全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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先に言っておきます、宿儺のキャラが微妙に好き嫌い別れそうです。



第十三話 呪いの姫

 刹那は自身に対して走るのに不要なあらゆるものを無くし、人の目につかないように全速力で目的地へと向かう。瞬間的な移動もできるが呪力の消費も加味して任務に使う分は残していた。

 

 二十分もしない内に都内に入り目的地を探す。携帯に送られた地図を頭に叩き込み再び走り出す。

 

(無事だといいんですが…)

 

 心の焦りは隠せず、走り続け、少年院に到着するが呪霊の気配が一切しない。

 

(既に祓われた? いや、そんなはずはない)

 

 術式を一旦解除し、周りの気配に神経を尖らせると住宅街の方から一際大きな呪力を感じ、そこへ向かう。向かう途中、住民は避難していたのを確認したため、人目を気にせず屋根の上を伝って最短を行くと呪力で強化した五感に反応し、声が聞こえてくる。

 

「……良いぞ、命を燃やすのはこれからだったわけだ、魅せてみろ!! 伏黒恵!!」

 

「布瑠部由良由…」

 

 殺気と大きな呪力が渦巻く中に刹那は飛び込んだ。

 

 バゴォ! 

 

「「!!!」」

 

「ぎりぎりセーフ…ですかね?」

 

「刹那!?」

 

「…誰だ貴様は」

 

 宿儺と伏黒の間に入り、存在を知らせるためにあえてコンクリの床を砕き大きな音を出す。あからさまに不機嫌な顔をする宿儺と驚く伏黒。

 

「詳しいことは後で聞きます。取り敢えず悠仁君、聞こえてたらまだ戻ってこないで下さいね、死んじゃいますよ」

 

 ギインッ! 

 

「…邪魔をしたのは悪いと思ってますけど、急に攻撃しないでくださいよ」

 

 宿儺の術式を感知し、即座に刀を抜いて斬り弾く。

 

「!見えているのか」

 

「見ずとも分かりますよ、そんなドロドロした殺意を向けられていれば」

 

 刹那は劣悪とも呼べる環境で育ち、ある程度の経験から、本気になっていない指三本程度の宿儺の術式なら優に弾くことができる感性がある。

 

(とはいえ、五感を呪力で強化して反応できるレベル、今朝のやつより呪力の総量は低いものの、呪いの格が違う。やはり呪いの王ですね…)

 

「恵君、少し離れて待っててください。手は尽くします」

 

「…気をつけろ、今までとはワケが違うぞ」

 

「…でしょうね」

 

 冷や汗をかきながら宿儺をちらりと見る。そして伏黒を様子の見れる少し離れた場所にいるように指示し、宿儺と向かい合う。

 

「待っててくれるなんて、呪いの王の割には随分と優しいですね?」

 

「ケヒヒ、なに、貴様に興味が湧いた」

 

「へぇ、お茶でも飲んで話します?」

 

「俺は今日は良いものを二つも見れて機嫌が良い、それでも構わんぞ」

 

「ほんとは何が目的なんですか?」

 

「貴様、名はなんと言う?」

 

「…質問を質問で返さないでほしいですね。呪術高専一年、一級術師の阿頼耶識刹那です」

 

 質問に答えない宿儺に不満を抱きながら自己紹介を挟む。

 

「ふむ、阿頼耶識刹那か、覚えたぞ。俺のことは知っていよう?」

 

「千年前の呪いの王で、両面宿儺を冠する術師ってことくらいですかね」

 

「ケヒヒ、お前の目的はこいつ(心臓)だろう?」

 

 宿儺がぽっかりと物理的に空いてしまっている胸を指差して嗤う。

 

「だったら話は早いです、さて、やりましょうか」

 

 刹那は相手の攻撃に備え、構える。

 

「お手並み拝見だな」

 

 ポケットに突っ込んでいた手を引き抜き、直後に地面が割れる程の踏み込みとともに刹那に右の大ぶりの引っ掻きを繰り出す。

 

 ブオっ!! 

 

 しかしそれは、刹那がしゃがんだことにより躱され、刹那はその飛び込みの勢いを逆に利用し、右腕を掴み宿儺を地面へと回転させて叩きつける。

 

「隙だらけな攻撃するんですね」

 

 刹那は空を仰ぐ宿儺の顔を見ながら次の手を考える。

 

「ケヒッ」

 

 ヒュオッ! ドォッ

 

 倒れた宿儺は頭の両脇に手をつき、カポエラのようにその場で回転してハイキックを繰り出す。予想外な攻撃をされた刹那は左腕に攻撃を受けるが呪力をまとってガードしたため、大した損傷にはならずに少し後ずさる。

 

 宿儺は立ち上がり距離を詰めて、ジャブを繰り出す。

 

 ヒュッ、ヒュオ、ボッ

 

 ジャブの途中で、掌底に見せかけたフェイントで刹那の右腕を掴む。

 

「どうした阿頼耶識刹那! もっと呪いを込めてかかってこい!」

 

 宿儺は左手に呪力を込め、頭を狙って振り下ろすが、腕が上がった隙をつき、刹那はその場で飛び上がりドロップキックを繰り出す。宿儺は両手が意図せず空いてしまい顔面にもろに受ける。

 

 ベキィ! 

