BALDRSKY World7+Flat / バルドスカイ 世界7+♭   作:ほんだ

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第13+5章 連関 / Chapter13+5 Linkage

 

 

..■一月二一日 金曜日 二二時一二分

 

(警告、所属不明シュミクラム三機接近中。その後方にフェンリル所属機が六)

(所属不明? ドミニオンか? 通り過ぎるようなら無視するか)

 制御中枢(セキュリティ・コア)奪回にしては数が少なすぎる。後ろにフェンリルがいるということは、追い立てられているドミニオン勢力だろう。挟撃してもいいが、今ここを空けるのは得策ではない。

了解(ヤー)。ECM展開します)

 

 逃亡中のカルト連中に、味方がいると思われて入ってこられるのも迷惑だ。ドミニオンと都市自警軍(CDF)とはまともに連携してないようだから、こちらの機影が見えなければ過ぎ去ってくれるかもしれない。

(不明機、最接近まであと一〇〇秒)

 

(外部の映像及び音声、こっちにも回してくれ)

了解(ヤー)

 視覚に映し出されたのは、精度の良くない監視端末越しの映像。シュミクラムの種別判明も精確にはできそうにないが、どうもドミニオンの機体には見えない。

 

(最接近まであと三〇秒……あの、これって)

(ああ、まったくどうやらそうらしい。隔壁開けてくれ、レイン)

了解(ヤー)。五秒後に開きます)

 問題の三機が通り過ぎる直前、開いた隔壁から俺は身を乗り出す。

 

「えっ、甲?」

「何してんだよ、千夏も雅も……それにその機体、空か?」

 所属不明機は黄色と赤の二機の影狼(カゲロウ)、そして両手に弓のような武器を持った白と赤の機体。細かな差異はあれどこちらも影狼(カゲロウ)だ。

「……その、話してなくて、ごめんなさい。亜季先輩に貰ってたのよ」

 表情画面(フェイスウィンドウ)に映るのは間違いなく空だ。

「それに、甲とレインには、ちゃんと謝らないとって……」

 

 空のことだ。おとなしく寮で待っているとは思っていなかったが、まさかシュミクラムで乗り込んでくるとは。

「謝るって言っても、真ちゃんが誘拐されたのは、お前の責任じゃないだろ」

「で、でもっ、私が甲を振らなかったら、まこちゃんが私を探しに来ることもなくて……」

 

「ドミニオン側の行動はかなり計画的だった。今日攫われてなくても、近日中に同じ事態になっていたさ」

「そうですよ、空さん。星修学園生の方がドミニオン教徒となって、誘拐を実行したんです。責められるべきはそのような状況を想定できなかった私のほうです」

 アーク社長室で、レインに責はないと皆に言われたものの、本人としては納得できているはずもない。ここで空からも謝られても真ちゃんが囚われている限り、自身を赦すことはないだろう。

 

「レインっ、今は責任の所在を問題視している場合じゃない」

 ただ、それを言っても水掛け論になるだけだ。しかも俺達には余裕がない。意識してきつくレインを戒める。

「はっ、失礼いたしました」

「甲っ、そんな言い方ってないわよっ、レインも謝ることないでしょっ」

「いえ、先ほどは私の失言でした。お気になさらないでください」

「空、これは俺とレインとの問題だ。口は挟まないでくれ」

 

 まだなにか言いたげな空を二人して押し黙らせる。

 俺の意図は間違いなくレインに伝わっている。空の登場で緩みかけていた意識を張り詰めなおしたようだ。

「こっちの状況は、今のところ予定通り進行中だ。気になるのはわかるが、すぐに離脱(ログアウト)しろ。千夏も雅も、だ」

 

 そう予定通り、ギリギリのラインで進行中だ。俺とレインが没入(ダイブ)してすでに三〇分は経過している。ゲートを開放して一〇分ほど。敵がどれほど無能とはいっても、ミッドスパイア内部からのハッキングであることにそろそろ気付くはずだ。。

 まして俺達は即席の接続点(アクセスポイント)からの、まともな支援も無しでの没入(ダイブ)だ。一応は偽装したが、いつ実体(リアル・ボディ)を見つけ出されてもおかしくない。

 

「なにさ、甲。『俺とレインとの問題』って……まさか空に振られてすぐにレインに乗り換えたってこと?」

「千夏……そういう話じゃないのはわかってるだろ?」

「いいや、そういう話だよ、これは」

 千夏が睨みつけてくる。表情画面(フェイスウィンドウ)越しでもわかるその不機嫌さからは、今にもその蹴りが飛んできそうだ。

 

「甲。あんた、あたしや菜ノ葉の気持ちを知ってて、それでも空を選んだんだろ。それをヘンな記憶があるからって、あっさりとその女に鞍替えってのは、どういう了見?」

「渚さん、ヘンな記憶とは心外ですっ。それに記憶があろうがなかろうが、甲さんと私とはっ」

(レイン、その話は今はよせ)

(……了解(ヤー)

 

 俺は夢で見た、レインとしか共有できない「未来の経験」を礎として、クリスマス以降の「今」を行動している。このことは間違いない。

 そして「空と付き合っている」という、この本来の俺の時間軸の状態を、どこか実感できていないのだ。

 自覚していたつもりだったが、やはり指摘されると否定できない。ノイ先生に記憶そのものはまったくの正常だといわれても、感情の整理が付いているわけでもない。

 さきほどのレインの言葉ではないが、このあたりはちゃんと空と話すべきなのだ。

 

「とりあえず、こっちに入ってくれ。ここは……」

「警告っ! 上空にシュミクラム転送(ムーブ)反応っ」

 レインからの警告と同時に、文字通り機体が降ってきた。

 

「こ・ん・に・ち・わ・ああああっふははははっ!」

 

 レインの警告のおかげで、ぎりぎり回避が間に合う。

「なにか妙な動きがあると思えば、蛆虫どもが這いずり回っていたのか」

「……お前、ジルベルト……か?」

 飛び降りてきたシュミクラムは、ノーヴルヴァーチュ。濃紺の機体に、各所から突き出した特徴的なブレード。それは鳳翔学園生のジルベール・ジルベルトの駆る機体だった。

 

 被造子(D・C)であり、AIと仮想(ヴァーチャル)とを毛嫌いし、第二世代(セカンド)を下等生物呼ばわりする、歪なまでの差別主義者。

 レインが転校するきっかけにもなった男だ。

 新人戦や、そのあとにも幾度となく俺達に付きまとい、仮想空間(ネット)とはいえ千夏の足を撃ちぬいたこともあった。

 

 けっして会いたい相手ではないし、ましてここで出会うとは思ってもいなかった相手だ。

 AI派の最右翼ともいえるドミニオン教団と、ジルベルトとの接点が思い浮かばない。わずかでもあるとすれば、ドミニオンの敵として現れたともいえるが、その武装を見てそれさえもありえないとわかってしまった。

 

「敵シュミクラム、ノーヴルヴァーチュ。パイロットはジルベール・ジルベルト、です。しかし、これは……」

 レインが解析されたデータの転送だけでなく、一般回線でも報告してくるが、言葉が続かない。

 いま地面に叩きつけたその両腕は、いつものムチではなく機体全長を越えるほどの刀身を持つチェーンソーに変貌していた。それは見間違えるはずもない、あのグレゴリー神父のシュミクラム、バプティゼインに装備されていたものとまったく同一のものだ。

