マンハッタンカフェ、というウマ娘が居る
彼女はチームコールサックに所属するウマ娘の一人で、同チームに所属するアグネスタキオンのストッパー役の一人であり霊感能力を持つとされるウマ娘である
そんな彼女の傍には『お友だち』と呼んでいる自分だけにしか見えないウマ娘がよく現れ、時に会話をしたり時に並走をしたりと日頃から行動を共にしているのだが...
「...最近は、随分私達の周りも賑やかになってきたね」
「―――、―――」
「...ふふ。うん、そうだね...バンチョーさんと知り合ってから...変わった子がよく遊びに来てくれるように、なったね」
コールサックの部室兼アグネスタキオンの研究室にて、お気に入りのブレンドコーヒーを二人で飲みながらここ最近の自分の周囲の状況の変化を思い出す
きっかけはマンハッタンカフェだけにしか見えなかった筈の『お友だち』の事をはっきりと認識してくれるウマ娘が現れたのが始まりだった
チョクセンバンチョー...カフェが所属しているチーム、コールサックのトレーナーであるオキシドールの実の娘である
何故彼女もお友だちの姿が見えるのか、については未だに原因不明だが...少なくとも、お友だちを実際目の当たりにしてもバンチョーは特に恐れたり怖がったりせず身近な友人として接してくれる事には大いに感謝していた
特に、本人にちょっかいをかけても対して怒ったり叱ったりせずそれがお友だちなりのスキンシップであると捉えている彼女の器の大きさには正直感謝してもし切れないほどである...そして、憑いている彼等彼女等にも...
コーヒーを飲み終えて自分とお友だちの分のコップを片付けていると、部室の壁を誰かがすり抜けて入ってくるのを感じた
今日タキオンさんはトレーナーさんと一緒に買い物をしているからこの時間には自分達以外誰も居ない筈だが一体誰だろうか、とカフェが視線を向けると...のっしのっしと身体を左右に揺らしながら、非常にゆったりとした2足歩調でカフェ達の歩いて来る5mを超える巨躯の白い怪物が居た
怪物はカフェの前で立ち止まり、じろりと目線を彼女に向けた後にゆっくりと右腕を振り上げ...
『...(ペコリ)』
「...ああ...こんにちは、
白い巨躯の怪物...UMAは自身の大きな右腕の手の平をカフェやお友だちよりも遥かに高い位置にある自身の後頭部に置き、そのままカフェとお友だちに頭を下げた後、問いかけに対して目を細め口角を上げてニコニコとした表情で頷く
それに対してカフェも微笑みながら直ぐに入れますから少し待っている様に伝えると、己の巨躯が邪魔にならない様になのか部屋の隅の方で座って待ち始めた
このUMAもまた、バンチョーに憑りついていた幽霊の一人であり彼(?)がトレセン学園を散策している様子から声を掛け案内をして以来親しくなった間柄の存在だ
バンチョーに憑りついている得体の知れない...というかどう見ても生物以外の幽霊すら居る面々の中ではその見た目のインパクトはさておけばかなり温和でフレンドリーな性格をしており、散策の途中でカフェが自分の好きなブレンドコーヒーを勧めて以来カフェの入れるコーヒーを度々飲みに来るようになっていた
コーヒーの淹れられたマグカップをUMAは大きな左の手のひらに置き、右手の人差し指と親指で優しく挟み込む様に固定してから両手を持ち上げカップを口に当てて飲み干していく
何処となく茶道の飲み方に見えなくもない様な仕草でカップを割らない様におずおずとコーヒーを飲む動きに思わずクスリと微笑んだが、それに気が付いたのか何だか照れくさそうに頬を掻きはじめたUMAに更に笑みが深くなった
「ふふ...お代わりも、ありますからね?」
『...!』
飲み終わったマグカップを残念そうに眺める彼(?)にそう声を掛ければ途端に顔を上げてマグカップを差し出してくる辺り、本当にコーヒーの事が好きになってくれたんだと実感出来...美味しそうに2杯目を飲み始めるUMAみたいな怪異ばかりが現れてくれれば良いのに、とカフェは思った
(...毎回思いますが、彼が見えていたらかなりの騒ぎになる光景ですよね...)