 

 顔を抑えてよろめく宿儺に足刈りを使って転ばせ、落下する力を加えて顔面を殴りあげる。

 

 グシャッ

 

 確実に芯を捉えたと思った拳は宿儺の左手によって威力を殺されたが、掌ごと振り抜いたためダメージはあるようで鼻血が垂れる。追撃に宿儺の脇にローキックを叩き込むが、姿勢を丸め腕で守られる。

 

 刹那はあまり強い打撃ができない分、相手の攻撃をカウンターしてからの連打という方法を好んで用いる。そのため、合気等の武術を合わせて使うオリジナルの戦闘スタイルを取っている。

 

 その戦いを離れて伺う伏黒は思う。

 

(これが…特級クラスの戦い…!)

 

「やるではないか」

 

「それはどーも、そろそろ治す気になりました? それ(心臓)

 

 指で自身の胸をトントン叩く。

 

「ハッキリ言おう、お前は今の俺より遥かに強い。得物を抜かないのも、術式を使わないのも、右眼の眼帯を外さないのも、全て余裕を演じて俺が勝てないと思わせるためだろう?」

 

「…お世辞をどーも、流石は呪いの王、といったところですか。全部お見通しなんですね」

 

「この俺が褒めているのだ、素直に受け取らんか」

 

 反転術式を使える刹那だが、心臓を再生出来る程のものは扱えないため、心臓を治させるという考えに至っていた。

 

(向こうからしたら、自分の身体そのものが人質…こっちの思惑に最初から気づかれてるから極端に動き辛い)

 

「良いぞ、実に興味をそそられる」

 

「人を実験動物みたいに言わないでほしいですね」

 

 顎に手をあてて、前屈みになりながら言い放つ宿儺に否定的な意見を言う刹那。

 

 再び構えるが、宿儺に戦意はもう無い様で、構えずに無造作に歩いて近寄り刹那の顔をじっと見つめ、言い放つ。

 

「伏黒恵、阿頼耶識刹那」

 

「?」

 

「ケヒッ! 俺の今の興味の対象だ、お前はまだ強くなれる。精々、この呪いの王を楽しませてみせろ、美しき呪いの姫よ」

 

「はぁ?」

 

 その様子を見ていた伏黒が駆け寄ってくる。直後に顔を這っていた文様と目の下の眼が消え、虎杖悠仁が帰ってくる。

 

「へへっごめんな、二人共…」

 

「悠仁君…」

 

「虎杖…俺はお前を助けたことに論理的な思考は持ち合わせてねぇ、ただお前みたいな善人が死ぬのを見てたくなかったんだ、結局は我儘な感情論、でも、それが…呪術師ってもんなんだ」

 

 伏黒は言葉を続ける。

 

「だから、お前を助けたことを一度だって後悔したことはない」

 

「…そっか、ゲホッ、あー悪い、そろそろだわ、伏黒も釘崎も刹那も、五条先生…は心配いらなねぇか、長生きしろよ」

 

 ドサッ

 

 遺言を残し、虎杖悠仁は──死んだ。

 

 任務が終わり、虎杖の遺体は高専の地下の解剖室へと運ばれていた。そこには、五条、伊地知、夏油、そして詳細を報告するため刹那がいた。

 

 台座に腰掛けた五条が口を開き、冷や汗をかいている伊地知に問いかける。

 

「わざとでしょ」

 

「と、仰いますと」

 

 怒気をまとった夏油が代わりに答えを述べる。

 

「特級相手、しかも生死不明の五人救助に一年派遣はありえない、悟が無理を通して虎杖君の死刑に実質無期限の猶予を与えた。それを面白く思わない上の連中が私達がいない間に特級を利用して体よく彼を始末したってとこだろう」

 

 五条がさらに付け足す。

 

「他の二人が死んでも僕に嫌がらせができて一石二鳥とか思ってんじゃない?」

 

 ガタガタと震える伊地知が言い訳をする。

 

「い、いやしかし、派遣が決まった時点では本当に特級になるとは──」

 

 二人の最強がさらに殺気をこめて言葉を紡ぐ。

 

「犯人探しも面倒だ」

 

「副担任とはいえ、大事な生徒を傷つけられたんだ、怒りも湧くというもの」

 

