晴天に恵まれたオープンキャンパス当日、私はネイチャとターボと共にトレセン学園入り口で学園の先輩ウマ娘からパンフレットを受け取り中に入る
既に私と同世代と思われる大勢のウマ娘達が学園内に入って来ており、受付を済ませた子から順に案内役と思われる先輩方に率いられて説明を受けながら歩いて行く光景があちこちで見られる
それに習う様にターボ、ネイチャ、私の順で受付を済ませて三女神の像の前で少し待てば案内役の先輩が1人やって来られたので、早く学園内を回りたくてうずうずしているターボとさも私は別に後でも構いませんよーというスタンスをとるネイチャの二人を先に行かせる事に決めた
いや先輩方も忙しいのだから誰から回るのかをジャンケンで決めようとするんじゃないターボ、そしてネイチャお前も早く回りたいのバレてるぞ?私らウマ娘は顔色は誤魔化せても尻尾と耳は割と正直だからな!
私の事は気にせず先に行ってこいや、と二人を送り出して再び三女神の像の前に戻り、ふと私は像を見上げる
・・・未だにどうして自分が生前の記憶を持ってここに居るかはよく分らんし、他の連中も同じ様に来ているのかも全く分らん
だがしかしここで生を受けまたターフを走れる事は神様に感謝したかった
やはり自分はこうして走る為に生きていたいし、燃える様な熱い戦いを好敵手達とするのがどうしても好きなウマなんだ
それは全くもって変わっていない
だから感謝するぜ神様・・・俺が私になっちまったのは予想外だがな!
女神様への感謝を心の中で念じながら像を見上げていると、後ろから誰かが私の方に近付いて来る足音が聞こえた
案内役の先輩が来たかな?と思って振り返れば其処に居たのは長い紺色の髪を左右に分け、左耳に赤と黒のシュシュをつけている褐色肌のウマが立っていた
「ようこそトレセン学園へ!アタシはヒシアマゾンだ、チームリギル所属で美浦寮寮長も任されてる。ま、気軽にヒシアマ姉さんって呼んでくれ」
「私はチョクセンバンチョーだ、ヒシアマの姉さん!」
ヒシアマゾンという名前の先輩に元気よく返事を返すと、何故か彼女は少し頬を掻きながら困惑した顔をした
「・・・何かちっとばかし言い方が違う気がするが、まぁいいか!さ、アタシの後についてきな!」
そう言って先に歩き始めたヒシアマの姉さんの背を見失わない様に追いながら、私の学園内巡りが始まった
姉さん曰く、先ずは図書室に向かうらしい
「バンチョー、アンタの話は聞いてるよ。リンさんやキシさんの娘なんだって?」
図書室に向かう道中で、少し顔を振り向かせながらヒシアマの姉さんが私にそう聞いて来た
「そうっすね、それが何かありましたか?」
「いいや全然?正直あのお二人にはリギル始め学園中のウマ娘が大分世話になってるんだよ。リンさんは学園の料理副主任で毎日ウマいモン作ってくれるし、色々とアタシらの相談にも乗ってくれる。キシさんは医師として活躍してる以外に、トレーニング後の疲労抜きや健康管理を診てくれるんだが・・・まぁ、キシさんはちっとばかしおっかないところがあるんだよな。その辺りはよく分かるだろ?」
キシ母ちゃんの話の後半辺りから、あまり思い出し無くないのか顔が引き攣っているヒシアマの姉さんに何となく私は察してしまい苦笑いを浮かべる
「あー、まぁ、分かりますわそれ。特に消毒とかの事にゃあ細かいんですよね?」
「そうそう、そうなんだよ!衛生管理に細かくてなぁ、手洗いうがいをサボったのを見つけられた時は本当に怖かったんだぜ?キシさんはさ」
そうなのである、キシ母ちゃんは外で遊んだり練習した後はうがい手洗い飯を食ったら歯磨きを欠かすなと衛生面にはかなり口うるさく、サボろうものならこっぴどく怒られるのだ
どうやらこの様子だとヒシアマの姉さんも怒られた事があるのだろう、本当に怖かった辺りでちょっとだけ体が震えてるし・・・
「さぁて、ここが図書室だ・・・静かに入んなよ?」
「おっす、姉さん。んじゃ・・・邪魔するでぇ~」
「邪魔するなら帰ってや~」
「あいよぉ~・・・っむぐぅ!」
『バカ、静かにって言ったろうが、大声出そうとすんじゃない!』(小声)
『すいませんヒシアマの姉さん、つい・・・』(小声)
(中々あの子ノリのええ子やなぁ、そういうのウチ嫌いや無いで?)
