全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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東堂の喋り方分かんなーい!
他校の子ってやたら可愛く見えるよねって話


第十八話 お試し組手

 西宮の自室では、刹那は髪の毛や化粧を弄られ玩具にされていた。

 

「あ、あの先輩方…」

 

「んー? あ、動かないでねー」

 

「桃、どんな髪型にする?」

 

「こんなに長いんだからフィッシュボーンとかしたら面白そうだけど、夜だしほどくのもめんどいしなー、ハーフアップとか?」

 

「二人共凄いですね、そんなにテキパキと」

 

「これは一体…?」

 

「こんなに素材良いのにもったいないよ、もっと化粧しないと」 

 

「すいません、お化粧はそんなに興味なくて」

 

「もったいないわね、東京校辞めてこっちに来なさいな、先生も女性だし」

 

「はいかんせーい」

 

 西宮が鏡を刹那に手渡し、刹那は自身の姿を見つめる。

 

「元が良いんだもん、化粧は薄くても良かったわ」

 

「髪型も一つ結びもいいけど、折角ならアレンジして上げてハイポニーテールにしてみたわ」

 

「あぁそれめっちゃいい!」

 

「刹那ちゃん凄く可愛いです、二人凄いですね!」

 

「ねね、どうどう? 感想は?」

 

 三人がテンションを上げ、西宮が刹那に近寄り問いかけると、刹那は化粧で少し白くなった頬を桃色に染め、どこともない方向をみて呟く。

 

「なんていうか…その、凄く…照れますね」

 

 どこともない方向をみて髪を紅く染めた耳にかける。その仕草を見た三人は刹那に抱きつく。

 

「うわわっ」

 

「"あーもー可愛い」

 

「あんた本気で京都校に来ない?」

 

「んー、妹みたい!」

 

 元々刹那はかなり美人だが、化粧を初めてしたため少し恥じらいの気持ちがあり、落ちつかずにソワソワしている。

 

 そこに突然ノックがなりドアが開き歌姫が入ってくる。

 

「西宮ー、刹那がここにいるって聞いたんだけどー?」

 

「あ、ここにいますよー」

 

 三輪が答え、刹那が振り向く。

 

「あら、化粧したの? 良いじゃない」

 

「先生ー、なんとかして刹那を京都校に入れられません?」

 

「真依がそういうこと言うとは思わなかったわ」

 

「刹那ちゃん性格も顔も可愛いんだもん」

 

「確かに刹那は初めてあった時から可愛かったわね」

 

「あの…皆さん、そんなにその、言われたら恥ずかしいです…」

 

 全員が刹那を可愛いと言い、真っ赤な顔を手で覆いながらボソボソと喋る。

 

「消灯時間もまだだし、少し刹那と出会った頃の話でもしましょうか」

 

「あ、それ聞きたいです!」

 

 歌姫は予定が違ったことなどの事務連絡を済ませ、ついでに刹那との出会いを二十分ほどに掻い摘んで話した。もちろんその都度刹那に話していい範囲を聞きながら。

 

「刹那ちゃん、苦労してたんだね」

 

 三輪な刹那の頭を撫でながら言い、刹那もそれに反応する。

 

「でも、昔の辛い経験があるから僕は呪術師として今ここにいるんですよ」

 

「そういえば刹那はなんでここに来たの? 任務?」

 

 真依が刹那に問いかける。

 

「えっと、加茂家の当主さんと禪院家の当主さんに挨拶するためですね」

 

「挨拶?なんで?」

 

「それは、その〜」

 

 明らかに目を泳がせる刹那だが、あっさりと歌姫が答えを出す。

 

「なんでって、刹那が特級に昇格するからよ」

 

「「「えっ?」」」

 

「歌姫さんっ、それ言っていいんですか!?」

 

「言うも何も、五人目の特級なんていやでもすぐに知れ渡るわよ」

 

「えっ!?刹那ちゃんいつの間に昇格決定したんですか!?」

 

「貴方特級なの!?」

 

「えっえっえっ?」

 

 三人の生徒は困惑を隠せずに疑問符を浮かべる。

 

「…はい、今日の朝知らされました」

 

 刹那は観念して手を上げて伝える。

 

「恥じることじゃないわ、寧ろ誇っていいことじゃないの」

 

「凄いですね生特級…握手してもいいですか?」

 

「そんなっ先輩なんですからっ」

 

 そういう風に扱われるのになれていない刹那はオロオロする。

 

 パンパンッ! 

