全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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例のごとくサブタイトル、全然いいの浮かばんくて草。


第十七話 京都校とぷち交流

 ────

 

 疲れていたためか若干寝坊し、慌てながら刹那は教室へと入る。

 

「お、おはようございます」

 

「おう」

 

「おはよう刹那ー」

 

「すみません、寝坊してしまって」

 

「気にしなくていいのよ、あのバカはいつも遅刻するんだから」

 

 スマホを見て時間を潰している二人が刹那に挨拶し、遅刻を謝罪して窓際の席に座ると五条が教室へ入ってくる。

 

「いやー手痛いね、野薔薇」

 

「やっときたわね」

 

「遅いですよ」

 

「僕だって色々忙しいんだよ? だって最強だから、さて授業を始めようか」

 

 いつもどおりの軽口を叩き、授業を始めようとすると教室に夏油と夜蛾が入ってくる。

 

「悟、ちょっと来て」

 

「え、僕何も悪いことしてないよ?」

 

「いいから来い」

 

 教室の外へと五条が連れて行かれる。

 

「またなんかやらかしたのかしらあのバカ」

 

「どうせ任務先で土産買いすぎて経費が高すぎとかだろ」

 

「あはは、五条先生ならありえますね」

 

 ガラッ

 

 再びドアが開き、五条が入室する。

 

「教室授業日程変更ね、午前中に座学して午後からは二年生の皆と通しで体術ね」

 

「急ですね」

 

「別に構わないわよ」

 

「ただ、刹那は先生と出掛けてもらいまーす」

 

「またですか?」

 

「刹那を最近連れ回し過ぎじゃない?」

 

「そうですよ、刹那も訓練しないと」

 

「いやーん、恵嫉妬してるのー? かーわいい」

 

「ぶん殴りますよ」

 

「できないくせにー」

 

 ピキッ ガンッ

 

「落ち着きなさい」

 

 煽る五条に怒り呪力を練りだす伏黒に釘崎の鉄拳が落ちて落ち着きを取り戻す。

 

「今回ばかりは僕悪くないよ、というのもね…刹那の昇級が決定しちゃったんだよね」

 

「「「…は?」」」

 

「ちょっと待ってください、刹那の階級って」

 

「一級だね」

 

「それが昇級ってことは」

 

「全く、上の連中も目ざといもんだよね、特級なんて肩書で若人の青春を奪うなんて」

 

「それでなんで午後から先生と出掛けるんですか」

 

 明らかな疑問符を浮かべる刹那に五条らしかぬちゃんとした説明をされる。

 

「特級術師になったら御三家に挨拶回りする必要があるんだってさ、昔は無かったのにねー。五条家は僕に会ってるから必要ないんだけど、禪院家と加茂家の当主に会うために京都に行くんだよね」

 

「…分かりました」

 

「まぁ、ここまで言っといてなんだけど任務があるとかでバックレてもいいんだよ? そのくらい僕がなんとかしたげる」

 

「いやそれはだめでしょ、常識的に」

 

「勝手に刹那をあんた側に持っていこうとするな」

 

 それを聞いた五条は神妙な顔つきに変わり話しを続ける。

 

「いや、冗談抜きでバックレても構わないよ、というかしてほしいくらいだ。加茂家はともかくとして、禪院家はマジで腐ってるしね」

 

「どういうことですか?」

 

「禪院家は呪術師じゃなきゃ人間ですらないと思ってるような封建的な家でね、女性の術師は真希を見れば分かるけど基本的に酷い扱いを受ける。逆に言えば女性の特級術師、それも高校生なんて超レア、あわよくば家に引き込もうとして、男でもけしかけてくるんじゃない?」

 

 さらりと恐怖めいたことを五条が言い放つと、刹那の脳裏には二年前の出来事がフラッシュバックする。五条に伏黒が近づき、低いトーンで話す。

 

「…五条先生、刹那を行かせないでください。刹那も行く必要はねぇよ」

 

「私も伏黒と概ね同意見、やめさせてちょうだい」

 

(…潮時ですね)

 