 

「ジルベルト……お前、まさかバルドルに繋がったのか」

「ふはははっ、あの狂った神父など、優勢種たる俺の前では取るに足らんゴミだ。必要なものだけ再利用してはいるがなっ」

 

「っ!!」

 言い終わる前に、俺の足元からチェーンソーが垂直に「生えて」きた。

 斬られる寸前でバックダッシュ。バプティゼインとの戦闘記憶がなければ、脚を持っていかれていたところだ。

 もともとムチやニードル、さらには地雷と変則的な攻撃ばかりのジルベルトだったが、今はそこに神父同等の武装が施されている。攻撃が恐ろしく読みづらい。

 

「三人とも、中枢エリアに下がれ。後続のフェンリルが来るまで立て篭もるっ」

 ジルベルトのことだ、単機で乗り込んでくるはずがない。間違いなく付近に増援がいる。足元を狙って撃ち込まれるニードルを避けつつ、指示を叫ぶ。

 

「って甲っ、あたし達も戦うって、そのために来たんだからっ」

「いえ千夏、下がりましょう。たぶん敵の増援が来るわ」

「そいつらにこの制御中枢(セキュリティ・コア)を奪還されるわけにはいかないって事か」

 千夏が不満そうに反対するが、空と雅とが状況を理解してくれているようで助かる。千夏がジルベルトに借りを返したいのもわかるが、ここは我慢してもらおう。

 

「南東三仮想キロ、転送(ムーブ)反応、多数っ」

 レインの報告と共に、周辺情報が書き換えられていく。総数は六〇機以上。わざわざジルベルトが連れてきたのだ。これで敵兵力のすべてだと思いたい。

 後続のフェンリルとの合流を阻止するためか、転送(ムーブ)してきたシュミクラムとウィルスの大半がそちらに向かう。数は多いが、編成からしてフェンリルの敵ではない。

 

 しかし合流には時間が掛かりそうだ。

 ここの防衛は俺達だけでやり遂げるしかない。ありがたいことにこちらに残ったのは小型ウィルスばかりだ。これなら千夏や雅でも、手加減の必要はないな。

 

「レイン、三人の後退を援護。あとウィルスの掃討は任せた」

了解(ヤー)

 レインが制御中枢(セキュリティ・コア)の隔壁手前に陣取る。程よいサイズの遮蔽物があり、かつ四方への射線が通る場所だ。さすがにこのあたりの位置取りは上手い。こちらに向かってきた二〇機程度のウィルスなら、近づけることなく排除するだろう。

 

「まったく宗旨替えか? 替えるくらいならソフィアの御心に従って、日々お祈り捧げる平和な生活ってやつを送ってみろよ」

 ジルベルトが隔壁に近づかないように挑発し、俺は皆から距離をとる。不規則に伸びてくるムチをかわしつつ、サブマシンガンで軽く威嚇射撃。地雷設置の余裕は与えない。

 

「いやいや門倉甲……我らが崇高な祈りを理解していないとは悲しいなぁ。計画的に生み出された新世代の人類たる我ら被造子(D・C)が、人類の指導者となってこの星を導くのだっ。貴様らのようにあのタンパク質の化け物どもの端末と化した者達は、我らが一掃してやるわぁっ!」

 狂ったような言葉とともに、数え切れぬほどのニードルが放たれるが、正面からのこいつの攻撃など怖くもない。

 

「米内のような低脳な俗物では扱いきれなかった、我らが生み出したる巫女。あの娘に、その本質たる使命をまっとうさせる。うぅむ……むしろこれは、門倉甲よ。その機会を作りし我に、貴様はその全身全霊を持って感謝すべきではないのかね?」

「勝手に連れ去っておいて、いや……作り出した、だと?」

「まったく悲しいなぁ、この期に及んで無知蒙昧な輩を演じるとは。貴様とてソフィアの愛をその身に受けし、縁ある一人であろう?」

「お前、そこまで神父の知識を」

 

 口調やシュミクラムの武装だけではない。確かにこの変質しつつあるジルベルトは、ドミニオンの教祖、いやノインツェーンの使徒たるグレゴリー神父の知識をその身に宿している。

 俺にとって、間違いなく最悪の、敵。

 視界左隅のフォースクラッシュ情報に確認するまでもなく、必殺の連撃は放てるのはわかっている。あとはタイミングだが……

 

(落ち着いてください、甲さんっ!!)

(レイン?)

 制止の声とともに、俺の視界に敵チェーンソーの出現予測ポイントが上書きされていく。そのいくつかは、間違いなく俺が今辿ろうとした突進ルートを直撃するものだった。

 

(神父のいつもの手です。こちらの動揺を誘って……)

(助かったよ、レイン。しかしこれは……俺がこの世で顔を合わせたくないやつツートップの組み合わせだな、まったくっ)

 ウィルスの掃討に、千夏や雅への指示を出しつつも、レインはこちらの様子まで把握してくれているようだ。今の一言がなければ、俺は無策のままで突撃していたところだ。

 ジルベルトの言葉に乗せられ、少しばかり熱くなりすぎた頭と機体。それを冷やすため、俺はわざとらしいまでにニードルの射線に機体を晒し、敵との距離を取る。

 

「だいたいお前が何で真ちゃんや、バルドルのことまで知ってたんだ? 最近の鳳翔学園の教育では、そんなことまで教えてくれるのか?」

「なぁに……ヤツが居座っていた我が祖父の屋敷へ久しぶりに戻ったところ、こんな面白そうな娘の話をしていたものでな。下賎なヤツに相応しい方法で、詳しく話してもらっただけだ。まったくこれほど重要なことを自信の保身のためだけに活用しようなど、底の知れた男よ」

 時間稼ぎの質問に、ジルベルトは無駄な装飾を付け加えつつも答えてくる。ネタ晴らしをする優越感には逆らえないところは、間違いなくあのサディストのままだ。

 

 しかし、米内が居座っていた祖父の屋敷、だと? どういうことだ?

 ニードルとムチ、そして地中から生え出すチェーンソーに警戒しつつ、ジルベルトの身辺情報を探ろうとするが、とうぜん俺よりも早くレインから関連データが転送されてきた。

 

(確認しました。あの……ジルベルトは米内議員の息子、だそうです。その名と姓は遺伝子調整の元となった祖父に当たる人物のものでした)

(おいおい……じゃあ昨年末に拘束された米内議員の息子って、ジルベルトかよ)

(そのようです。正式な裁判前の、勾留に代わる観護措置としてここミッドスパイアの自宅に身柄を戻されていた模様です)

 

 「灰色のクリスマス」前後での米内の動機が明確だったために、その家庭環境などはほとんど調査していなかった俺達の落ち度だ。いや、無論フェンリルなどは知っていたのだろうが、あちらでは逆にジルベルトの存在を重要視する要因がない。

「じゃあなにか、ジルベルト。都市自警軍(CDF)がドミニオンに肩入れしてるのは、お前がパパにおねだりして……」

 

「あの下種を、親などと呼ぶなぁっ!!」

 一切の余裕を無くした雄叫びとともに、濃紺の機体が自ら広げていた距離を一気に飛び込み、殴りかかってきた。

 なにやらジルベルトにも、父親とは確執がありそうだ。

 もちろんそんな勢いだけの攻撃に当たるはずもなく、カウンター気味に銃弾を叩き込む。

 

「この下等生物がぁっ!」

 銃撃から格闘に持ち込もうとしたが、再び距離を離す。逆に今の攻撃で、冷静さを取り戻させてしまったか?