UMAと共にお代わりのコーヒーを飲み終え、グラウンドへと共に向かう最中に彼を見上げながら思う
己よりも二倍以上ある背丈に白い体毛、横幅も圧倒的で今現在歩いている彼の胸元に抱き付いたお友だちの手が彼の脇腹にすら届かぬ程ある巨躯だ
そんな存在が学園内を歩いていれば騒ぎになるのは確定的だが、幸いにも自分以外に見えていないので問題はない...が
(学園に入ってから大分経っても、未だにこういった視線を向けて来る子達が居るのは
お友だちやUMAと話す際、他のウマ娘や学園関係者には何もない虚空を見上げたり急に立ち止まったりする為
に自分は周囲からは変わり者や不気味な存在として認識されている
自分としてもその辺りは理解しているのだが...周囲から奇異の目で見られている事を心配してなのかUMAが視線を送るウマ娘達と自分を見比べ、オロオロとした様子で私を見つめてきているのに気付いた
「...大丈夫ですよ、UMAさん。私は、彼女達の視線何て気にしていませんから」
本当に?といった雰囲気で両手を顎に当てて覗き込んでくる彼に私はしっかりと頷いて答える
トレセン学園に来る前はこれは私だけの特異な能力だから他の子達からそういった目で見られても仕方がないと思っていた
私以外には誰も見えない、感じない、信じない存在なのだと
だから、お友だちが見える私は、不気味で...変わり者だと
でも、今は...以前とは違う
『あら、今日も夜遅くまで頑張っているんですね...けれど、寮を抜け出しての個人練習は歓迎できませんね?それでもやるのは...何か理由があるのかしら?』
『お友だち?ふむ...興味深いわね。その子の事を教えて貰えるかしら?走り方や癖、彼女の凄いと思う所があれば是非。それに対して貴女がどう走れば近付けるのか、どう練習すればより速くなれるかを考えるのか...いえ、どうせなら彼女の事を追い抜くというのを目標にしましょうか。私も貴女もお友だちもウマ娘なのだから、追い抜きたいし勝ちたいでしょうから、ね』
『...ああ、カフェ?丁度良かったわ...手を貸して貰えるかしら?お友だちが私の膝の上に座っているのか、何をどうしてもソファから立ち上がれなくて困っていたの。全く、悪戯好きね彼女は』
見えなくても構わない、お友だちの事を教えて欲しいと...お友だちを超えようと、言ってくれたトレーナーさん
『フゥン?君がオキシドール先生の選んだ2人目のチームメイトか。私の名はアグネスタキオンだ、まぁ宜しく頼むよ?』
『...テメェがオキシドールさんが言ってたもう一人のチームメイトか?オレはエアシャカール...今日からこのチームに入る事になったモンだ。まァ...宜しく頼む』
『ふひぃ!?あ、貴女はマンハッタンカフェさん!?う、噂にたがわぬスピリチュアルがバリバリ感じる容姿!...ああ、あの、今日からお世話になる事になったアグネスデジタルと申しますぅ!是非是非良しなにお願い致しますぅ!!』
変わり者だと思っていた自分とは、また異なる方向で変わっているチームのメンバー達...そして
『ねえねえ、カフェ!カフェのお友だちってカフェやターボ達よりもずっとずっと速いんだよね!?どんな感じで走ってるの?教えて教えて!』
『いやぁ、速いですよねぇカフェ先輩って...はい?先輩よりお友だちはもっと速くて凄い?いやいやまさかそんなぁ~、カフェ先輩よりもってそんな~アハハハハ...え、冗談じゃなくてマジ、ですか?』
『あ~、まーた一番最後にゴールかぁ。カフェ先輩とお友だちの背中は遠いっすねぇ...しかしやっぱ自分の弱点はスタミナだな、こんなんじゃあとてもじゃねえが菊花賞の最後らへんでへばっちまう、か?いやそんなん認められねぇな...うし!カフェ先輩、すいませんもう一回並走トレーニングお願いしま...ぬおっ!?ちょ、ま、背中に圧し掛かるな!ウエイトトレーニングって、いやこれお友だちだけの重さじゃないだろ!ぬおおおお、潰れる、潰れるゥ!』
お友だちが見えなくても、彼女の存在を認めてくれたターボさんにネイチャさん...
そして初めてお友だちを視認出来た上に彼女の事を友と思ってくれているバンチョーさん...そしてユキノさんやドーベルさん達を始めとするこの学園で出会ってきた方達が居る
だから...
