とある新年を迎えた、どこかおめでたい空気の流れていたある日。
宇宙機構が一切観測できなかった隕石が、地球に激突した。
一瞬だけ捉えることのできた隕石は、余りの速さと
解明できたのは、超高速の隕石らしき何かが、音も衝撃もなく地球のどこかへ着弾したということだけであった。
あまりにオカルトめいた現象と、観測者の声明により、炎上したりしなかったりしつつ…………。
そんなこともあったね、なんてほどの時代が過ぎたとある日のこと。
世界各地で、大事件が起きていた。
人の形をした化け物が人を襲い、襲われた者はその化け物と同じになってしまう……。
つまり、映画のようなゾンビパニック・バイオハザード・細菌テロ的な何かが広まったのだ。
ほどなくして各国は機能不全に陥り、最終手段として核を検討している、というニュースを聞いたが最後、それ以降は音沙汰無く、世界は地獄のままであった。
だが! 人類は滅びていなかった!
なんやかんやメンタルの強い人がゾンビ相手に大立ち回りをし、なぜかその辺にたくさんいた各分野のエキスパートが各々集まりそれなりの生活を送っていた!!!
ここは日本、その日本の中でもいくつか存在する野良エキスパート集団が集まったとある区域。
の、遙か遠く。粗方の物資は回収か破棄され生きているものは逃げたか死に、あとは数多の残骸とゾンビしか残されていない地に、不思議なゾンビが居た。
そのゾンビはうーとかあーとか呻き声を上げながらその辺をのたのた歩いてるゾンビと違い、ベンチに腰掛け缶コーヒー(の中に貯めた雨水)を口に流し込み、(そのままダバダバと体中の隙間から溢しつつ)空を眺めていた。
「ひまだなあ」
と声に出せているつもりのこのゾンビ、実はなんということか、自分がゾンビに変異する以前の記憶を持ってたりはしないのだが、なぜか自我がはっきりとある、不思議なゾンビさんなのだ!
「せめてもう1人誰かいたらなあ」
と、話し相手に飢えている割に自分がうまく話せていないことに気付かないちょっと天然なゾンビさんは、また缶を傾けた。ベンチがビショビショである。
さて、何故このゾンビさんに自我があるのか。
そんなことはどうでもいいとして、何故ゾンビさんは人の集まる集落へ行こうとしないのだろうか。
ちゃんと知性のあるゾンビさんは、昔付近に物資回収班が来ていたこと、その来る方向と帰る方向が同じであること、たまに回収班にメンバーの変化があることなどを知っていて、まとめれば集落があるという結論には簡単に至った。
しかし、ゾンビさんは彼らに話しかけるどころか、近寄ることさえしなかった。それはなぜか。
ゾンビさんの知性は、しっかりと自分の容姿のことを把握していたからだ。近付いたら殺されてしまう危険性をしっかりと認識し、ストーカーよろしく物陰に隠れてじーっと観察するに留めていたのだった。
なので怖くてずっと人の来ないところにいるのである。誰でも命は無くしたくないものだ。既に無くしてるが、それはそれ。
ちなみに字を書いた画用紙なり看板なりを持ってアピールするという考えには思い至らなかったのがお茶目ポイントだ。