 

「もともと米内の周りに集まっていたような都市自警軍(CDF)など、意思も信仰も持たぬ哀れな子羊……腐った金に群がるハエのような奴らよ。こちらがミッドスパイアの市民権をちらつかせたら、すぐに手のひらを返してきたわぁっ」

 しかしようやく合点がいった。いままでドミニオンと都市自警軍(CDF)との間の接点が掴めてなかったが、これは確かに想定外だ。いま動いている都市自警軍(CDF)は、実質的には米内の私兵といったところか。しかも動機は金と地位で、忠誠心など欠片もなさそうだ。

 

(レイン。フェンリルに神父の復活と、ジルベルトの関連情報を報告)

了解(ヤー)。合わせて都市自警軍(CDF)内部の反米内派への工作も依頼しておきます)

「グレゴリー神父に感化されて身に着けた大言壮語も、パパの名前の前じゃあメッキにもなってないな。まったくお前らしいぜ」

 

 くだらないおしゃべりに付き合った意味はある。攻撃の癖はジルベルトのままだ。武器が増えただけで性質の悪さは変わらない。ならば対策も同じだ。先ほど倒しきれなかったのは惜しいが、今からでも挽回できる。

 こちらに来ているウィルスも、レインと空の射撃でジルベルトの護衛にまでは近寄れそうもない。その数もあと五機だ。

 

「そのおしゃべりも神父ほど面白くないしな。それに、大事なウィルスがもう残り少ないぞ?」

「貴様らぁ……我が兵力をっ」

 そういう間にも、また一機レインによってウィルスが撃ち砕かれる。

 

「残念ながら手持ちのコマの心配する余裕は、お前にはないぜ」

 劣勢になった途端に退避行動に入るのは、お見通しだ。その挙動に合わせて、俺はナイフを構えて突進。あとは手馴れた動きで、躊躇うことなくノーブルヴァーチュを叩き壊していく。

「お、おのれーっ! 貴様のような下等生物に、この俺がぁっ!?」

 

 

 

 

 

..■一月二一日 金曜日 二二時一九分

 

 止めとばかりにアッパーを放ち、ノーブルヴァーチュを宙に浮かす。

 ダガーを両手に実体化させかけたところで、雅と千夏の、息を呑むような気配を感じてしまう。

 その気配で、必殺のタイミングを逃し、紫紺の機体が地面を叩くに任せる。

 

「……なあ、甲。殺したのか?」

 雅はどこか恐ろしげなもののように、その機体を見つめている。いや、怯えているのは俺に対して、か。

「この程度で死んでくれれば、苦労はないさ」

 わざと気楽に言い放ち、しかし俺は止めを刺すべくノーブルヴァーチュに近付いた。

 

(甲さん、お気を付けください。ジルベルトはなにか異常です)

(レインもそう思うか? バルドルに接続したのは確実のようなんだが……)

(驚くべきことですが、ジルベルトには変化がなかった……いえ必要なところだけ意図して変化したように見受けられました)

 

 俺の記憶の中にあるグレゴリー神父とは戦い方が違う。発言には影響があったものの、取り巻きがいなくなると撤退しようとするなどその行動は、間違いなくジルベルトのままだ。その自我には、神父の侵食が進んでるように思えない。

 それでいてシュミクラムの武装を見て明らかなように、神父としての能力を受け入れている。

(想像以上に厄介な敵になっているかもしれないな、これは)

 

 だが、ジルベルトの症状をゆっくりと考察してる暇は、俺達にはなかった。

 

 

    〓

 

 

「警告、巨大な質量が転送(ムーブ)っ……そんな、これは……」

「どうした、レインっ?」

 不吉な予感が胸をよぎる。

 

「北東五仮想キロ、転送門(ゲート)にトランキライザーに出現っ」

 この制御中枢(セキュリティ・コア)エリアは防衛のためか、かなり構造体の端にある。逆に言えばバルドルの位置する構造体との距離は驚くほどに近い。

「敵主砲、照射態勢に入ります、各機離脱をっ!」

 

 その警告の直後、俺とレイン達との間を巨大な熱量が押し寄せる。

 常識的な射程を超えた長距離の、高出力レーザーによる砲撃。

 警告がなければ危なかった。制御中枢(セキュリティ・コア)エリアを盾にするように俺達は退避したものの、地形を変えるほどのエネルギーが周囲を襲った。

 

 しかも余波で抉り取られた地面の構造物が、それ自体が弾丸であるかのように四方に撒き散らされる。

「くぁっ!」

「千夏っ!?」

「だいじょうぶ、まだいけるよっ」

 千夏の影狼(カゲロウ)・凛、その紅い表面装甲にく細かく傷は入っているが、致命傷ではなさそうだ。

 

「ふんっ、悪運の強いクソムシどもめ」

 砲撃の回避で意識がそれた瞬間に、ノーブルヴァーチュは俺の射程から遠く離れたところに退避していた。

「自身を観測手としての長距離砲撃、か。くだらないトラップしか使えないお前にしてはなかなかに繊細(テクニカル)だな」

 逃げられないように、ジルベルトをわざと挑発する。

 

「直接手を下してやりたいところだが、あの娘によって焼き尽くされるのが貴様達にはお似合いだ。せいぜいもがき苦しむがいい」

「トランキライザーの主砲はそんなにすぐには射てないさ。その前にお前を叩き潰して、真ちゃんを返してもらうっ」

 話しながらも連続でダッシュ。もちろんジルベルトのよく使う細かなトラップを警戒し、周辺の安全を確認した上で、だ。

 

「ふははははっ、この程度で敗れる俺ではないわぁっ」

 俺の攻撃と先ほどの砲撃の余波で、高機動に耐えれるはずがないと思ったのが間違いだった。

 笑い出すと同時に、その機体は溶け込むように地面に潜り、視界から消える。ジルベルトがパプティゼインの機能を導入していたことを、俺はすっかり失念していた。先の砲撃も、これで退避したのか。

 

『お前達の無駄な足掻きもこれまでだ、這い蹲って死を味わうがいいっ』

 威勢のいいセリフとは裏腹に、レーダー上で見るかぎりかなりの速度でここから離れていく。

 

「また逃げやがったよ、あいつ」

「まったく、逃げ足だけは凄腕(ホットドガー)だな」

 千夏と雅は、いつものジルベルトの行動だと呆れつつも笑っている。あるいは俺が人を殺すところを見なくてよかったという安堵か。

 ただ、これは注意する必要があるかもしれない。あの挙動は間違いなく、グレゴリー神父のバプティゼインと同様だった。

 

