トレセン学園在学の先輩ウマ娘、ヒシアマゾンとのオープンキャンパスも、いよいよ最後にして私が最も待ち望んだ場所へ向かう
そう、グラウンドである
トレセン学園に行く際に私が一番興味を示したのはやはりこの場所だ、複数のレース場すべてが実物大のそれを想定して設計された練習の場である
ヒシアマの姉さんがこれを最後に持って来る辺り色々解ってると思う、最高だ
階段を上り、まるで堤防かのような広大な土手を超えると待ち兼ねていたグラウンドが漸く一望出来た
「おぉぉぉ・・・!!」
「どうだい?東京レース場の一周の長さと同じなこの広いグラウンドの景色は?・・・って、そんなに目を輝かせてるんじゃあそれが答えみたいなもんか」
やれやれ、と隣で呟くヒシアマの姉さんの声を聞いてはいたが、今はこのグラウンドを目に焼き付けておきたかった
眼下には学園の生徒らしきウマ娘が数名密集しながら走っており、時折最後尾に居たウマ娘が外に移動しては集団を追い抜きながら先頭に出る事を繰り返す
また、ダートで並走をする者達、小さめの設置物を反復横飛びの要領でステップしながら飛び続ける者、スクワットを行う者達と広大なグラウンドの中で多くのウマ娘達が練習に励んでいた
「・・・ヒシアマの姉さんも普段は此処で練習してるんですよね?」
「ん?ああ、そうだねぇ・・・リギルのメンバーと練習してる事が多いけど、一番なのはやっぱブライアンかな?アタシと同期で同じチームのウマ娘さ」
「同期で同じチームですか!普段の練習でもライバルと一緒にとか対抗意識マシマシでモチベーションが上がりますね!・・・いいなぁ、私も何時かここでターボやネイチャと一緒に鍛えてレースに出て熱い勝負をしてぇなぁ」
「ハハッ、アタシもバンチョーと同じ位の時に似た様な思いをしたもんだね、やっぱレースは燃えるもんさ・・・そして」
「「強い相手とのタイマンだともっと燃える」」
ハモった答えにいえーい!と隣に居たヒシアマの姉さんとハイタッチをする
まぁヒシアマの姉さんの方が背が高いから姉さんは中腰なんだけどもな!
そうしてハイタッチの後で2人して笑い合っていたら、ヒシアマの姉さんの後ろ方向から声を掛けられた
「やぁ、先客は君かヒシアマゾン」
「ん?おお、ルドルフかい?」
「んぇ?・・・ッ!」
ヒシアマゾンの姉さんが声のする方に向き直ったので私も釣られて其方が見える様に横に少しずれる
其処には、史上唯一の七冠ウマ娘にして学園生徒会長を務める最強のウマ娘が佇んでいた
(シンボリルドルフ!このウマ娘が!学園最強って言われてる、トレセンの頭か!)
話には聞いていたしテレビ等で実際に見た事も多々あった、しかし直接会うとなると話は別となる
コイツは並のウマなんかと全然、全く違う!と前世の記憶を持つバンチョーでも感じた
存在感、威圧感、風格、その全てが今まで出会った誰よりも・・・もしかするとあのJWCで出会って来た数多の強豪とも肩を並べる、或いは超す最高位のウマ娘だと
だが・・・
(すげぇ、なんつぅ存在感だよ!これが最強、偽りなしだな!あぁ・・・レースでこの人と走ってみてぇ!!)
『最強だからこそ挑んでみたい』、シンボリルドルフに対してバンチョーはそう思っていた
シンボリルドルフから溢れ出すような王者の風格はビリビリと彼女の肌に伝わり痺れる様な感覚を与えている
平時でこんな感じであればレースで走った時は一体どれ程なのか?
