全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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先に言っておきます、直哉ファンの方申し訳ない!
原作のイメージがこんなんですよ、、、


第十九話 禪院家

 体術の訓練が終わるやいなや東堂が刹那に駆け寄り、丁寧にフィルムに入れられたアイドルのプロマイドを手渡してくる。

 

「刹那! お前にはこれをプレゼントしよう!」

 

「…どこから出したんですか?」

 

「高田ちゃんをより多くの人に知ってもらうために常に制服に配布用に常備している!」

 

「あぁ、背が高いアイドルの人ですよね」

 

 偶然知っていたアイドルのプロマイドを受け取りながら反応する。

 

「知っているなら話は早い、今から高田ちゃんが出演する食べ歩き番組がある、見るぞ!」

 

「うん? えっ?」

 

 半ば強引に刹那を共有スペースへと連れて行き、テレビをつける。

 

 それを離れて見ていた西宮と真依が渋い顔をする。

 

「あ~あ、あれは東堂君そうとう気に入ってるね」

 

「男にしか興味ないのかと思ってたわ、仕方ないわね、射撃場行ってくるわ」

 

 共同スペースのソファで何故か二人並んで高田ちゃんの食べ歩きを見ていたが、刹那は特に嫌いでもないので普通に楽しんでいる。

 

「ん~、今日も仕上がっているな高田ちゃん」

 

「改めて見ると背、凄く高いですね高田ちゃん」

 

「高身長アイドルだからな180cmあるんだ」

 

「…身長高いほうが男の子って喜ぶんですかね…」

 

「それは人によるだろう、俺はケツとタッパがでかい女がタイプで高田ちゃんが理想なんだ」

 

 テレビから目を離さずに答える東堂を横目に刹那は自身の体を改めて見てみる。平均より少し高いが、決して大きいとは言えない胸と、骨のような腕に溜息が漏れる。

 

「気にするな戦友、お前にも魅力はあるさ」

 

(いつの間にかグレードアップしたな…)

 

 大人しく約一時間食べ歩きを見て、放送が終わり東堂が感慨に浸っていると刹那はお腹が空き始める。

 

「今日の高田ちゃんも最高だった」

 

「葵先輩、ここから一番近いコンビニまでどのくらいあります?」

 

「む、なぜだ?」

 

「いえ、昨日の午後から何も食べてないので流石にお腹が空きまして」

 

「えぇー!? 何も食べてないんですか!?」

 

「なんで?」

 

 ソファの後ろから三輪と西宮が顔を出し、刹那に向かって驚きの表情を向ける。

 

「んーと、忙しくて?」

 

「今日の朝は?」

 

「何も持ってきてませんでしたので、食べるものもなくて」

 

「よく今まで我慢できたな?」

 

「別に我慢してるわけじゃないんですが…」

 

「あー、そっか食堂の場所案内されてないもんね。なら今から一緒に食堂行こ!」

 

 流れで全員で食堂へと行き、メニューを注文して長机に座るが、全員刹那のお盆をみて無言になる。

 

「「「………」」」

 

「あのー、どうかしましたか?」

 

「いや、おかしいよね? なんでお盆にミニサイズのうどんとデザートしか乗ってないの?」

 

 刹那のお盆の上には、小さなうどんとプリンが乗っていた。

 

「お金が無い…わけじゃないですよね?」

 

「刹那よ、流石にそれでは体に悪いんじゃないか?」

 

「いつもこの位なんですが…」

 

「えー!? なんでなんで?」

 

「あまり量食べれないので」

 

「それにしたって限度があるでしょう!」

 

「体重を気にしているのかもしれんが、お前は力がないからな、もっと食べて肉をつけろ、俺のを分けてやる」

 

 そう言って東堂は自らのお盆からいくつかおかずを取り皿に盛り渡してくる。

 

「東堂君、そういうことを女の子に言ったりするのはどうかと思うよ」

 

「私のもあげます!」

 

 三輪も同じように取皿に分けてくる。

 

(どうしよう、ほんとに全部食べれるかな…)

