふっ♪中々上手い返しだね、バンチョー君。成程、歩道と補導か・・・うん、いいジョークだ」
ウケたのかニコニコと笑い始めるカイチョーさんを前に私は苦笑いしつつ内心で『よおおおおおしっ!乗り切った!何か疲れたけど乗り切ったぞぉ!』と吠える
真面目な話かと思って身構えてたのにまさかのギャグで来るとは思わなかったよ!びっくりだよ!
いや緊張を解す為にあえてこんな事したんだろうけどもタイミング的には此処じゃあ無いんじゃないですかねぇカイチョーさぁん!?
必死に顔には出ない様堪えつつ先を促すと、カイチョーさんは腕を組んで考える様な素振りを見せながら話を続けていく
「しかし口頭でこうして説明する事は出来はするが、それで君が簡単に習得出来るとは思わないからね。ただ私が教えるには生徒会としての役割やチームリギルとしての制約があるから・・・そうだな、ドリームシリーズの舞台で活躍中の生徒の中で君の走りの適正によく似たウマ娘が居るから、今度彼女の事を紹介してあげよう。彼女は面倒見も良いし、実戦経験も豊富だ。今後G1を目指す君の為になる事を多々教えてくれるだろう」
「おお!それは有難いですカイチョーさん・・・あー、因みにその先輩は何て名前なんですかね?」
「ああ、彼女の名前は・・・」
日本人にとっては歓喜の、フランス人にとっては驚愕のジャパンカップより一週間後
フランスのパリ・・・に程近いパンにあるトレセン学園のカフェテリアにて、日本から帰郷したブロワイエは学生服を着た一人のウマ娘と会合していた
雪の様に白い肌、膝まである癖の強いプラチナブロンドの長髪、非常に色素の薄い金眼の目を持つ美貌を持つそのウマ娘はゆっくりと紅茶の入ったカップを置いて溜息を漏らした
『まさか、日本のウマ娘にブロワイエ先輩が敗れるとは思ってもいませんでしたわ』
『ふふ、私も最初はそう思っていたさ・・・だが、やはりレースというものには絶対はないという事だな。全く、仮にもヨーロッパ最強などと言われながらのこの体たらくとは君を始めとしたチームの皆や学園の皆、そして応援してくれていたファンの方々の期待を裏切る様な形になってしまったのは申し訳無い。だがこの敗北はまだまだ私が未熟だったという証でもあるだろうからね、この敗北を糧にして今後も頂点に立った事に驕らずに邁進していこうと思う所さ』
『・・・ふふ、先輩がそう振り返れるとは余程良いレースだったのですね?』
『うん、そうだな。負けた事に関しては悔しくもあるが、清々しさも感じているよ。彼女、スペシャルウィークが相手だったからというのもあるかもしれないがね』
『スペシャルウィーク、という名前のウマ娘なのですね・・・何時か日本に行く際の為にその名前、憶えておきましょう』
『おやおや、まだ君はジュニアクラスになったばかりだろう?もう海外遠征に向かう計画を建てていいのかい?
両肘をテーブルに乗せ、組んだ手の甲に顎を置いて僅かに頭を傾けるブロワイエ
モデル顔負けの彼女の美貌を以てすると大概のファンやウマ娘達は平静を欠いて黄色い声をあげてしまうのだが、相手もまた負けず劣らずの美女である
ゆっくりとした動作で再びカップを手にして紅茶を口に含み、一口二口と飲み終えてから彼女は自身の計画の手順を先輩に申告していく
『大丈夫です、ちゃんと私順序は建てて行くつもりですわ。先ずはプール・デッセ・デ・プーリッシュを始めとする三冠を制覇、海外遠征はそれからですが行くとすればやはり日本でしょうか?一度・・・京の街中を間近でしっかりと見て歩いてみたいと思っておりましたので』
『他のウマ娘なら大きく出たな、と思う所だが・・・君なら本当に出来る素質はあるとトレーナーも話していたからね、次代のヨーロッパ最強ウマ娘に君がなる事を期待しているよ』
『はい、ブロワイエ先輩の期待を裏切らない様に努めて行きますわ』
『しかし、君が日本に行くなら彼女ともぶつかるかな?』
『あら?他にもブロワイエ先輩の興味を引くウマ娘の方が?』
『前日視察したレースでね。彼女は完全復活したサイレンススズカに敗れて2着になっていたんだが、君と同じくジュニアクラスという事を考えるとまだまだ伸びしろは十二分だ。いずれ君の前に立ち塞がるかもしれないな』
『それはそれは・・・それで?その方の名前は?』
『チョクセンバンチョー、だったかな』
『チョクセン、バンチョー?』
『?どうかしたかい?』
『・・・・・・ああ、いえいえ、先輩から見ても有望そうなウマ娘ならきっと将来のライバル足り得るでしょうから、少し楽しみになってしまっただけですわ』
『ふふ、そうか。確かに今だ見ぬ好敵手との戦いは楽しくなってしまうもの、か』
(成程成程、
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チョクセンバンチョー
スぺ姉ちゃんのジャパンカップを遠目に見ていた(勿論後でお祝いに行ったが)
ウマ娘世界の
そしてカイチョーさんのギャグ(ジョーク)を初体験、少し顔が引き攣ったが何とか本人的には上手く返せた模様
尚このギャグがカイチョーに覚えられてしまい、後でエアグルーヴから苦情が来たらしい
カイチョーからとある葦毛の先輩を紹介される事に
シンボリルドルフ
自分の事を頼りにしてくれるバンチョーにニッコリ、他の生徒達ももう少し色々と我々生徒会を頼りにして欲しいのだが・・・(実際は恐れ多くて頼みにくいのが主要な原因の一つ)
今後も苦難が続くであろう後輩の為にあえて軽いジョークを言い放ち空気を和らげようとしたが・・・結果はご覧の通りである
ジョークをジョークで返されてその日は一日ご機嫌だったが、この後エアグルーヴやナリタブライアンにそのままジョークを言い続けてしまった模様
ブロワイエ
ジャパンカップ後、暫く休息を取った後フランスへと帰国した
今後はゆっくり休んだ後に再びヨーロッパのG1に出走予定、敗れはしたもののこれからの彼女はその敗北を糧として強くなり以前以上に華々しいものになるだろう
ローズフェロモンとはチームが同じで先輩後輩の仲である
日本から帰国後の彼女の自室には日本で出会った可愛らしいウマ娘(ピンク色の毛並み)から貰った『カツオのフィギュア』が大事に置かれている
ローズフェロモン(ピンクフェロモン)
ブロワイエの後輩にして、名前の時点でお察しかもしれないがJWC出場UMAの一頭であるピンクフェロモンである(ピンクは英語読み、フランスではローズにあたるらしいので此方を呼び名にしています)
モデルの様な高身長に新雪の雪を思わせる白い肌、膝まである癖の強いプラチナブロンドの長い髪、色素の薄い金眼の目を持つ美人なウマ娘
今はまだジュニアクラスでデビューもこれからだが、既に多くのトレーナーに注目される才女である(その内ウマ娘としてのデータを作る予定あり)
但し、ピンクフェロモンのあのパフォーマンスは流石に再現出来ませんので別の形になります(いやうんアレは無理ですって)
次回はエイプリルフールネタ枠として4月1日に投稿予定(自分を追い込んでいくスタイル)
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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チームスピカの話
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チームリギルの話
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チームカノープスの話
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チームコールサックの話
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生徒会の話
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親や他のウマ娘との話
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JWCの面々の話