この人と最終直線で競った時の、追われる時の、追う時に得られる勝負の熱さは如何程なのだろうか?それを考えるだけでバンチョーの心は高ぶった
(おや?・・・ほぉ、中々いい眼を私に向けて来る子だな)
それはシンボリルドルフにも多少なり伝わっていた
成し遂げた偉業の為に彼女に向けられる視線の大半は尊敬や羨望、敬意や或いは畏怖そして時には敵意等もあった
しかし眼前の少女から感じる視線に宿るのは、余りにも真っ直ぐ純粋な自分に対しての熱い闘争心であった
まだまだジュニアクラスにもなっていない筈の相手から送られるその好敵手を見る様な視線に、思わずシンボリルドルフは微笑んでしまう
「君はヒシアマゾンが案内していた子かな?初めまして、トレセン学園の生徒会長を拝命しているシンボリルドルフだ」
「私はチョクセンバンチョーだ!宜しくなカイチョーさん!」
「カイチョーさん?それはもしや私の事かな?」
「おう!ルドルフさん、って呼ぶと個人的に何か違う感じがするから私はカイチョーさんって呼ばせて貰うぜ!呼び易いし!」
「君なりの愛称のようなものかな?まぁ、私はそれでも構わないよ。しかし、チョクセンバンチョー・・・ああ、もしや君は」
「おう、その認識で合ってるぜルドルフ。この子はリンさんやキシさんとこの子だ」
「やはりか。バンチョー君、君のご両親にはとても感謝しているよ。我々ターフに立つ者達の先達としてもそうだし、一生徒としても学園に多大な貢献をして貰っているからね」
「なはは、カイチョーさんにもそう言って貰えて嬉しいぜ?なんせ私の自慢の母ちゃん達だからな!」
自己紹介の後に学園生徒の頭張ってるシンボリルドルフ、いやカイチョーさんに母ちゃん達の事を褒めて貰えたぜ
まぁ私の、私の自慢の母ちゃん達だから当然だな!
ドヤ顔してたらヒシアマの姉さんとカイチョーに微笑まれたけど見なかった事にする!嬉しいもんは嬉しいもんだからな
「で?そういうルドルフはどうなんだい?アンタも案内役だった筈だけど?」
「ああ、私も一人案内していた所だ。先日とあるレースの後で知り合った子でね、偶々その子の案内役に選ばれたんだが・・・ああ、今あそこで練習を見ている子がそうだ」
「ああ、例の記者会見に忍び込んで来たって子かい?」
「その子で間違いないよ・・・テイオー、少し良いかな?」
「あっ、はーい!」
「テイオー・・・えっ?」
カイチョーさんが自身が案内していたウマ娘を呼ぶと、そのウマ娘の少女が此方に振り向いた
白い三日月を思わせる様な前髪と、綺麗な鹿毛の長い髪を頭の後ろで結んだポニーテールで結んだバンチョーより少しだけ小柄な姿
その少女を見た瞬間にバンチョーが抱いた第一印象は・・・
(ギンシャリボーイ・・・?)