 

「はいはい、あなた達、後輩をいじめるのはそのくらいにしなさいな」

 

「はーい」 

 

「刹那も、今日はもう休みなさい」

 

「はい。あの、シャワー借りてもいいですか?」

 

「えぇ、部屋を出て左に真っ直ぐ行ったあと右よ

 

 着替えは一応置いておくわ。それとこれ、部屋の鍵だからなくさないようにね」

 

 刹那に部屋の鍵を手渡し、職員室へと戻っていく。

 

「明日は化粧の仕方教えてあげるね」

 

「じゃあ私は射撃を見せてあげるわ」

 

「えっえっ、じゃあ私は組手してください!」

 

「フフ、僕からもぜひお願いします」

 

 刹那は部屋を出る。かなり寝たはずだが、疲労が余程溜まっているのか閉じかけの瞼を指で擦りながら廊下を歩き、シャワールームへと向かった。

 

 寝支度を整えて部屋のベッドへとだらしなく身を預ける。

 

「…おやすみー」

 

 ──ー

 

 小鳥のさえずりと共に起床する。朝の支度を整えていると刹那はふと思う。

 

「あれ、今日僕どうすればいいんだろう?」

 

 今日の予定を聞くため、時計を確認し歌姫のいるところへと向かう。

 

「朝六時半…いるのかな?」

 

 刹那の心配とは裏腹に、歌姫は既に職員室で補助監督と話していたため、話し終わるタイミングでノックし職員室へと入る。 

 

 コンコン

 

「失礼します、歌姫先生に用事があってきました」

 

「おはよう、どうしたの?」

 

「おはようございます、歌姫先生。今日、僕はどうすればいいんでしょうか?」 

 

「あー、んー、授業の進み具合も違うしねー。あ、じゃあ体術の訓練混ざってみる?」

 

「交流会控えてるのに大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、術式を使わなかったりやり方は色々あるわ。お互いに良い刺激になるし、無理にとは言わないけどね」

 

「いえ、あまりない機会ですしぜひお願いします」

 

「決まりね、今日は運良く二限目終わったら体術の授業が通してあるから、三限目までは時間つぶしてていいわ」

 

「分かりました」

 

 体術の授業に混ざることが決定し、三限目まで時間を潰すことになり、職員室から退出する。

 

「結構時間あるなぁ…武道場使えるか聞けばよかったかな」

 

 独り言を呟きながら、取り敢えず仮の自室へと戻ろうと歩くと、前方から大きな福耳に長い白髭をはやした京都校の学長、楽巌寺嘉伸が歩いてきた。

 

 刹那は軽く会釈をしながら挨拶をする。

 

「おはようございます」

 

 会釈する刹那を見ながら楽巌寺は問いかける。

 

「お主、例の新しい特級か?」

 

「はい、先日昇級が確定しました」

 

「……」

 

「どうかなさいましたか?」

 

「他の特級とは大違いじゃの」

 

「えっ?あぁーそう…ですね?」

 

 一瞬戸惑った刹那は歳や強さのことかと思い、曖昧な返事を返す。

 

「話は聞いとる、折角ならこの老人の話し相手になってくれんかの?」

 

「あっはい!お願いします」

 

 特に敵意も感じず、楽巌寺の後をついていく。

 

 学長室へと入り、向かい合って座る。特級と学長という関係でいえばさほど不自然でもないが、学生と学長が朝早くに向かい合うのはいささか不思議な光景である。

 

「向こうの学長…夜蛾は元気にしとるか?」

 

「夜蛾学長は五条先生にいつも困らされてますね」

 

「夜蛾らしいの、五条は我儘が過ぎる」

 

「確かに困らされることは多いですけど、最強故に信頼できる先生だと、僕は思ってます」

 

「…あやつも意外と信頼されとんじゃの。うちの学生達と今日は体術を共にするのだろう、よろしく頼む」

 

「あっ!こちらこそよろしくおねがいします!」

 

 深々と頭を下げ、それからひとしきり話すと楽巌寺は仕事があるため、刹那は退室した。

 

「失礼しました」

 

(…悠仁君のこと聞かれなかったなぁ。まぁいいや、あと一時間か…部屋に戻ろ)

 

 部屋に戻り、なんとなくスマホをイジると友人二人からのラインが大量に来ていた。

 

「あ、やばっ」

 

 思わず声を漏らす、内容を確認すると心配のメールと今すぐに乗り込みかねないほどの怒りのメールが届いている。

 

「……」

 

 タッタッタッ

 

 刹那は無言でメールを五条へと送る。

 

【向こうの手違いで挨拶が明日なので明日の夜に帰ります、特になにもないと皆に伝えてください】

 