「大丈夫ですよ、恵君、野薔薇ちゃん…帰ったら色々と全部話しますね」

 

「…無理しなくてもいいのよ?」

 

「行くってことでいいんだね?」

 

「行きます、まぁなんとかなりますよ」

 

 決意した刹那に伏黒と釘崎が心配の目線を向けるが、手をパンパンと叩いて授業を始めるよう促す。

 

「いざとなったら僕がなんとかするよ、さ、三人共席についてー、授業を始めるよ」

 

 そうして約二十分遅れの授業が始まる。

 

 三人、あるいは五条も集中できない状況下で授業が

 

 進み、あっと言う間に午後になる。

 

「僕が伝えたことだけどほんとにいいの?」

 

「そこの馬鹿の言う通りよ刹那、無理しなくていいのよ?」

 

「皆さん心配性過ぎますよ、取って食われるわけでもないんですから」

 

 刹那に抱きついて離れない釘崎と心配そうにする五条に苦笑する刹那。

 

「……」

 

「ほら、伏黒! なんか言いたいことないの?」

 

「そうだよ恵、愛しの刹那になにか言うことがあるでショ?」

 

 五条が弄ってくるのを伏黒はいつものように反論することはなく刹那に近づく。

 

「恵君も心配し過ぎですよ、二年も経ってるんですか「俺はそういうことが言いたいんじゃねぇ」」

 

 言葉を切られて口を閉じる。

 

「ただ…上手く言葉にできねぇけどその、なんだ、なんか言われたりされたら…」

 

「言われたりされたらなによ?」

 

「なんなんだい恵ー?」

 

 伏黒が顔をそらしながら言葉を探す様子を見て釘崎と五条はニヤニヤして二人を見る。

 

「言われたら?」

 

「……ぶっ飛ばしてこい」

 

 全員が予想していなかった言葉を伏黒が言い放ち、

 

 釘崎と五条が溜め息をつき、刹那は微笑する。

 

「"おーい恵ぃ」

 

「元ヤンかてめーは」

 

「…本当に嫌なこと言われたらそうしますよ、それじゃ、行ってきます」 

 

 そういって刹那はすたすたと高専の車へ歩いていく、今の会話を見ていた五条と釘崎は深く溜息をつく。

 

「「はぁ~~」」

 

「恵も思春期だねぇ」

 

「伏黒あんたねぇ一生そんな距離感でいるつもり?」

 

「…釘崎も五条先生も勘違いしてるかもしれないから言っておくけどな、俺は別に刹那のことが好きなわけじゃねぇ」

 

「「はっ?」」

 

「は? 嘘でしょ? あんた本気で言ってんの?」

 

「恵…僕、君達のために結婚式とかドレスとか既に予約する気満々だったんだけど!?」

 

 二人が鬼のような剣幕で伏黒に迫る。

 

「余計なお世話です! てかそういうのは当人で決めるもんでしょう!」

 

「あーもー! あんたいるとしんどいから早く車いけ!」

 

「そんなぁ、僕も青春の話ししたーい♡」

 

 ビッ! 

 

 釘崎が苛立った顔をしながらトンカチを五条に向ける。

 

「はよいけ」

 

「はい…」

 

「それと伏黒、あんた今日放課後付き合いなさい」

 

「は? なんで」

 

「付き合え」

 

「…ちっ、分かったよ」

 

 釘崎は短期間で二人の男を脅すとジャージに着替えるために更衣室へと駆けて行った。伏黒も納得行かない表情のまま同様に更衣室へと向かった。

 

 ──

 

 車で高専を発ってから一時間が経過し、刹那は眠りに入っていた。

 

「刹那さんって、移動中とかよく寝ますよね」

 

「そうだね、彼女の右眼も僕の六眼ほどじゃないにしろかなり疲労するはずなのに、普通の眼帯してるから制御しきれてないんでしょ」

 

 珍しく五条がまともな受け答えをしたかと思うと突拍子もないことを五条が言い出す。

 

「さて、伊地知、僕用事あるからさ、刹那が起きたらテキトーに誤魔化しといて」

 

「よろしいんですか?」

 