尚、最初に案内して貰った図書室に入る際少しボケをかましてみたら、中で席に座って本を読んでた小柄な葦毛の先輩ウマ娘に綺麗に返して貰えた
しかし最後までボケを言い切る前にヒシアマの姉さんに口元抑えられ、更には襟首掴まれて退室させられてしまったぜ・・・あれ何て先輩だろうか?
ヒシアマの姉さんが次に案内してくれたのは脚の付かない程の水の深さと高い飛び込み台を備えた広大な室内プールで、私もヒシアマの姉さんに続いてプールの縁に近付いて周囲を見渡していく
「ここが学園のプールだ」
「おぉ~・・・深いし広ぇ・・・うおぉ、あんな高い飛び込み台まであるのか・・・ふぇ~」
「だろう?まぁその分洗うのが大変でさ、毎月プールの掃除をアタシの任されている美浦寮と、栗東寮の寮長のフジキセキんとこで任されてんだ」
「あ、それ私聞いた事ありますわ。『寮対抗戦inほにゃらら』でしたっけ?ヒシアマの姉さんとフジキセキさんがタイマンして決めるやつっすね?」
これは学園のパンフレットにも書いてあったし、私もリン母ちゃん達やネイチャからもよく聞く話だがどうもトレセン学園は基本的に美浦寮と栗東寮という2つの寮に大多数の生徒が寝泊まりしているらしく、ヒシアマの姉さんともう一人の寮長であるフジキセキというウマ娘の先輩が責任者として管理しているらしい
そしてここからはパンフレットには載っていない情報で、この両者は時折お互いの寮の生徒達を巻き込んで対抗戦という形のプチイベントをしているとの事・・・仕掛けるのは大体目の前に居るヒシアマの姉さんだそうだがどういう理由なのやら
「そうさ。ただ、勘違いすんなよ?アタシんとこもフジキセキの奴んとこも別に掃除がイヤな訳じゃあないんだぜ?ただ、同じ寮長としてアイツには負ける訳にはいかないのさ」
「!!成程・・・同じチーム、同じ寮長、そして同じターフを駆けるライバルでもあるから・・・っすね!?」
「ああ!そうさ!何だい、よく分かってるじゃあないかバンチョー!」
「その気持ち、すんげぇ分かりますからね!やっぱ、ライバルと競うのは燃えますから!」
「そうかそうか!その熱い気持ち、忘れんじゃないよ!」
「押忍!」
成程そういう理由であればとても納得出来てしまった、お互いチームリギルに所属する身としてはやはり負けられない一線がヒシアマの姉さんにはあるのだろう
それを理解してヒシアマの姉さんの意見に賛同すると、腕組をしたヒシアマの姉さんが深く頷きながら私に笑みを見せた
私はこの先輩の事がかなり好ましく思い始めていた
根が似ているのである、勝負に対する意識とか好敵手に対する燃える様なそれも姉妹とかそういう感じに近い位には近い感じがする
ただ間違わないで欲しい、スぺ姉ちゃんがお姉ちゃんならヒシアマの姉さんは姉御!って感じであり住み分けは出来ているんだ!・・・多分!
・・・もし学園で会った時この辺問われたらどうスぺ姉ちゃんにどう言い訳しようか考えつつ、私達は次の場所へと向かった
「ヒシアマの姉さん、あの切り株は?」
ジムやスタジオ、練習用の野外ステージ等を見て回った後にトレセン学園の中庭をヒシアマの姉さんとゆっくり歩きながら見て回っていると、ウマ娘一人が両手を広げてやっと両端に手が届く程の大きな切り株が見えた
切り株は丁度中庭のど真ん中に鎮座しており、中々の存在感を醸し出している・・・のだが、何のためにあるものか意図が見えんので聞いてみる事にした
「ああ、ありゃあこの中庭の名物でな、負けた時の悔しい気持ちをあの切り株の穴ン中に全部ぶちまけて気持ちを切り替えるのさ」
成程、確かに悔しかったり悲しかったりする事があると大声で叫ぶだけでも割とスッキリするものである、あの切り株はそういう気分転換を行う為に残してあるものなのか・・・だとしたら
「へぇ~、そういうものもあるんすね・・・まぁ、自分はあんま使わないかもしれないですけど」
「おや?そいつぁどうしてだい?」
「・・・私はクラシックとかティアラとかシニアとか、あんまそういうモンの価値がよく分からないんすよ。ただ、トレセン学園で勝ち続ければ、私よりももっと強いウマ娘に挑めるんですよね?ヒシアマの姉さん達みたいな・・・そういう相手になら、負けた時には悔しい~、とかいう感情じゃなくて、次こそはきっと相手に勝ぁつ!っていう負けん気が出ると思うんですよ、私は。そういう勝つか負けるかの熱い勝負がしたい!ってのが学園に入りたいっていう目的ですからね」
うん、私にはあんま縁遠いもんだろうなあの切り株
全力を尽くしたレースであれば負けても清々しいモンだろうし、悔しさよりも次は勝って超えてやる!とそう思ってあのターフを走って来たもんだ
それは今でも変わらないし変える気も無い、スぺ姉ちゃんにも言った通り後悔しない全力の勝負をこの学園の同期や先輩後輩達とやってやるぜ
とまぁ私の想いを腕組んでドヤ顔でヒシアマの姉さんにぶちまけてしまった訳だが、最初ポカンとした顔をしたヒシアマの姉さんが口角を上げたかと思ったらなんか頭をわしゃわしゃ撫で始めた
「・・・成程、成程ねぇ~」
「うえっ!?ヒシアマの姉さん!?何すか急に頭撫でるなんて!?」
「あっはっは、いやぁさっきから思ってたんだけどバンチョーは大分アタシと似たレースへの想いを持ってるみたいで嬉しくてね」
あ、やっぱヒシアマの姉さんもそう思ってたのか
そう分かると少し照れる、てか何か撫で慣れた感じがする撫で方ですね姉さん気持ち良いですわ
先入観で荒々しいキメジのような撫で方するかと思えば、どっちかっていうとスぺ姉ちゃんやあけ味ちゃんみたいな優しい撫で方なさりますね?もしや撫で慣れてる?