「二人に言うの怖くて五条先生経由しちゃったけど大丈夫かな…?」

 

 アラームを設定したスマホをベッドに放り、椅子に座ってほんの少しの間眠りに入る。

 

「おやすみ」

 

 ピコピコピコピコ

 

 コンコンコン

 

 アラームとノックがほぼ同時に鳴り、アラームを止めてドアを開ける。

 

「そろそろ中間休みだから迎えに来たわよ、ってまた寝てたの?」

 

「すいません、やることがなくて」

 

「謝ることじゃないわ、さ、一応皆に紹介するから行きましょ」

 

 刹那は歌姫に連れられ運動場へと歩く。

 

「作りは東京校とあまり変わらないんですね」

 

「用途も同じだしね、似たようなものよ。さ、着いたわよ」

 

 制度→生徒

 

「ちょっとした手違いで今日の体術の授業一緒にすることになったから、皆よろしくね」

 

「東京校一年の阿頼耶識刹那です、よろしくお願いします」

 

「それじゃあ、各自ペアを組んでね。基本はフリーだけどサボったりはしないように」

 

 全員が返事をして、ペアを作り始める。

 

「刹那ちゃん組みましょう!」

 

 三輪が早速、刹那に駆け寄りペアを組もうとする。

 

「はいっ」

 

 不安げな表情が無くなり、パタパタと三輪についていく。

 

「真依ちゃんは組まなくていいの?」

 

「私は遠距離専門ですもの。組みましょ、桃」

 

「そっか、そうだね」

 

 他にも各々ペアを組み、訓練が始まる。

 

「あれ? 刹那ちゃん刀使わないんですか?」

 

 二刀を腰から外し、近くの木に立てかける。

 

「一応これ、どっちも特級呪具なので、使ったらフェアじゃないかなと」

 

「どっちも!?」

 

「二つで一つの呪具なので、どっちもって表現は正しいのか分かりませんけどね」

 

「どうしましょうか、素手にします?」

 

「了解です」

 

 二人共相手を見据えて構える。西宮と真依はなんとなくそれを静観する。

 

「それじゃあ、行きます!」

 

 三輪が右の拳を突きだすと、刹那は右手首を掴み足刈を繰り出し、あっと言う間に三輪を組み伏せる。

 

ビッ!ガシックルッッドサッ…

 

 三輪は何が起きたのか分からずに天を仰ぎ、西宮と真依が目を見開いてその光景を見つめる。

 

「…青空キレイ」

 

「あの、一年生とはいえそこまで手加減していただかなくても…」

 

「あっ!そうですよね! ちょっと緩めちゃいました。もう一本」

 

 三輪はアハハと笑い、もう一度始める。結果はまたしても瞬殺、その後に何度も組むが、結果はいずれも触れることすらできずに瞬殺される。

 

「…速すぎる」

 

 三輪は地面に手をついてうなだれる。

 

「か、霞先輩は刀を使うじゃないですか、素手は仕方ないですよ!」

 

「あなたなら刀にも素手で勝てるんじゃない?」

 

「刹那ちゃん凄い強いね…?」

 

 西宮と真依が横から入ってくる。

 

「じゃあ!刀で勝負しましょう!」

 

「えぇ…うーん、分かりました」

 

 あまり乗り気じゃない刹那は小太刀を一本腰にかけて三輪と向かい合う。

 

 お互いの間合いは距離にして大体6m。西宮が開始の合図をだす。

 

「刹那さん、手加減無しですよ!」

 

「…分かりました」

 

(手加減は失礼だよね…)

 

「二人共構えてー、よーい、どん!」

 

(シン陰流、簡易りょ)

 

 ズォッン! 

 

 刹那は呪力で身体を強化し、踏み込み射程内に入る。三輪が簡易領域を構築し終える前に刀の峰を首に当て、反対の手で三輪の刀の頭を抑えていた。

 

 刹那は、呪力切れになることを想定した訓練を積んでいるため術式なしであろうと当然のように強い。

 

「…ういき?」

 

 刹那はにっこりと笑って言う。

 

「僕の勝ち、ですね」

 

 いつの間にか周りに集まってそれを見ていた一同は一斉に口を開けたままにする。

 

「うっそ」

 

「全然見えなかったわ」

 

「あれが特級の実力か」

 

「ほんまに同級生?」

 

「ほーう、あれが例の特級か?興味深いな」

 

 へたり込む三輪に刹那が手を貸していると、日差しが突然巨体によって塞がれる。

 

 上を向くと190を超える巨体で顔に傷のある男が二人を見下ろしていた。

 