「大丈夫大丈夫、元々僕行く必要ないし伊地知が案内しちゃってよ」

 

「え、私が御三家の方々への挨拶の付き添いするということですか」

 

「うん、そゆことー」

 

「それじゃ、僕はタクシー捕まえるから気にしないで、じゃねー」

 

 適当な場所に車を停めて五条を下ろし、再び出発する。

 

「はぁ~、あの人はほんとにっ!」

 

「……伊地知さんも大変ですね」

 

「ひぅっ! おおお、起きてたんですか!?」

 

「前見ないと事故りますよ」

 

「は、はいっ! …あのー、先程のことは五条さんには何卒ご内密に」

 

「別に何もしませんよ、先生に苦労しているのはお互い様ですし」

 

「ありがとうございます…!!」

 

 青ざめながら伊地知は感謝する。

 

「それじゃあ僕は寝るので、着くちょっと前くらいに起こしてください」

 

「はい、ゆっくり休んでください」

 

(…五条先生はなにしに行ったんだろうか…)

 

 暫く車で進み、午後の五時頃になると京都校に着き、車から降りる。

 

「刹那さん、着きましたよ、刹那さん」

 

「ぅん、起きてますよぉ…」

 

 熟睡してしまい、フラフラと車から降りる。

 

 考えてみれば刹那は昨日一日の内に一級一対と特級二体と対峙し、組手を何十回と行っている。さらにはここニ週間は働き詰めだったため、疲労困憊だった。

 

「大分疲れてるわね、その子」

 

 眠そうにして肩を貸している伊地知の前に京都校の教員、庵歌姫が現れる。

 

「背丈も私のほうが近いし、ちゃんと目が覚めるまで応接室にでも運んでおくわ」

 

「ありがとうございます、あの、当主様達への挨拶は…」

 

「あぁ、こっちの手違いみたいでね、加茂家の当主代理の子は今日でもいいみたいなんだけど、禪院家は明後日なのよ、まぁ、刹那がこの調子じゃ加茂家の子も無理だと思うけど」

 

「では、近くのホテルを取りましょうか」

 

「いえ、女子寮の部屋は余っているし、そっちへ運ぶから気にしないでいいわ。…この子軽すぎない? ちゃんと食べてるの?」

 

「…い、いえ、私はなんとも…」

 

 目を泳がせる伊地知を歌姫は見逃さず、問い詰める。

 

「最近のこの子の任務詳細と生活を知ってる限り教えなさい」

 

「…はい」

 

 詳しくは知らない伊地知だが、食事はまともに取っているところを見たことがなく、いつも甘味などで済ませているということと、準一級以上の任務を二週間だけで二十件以上担当していることを伝えた。

 

「…馬鹿じゃないの?」

 

「私に言われましても…」

 

「はぁ、全く、今日くらい休ませてあげましょうか。刹那、歩ける?」

 

 スウスウと寝息を立てて完全に寝入ってしまう刹那

 

 に少し困る歌姫。

 

「あの、やっぱり私がお運びしますよ?」

 

「いえ、このくらいは」

 

「オレが運ボウか?」

 

 校舎の中から、メカ丸と三輪、それと真希の妹である真衣が現れる。

 

「こんにちは、東京校の補助監督さん」

 

「どうも」

 

「皆さん、こんにちは」

 

「三輪と真依にメカ丸じゃない、どうしたの?」

 

「偶然そこで刹那ちゃんを見かけたんですよ」

 

「刹那ってそのぐったりしてる子?」

 

 歌姫の問に三輪が答え、二人についてきた真依は疑問的に刹那を指差す。

 

「えぇ、そうよこっちに用事があってきたの、三輪とメカ丸は顔見知りよね、だったらお願いしようかしら」

 

 メカ丸が横抱きで刹那を抱える。

 

「…全く起きないわね、寝づらくないのかしら」

 

「ぐっすりで可愛いですねー」

 

「あ、でしたら彼女の刀もお願いします」

 

 伊地知が二本の刀を三輪に手渡す。

 

「分かりました! 責任を持って届けます!」

 

 三人は校舎の中へと歩いていく。

 