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 その後会話を挟みながら死ぬ思いで完食した刹那はシャワーを浴びて仮の自室へと戻り、本題の明日のことを考えながら眠りに落ちる。

 

「おやすみー…」

 

 ──ー

 

「…おはよう」

 

 自分に起きたと言い聞かせるために虚空に挨拶し、朝の支度を始めて時計を確認する。

 

「七時、丁度いい頃合いですかね」

 

 コンコンコン

 

「はーい」

 

「おはよう刹那、禪院家の挨拶だけど今日の九時からだから、仲良くなった皆に挨拶してきたら?」

 

「はい、そうします」

 

 食堂や共有スペースなどを巡り、見つけた人全員に軽く挨拶を済ませる。

 

 ちなみに東堂は高田ちゃんの写真集を刹那に無理矢理気味に授けた。

 

 時間になり、

 

「それじゃあ、表で伊地知が待機してるから挨拶、頑張ってね」

 

「久し振りにゆっくりできた気がします、ありがとうございました、皆さんにもよろしく言っておいてください」

 

 昇降口に向かいながら刹那と歌姫が会話する。

 

 外に出ると伊地知が、車のドアを開けて待っている。車に乗り込み歌姫に挨拶をする。

 

「それでは、刹那さん行きましょう」

 

「歌姫先生、ありがとうございました」

 

「また機会があったらいつでも来てね、それじゃあ行ってらっしゃい」

 

「はい!」

 

 挨拶を済ませて車が出発し、件の禪院家へと向かう。流石にそこまで遠い距離を移動するわけでなはないのでボーッと窓の外を眺める。

 

「刹那さん、お相手は御三家のうちで最も規模の大きな家です、決して粗相がないようにしましょう」

 

「自信ないですね、伊地知さんが対応してくれません?」

 

「…リラックスできたようでなによりです」

 

「冗談ですよ、そんなに暗い顔しないでください」

 

 くだらない会話を挟みながら禪院家へと向かい、ものの三十分ほどで到着する。

 

 禪院家は大きな門がどんと構えてあり、そこを通ると少し前に見た阿頼耶識家を遥かに超えるほど大きく歴史を感じる風貌がその姿を現す。

 

「…これは予想外ですね」

 

 呆気にとられていると着物を着た二人の侍女と思われる女性が出てくる。

 

「お待ちしておりました、刹那様」

 

「こちらへ案内いたします」

 

 伊地知もついていこうとすると、門前払いされてしまう。

 

「私達が案内を仰せつかっているのは刹那様だけですので、あなたをご案内することは出来ません」

 

「いえしかし…」

 

「お戻りください」

 

「…はい、近くに車を停めておきます」

 

 頼みの綱の伊地知と離され不安の中で広めの和室へと案内される。

 

「あの、挨拶は…?」

 

「当主、禪院直毘人様は只今臨時の事務作業中なので少々この部屋でお待ち下さい、時間になったら呼びに参ります」

 

 そう言って二人共障子を閉めて出ていってしまう。

 

「………」

 

 シャッ

 

 刀を床に並べ、机のお菓子を食べていいものか迷っていると障子が急に開き、金髪の着物の男が入ってくる。

 

「お~、おったおった。君、例の特級やろ?」

 

「…当主様ですか?」

 

「いや? 当主は俺の父ちゃん、俺は次の当主、禪院直哉っちゅーねん、よろしくや」

 

 そう言って、直哉は手を差し出してくるため刹那も手を取って軽く握手する。

 

「いやー、にしても一年の特級、それも女の子なんてどんな醜女やろ思たけどえらい別嬪さんやなぁ、神さんは不平等やね」

 

 関西弁を聞き慣れていない刹那は若干戸惑いながら話を聞く。

 

「君アレなんやろ、ちょっと前にいなくなったフリーの術師のSなんやろ?」

 

「あぁ、それがバレたから昇級になったんですね」

 

 特級になった理由に合点がいった刹那は手をポンと叩く。

 

「にしても良かったなぁ? 君、この間同級生の宿儺の器死んだんやろ? 人間でも呪物でもないバケモンが同じ所おるだけで吐き気するもんなぁ? 俺ならその場で殺したってるわ」