過去幾度となく戦い、JWCの舞台で4度も戦った宿敵ギンシャリボーイの姿が何故か頭に浮かんでいた
確かに髪色はどことなく近いものがある、しかしそれだけであり彼女はテイオーという名のウマ娘だから別ウマなんだよな
どうして自分がそういう印象を持ったか分からず困惑している間に、他の3人の話は進んでいた
「紹介しよう、彼女は私と同じチームリギル所属で美浦寮寮長を務めているヒシアマゾンだ」
「ヒシアマゾンだ、気軽にヒシアマ姉さんって呼んでくれ」
「僕の名前はトウカイテイオーだよ、宜しくねヒシアマ姉さん!」
「彼女の美浦寮とフジキセキの預かる栗東寮で大半の生徒が生活しているんだ、テイオーも入学したらどちらかの寮で生活する事になるから彼女の事は覚えておくように」
「因みに言っとくと、ルドルフはアタシんとこの美浦寮で生活してるぞテイオー」
「えっ!?シンボリルドルフさんは美浦寮なの!?じゃ、じゃあ僕も美浦寮に入る!絶対入る!!」
「ああ、いや、テイオー?どちらの寮になるかは抽選で決まるから同じになれるかは分からないんだ、すまない」
「えぇ~!?そんなぁ~・・・僕シンボリルドルフさんと同じ寮に入りたいよぉ」
「あああ、そう落ち込まないでくれテイオー・・・」
「おやおや随分と慕われてるじゃないか、ルドルフ?あっはっはっ!」
「ヒシアマゾン・・・あまり私を困らせないでくれ、どうにもこの子に関しては他人の気がしなくてな」
カイチョーさんと同じ寮に入りたいとせがんだり、それが叶わない可能性があると分かると凹んだりと、どうやらこのトウカイテイオーというウマ娘はカイチョーさんを随分慕っている様子だ
一旦深く考えるのを止めて、私も3人の会話の中に混じる事にした
「まぁ半々の可能性だから一緒な寮になればラッキー程度に思っとけばいいと思うぜ?学園で幾らでも会えるだろうしな」
「う、うん・・・えっと、君は」
「私はチョクセンバンチョーって言うんだ、お互いオープンキャンパスに参加してるし同い年だと思うから気軽にセンとかバンチョーでいいぜ?」
「じゃあバンチョーって呼ぶよ」
「それじゃあ私はテイオーって呼ばせて貰うぜ?で、テイオーも案内の途中か?」
「そうだよ?まだ半分位、だけど」
「そうか、じゃあ学園の施設の事は黙っとくぜ、私ここが最後だから色々話しちまうとこれからカイチョーさんと見て回るのにつまんなくなっちまうしな」
うむ、憧れのトレセン学園オープンキャンパス、これは自分で見て回るのが楽しいんだネタバレは良くない
ましてやテイオーは憧れのカイチョーさんに案内して貰えてるから邪魔したら駄目だ、バンチョーは空気を読める子なんだぜ?
「カイチョー?それってシンボリルドルフさんの事?」
「おう、何かこう親しみを込めてって感じだな、呼び易いし?」
「カイチョー・・・いいかも、僕もこれからそう呼ぶ事にするねカイチョー!」
「バンチョー君に続いてテイオーもか?・・・ま、まぁ、構わないが」
「カイチョー!ほらテイオーも一緒に」
「うん!カイチョー!」
「カイチョー!」
「「カイチョー!!」」
「ああ、えっと、どうすればいいんだヒシアマゾン?」
「いやアタシに振るなよ、自分でどうにかしなよ!?」
暫く困惑するカイチョーさんにカイチョーコールをしていたら途中でいい加減にしろとヒシアマの姉さんにゲンコツを食らってしまった、もの凄く痛い
一緒に言っていたテイオーは姉さんに軽くチョップされてたがこの差は一体何なんですか?あっ、いやまぁ私が悪ノリさせたからですねすいませんだからもう一発は勘弁して痛いです!