「...学園に来る前なら他人からの視線何て気にしなければいい、そう思っていました。でも、今は...そういった視線を気にせずとも良いんだと、思える様になりました。今の私には、頼りになる理解者が...同じ立ち位置で違う目的を目指すチームメイトが...自分を慕ってくれる後輩達や学友がちゃんと、居てくれますから。...勿論、貴方達もです」
心優しい白き怪異にそうにこやかに告げれば、彼は安堵したのか深くゆっくりと何度も頷く
UMAは主に他の怪異達とカフェとの橋渡しを行う様な立ち位置に何時の間にか収まっており、どうしようもないとUMAに判断された相談のみがカフェの元に届く様なシステムが構築されていた
そのお蔭でお友だちやカノープス、コールサックのメンバーとの練習の時間や自分のプライベートタイムが増えているのをカフェは知っている
そして、何故彼等がそういった行動をするのかも...
「...ところで、貴方達は何時バンチョーさんの前に姿を見せる予定なのでしょうか?...最初に出会った時から、ずっと今までバンチョーさんには貴方達の事は内密にしてきましたが...そろそろ、お話してもいいのではないかと、思うのですが...」
バンチョーとカフェが最初に出会った時に、バンチョーはカフェの隣にいたお友だちがはっきりと見えていたが...それと同時に、カフェもまたバンチョーの背後に憑いていた存在を認識していた
得体の知れない...いや、個性だらけの存在ばかりがたった一人のウマ娘に大量に憑りついているという異常事態に流石のカフェも一度は撃退すべきかと考えたものの、彼等が慌ててバンチョーには黙っていて欲しいという意志と彼女に対しての害意は全く無いという意志を伝えてきたが為に現在までその考えを保留していた
その後も時折バンチョーに会いに行ったり遠くから監視したりしていたが、彼等には確かに危害を加える様な動きもしていない
挙句他の幽霊に対して相談に乗ったり、害意ある幽霊を自発的に撃退したりという行動にすら出ている事もある...自分達の事を疑いながらも、それでもバンチョーに対して何も言わずに黙っていてくれているカフェに対しての恩返しの為に
故に、カフェとしても彼等に関して形はどうあれ善良な存在であると判断しており、彼等が望むのならバンチョーに対しても紹介してもいいと随分前から思っているのだが...
『...(フルフル)』
「...まだ早い、ですか」
UMAは首を横に振り、その申し出を断った
彼だけではない、他の面々にも同じ質問をしては全員同じ反応だった
曰く『まだ早い』『まだその時ではない』『その時が来れば何れ』といった答えだ
そして、全員がこれまた同じ続きを言って来る
『彼女が忘れているモノを思い出した時に、自分達は姿を見せるのだ』と
だから、我々の事はまだ黙っていて欲しい...言い方や表し方は違えど、彼等の意思はこれに全て帰結している、勿論UMAもそうなのだろう
なら、自分は...
「...分かりました。では...貴方達の事はまだバンチョーさんには、話しません。これは、私達と貴方達だけの、内緒のお話...という事で」
出会いの形はどうあれ彼等とは随分と親しくなれたし、UMAとは最早親友と言っても過言ではない程の仲になっている
そんな根は善良な彼等が、バンチョーに対して己の存在を秘匿し続ける事には何らかの意味がきっとあるのだろう
バンチョーに対して秘密にするという姿勢を言葉と人差し指を唇に当てるジェスチャーを行いながら示すカフェに、UMAは嬉しそうに同じジェスチャーを返す...何れ、この日の内緒話を本人に打ち明けられる日が来ればいいなと、お互いに思いながら
―――――――――
マンハッタンカフェ&お友だち
現状唯一バンチョーに憑いているモノ達が視認出来る存在
大概個性が強くどう見ても異質なモノも混じっていた為最初は撃退すら考えたが、最近は大分慣れて来た
特に親しいのはUMA、コーヒーを勧めて以来コーヒー党になった彼(尚性別不明)とは極めて良好な仲になった
UMAと居る時のお友だちの定位置はUMAの胸元、其処にしがみついている事が多い(次点で肩車の位置取り)
UMA
第三回JWCメンバーにして『ブータン』出身の謎多きUMA
白い巨躯を持つ正体不明の存在だが、彼の発見はJWC世界でも『今世紀最大の発見』と称される程の話題を呼んだらしい
一説によれば『ビックフット』と呼ばれる存在らしいのだが、それだと出身地がアメリカになる訳であるし、どちらかと言うとヒマラヤ山脈で目撃されたとされる『イエティ』の方がブータン出身の彼には近いかもしれない(あくまで個人的な意見です)
性格は意外とフレンドリー、最近カフェに勧められたコーヒーにハマっている
好みの味は微糖、ほんのり甘みがあるくらいがお好き
最初のテーマは『チームコールサック』と『JWCの面々』のお話でした
『JWCの面々』の話に関しては投票数が多かった為、複数話の作成を予定していますので、気長にお待ちください
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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