 しかし今気にするべきは、地響きを立てて近付いてくるトランキライザーのほうだ。

「こちらも一度下がって、体勢を立て直そう。雅は千夏のガードに入ってくれ。レイン、チャフ射出」

了解(ヤー)

 

 ふと親父に先日言われたことが頭によぎる。そうだ、俺は確かにこういうとき、レインしか頼らなくなっている。

「……甲さん?」

「いや、なんでもない。空はいけるか?」

「私は平気。まこちゃんを助けるまで立ち止まってなんていられるわけないじゃない」

 空元気というわけでもなさそうだ。レイン経由で映し出される機体情報を見ても、空の影狼(カゲロウ)は、こちらと同じく、ほぼ無傷だ。

 

 先の主砲の攻撃で、俺達とトランキライザーとの間には、焼け焦げた地表だけが伸びている。この位置取りは、危険だ。

 巨体とその普段の遅さから見誤りがちだが、トランキライザーは機動性がないわけではない。射撃戦主体で戦えるほどに装甲が厚く、そして火力があるというだけだ。

 

「皆、敵正面には入るなよっ! 主砲はしばらく撃てないはずだが、いきなり突進してくるぞ」

 言うまでもなかった。

 ジルベルトが逃げ出し、巻き込むことが無いと判断したせいか、通常歩行ではなく前足をそろえた突進形態で五キロの距離を見る見る詰めてくる。

 

「くそっ、マジに突っ込んできやがった」

 先の砲撃でめくれ上がった地面を、さらに削り取りながらこちらに突き進む。

 圧倒的だ。

 近付くにしたがって、その巨体に圧倒されてしまう。

 

 俺達自身もシュミクラムとなった今、すくなくとも一〇メートル近い電子の肉体を構成しているのに、その身をもってしても、トランキライザーはまさに威容としか感じられない。船殻に四本の脚を生やし、各部に砲座を配した姿は、陸上戦艦と噂されるのもうなづける。

 突進はこちらから一キロほど先で止まり、改めてその四本の脚を広げる。やはり無理に近接攻撃を仕掛けるのではなく、得意の砲撃戦を進めるようだ。

 

「まこちゃんやめてっ」

「空、お前も下がれっ」

 トランキライザーが動いているということは、乗っているのは間違いなく真ちゃんだ。ただ俺達を狙っての先の砲撃からしても、真ちゃんが自覚して操作しているとは思えない。なんらかの方法で強制的に制御しているのだろう。

 

「なにか違うな……」

 先のジルベルトとの戦いと同じく、敵と相対すればするほどに、知らないはずの忘れていた戦闘の記憶が蘇る。その記憶の中のトランキライザーと、いま眼前に威容を示すそれとは、わずかに齟齬がある。

 

 攻撃は激しく、機体各所に設置されたガトリングからは、まるで雨のように銃弾が降り注ぐ。そしてその装甲は、こちらからの一撃を簡単に跳ね返す。

 しかしそれでも俺の記憶にあるトランキライザーほどには、脅威を感じない。

 

「甲っ、こんなデカブツ、どうやって相手にするんだよっ!?」

「雅、あんたの大砲は飾りかいっ? デカブツだって言うなら当ててみせなっ」

「二人ともっ、無理せず脚を狙って撃ってっ」

 銃弾に行く手を阻まれて手が、いや脚が出せない千夏に比べて、空はまだ落ち着いている。やはり傭兵経験の記憶というのは、空にも残っているのかもしれない。

 

 回避運動に集中し、そんな周りの様子をどこか醒めた頭で観察していたが、ようやく異常に気が付いた。

「そうか、威圧感がない、のか?」

 確かにトランキライザーの巨体もその火力も圧倒的だ。

 

 しかし鎮静剤、という名の通りトランキライザーの最大の機能は、人の意思を媒介としてAIを抑圧することである。そしてAIの端末といってもいいほどに脳内(ブレイン)チップを強化されている俺達第二世代(セカンド)は、あれが本来の機能を持って稼動していれば、近付くことさえ困難なはずだ。

 だが今は普通に戦えている。つまりは真ちゃんが完全に取り込まれているというわけではなさそうだ。

 

「ならやりようはある、か……」

 破壊するだけなら方法はいくらでも思いつくが、真ちゃんが乗っているのだ。可能なかぎり本体に被害は与えず、できれば脚部を切断し移動能力を奪い、加えて各種兵装部分はすべて潰しておきたい。

 ……自分で考えながら、かなり無理な希望だ。

 

「とりあえず脚の一本でも折るか」

 歩行での動きは遅いとはいえ、あの巨体で飛び回るトランキライザーだ。三本足となっても動き回りそうだが、機体中枢近くに設置されている兵装を狙うよりはいいだろう。

 問題は、あの太い足が簡単に折れるはずがないということだ。

 

「雅、空。右前脚に火力集中してくれ。足を止める」

 俺と千夏の装備は完全に近接に特化している。火力支援があったとしても、全身に兵装を配置しているトランキライザーに真っ正直に接近するのは少しばかり特攻願望が強すぎる。まずは少しでも動きを止めてからだ。

 

「集中って言ってもよ、甲。どこ狙うんだよっ!?」

「須藤さん、膝下側の関節部分が露出しているところを狙ってください」

 俺が答えるよりも早く、レインが指示する。

「わかったわ、レイン。雅も手伝いなさいっ」

「……あんなところに狙って当たるのかよ」

 雅がぼやくのもわかる。確かにあの場所ならライフル弾であっても数発直撃すれば脚は折れないにしても、駆動障害は起こせそうだ。ただ関節というよりは装甲の隙間といったほうが見た目的には正しいな。

 

 長期戦を覚悟した俺に、いきなり通信が入った。

『皆、あと少しがんばって……助っ人呼んだ』

「亜季姉ぇ?」

 突然の亜季姉ぇからの通話。助っ人といわれても、フェンリルはすでに全兵力を展開させている。

 

 しかし、誰がと問う間も必要なかった

「ぅおおおぉっ!」

 俺達の後方から、聞き覚えのあるシャーマンのウォークライ。

 人の手によって生み出された、作られた幻想。それはしかし人の手を経たからこその、まさに理想としての精霊の導き手である。その戦士の咆哮は紛れもなく本物だ。

 そして大量のミサイルが、トランキライザーに降り注ぐ。それらはすべて精確に脚の関節へ着弾。

 

「待たせたな!」

『その人はモホーク。私の、大切な友達』

 呟くような、それでいて絶対の信頼を持った亜季姉ぇの言葉。

 確かにこれは頼もしい助っ人だ。その腕前を間違いなく俺は「知って」いる。

 俺の記憶ではフェンリルで優秀なサポートとして活躍していた。今はまだ違うのか、機体色はフェンリルの青ではない。しかしそれで腕が落ちているわけではなさそうだ。

 

「助かった、モホーク。

 通常のウィルスなら一個小隊くらいは灰にできそうな火力だったが、相手はトランキライザー。いまだ健在である。それでもその巨大な四肢の動きは明らかに鈍くなっている。

 

 今なら、俺達でも折れる。

「千夏、レイン。左の二本を潰せっ」

了解(ヤー)