「えっと…?」

 

「東堂先輩、どうしたんですか…?」

 

 睨まれて二人は萎縮する。

 

「ちょっ東堂君!後輩いじめちゃダメだよ!」

 

「いじめているわけではない、実力を見ていたんだ」

 

 西宮が駆け足で入る。

 

「ごめんね刹那ちゃん、この人三年で一級術師の東堂葵君ね」

 

「あ、よろしくお願いします、葵先輩」

 

 立ち上がり、挨拶をするがそれでも明らかな身長差に驚く。

 

「ふーむ、刹那といったな?」

 

「は、はい」

 

「次は俺と組むか?もちろん無理にとは言わんが。しかし、物足りなさそうな顔をしていたのでな」

 

 刹那は唖然とするが、直ぐに気を取り直す。

 

「僕、そんなに顔に出てました?」

 

「いや、俺は人の表情を読むのが得意なんだ」

 

「じゃあそういうことでしたら…ぜひ」

 

 あっさりと組手に応える刹那に周りは驚く。

 

「ちょ、あのゴリラの相手するの!?死んじゃうわよ!?」

 

「東堂先輩相手にするのは止めたほうがいいんじゃ…」

 

「止めるな真依、三輪、これは呪術師として高みに登るための試練だ」

 

(((始まった)))

 

「東堂の発言はともかくとして、私も二人の組手には賛成だ、加茂家嫡男として阿頼耶識殿が特級足り得る人物か見極める必要がある」

 

「お固い頭してるわね、相変わらず」

 

「これで挨拶が終わるのであれば丁度いいんじゃないですかね」

 

「決まりだな。時間は有限だ、早速始めるぞ」

 

 刹那が小丘を登り刀を木に立てかける。

 

 その間に東堂はジャージの上を脱ぎ上裸になる。

 

「俺もやるからには本気だ、半殺しにするかもしれんが文句は言うなよ」

 

「呪霊はそもそも警告してくれませんし、問題ないですよ」

 

 加茂が合図を出す。

 

「では、始め!」

 

 ズドッ! 

 

 地面が揺れる踏み込みと共に東堂が刹那に向かい拳を振り上げながら突撃する。

 

(バレバレ…)

 

 心のなかで呟くと同時に受け流すため手を上に構える。

 

 ピクッ

 

 瞬間に刹那の頭に警鐘が鳴る。

 

 ズドン! ヒュッ! 

 

 東堂は刹那の目の前で地面を強く踏みつけ急停止し、刹那の顔を狙った前蹴りへと切り替える。

 

 刹那は膝を抜き、姿勢を低くすることにより髪をかするものの間一髪でそれを回避する。

 

 その姿勢のまま低く飛び上がり、軸になっている東堂の片足を蹴り飛ばし、両手を地面に付き受け身を取って立ち上がる。

 

「ぬぅっ!」

 

 膝を的確に蹴ったため、ガクンと片足をつく。

 

 周りから「おおっ」と声があがる。

 

 刹那はそのまま東堂の顔面を蹴り飛ばすが、東堂は腕をクロスさせて防ぎ、刹那の左足を両手で掴む。

 

「お返しだ」

 

 しかし、刹那は掴まれた左足に力を込めて姿勢を安定させて飛び上がり、右足で東堂の右頬を蹴りぬく。

 

「んぐっ!」

 

 それでも東堂は両手を離さずに、凄まじい勢いで最寄りの木に向かって放り投げる。十mはある距離だが、まともにぶつかればかなりの痛手となる勢いだ。

 

 ブオッ!! 

 

(ラッキー)

 

 凄まじい勢いで投げたにもかかわらず、刹那は木に足を向け、まるでその場でジャンプしたかのようにストッと静かに着木する。

 

 歌姫を含めた女子全員が、瞑っていた目を恐る恐る開き、平然と歩きだす刹那を見て驚きの声を上げる。

 

「すごいパワーですね、驚きました」

 

 すたすたと歩き東堂の前に再び立つ。

 

「…術式を使ったのか?」

 

「んー、あの木との距離があと六m程近ければ使ってましたね」

 

「フッフッフ、手加減できぬ相手のようだ!俺は術式を使わせてもらおう!」

 

 再び東堂が向かってくるが、先程と違い両手を前方に出しながら走るという異型なフォームをとっていた。

 

(手を使う術式かな?)

 

 東堂が走りながら突然半回転して手を叩く。

 

 パァン! 