 

 刹那はあえて、反論せずにひたすらに黙っていた。

 

 心の中に煮え滾る殺意にも似た暴威的な感情を抑えながら。

 

「おまけに君の周り、実力に差がありすぎて雑魚にしか見えへんのとちゃう? せいせいするやん、特級なら任務ぎょーさんあって忘れることできて。なんなら友達も思とるかもな?」

 

「…友達とは共に高め合う仲ですよ」

 

 少しだけ反対し、話を聞いているポージングをする。

 

「ふーん。君、いくら強くて別嬪ゆうてもその右眼じゃ将来誰も貰ってくれへんやろ?」

 

 直哉は急に近づいて刹那の右眼をまじまじと見つめてくる。

 

「大人んなったら俺が貰ったっても──」

 

「刹那様、直毘人様のご準備が整いましたのでお知らせに参りました」

 

 障子の外から声をかけられ直哉の動きが止まる。

 

「チッ、タイミング悪いわぁ」

 

 短く舌打ちして直哉は刹那から離れる。

 

「ほな、また後でなー」

 

 侍女に案内された部屋に入ると、広い和室の上座に大きな盃に酒を注ぎ顔を赤く染めた大男、禪院家当主禪院直毘人が座っていた。

 

 その向かいの座布団に正座する。

 

「フフフ、そう固くならずとも姿勢を崩してもらって構わないぞ」

 

 グビッと大きく酒を煽ると直毘人は笑ってそう言い、刹那も姿勢を崩す。

 

「さて、この度は特級への昇級という快挙を成し遂げたこと、素晴らしき栄誉だと思うが、なにか言いたいことはあるかな?」

 

「えっと…正直特には何も…」

 

「ハッハッハッ! だろうな、阿頼耶識殿からは他の特級達のようなものを一切として感じん。大方、呪術師しか生き方を知らないといったところだろう」

 

「そんなに分かりやすいですか? 僕って」

 

「別に貶しているわけでもない、ましてやこんな業界、非術師とはかけ離れた存在の集まりだ、お前さんのような術師も珍しくはない」

 

 聞いていた印象と違い、大分常識人な直毘人を不思議に思いながらも会話を続ける。

 

「お前さんの人柄は大体分かった、そもそも五条のようなチャランポランでも強いという理由のみでなれる階級だ、正直挨拶周りなんぞほとんど意味をなさん」

 

「てことは、これで終わりですか?」

 

「うん? 何があると思っていた?」

 

「いえ、加茂家の方に挨拶をしたときは代理ではありましたけど一級の方と手合わせをしたので、てっきりそういうのもあるのかと」

 

 会話が終わりに差し掛かるところで授業以外での対人間との戦闘を渋る刹那が、あえて手合わせの話をだした。

 

「んー、なるほど、確かに実力を知るのは大事か、この際だ、俺の息子と手合わせをしてみるか? 実力の方は保証しよう」  

 

「えぇ、ぜひとも、お願いします」

 

 直毘人に悟られぬよう、刹那は心のなかで薄く微笑んだ。

 

「よし、ではそこのお前、道場に直哉を呼んでこい、手合わせを行う」

 

 近くの侍女に命令し、瓢箪を持って直毘人は立ち上がり刹那を鍛錬場へと案内する。

 

 流石は屋敷で屋内にもかなりの大きさの道場があり

 

 そこに入ると直哉とほか数名の大人が見物に来ていた。

 

「刹那ちゃんまた会うたね、なんやそんなに戦うてみたかったんか?」

 

「そういうわけじゃないですけど…」

 

「好きなタイミングで始めていいぞ」

 

 刀を近くに立てかけて、直哉の前に立つと直毘人が言い放ち他の男達の近くに腰掛け、酒を煽る。

 

「まぁどうだってええわんなこと、それよか刀使わんくてええの? 特級いうたって所詮女やろ、得物なかったら俺でもきついんとちゃう? なんなら術式使わんと戦ったろか? いやな、俺は刹那ちゃんのこと結構買ってんねんで? 男の三歩後ろ歩かへん女は背中から刺されて死んだらええ思っとるねん、やから──」