「いい運動になりそうだね」

 二人の声が揃い、競い合うようにトランキライザーへ襲い掛かる。今までの鬱憤を晴らすかのように、その動きは速い。

 

「雅と空は援護、砲座への威嚇を頼むっ」

「オーケー、派手にやろうぜっ」

「本気出しちゃうわよっ」

 接近する千夏とレインへ、いくつもの銃口が向けられる。しかし雅と空とがそれを阻止すべく、文字通り雨のように弾をばら撒く。

 俺も負けずとサイスを構え、飛び上がる。わずかに露出している関節機構へと刃を滑らせ、そしてそのままの勢いでハンマーを叩きつけた。

 

 神代の終わり、死せる戦士(アインへリアル)達は甲冑に身を固め、巨人達とウィグリドの野で激突した。時は移ろい、今仮想(ネット)の時代、俺達は戦闘用電子体(シュミクラム)にその身を変え、光の神(バルドル)の化身を打ち滅ぼす。

 轟音を立てて、その巨体が地に這った。

 

「レイン、敵左舷の残存する兵装をっ」

了解(ヤー)っ」

 すべての脚が折られてもなお、トランキライザーはのたうちながらも、射撃体勢をとろうとしている。しかも各部のガトリングもVLSも健在だ。たとえ擱座していても、その脅威が失われたわけではない。

 俺は目に付くそれらを可能な限り叩き潰していく。

 

「空、行けぇっ!!」

 まだ動こうとするトランキライザーの胴を、踊るように空の影狼(カゲロウ)が駆け上がる。生き残っているいくつかの砲座が空を狙うが、雅とレインの狙撃がそれらを黙らせる。

「まこちゃんっ」

 そしてついに空の腕がコクピットをこじ開けた瞬間、巨獣の断末魔のような駆動音が周囲に響き、トランキライザーは崩れ落ちた。

 

「レイン、周辺警戒を」

了解(ヤー)

 ジルベルトのことだ。もしかすると、さらに手勢を潜ませていることも考えられる。緊張が途切れそうになるが、ここで気を抜くことはできない。

 

 それでもあとはコクピットから真ちゃんの電子体を助け出せば、俺達の目的の大半は完了する。そのはずだった。しかしコクピットを覗き込む、空の言葉が俺達のそんな希望をあっさりと打ち砕いた。

「……居ない」

「居ないって、なんでっ?」

 千夏が皆を代表するように、疑惑の声を上げる。

 

『甲、空ごめん。騙された。そのトランキライザーは遠隔操作。真はミッドスパイアの地下、バルドルと一緒に居る』

実体(リアル・ボディ)の場所はわかる、亜季姉ぇ?」

『たぶん、米内議員の自宅。フェンリルの皆がいま追跡子(トレーサー)の反応を探してる。でも手が足りてない……』

「うむ、では俺と久利原でそちらに回ろう。俺達は今ミッドスパイアの中だからな」

「久利原先生も来てるのか?」

 あっさりとその名が出ることに驚く。

 

「ヤツは友だ。悪い風に吹かれていたが、今はそれも新たな風によって清められた」

「頼めるか、モホーク?」

 俺とレインがそちらに回るということもできるが、実体(リアル・ボディ)のほうはほぼ丸腰だ。現実(リアル)側でフェンリルと再合流する手間を考えたら、モホーク達に任せたほうが早く、しかも確実だろう。

「うむっ」

 

「あと、先生に約束を守れず申し訳なかったと伝えてくれ。真ちゃんの安全を頼まれていたのに……」

「あ、あの……私からも、お願いします」

 これはすべてが終わってから直接言わなければならないが、今現実(リアル)で真ちゃんを助けようとしている先生には、早く伝えたかった。表情画面(フェイスウィンドウ)を見るに、レインも同じ気持ちだ。

 

「ふむ……お前達は今から助けに行くのだろう?」

「もちろんだ」

「ならばよしっ。約束は違えられたのではなく、今も守られている。違うか?」

「……ありがとう、モホーク」

 力強く頷いて、そしてモホークは離脱(ログアウト)した。

 

 

    〓

 

 

「フェンリルのほうはどうだ、レイン?」

「フェンリル本隊はミッドスパイアゲート付近にて、立てこもるドミニオンと交戦中です。都市自警軍(CDF)はその多くが投降しつつあります」

 送られてくる状況報告を見るかぎり、すぐさまこちらに回せるほどの余裕はなさそうだ。先のジルベルトが引き連れてきたウィルスとの戦闘で、幾人か脱落したのが厳しいな。この入管ゲート制御中枢(セキュリティ・コア)の防衛で手一杯だろう。

 

「千夏と雅は、一度離脱(ログアウト)して治療を受けろ」

「甲っ、あたしはまだやれるよっ」

「まだ動けるうちに、自分で帰還してくれ、千夏」

 きつい言い方だとは自分でも思う。だが負傷して動けなくなった兵士ほど、友軍に不利益をもたらすものはない。今の千夏と雅の腕では、フェンリルにとっては足手まといにしかならない。

 ましてバルドル中枢にまで連れて行けるほど、俺にも余裕はない。

 

「フェンリルがドミニオンを引きつけてくれているので、バルドルまでは妨害は少なそうです。敵が残っていたとしても先ほど逃げ出したジルベルト程度でしょう」

 レインが落ち着いた声で現状を説明する。

 その言葉どおり、今はこの周辺からは敵の気配はない。先のトランキライザーの砲撃で、構造物まで破壊されているのだ。

 

「まあそりゃ、転送門(ゲート)までは綺麗さっぱり吹き抜けてるけどさ……」

「レインさんがそういうなら、任せるよ。亜季さんや菜ノ葉ちゃんも心配してるだろうしな。報告がてら、先に戻ってるよ」

 雅がそう言って、除装しようとする。それでもまだ千夏は迷うように視線を彷徨わせている。

 

 これは、いまがちょうどいいタイミングなのかもしれない。時間に余裕があるわけではないが、ここで話しておくべきなのだろう。

「なあ千夏、空……さっきの話の続きなんだけどな」

「さっきの話って、何よ?」

 また表情画面(フェイスウィンドウ)越しに千夏が睨みつけてくる。千夏のやつ、わかっていて突っかかってきてるな、これは。

「俺とレインの問題って話だよ」

 

「確かに最初から……いや去年のクリスマスからだな。俺とレインとは、お前のいうヘンな記憶ってヤツのせいで、ただあたりまえの学園生同士の関係からは外れてしまってるよ、それは認める」

 思い返せば、転校生とか寮の新しい住人とか、そういったごく普通の距離感でレインに接したことは、実際一度もない。すでにあのときから俺にとって、レインは傍にいて当然の存在になっていたのだ。

「それもあって空とちゃんと話す時間さえも取れてなかったことも、事実だ。恋人失格と言われても仕方ないな」

 

「ちょっと、甲っ! 私はあなたを振ったのっ、もう恋人とか付き合ってるとか、そんなの関係ないの。だからレインに告白して、しっかりお付き合いしなさいっ」

「あ、あの、空さん? 告白とかお付き合いとかではなくてですね……」

 いつも以上の空の暴走に、レインが訂正を入れるがあまり効果はなさそうだ。

 