「ううう、二度もぶたれた・・・母ちゃん達にもぶたれた事はあるけど痛いもんは痛い」
「あるのかよバンチョーお前・・・」
「ええまぁ色々あるんですよヒシアマの姉さん」
「んんっ、すまない二人共、そろそろテイオーと次の案内に向かってもいいだろうか?」
咳払いをした後にカイチョーさんが私とヒシアマの姉さんにそう問いかけて来た
まぁ私がカイチョーさんとテイオーのオープンキャンパス巡り邪魔してるからこれ以上は引き留める気は無いので最後に1つだけ聞いて別れようか
「ああすいませんカイチョーさん、最後にテイオーに聞いてみたい事があるんでいいですかね?」
「ん?僕に?」
「おう・・・テイオー、お前はトレセン学園に来て何を目指すんだ?良ければ教えてくれねぇか?」
これだけは聞いておきたかった
最初に見た時のテイオーの姿が何故ギンシャリボーイの印象と重なって見えたのか分かるかもしれないと思ったからだ
この問いかけに対してテイオーは表情を引き締め、右手を胸元で握り締めながら答えてくれた
「僕は・・・僕は、カイチョーみたいに強くてカッコいいウマ娘になりたい!だから、トレセン学園に入学するんだ!」
その答えは・・・私に疑問の答えを教えてくれなかった
だけどテイオーは私の問いに答えてくれたからな、私も私の目的を答えるとしよう
「成程な・・・私はトレセン学園に入って、ここに居るウマ娘達とターフで熱い勝負がしたいからだ」
「熱い勝負?」
「おう、テイオーみたいな憧れの背を追う奴等やクラシックやティアラ、シニア三冠を目指すつもりはあんま考えてねぇ・・・ただ、此処でレースに出てりゃあ私より強いウマ娘と戦えるだろ?そういう奴等と全力で競ってみたいのさ、私は」
「それがバンチョーの夢?」
「夢っていうか目的、かな?だから、何時かテイオーと同じターフに立つライバルになるかもしれねぇ・・・だから、そん時には全力で勝負しようぜ?」
そう言って私がテイオーに笑みを見せると、テイオーも挑戦的な笑みを浮かべながらそれに答える
「・・・いいよ?でも、その時はきっと僕の方が勝っちゃうんだからね?」
「なははっ、言うじゃねえかテイオー?・・・トレセン学園でのお前との勝負、私は楽しみにしてるぜ?」
この時の疑問の答えは私とテイオーが学園に入学してから解けるのだが、今の私にはカイチョーの背を追うのが夢であり憧れであるとしか分からなかった
しかし、かつての好敵手を思い起こさせるテイオーとの出会いは、私の闘志に火を付けるのは十二分であった
トレセン学園のオープンキャンパスの後、私は更なるトレーニングをリン母ちゃんやキシ母ちゃんに頼み込み、母ちゃん達はそれに答えてくれた
平日や大半の休日はターボやネイチャ達と練習したり遊んだり、キシ母ちゃんの特訓メニューを消化したり
時折スぺ姉ちゃんの居る北海道に行ってはやっぱりトレーニングと遊びをしながら充実した毎日を過ごした
そして季節は流れ・・・いよいよ私のトレセン学園生活へと向かっていく
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チョクセンバンチョー
グラウンドに行ったら学園最強ウマ娘と何処か過去の宿敵を思い出させるウマ娘に出会ったバンチョー
タンコブ作る際に落ちて来るゲンコツは大半がリン母ちゃんの拳によるもの
なぁんでテイオーがアイツにダブったのかは今はよく分らない
シンボリルドルフ
テイオーとオープンキャンパス巡ってたらヒシアマゾンとバンチョーに出会う
テイオーからのカイチョー呼びの時期が不明確なので此処ではバンチョーが命名したという事にします
何時か挑んでくるであろうバンチョーに負ける気は当然無い、何時でも掛かってくると良いというスタンス
トウカイテイオー
2期主人公にして運命に翻弄されるウマ娘、何故ギンシャリボーイの姿がダブったのかは今は内緒
カイチョー呼びはテイオーも気に入って以後そう呼ぶ様になりました
僕はカイチョーみたいなウマ娘になるんだから、バンチョーなんかには負けないもんね!
ヒシアマゾン
シンボリルドルフも居る美浦寮の寮長さん
バンチョーの姉さんポジも出来ればバンチョーへのツッコミ役も出来る
ゲンコツはとても痛い、バンチョーの頭にアニメみたいなタンコブが2つ出来ました
思っていた以上にアンケートが激戦過ぎてびっくりしています作者です
投票してくれた方々大変感謝しております、ありがとうございます
来週の日曜までアンケートの募集は継続する予定ですので、どうぞ宜しくお願いします
1期軸終了後に多少幕間を挟む予定です、あるとすればどれが見たいですか?
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チームスピカの話
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チームリギルの話
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チームカノープスの話
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チームコールサックの話
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