「「上の連中、全員殺してしまおうか?」」

 

 二人の最強による殺気、伊地知は萎縮しさらにガタガタと震える。

 

 刹那は静観しているが、宿儺が最後に言った言葉が頭に残っている。

 

(恐らくは、多分…いや、絶対的な確信が持てる)

 

「珍しく感情的だな」

 

 部屋のドアが開き家入が入ってくる。

 

「随分とお気に入りだったんだな、彼。夏油、五条の暴走を止められるのはお前だけなんだ、お前までそっちに行ったら困る」

 

「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」

 

「あぁすまない、流石に今回ばかりは私も頭にきてね」

 

「五条、あまり伊地知をイジメるな、私達と上の間で苦労してるんだ」

 

「男の苦労なんて興味ねーっつーの」

 

 伊地知は家入の言葉に尊敬の眼差しを向けるが直後の五条の言葉で悲しさが増す。

 

 バサリと虎杖の遺体に被せてあった布を取り、家入は言う。

 

「で、これが宿儺の器か、好きに解剖(バラ)していいよね」

 

「役立てろよ」

 

「役立てるよ、誰に言ってんの」

 

 家入と五条が短く会話し、話は進む

 

「僕はさ、性格悪いんだよね」

 

「「知って(ます)(るよ)」」

 

 夏油と伊地知がハモって答える。

 

「伊地知、後でマジビンタ」

 

「教師なんて柄じゃない、そんな僕がなんで高専で教鞭をとってるか、聞いて」

 

 最強にマジビンタ宣言をされ、萎縮する伊地知が質問させられる。

 

「なんでですか…?」

 

「夢があるんだ」

 

「夢…ですか? 先生に?」

 

 刹那が思わず疑問を口に出す。

 

「そっ、悠仁の一件でも分かる通り上層部は呪術界の魔窟」

 

 夏油が続けて一息に話す。

 

「具体的には、保身馬鹿世襲馬鹿高慢馬鹿ただの馬鹿、まるで腐ったミカンのバーゲンセールだね」

 

「そんなクソ呪術界をリセットする。上の連中を皆殺しにするのは簡単だけど、それじゃ首がすげ替わるだけで変革は起きない、そんなやり方じゃ誰もついてこないしね。だから僕は強く聡い仲間を育てることを選んだんだ」

 

「任務を丸投げすることもあるよ、愛のムチ♡」

 

「それは悟がサボりたいだけだろ」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

「皆優秀さ、特に三年秤、二年乙骨、彼らは僕に並ぶ術師になる。もちろん刹那、君も僕に並べるポテンシャルを秘めている」

 

「……」

 

 五条の拳を握る力が強くなる。

 

「虎杖君も、その一人だったってことだね」

 

 夏油が言葉を加える

 

「…傑はなんでも僕の考えてることが分かるね」 

 

「まぁね」 

 

「ちょっと君達、もう始めるけどそこで見ているつもりかい?」

 

 家入が五条達に振り向いて問いかけると同時に家入の背後の虎杖が起き上がる。

 

「ごごごご、五条さんっいいい生きっ」

 

「ククッ、伊地知うるさい」

 

「まさか、そんなことが? 呪霊じゃないだろうね」

 

「悠仁君っ!」

 

「おわっ! フルチンじゃん」

 

「何はともあれ、お帰り! 悠仁!」

 

「おう!」

 

 二人はハイタッチをするが、刹那が思いがけない人物の名を呼ぶ。

 

「両面宿儺、あなたこうなることをわかっていましたね?」

 

 その場の全員が固まり、虎杖の頬から宿儺の口と眼が浮き出る

 

「ケヒヒ、先刻ぶりだな阿頼耶識刹那よ、この寛大な呪いの王に感謝することだな」

 

「はいはい、どーもありがとうございます」

 

「え"、宿儺といつの間にそんなに親しくなったんだい?」

 

 夏油が当然の質問を投げかけるが、刹那は否定する。

 

「別に仲がいいわけじゃないです」

 

「そういうな、俺はお前と──」

 

 ベチン! 

 

「おいてめぇ、これ以上ダチに迷惑かけんな」

 

「ふんっ、小僧が」

 

「こんなところで呪い合うのはやめてくれよ、虎杖君、取り敢えずこれ着なさい」

 

「うっす」

 

「じゃ、伊地知、取り敢えずこの場は頼んだよ」

 

「はい」

 

 普段着のようなラフな服を虎杖に着せて伊地知以外の全員が退室していった。




呪術廻戦で一番好きなキャラはダントツで宿儺なんすよ、、、
いやでもまじで私情無しに頭ん中で勝手に続くストーリーを書き起こしてるだけなんすよ。
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