「そういえば、俺はお前に振られたんだったよな」

 完全に意識から消えていたが、俺は振られたのだ。ただ自分でも酷い話だとは思うのだが、失恋した悲しみというのが、やはり沸いてこない。

「そういえば……ってなによ、それっ」

 

「そうですよ甲さんっ、この件が解決して落ち着いてから、もう一度空さんと話し合って下さいっ」

 あまりに軽い反応の俺に対して、レインの矛先までこちらに向いた。

 レインの言葉通り、本当ならゆっくりと話したいが、いまは時間的にも状況的にも無理だ。それでも伝えておきたいことはある。

 

「いやレイン、いいんだ。なあ勝手な話だが、空?」

「な、なによ、甲?」

「恋人じゃなくても、お前とはいい友達でいたい。駄目か?」

 我ながら勝手過ぎる言い草だが、それが俺の偽らざる気持ちだ。恋人として空の傍に居たいとは、もう思えない。しかし疎遠になりたいわけではなく、同じ寮の仲間としてこれからも付き合っていきたいというのが、本心なのだ。

 

「なんなのよ、これじゃあ私が振ったんじゃなくて、振られたみたいじゃない、そこ、千夏っ、必死で笑いをこらえるんじゃないっ!!」

 シュミクラムで笑いをこらえようとすると、機体が小刻みに震えるらしい。新鮮な発見だな。どうでもいいことだが。

 

「まったく。あたしがムシャクシャしてるのがバカらしくなったよ」

 笑いながら千夏は除装する。

「ただ甲、あたしはあんたを諦めない。卒業までに振り向かせて見せるさ。どうせ空も似たようなこと考えてそうだしね」

「だからっ私と甲はもうそういうのじゃないのっ」

「ですから、甲さんと私とはそういった関係ではなくてですね……」

 

 千夏の言葉にむきになって反論するレインと空。その二人の繋がりはとても大切だ。

 俺と空とがギクシャクするは確かにイヤだ。ただ、それ以上にレインと空の関係を、俺のために崩して欲しくなかった。

 レインにとって空は大切な親友であることは間違いない。空にしても顔は広いものの、一番の親友というとレインなのだと思う。

 

「すげぇな親友、去年の春先まではお前がこれほどのハーレム体質だとは、見抜けなかったぜ」

「ハーレムじゃねぇっ! というか千夏を連れてさっさと離脱(ログアウト)しろ」

「はいはい、がんばれよ親友。いろんな意味で」

 言いたいことだけ言って、雅は離脱(ログアウト)プロセスを立ち上げる。

 

「渚さん、菜ノ葉さんにお伝えください。私達も真さんを連れてすぐ戻りますので、明日の朝食は三人で一緒に作りましょう、と」

「わかったよ、レインにそう言われたら仕方ないね。でも無茶なことはしないでね、甲」

「それは空に言ってくれ、じゃああとで皆で寮で会おう」

 

 

 

 

 

..■一月二一日 金曜日 二二時三六分

 

 雅と千夏、二人が離脱(ログアウト)したのを確認した後、空がレインを問い詰める。

「レイン、さっき二人に言ったこと、ウソよね?」

「いえ、それが……バルドル付近に至るまで、一切の反応がありません」

 

 俺も空と同じく二人を逃がすための嘘だと思っていた。しかしレインの返答と同時に送られてきた情報には、確かにここから先バルドルへの転送門(ゲート)まで敵の姿がない。ただトランキライザーが撃ちぬいたあとに、なにか仕掛けてあるとも考えられる。

「普通に考えれば罠なんだろうが……ドミニオンに、トランキライザー以上の切り札(ジョーカー)なんてないよな?」

 

「|都市自警軍(CDF)とドミニオン、ともに構造体外壁付近に集結しています。敵残存兵力はこれがすべてとも考えられます」

 仮想(ネット)だけでなく、今は現実(リアル)でもミッドスパイア内部で立てこもるドミニオンとフェンリルが戦闘している。そちらに兵力を回すためにも、陸戦ができる教徒は離脱(ログアウト)しているのかもしれない。

 

「レイン、探知妨害(ジャマー)は不要だ。前方の索敵にのみ集中」

了解(ヤー)

 空の影狼(カゲロウ)の装備がどのようなものかは不明だが、サポート関連においてアイギスガードを上回ることはないはずだ。ここは素直にレインに索敵を一任する。

「そうね、トランキライザーが破壊できた今、焦ることはないわ。慎重に行きましょ」

「空、今お前に一番似つかわしくない言葉を聞いたぞ?」

「……甲?」

 和ませるつもりで言ったのだが、真剣に睨まれた。

 

「よ、よしっ。ここ制御中枢(セキュリティ・コア)の防衛は後続のフェンリルに任せて、真ちゃん救出に行くぞっ」

 

 

転送(ムーブ)

 

 焦る気持ちはあるが、相手は神父の能力を持ったジルベルトだ。どこにくだらないトラップを仕掛けているのか、予測もしたくない。警戒は怠らず、慎重に進んできた。

「次の隔壁の先がバルドルです」

 

 しかし一切の妨害も、地雷の一つもなく、俺達はそこに着いた。

「待ってください。ウィルスの反応多数」

「やはり罠か。いや、残りの防衛戦力をまとめただけか?」

 隔壁越しとあって敵の詳細な情報はないが、それでも罠というよりは、ありったけかき集めたという印象だ。

 

「俺が行く。レイン……と空は後方から支援」

了解(ヤー)

「ちょっと、甲っ、私も行くわよ」

 素直なレインの返答とは対称的に、空が反対する。

 

「中にはたぶん真ちゃんの電子体があるんだぞ? 複数で入りこんで暴れ回るのは危険だ」

「それは、そうだけど……私が前衛でもいいじゃない」

 俺は空の戦闘のテンポはわからないし、たぶんレインにしても副官だったという記憶がない今、俺と同じだろう。ただ、それをここで言うこともない。

 

「悪いな。第一、俺は手持ちの火器がこれしかない」

 わかりやすいように両手に実体化させたのは、サブマシンガンが二丁。熱を溜めやすく、ただ弾をばら撒くためだけに持ってきたものだ。命中精度が低いこの銃で、後ろから支援されたいやつはいないだろう。

「うわ……最低」

「褒め言葉として受け取っておくよ。行くぞ、二人とも」

了解(ヤー)

 今度は綺麗に声が揃った。

 

 

    〓

 

 

 地を鳴らすような轟音とともに、隔壁が開いていく。

 隔壁のその向こう、広大な空間の奥に、黒い長大なオベリスクか天を支える御柱のような構造物。仮想空間(ネット)においてもバルドルは現実(リアル)そのものの姿で、存在した。演算機能だけで言えば、有機AIを遥かに凌ぐ心持たぬ機械の神だ。

 シュミクラムからの視界でもってしても巨大なそれは、やはりどこか墓標に見える。

 形は違えども、トランキライザーに似た、どこか荘厳なまでの威圧感。

 

