第十六話 不穏な足音
五条によって圧倒された富士山呪霊の頭が転がる。
「さて、お前って仲間とかいんの?」
アイマスクをつけ直し、頭を踏みつけながら五条は尋問する。
「なぁ刹那、さっきの五条先生の技? ってどゆこと?」
「簡単に言うと、脳内に膨大な量の情報を直接一瞬にして送り込むんです。領域内では動けないですし、領域を解除しても三秒も領域にいれば常人なら完全に廃人になります」
二人が雑談をしている間に五条が頭を踏みつけて尋問する。
「ほらほらー早く吐けよー、言わないと祓っちゃうぞー。言っても祓うけどー」
五条がヘラヘラしながら頭を足先でゴロゴロ転がしていると空から一輪の花のようなものが地面に突き刺さり、一瞬で辺り一帯が花畑になる。そして特級クラスの呪霊が頭を持ち去り、低級呪霊が虎杖を捕まえ、宙ぶらりんにする。
「先生!こっちは大丈夫!」
グパアという粘着質な音を立てて呪霊の口が開く。
「ごめんやっぱ助けて!」
ドゴォ!
五条が振り向くと、それより先に刹那が呪霊を蹴り飛ばして祓う。
「あらら、刹那、暴れたかったの?」
「別にそういうわけじゃないですから。それよりさっきの呪霊は?」
「んー、気配を消すのが上手い他の呪霊が助けに来た感じかな。それにしても、あのレベルの呪霊が徒党を組んでるのか、面白くなってきたねぇ」
二人が話しているのを聞きながら虎杖は土下座をして謝罪している。
「いやー、やっぱ連れてきて良かったよ、将来的には悠仁達にはあのくらい強くなってもらいたいんだよね」
「えぇ…? あれくらい?」
「目標は具体的な方がいいでしょ、目標を決めたらあとは駆け上がるだけ」
「悠仁には予定を早めてこれから一ヶ月間、映画見て僕と刹那と組手してもらうよ。基礎と応用、しっかり身につけて交流会でお披露目といこう」
「え? 刹那と?」
「不満かい?」
「いや、ほら女子に全力とか出せないし、力とか…」
「ふーん、ねえ刹那」
「なんですか?」
「参考程度に聞くけどあれと戦って勝てる?嘘無しで答えてね」
「……一対一なら」
「クックッ、謙虚だねぇ」
「…マジで?」
笑って言う五条と、口を開けて唖然とする虎杖。五条に刹那が問いかける。
「それよりいいんですか、この場所にいるってことは多分どこかに行く途中で襲われたのでしょう?」
「……あっ、学長に呼ばれてるんだったー」
「え、先生やべーじゃん、どんくらい遅刻してんの?」
「あははー、三十分くらい?」
「「早く行って(ください)」」
「はいはい、二人を送ったら、ね!」
バヒュン
肩を掴み二人を元の場所へと送り届けて五条は小言を言われる前にさっさと行ってしまう。
「…今度殴る」
ボソッと呟く刹那に対して虎杖は驚くがそれより聞きたいことがあり、刹那に話しかける。
「なぁ、刹那は組手大丈夫なの? 俺、呪力とか術式とかはからっきしだけど、ケンカは結構強いよ?」
「…じゃあ、試してみます?」
「え?」
刹那は少しスペースがある場所へと歩き、そこに立ち手首を内側にクイクイと動かす。
「十秒、その間僕は防御以外しないのでパンチでもキックでも当ててみてください、寸止めでも構いませんよ」
「え、いやでも…うーん、分かったよ」
虎杖は軽く拳を握って構え、刹那の前に立つ。
刹那が手を叩き合図を出す。
「よーい、どん」
(軽く、軽く、怪我させないように)
ビュッ!
「アレ?」
確かに顔の前で寸止めしようと放ったパンチは刹那が一瞬で目の前から消えたことによって行き場を彷徨う。伸び切った腕をポンポン叩かれる
「僕はここですよ」
シュッ! クイッ
手加減して当たる相手ではないと分かった虎杖が、今度は当てるつもりで放ったローキック。しかし、下から加えられた力によって更に上に持ち上げられ体勢を崩してその場で転倒する。
ドタァ!
「痛ってぇー」
「はい、十秒。悠仁君には説明してませんでしたけど、今度京都校との交流会っていう練習試合みたいなものがあるんですよ。そこでその実力ならあっと言う間に負けちゃいますよ?」
刹那は膝に手をつきながら、虎杖を見下ろす。
手加減していたとはいえ、当てるつもりの攻撃を完全にいなされ、あまつさえそれを利用した反撃までされた虎杖は実力の差を理解した。
「参りました、降参っす」
「よろしい、これからは師匠と呼びなさい」
得意げな顔で腕を組む刹那
「はい! 師匠!」
「…冗談のつもりだったんですけど…」
「いや、マジで体術に関しては弟子入りしてぇ」
刹那は少し照れくさそうに笑う。
それじゃあ僕はもう寮に戻りますね、おやすみなさい」
そういって刹那は女子寮へと戻る。
「はぁ、疲れたシャワー浴びて寝よう」
そうして、非常に忙しい一日が幕を閉じた。しかし、裏では刹那にとって非常に困る事態が引き起こされようとしていた。
────
「一級術師、阿頼耶識刹那の正体がSと判明」
「五条家の当主、あの問題児め、わざと黙っていたな」
「今朝方の報告を合わせると阿頼耶識刹那の実績は一級以下超多数、特級多数、いずれも戦闘による被害報告なし、さらには未知の強力な術式持ちで冷静な判断もでき、先日の東京校の両面宿儺の暴走を単独で収めるに至った…と」
「決定だな、一級術師阿頼耶識刹那を、一級を遥かに超える実力を持っていると判断し、今回の会議をもって五人目の特級術師に任命することとする」
「「「異議なし」」」
なんか、ここ最近の三和は時系列分かりづらいですね。大人しく時系列にしたがって書くことにします。