 

 瞬間的に刹那の視界から東堂が消え、代わりに刹那の背後に東堂が出現する。

 

 東堂は後ろで攻撃の構えを既に取っていて、その巨体から拳を繰り出す。

 

 ブオッ! 

 

 その拳を刹那は真上に跳んで回避し東堂の腕に乗る。

 

「おっとと。凄いですね、僕が乗ってもびくともしない」

 

「ふんぬぁ!」

 

 空いている左の拳を繰り出すがそれより早く刹那の蹴りが飛んでくる。

 

 べキィ! 

 

 顔面を蹴られたが、東堂は目を閉じることなく刹那を視界に捉え続ける。刹那は東堂の腕を落下しながら掴み、腕の力で下に向かって器用に飛び、滑りながら股をすり抜ける。そしてその場で回転しながら飛び上がり、振り向く東堂に空中で裏拳を繰り出す。

 

 ゴチャッ

 

 鈍い音と共に仰け反り、口内を切って出血したため口から血を吹き出す。

 

「ぷっ!」

 

 ベチャッ

 

「強いな、流石は特級」

 

「ありがとうございます。東堂先輩こそ明晰な頭脳に加えて非常に強靭なフィジカルを持っていて驚きました。先程の術式、対象と位置を入れ替えるものだと予想したのですが、それを戦闘に組み込むのは容易くはない、でも…一対一には少々不向きな術式ですよね」

 

 刹那はたった一回使った術式を見抜き、大方を理解していた。

 

「流石は特級、術式だけで上り詰めたわけではないということだ、だがっ!流石に俺も手加減されるのは癪だ、術式を使え!」

 

「……分かりました、ではここからは少しギアをあげましょうか」

 

 そういって刹那は術式を展開し、背中から呪力の靄を出現させる。

 

「アレが刹那の術式か」

 

 メカ丸の一言と共に周りは静観し、ほんの一時静寂に包まれる。

 

 ザッザッザッ

 

 大胆にも刹那は東堂に歩いて近づくと、ぎりぎり拳の届かない位置で呪力の靄で東堂を襲う。

 

「っ!」

 

 瞬間的に東堂の脳内で靄に触れてはいけないと警告される。

 

 バァン! パッ! 

 

 東堂は刹那と位置を入れ替えて、靄から逃れるが刹那は完全に靄に入り見えなくなる。

 

 東堂はバックステップで距離を取るが、東堂の鼻には既に拳が触れておりそのまま振り抜かれる。

 

 ぺギャッ

 

 東堂は鼻を抑え周りを見渡すが、一切としてその痕跡は見つからず、顔を動かして刹那を探すと次は膝裏を蹴られ背中から倒れる。

 

「うぉっ!」

 

 そして、目の前に急に現れた刹那が首に指を寸止めする。

 

「っ!」

 

「まだやりますか?葵先輩」

 

「まいった、恐れ入ったよ。阿頼耶識刹那」

 

「長いので名前で構いませんよ」

 

「そうか、なら名前で呼ばせてもらおう、友よ」

 

 起き上がって座っている東堂と会話していると、歌姫と生徒全員が二人の周りに集まってくる。

 

「刹那ちゃん!」

 

「見てるこっちが生きた心地しなかったわよ」

 

 真依がおでこにデコピンする。

 

「あぅ…痛いです」

 

「阿頼耶識刹那殿」

 

 加茂が刹那の名前を呼び、質問する。

 

「あなたの力は充分に特級足り得るものと思う。

 

 だが、一つだけ聞かせてほしい」

 

「はい? 何でしょう」

 

「君は一年生で特級術師となるが、その歳で特級を背負うということの意味をどう考える?」

 

 加茂の質問に刹那は少し考え込むが、直ぐに答えを出す。

 

「そう、ですね…上手く言葉にできませんけど、僕は特級術師だからどうとかは考えたくないです。自分の位に驕ってしまいそうなので…僕は特級になってもすることは変わりません。この力で人を自分の傲慢に従って救う。だって僕は…ヒーロじゃなくて、呪術師ですから」

 

(…あ、恵君のパクっちゃった)

 

「傲慢に従って人を救う…か。私の考えとは異なるが、通常呪いは負の感情、そのくらいの意識持ちの方が強くなれるのかもな」

 

「はーい、体術の訓練終了! 並びなさーい」

 

 歌姫の合図で全員並び、挨拶を済ませた。




何か東堂弱く見えるかも知れないけどそんなことないです、東堂は実際めちゃ強いけど刹那がそれ以上に異常なだけなんで。多分五条や夏油が術式使ったらかなりあっさり決着つくし、特級の世界ってこういうレベルだと思ってます。
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