 

「うるさいですね」

 

 直哉の言葉を一言で両断する。

 

「そんなにペラペラと喋って、そんなに嫌なら素直に言ったらどうですか? 負けるのは嫌で覚悟が出来てないのでもう少し待ってくださいって」

 

そういって刹那は妖しく直哉を笑い飛ばす。

 

 ビキッ

 

 その言葉に周りはクスクスと笑い、直毘人に至っては大笑いしている。

 

 直哉が額の血管を浮かばせ呪力を練り、術式を発動させる。

 

「やっぱお前もおんなじやな、クソ尼が」

 

 その言葉と共に床を軋ませ、刹那に向かって走り出した。

 

 メキッダンッ ドゴシャア!!! 

 

 時間にして一秒未満、直哉は一歩も動くことなく、頭を刹那に蹴られ、床にめり込み完全に気絶していた。

 

 直哉の持つ術式は当主、禪院直毘人と同じ禪院家相伝術式の一つ、投射呪法。

 

 一秒の動きを24分割しその動きを後追いするという術式、直毘人は五条を除き最速の術師と言われた術師。その息子である直哉もまた超スピードを誇る術者だが刹那の術式の効果には"速度はない"。

 

 投射呪法が動きの後追いによる超スピードを可能にするのに対し、刹那は距離を無くすため移動という過程が存在せず、瞬間的な移動に関しては五条をも駕ぐ。

 

 直哉が術式を使った瞬間、刹那はその場で呪力で強化した全力のハイキックを放ち顔面と足との距離が無くなるように術式を発動させた。

 

 結果、直哉が走り出し、地面から足が離れた瞬間に顔面に直撃、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

 ォォォォォ

 

 床を破壊した残響が鳴る中で、刹那を除いたその場の全員が言葉を失っていた。

 

「聞こえてないと思いますけど、さっき僕に言ったことの返事…僕、貴方と生活を共にするくらいなら死んだほうがマシですね」

 

 刹那は冷ややかな視線を気絶している直哉に送りながら先刻の返事を返す。

 

 遅れて周囲がざわめきだし、直毘人が刹那に近寄り、だんだん頭が冷えてきて刹那は自分がしたことの重大さを理解し過去最大に青ざめていく。

 

「……死んではいませんよ…多分…あの、反転術式で治しますので…ごめんなさい」

 

「ブッハッハッハッ!! 、別に怒ってなどおらんよ!」

 

「いや、でも直哉さんをこんな状態にしちゃって…」

 

「今回の件は完全にこいつの落ち度、きにせんでええ、灸を据えるためにも治す必要もないわ。おい、誰かこのバカ息子を医務室に運んでやれ」

 

 侍女が数人がかりで直哉を引っこ抜くと、顔面は鼻が折れて曲がり、鼻血で血だらけで白目を向いている直哉がでてくる。

 

「刹那殿、もし"そういう"話が欲しかったらいくらでもこちらで用意するのでな、今後の活躍を期待するぞ」

 

「はい…? ありがとうございます?」

 

 ペコリと一礼し、外の侍女に外へ案内される。

 

 来たときと同様に大きな門を通ると伊地知が待機している。

 

「あっ、刹那さん、さっきなんだか凄い音がしましたけど、あれは一体…?」

 

「車どこですか? すぐ帰りましょう」

 

「えっ、あっ反対! 向こうです刹那さん!」 

 

 刹那は早足で伊地知と共に車へと戻り、乗り込むなり先程のことを思い出さぬように毛布を被りふて寝する。

 

(…中で何があったんだろう)

 

 刹那はふて寝しようとするが自分の行いを猛省して、中々眠ることができずもぞもぞと後部座席で動き続け、約一時間ほどその動きをして眠りにつく。

 

(…八つ当たりされなくて良かった…)

 

 これが五条だったら確実に東京に戻るまで八つ当たりコースだったと考える伊地知はホッと溜息をついた。




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