「それじゃ、運転ご苦労さま」

 

「はい、では明後日もう一度来ますので」

 

 二人の大人も解散し、各々の仕事に向かう。

 

「今更ダガ、俺が運ンデイイのカ?」

 

「構いませんよ、下心なんてないでしょうし」

 

「当たり前ダ」

 

 共同スペースを通ると、三年生の金髪で小柄の西宮桃に呼び止められる。

 

「えっ、誰? その子?」

 

「えっと、東京校の生徒さんです。こっちのミスで予定が違ってたそうで、女子寮に運ぼうとしてます」

 

「えっ? うん?」

 

 説明されたが、西宮は状況があまり飲み込めていない。

 

「まぁなんでもいいけどさ、いきなり知らない部屋に置かれても混乱するし、取り敢えずソファに寝せれば?」

 

「確かに、それもそうね」

 

 ソファに刹那を寝せる。身長がそこまで高いわけじゃない刹那はソファにすっぽりと入り、さらに猫のように丸まって寝るため、かなり小さくなる。

 

「よく見たらこの子めっちゃ可愛いじゃん」

 

「確かに、整った顔してるわー」

 

「そんなにジロジロ見たら失礼ですよー」

 

「俺ハ先にモドルゾ」

 

 メカ丸は先にスリープモードに入るため男子寮へと戻っていく。

 

 ぷにぷにぷに

 

「ほっぺめっちゃもちもち!」

 

「三輪と良い勝負じゃない?」

 

「わぁ、ほんとにもちもちだぁ」

 

「てかマジで起きないね、起きたら髪イジらせてもらえるよう頼みたいんだけど」

 

 ガチャッ

 

 共有スペースの扉が開き、細目で袴のような制服を来た男、加茂憲紀が入ってくる。

 

「む、丁度いい西宮、阿頼耶識という女性を知らないか?」

 

「なんで?」

 

「御三家に挨拶するために今日来てるはずなんだが、こちらの手違いで予定がズレてしまっていてな、それを伝えようと」

 

「知らなーい」

 

「私も知らないわ」

 

「あ、加茂先輩、阿頼耶識ってこの子ですよ」

 

 寝ている刹那の頬をぷにぷに触りながら三輪が答える。

 

「あら、そうだったの」

 

「名前しか言わないから分かんなかった」

 

「…寝ているのか?」

 

「どう見てもそうでしょ、やっぱり目開いてないんじゃないの?」

 

「細いだけだ、しかし、起きないのか?」

 

「結構寝てるみたいですし、少ししたら起きるんじゃないですか?」

 

 三輪が言っているそばから刹那が目をシパシパと瞬かせ、むくりと起き上がる。

 

「ぅん?」

 

 周りを少し見渡すと刹那の顔の血の気が引いていきみるみる青ざめていく。

 

「か、霞先輩…?」

 

「あ、おはようございます、ぐっすりでしたね」

 

 三輪が答えると刹那は泣きそうな顔をして謝罪を始める。

 

「す、すいません…ご迷惑をおかけしてしまって」

 

「えっ!? そ、そんなに謝ることないですよ!」

 

「まぁ寧ろ約得ー「あーあー、確かにちょーっと困っちゃったなー」」

 

 真依が言いかけた言葉を西宮が塞ぎ、あえてオーバーにアクションする。

 

「す、すいません…僕はど、どうすれば…」

 

 頭を抱えて震える刹那に対して西宮が放った一言は意外なものだった。

 

「じゃあねー、すこーし話そ♡」

 

「……ぇ?」

 

「あら、私も少し興味あるわ」

 

「あ、私も女子会したいです!」

 

 三人が半ば強引な約束を取り付け刹那を共有スペースから連れ出そうとする。

 

「待て西宮、まずは例の件をー」

 

「はいはい、伝えとくから大丈夫ー!」

 

 刹那の手をグイグイと引っ張り三人は自室へと連れて行く。

 

 バタン! 

 

「…伝えておくなら大丈夫か」

 

 諦めた加茂は自室に戻っていく。




次の話も一応完成してるんで近日投稿ですかね。
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