「確認しました。真さんです」

 周囲の雰囲気に圧倒されてしまったが、レインの報告で意識が戻った。

 その基部に、明らかに急造のポッドが設置されている。視覚をズームし、こちらでも確認する。間違いない、その中に真ちゃんが横たわっていた。

 ただそこに至るまでに、視界を埋め尽くすほどのウィルスの群れ。

 

「敵ウィルス、およそ一〇〇機。大半がアイランナーMとイールです。接近戦にはご注意ください」

 数は多いが、ほとんどが小型のウィルスだ。慢心ではなく冷静に判断しても、俺達三人の敵ではない。

 

 ただその大半が接近しての自爆か、張り付いての攻撃が主体なため、レインは接近するなと言いたげだ。しかし流れ弾を警戒して撃ち合うよりも、俺としては近接で排除していくほうがいい。

「予定通り俺が中に入る。二人は無理に動くな」

「……了解(ヤー)

 空はまだ不満そうだが、ここは飲んでもらうしかない。

 

 

    〓

 

 

 掃討はすぐに終わった。レインと空の的確な援護のおかげで、俺達に損傷はほとんどない。

「周辺に敵影ありません」

「なにか拍子抜けね。やっぱり主力はゲートのほうに向かっていたのかしら」

 警戒しつつも、空は真ちゃんの眠るポッドから目が離せないようだ。

 

「空さんっ!?」

 そんな空に向かって、一本のニードルが撃ち込まれた。

 視界の外、バルドルの影から撃たれたそれを、空は回避できない。

 

 時間が引き延ばされるような感覚。

 あの夢の中、溶け落ちていく空の様子が、脳裏に浮かび上がる。

 一瞬にも満たない、わずかな反応の遅れ。

 

 そんな俺よりも早く、レインは即座にイニシャライザを起動している。空を押し倒すように庇い、自らその攻撃を受けていた。

 が、胸部装甲で受け止めつつ、ライフルで反撃。同時に俺も両手にサブマシンガンを実体化し、熱量限界まで撃ち込み続けた。ここでまた中途半端に逃げられるのも、面倒だ。

 

「ぐああぁぁっ」

「まったく……懲りないヤツだな、お前も」

 撃たれた武器から予測していたが、やはりジルベルトだった。

「隠れてこっそり狙撃ってわりには、お粗末な結果だな。あんな程度で俺やレインが殺せるとでも思っているのか?」

 

「殺す? ふ、ふは、ふはははっ、門倉甲君っ、君はまったくクソムシな愚か者だな」

 なにかジルベルトの口調がおかしくなってきているが、やはり神父化が進んでいるのか。もう機体は動けないだろうが、警戒は解けない。

 

「レイン……レインっ、しっかりしてっ!」

「どうした、空?」

 空の口調になにか異変を感じ、視覚の隅にアイギスガードを映す。

 先ほどのように装甲の薄い背面からの攻撃ならともかく、ニードルガンの一撃などいくらアイギスガードがサポートに特化しているとはいえ、正面装甲を撃ち抜けるほどではない。実際、今も視界の端に映る機体ステータスには目立った被害警告はない。

 

 しかし、眼前ではありえないことが起こりつつあった。

「そら、さん……よかった、こん、どはちゃんと…私が、代わりになれて、ほんと、に…よかった……」

「……レ、イ…ン?」

 ニードルが命中した正面胸部装甲、貫通した様子もないのに、しかしそこから何か黒ずんだ液体が滴れ落ちる。まるでレイン自身が血を流しているかのように。

 流れ落ちた液体はアイギスガードを中心として広がり、沸き立つように黒い霧が立ち込める。

 

「レインっ、手を伸ばしてっ」

 もはやジルベルトに構っているときではない。俺も空も、必死で機体を進める。

 しかし仮想(ネット)論理(ロジック)自体が変質しているのか、機体は前に進んでいるのに、レインとの距離が縮まらない。

 空が撃たれたと気付いた先ほど以上に、俺はパニックを起こしていた。

 

「くそっ、レイン、離脱(ログアウト)しろっ」

 こんな状況で離脱(ログアウト)できるかどうかわからないが、試さないよりましだ。だがその声さえレインに届いているか定かではない。

 気持ちだけ焦るが何も手が出せないうちに、黒い霧は少しずつ濃度を増し触手のように形を整え、アイギスガードに絡み付いていく。

 

「ジルベルト、貴様ぁっ! レインまで神父にする積もりかっ!?」

「神父……? 何を言ってている? 残念だ……まだこの期に及んでそんなことを言っているとは、本当に残念だ。これは縁なのだよ、門倉甲君。桐島レイン君と我々との、深い深ぁい、縁なのだよっ」

 しゃべっているのがジルベルトなのかグレゴリー神父なのか、もはや判別が付かない。わかるのはこいつの言葉が無性におぞましいということだけだ。

 

「ふははははっ、そちらのソフィアの御使いを捧げて、顕現を画策したが……いやはや、都合よく御子候補が割り込んでくれるとは、ま・さ・に・僥・倖っ」

 崩れ落ちているノーブルヴァーチュ。今はその姿が、黒く歪みはじめているアイギスガードに対し、五体投地して祈りを捧げているかのように見えてくる。異形の者による機械の神への祈祷。

 

「御子候補? 何のことだジルベルトっ」

「おやおや門倉甲君、知らなかったのかなぁ、あの雌はもともと我がドミニオンにおいて御子として育てられていた一人なんだよ?」

 その言葉で、思い出さされた。

 エイダさんを失った直後のレインは、教団が作り出した母親を模したNPCに会うため、それがNPCだと本心ではわかりつつも何度も教団の構造体に足を運んでいた、と。

 

「さすが六条学生会長。我が教団内部でも失われた情報まで正確に調べ上げていたよ。何に使うつもりだったのかは知らんがねぇ」

 なにかジルベルトがさえずっているが、そんなことはどうでもいい。

「レインっ、大丈夫かっ?」

「甲…ん、ノイ……ェーン、実体化と…ともに、内部から……」

 こんな近くなのにレインの声がはっきりと聞こえない。

 

 しかしその声が告げる内容は、聞き取れずともわかってしまう。

「レイン……まさか、あなたっ」

 空もレインの意図に気付いたようだ。

 俺が贈ったあのペンダント。傭兵時代、レインはそこに自決用の電子体アイテムを封入していた。そしてこの作戦に従事するときにもまた……

 理解できないない状況に動転していたが、その瞬間、一気に目が醒めた。

 

「やめろレインッ!! 自決は許さんっ!