そうして暫く私をわしゃわしゃ撫でてから最後に2度程振れる程度に軽く頭をポフポフと叩いてから手を放すヒシアマの姉さん
「バンチョー」
「うっすバンチョーです」
「もしもトレセン学園に来た時にリギルのメンバー募集してたら試験受けに来なよ?」
「・・・ふぁっ?いや今結構なメンバー数居るらしいですよね?それに今年期待の新人って事で入った・・・確かグラスワンダー先輩ですよね?も居るし」
「ああ。だからもしも、だね。ま、アタシらはおハナさん・・・トレーナーの東条ハナさんの事だけど、あの人の事も好きだしチームそのものも好きだからね。どっか行くつもりは無いから欠員が出る事は多分無いけどもさ?けど、まぁ色んな事情で移籍とかそういう話が出るから万が一ってモンもある、もしそんな時にアンタが来るならアタシは歓迎するよ?」
「・・・そりゃあ、嬉しいっすね。そん時は宜しくお願いします」
「おう!・・・ま、バンチョーならどのチームに行っても大丈夫だろ。それに、どのチームに入っても・・・アタシが出てるレースではタイマン、張ってくれるんだろ?」
・・・ははっ、まさかのチームの試験へのお誘いからそう来るか、ヒシアマの姉さん
それに私がどう返すか分かってるだろうに、不敵な笑み浮かべて腕組みまでしてそう言ってくれるとは
「なははっ、そんなん聞かんでも分かり切った事言わないで下さいよ・・・全身全霊、勝っても負けてもいい勝負だったって笑い合える位の全力で張らせて貰いますから」
「ははっ、いい顔してるじゃあないか。アンタがアタシをアツくさせる程の強敵になるのを期待してるぜ?バンチョー」
そんなもの受けるに決まってるでしょうが、偉大な先輩からの誘いを断る様な野暮な真似なんて私には出来ねぇしな
此方も笑みを浮かべてヒシアマの姉さんを見上げる
・・・どうやら私の答えは姉さんに満足して貰える答えだったようで何よりだ、もの凄く楽しそうな笑み浮かべてるしな
いやぁ今回の案内役がヒシアマの姉さんでホント良かったぜ、楽しみがまた増えたからな!
「さて、最後はやっぱグラウンドだな」
「おぉ、待ってました!1周が東京レース場とほぼ同じ長さなんですよね?それ以外にも複数の実物大コースもあるとか!一篇見てみたかったんですよ!楽しみだなぁ」
「そんだけ楽しみにして貰えたなら最後に残して正解だったね。さ、最後までちゃんと付いて来なよ?」
「押忍、ヒシアマの姉さん!」
「さぁテイオー、次は我がトレセン学園が誇る広大なグラウンドを見に行こうか」
「はっ、はい!シンボリルドルフさん!」
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チョクセンバンチョー
待ちに待ったオープンキャンパス、前日ワクワクして中々寝付けなかったのは内緒
案内役がヒシアマの姉さんでホント良かったと思ってる、お蔭で楽しく最後まで回れそう
好敵手との出会いまであと少し
ヒシアマゾン
バンチョーの案内役になったトレセン学園の先輩ウマ娘
リンさんは兎も角キシさんには若干の苦手意識があるが、何だ娘さんの方はアタシとどことなく通じるものがあるなぁと感じてる
現時点で既にバンチョーとするであろうタイマンにワクワクしている
小柄な葦毛の先輩ウマ娘
一体何処の白い稲妻なのだろうか・・・
最後に出て来た2人のウマ娘
語るに及ばず、あのウマ娘達です
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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