 これは上官からの命令だ!!」

 

「こ…う、さん?」

 すでにアイギスガードの下半身は、黒く染まっている。

 だが逆に、実体化しはじめたことからか、レインとの通話状態は良好になりつつあった。

 通話が繋がっているなら、助け出す方法は何かあるはずだ。

 

「レインっ、感知装置(センサー)を可能な限り遮断っ、浸入を防いでっ」

 空が防衛方法を叫ぶ。どこまで役立つかはわからないが、やれることがある限り、レインは死を選ばない。

 その間にも、周囲に散らばるウィルスの残骸が吸い寄せられるようにアイギスガードに向かって集まっていく。仮想(ネット)論理(ロジック)では再現できるはずのない、まさに異業だ。

 

「なんなんだよ、これは……?」

「……これが、ノインツェーン、よ」

 アイギスガードを包み込むように残骸は組み合わさり、溶け合いつつ、形を整えていく。

 細かなディティールは違うのだが、どこかそれは先ほど破壊したトランキライザーに似ている。ただ組み合わさっていく脚部は幾本も形成されており、巨大な白銀のサソリといった様相だ。

 

「甲、よく聞いて。レインはノインツェーンの再生の核にされてる。いまはまだ飲み込まれていないけど、それもたぶん時間の問題」

「逆に言えば、あの周りにこびりついたゴミを払いのければ、レインを助けられるってことだな」

 ならば、やることは簡単だ。

 機体サイズは大きいが、トランキライザーほどではない。

 

「空、お前は真ちゃんを頼む。巻き込まれないようにすぐにここから離れてくれ」

「甲っ!?」

「おいおい、なにも死にに行くって話じゃない。レインを引っ張り出してくるだけだ」

 返事を待たずに俺は空から遠ざかるように機体を動かし、威嚇を兼ねてサブマシンガンを撃つ。

 

「さっき言ったとおり、あいつの足元近くに真ちゃんが寝てると思うと、安心して切り崩せない」

 話しつつも、熱量の限界までサブマシンガンを撃ち続ける。

 回避されることもなく全弾命中。融解しきっていなかった装甲が、皮を剥くように剥がれ落ちていく。ウィルスの残骸から生み出された、仮想(ネット)論理(ロジック)を無視したような異形ではあるが、こちらからまったく手が出ないほど異質な存在というわけではなさそうだ。

 

 しかも俺を優先すべきと判断したのか、都合よく空から離れてこちらに機首を向けた。その巨体から想像するよりも急激な加速で、突き進んでくる。

「焦るなよ……」

 レインが完全に取り込まれるまで、それほど時間に余裕はないだろう。だが焦りは禁物だ。やり直しが効かないからこそ、状況を正確に把握して、一回で方を付ける。武装も装甲も挙動さえもまったくの未知の敵だ。時間がないからといって無策で突っ込むだけでは、レインを助け出せるとは思えない。

 

「まったく……敵戦力の分析はお前の仕事だろう」

 逸る気持ちを抑えるため、そしてレインになら俺の声は届くはずだと信じて、わざと普段どおりの愚痴をこぼす。

 残念ながら、返ってきたのはレインの言葉ではなく、機体表面から撃ち出された黒い球体だ。

 一見、影狼(カゲロウ)にも装備できるインボーバーのようにも見えたが、予断はできない。追尾姓は良さそうで、その代わりに弾速は遅い。実体化させたままのサブマシンガンを三点バーストに切り替え、できる限り最小限で迎撃していく。

 

「こんなところで時間を取られている場合じゃないだろ、レイン」

 言葉をつなぎながらも、細かくダッシュを挟みつつ回避機動を続ける。回避に集中すべきなのはわかってはいるのだが、いま話すのをやめるとレインとの繋がりが消えてしまいそうな、そんな予感がする。

 

「明日の朝食に遅れたら、手伝うといった菜ノ葉には泣かれるし、千夏には馬鹿にされるぞ?」

 空のほうはすでに除装して、電子体のまま真ちゃんの救出作業をしているようだ。詳しい状況を確認したいが、さすがにその余裕は無い。

 空との連携が初めてだからというのは言い訳にしかならないだろうが、あちらの詳細がわからないというのはかなり不安だ。

 これがレインなら、作業の進展状況を逐次転送してきているはずだと、どうしても比べてしまう。

 

「それにサウジのビーチに行くって話を忘れたわけじゃないだろうな? 賭け試合で稼いだ金で、豪遊するつもりなんだぞ」

 現在シュミクラムは俺だけのためか、こちらに向かってきてはいるが、いつ空と真ちゃんのほうに攻撃するか予測不能だった。レインのサポートがなければ、本当に俺は周辺状況の把握さえ満足にできそうにない。

 

「っ!」

 地面に黒い滲みができたかと思った瞬間、そこからまっすぐに触手が伸び、檻を形成する。

 発作的に後方へダッシュ。あの触手自体にダメージがあるのかどうかは不明だが、囲まれたら回避どころか身動きできない。

 

「だいたい泣くときは一緒に泣いてやると、約束したばかりだろ。これじゃあ泣くのは俺一人になっちまう」

 今回は避けられた。が、予備動作も何もかもが判りづらい相手に対して、これ以上防戦一方の戦いは不利だ。先ほどから僅かずつとはいえ影狼(カゲロウ)の装甲が削られている。

 

「甲、まこちゃんは救出、思いっきりやっちゃってっ!!」

「おうっ!」

 その報告とともに、空が再び移行(シフト)。そのまま隔壁のほうへダッシュ。その腕には真ちゃんの電子体が大切に抱かれている。

 巻き込むのが怖くて回避に専念していたが、ここからは存分に反撃させてもらう。

 

「レイン……お前は俺にとって、最高の相棒で、副官で……背中を預けられるのはお前だけなんだぜ」

 俺の意思を読み取ったかのように、ノインツェーンも近接攻撃に切り替えた。幾本もの触手がこちらの動きを捉えようと広げられる。

 

「見切ったっ!!」

 バックステップでその先端を回避し、その異質な装甲表面をナイフで貫く。ここからは幾千と繰り返した動作だ。残念ながら失敗したことも何度もあるし、これからまた何度も失敗するはずだ。

 

 だが、この瞬間だけは、何があっても間違えることは許されない。

 フィッシャーストライクでその背面を打ち抜き、さらに実体化したハンマーで地面に叩きつける。

 相手に動く余裕を与えず、ひたすらに精確に攻撃を積み重ねる。

 

 そしてイニシャライザ。

 先ほどと同じ動作を寸分の狂いもなく繰り返し、バルドルの黒い壁面に、その巨体を叩きつけ、慣性で押し上げていく。

 最後に、両手に二本の短剣を実体化。

 

「ぅぉぉおおおおっ!」

 溜まりに溜まった機体の熱を糧に金色に輝くその刀身をもって、ただひたすらに斬り刻む。

 数え切れぬほどの斬撃の末、醜くくすんだ廃材のようなノインツェーンの装甲の裏に、蒼い装甲が見えた。

 あと少し、あと少しですべて引き剥がせる。

 

 だがその時、イニシャライザが切れた。

 発熱した機体は、自分の身体とは思えぬほどに重く、満足に動くこともできない。

 わずかに、俺だけでは、足りない。

 

「……早く戻ってこいっ、レインっ!!」

 俺の呼びかけに応えるように、巨大なノインツェーンの幾重にもパイプが組み合わさったかのような背面から、蒼く輝くランスが突き出された。

「甲さんっ!!」

 

 絡み付いた「ノインツェーンだったもの」を振りほどきながら、アイギスガードが空に飛び出した。

 ランスが消え、アイギスガードの腕が伸ばされる。

 俺も熱限界に近い影狼(カゲロウ)の腕を、ただまっすぐに伸ばす。

 

 俺達は互いの手を掴んだ。

 

 

 

 

  連関 / Linkage

            終

 

 

 

 

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