全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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さしすの絡みをもっと書きたい、、、


第二十七話 変わらない後ろ姿

「さて、来たる十月十日に向けて強化訓練を僕から考案しまーす!」

 

 交流会から二日、五条は教室に入るなり突然大声でそう言い出した。

 

「あと約二週間、その間の体術をまた増やすんですか?」

 

「いや、交流会を見る限り体術は充分でしょ、足りないのは対呪詛師と一級レベルの呪霊との実践、まぁそうはいっても、皆充分一級とやりあえるレベルだと思うからあんまり心配してないけどね」

 

「じゃあ任務増やすの?」

 

「それも違う、向こうがゲームとやらを始めるまでは多分直接的な事はしてこないと思うんだよね、そこで今回このようなものを用意しました、傑ー!」

 

 そういって五条は教室の後ろで報告書を書いている夏油を呼ぶ。

 

「呪霊が増えるのは私にとってはありがたいことだね」

 

「傑がこれから一級以上の呪霊を使役して君達と戦わせる。使役してるから事故は起きないし、色んな呪霊と戦えて場数も踏めて一石二鳥♪ 三日に一回くらいでこのメニューをこなしてもらうよ」

 

「夏油先生が訓練してくれんのって初めてじゃね?」

 

「そうだね、始めに言っておくけど私はそんなに優しくはないよ、厳しくいくから覚悟しなさい」

 

「うへぇー、また飛ばされる未来が見える」

 

「じゃ、着替えたら運動場集合ね」

 

 五条と夏油は先に運動場へと歩いていく。

 

「…行きましょうか」

 

「そうね」

 

「行こうぜ伏黒!」

 

「分かってるから大声出すなうるせぇ」

 

 それぞれ更衣室へと向かいジャージに着替えて運動場へと足を運ぶと、既に夏油は呪霊を出現させている。

 

「お、皆来たね」

 

「あれ、五条せんせーは?」

 

「ついさっき任務に出発したよ、それじゃあルールを説明しようか」

 

 四人を整列させて夏油は詳細を話す。

 

「まず、一人は呪霊と、もう一人は私と、残り二人は美々子と菜々子と手合わせしてもらおうかな。呪霊には殺すまではしないように指示してあるから遠慮せずに祓ってくれて構わない」

 

 説明を終えると美々子と菜々子がニコニコと笑いながら走ってやってくる。

 

「一年生の皆揃ってる」

 

「二人は初めてだよね!」

 

 刹那と伏黒以外は初対面なため自己紹介を挟む。

 

「二年美々子」

 

「同じく菜々子!」

 

「一年虎杖悠仁っす、よろしくお願いしまっす!」

 

「一年釘崎野薔薇」

 

「二人は三級術師だが、体術は私仕込みだから実力の方は問題ないよ」

 

「久し振り、伏黒君に刹那」

 

「どーも」

 

「お久しぶりです」

 

「さて、説明は終わったかな、質問は?」

 

「殺されないの? 緊張感なくね?」

 

「そこは安心してくれていい、もし負けたらこの中に放り込むから」

 

 そういって夏油は大きな芋虫のような、鼻につく匂いを漂わせる呪霊をそこに召喚する。

 

「この呪霊は下水で生まれてね、四、三級程度だが、嫌がらせには最適な呪霊だよ」

 

「ちょっとぉ!レディをこの中に放り込むっていうの!?」

 

 呪霊を指さしながら釘崎は文句をぶつける。

 

「嫌なら勝つことだね、さ、最初は誰から行こうか?」

 

「はいはい!俺行きます!」

 

「私は先生と手合わせするわ」

 

「じゃあ、残った二人は美々子、菜々子、よろしく頼むよ」

 

「はーい!手加減したらこっちがやられちゃうから本気で行くよ美々子!」

 

「頑張ろう、菜々子」

 

 こうして強化訓練が始まったが、想像を絶する過酷さに訓練が終わる夕方には四人とも満身創痍だった。

 

※ミミナナは帰寮済み

 

「あの呪霊強すぎでしょ…」

 

「祓えはしたけど、その後の先生はなぁ」

 

「俺と刹那に体術教えたの夏油先生だからな」

 

「夏油先生に勝てませんでした…」

 

 小丘で四人ぐったりしていると夏油が人数分のジュースを持ってくる。

 

「お疲れ様、四人とも今日はよく頑張ったね。正直二人くらいは口に放り込むことになるかと思ったけど、全員祓うとはやるじゃないか」

 

「「「「………」」」」

 

「みんな黙ってどうしたんだい?」

 

「夏油先生って絶対五条先生よりモテるよな」

 

「気遣いできる男はモテるわよ」

 

「ありがとうでいいのかな?」

 

 ジュースを受け取り、なんでもない話をする。

 

「こうしてみると悟はいい生徒を持ったね…なんだかんだ、ちゃんと先生をしてて感慨深いよ」

 

「先生って五条先生と同期なのよね?」

 

「そうだよ、同じ東京校の高専生」

 

「五条先生の昔ってどんなんだったの?」

 

「昔からおちゃらけてた?」

 

「どーせしょっちゅう迷惑かけてたんでしょ?」

 

 昔のことを聞かれて夏油は懐かしむように笑みをこぼす。

 

「そうだね、悟はいつも迷惑をかけてたよ」

 

「やっぱり!」

 

「でも、それは私もだけどね」

 

「え!? マジか、想像つかねー」

 

「悟は一人称も俺だったし、今では随分丸くなったよ」

 

「へぇー、やっぱ昔から最強だった?」

 

堺→境

 

「…一人?」

 

「そうだな、ここからは私の独り言とでも思ってくれ」

 

 そう言った夏油は昔を語りだす。

 

「私と悟は…昔、二人で最強だった…でも、天元様の星漿体を護衛する任務を失敗してしまってね…その時、私と悟は死にかけたんだが、悟は土壇場で覚醒、星漿体一人の犠牲によって、この世界は、たった一人の最強の術師、五条悟を生んだんだ」

 

「……五条先生、そんな過去が…」

 

「そんな顔をするんじゃない、言ったろ? これは私の独り言だ、君たちが気にする必要はない」

 

「でも…」

 

「そうだよ〜、君たちが気にする必要はなーし!」

 

 五人の背後に五条が急に現れる。

 

「悟、任務は終わったのかい?」

 

「もちのろん、秒で終わったよ、報告書は伊地知に丸投げしてきたけど」

 

「伊地知さんに迷惑かけたら駄目でしょ」

 

「いいじゃん、どうせ大したことない呪霊が相手だったんだし」

 

 いつものようにヘラヘラ笑う五条。

 

「さっきもいったけど、傑の話は嘘が入ってるし、気にしなくていいよ」

 

「失礼だな、私は君と違って嘘はつかないよ」

 

 夏油は顔をむっとさせて、元々細い目をさらに薄くして笑う。

 

「いいや、嘘だよ…だって僕と傑は、昔"は"、じゃなくて、今"も"二人で最強なんだから」

 

 優しく微笑みながら、夏油をアイマスクを外して真剣に見つめ、五条はそう言い放つ。

 

「フッ、悟…生徒の前でよくもまぁ臭いセリフを言えるものだね」

 

 夏油は鼻で笑いながら悪態をつく。それを見て夏油以外の五人は固まる。

 

「…は?え?嘘だろ? 僕今めちゃくちゃいいこと言ったよね?」

 

「悟、寝言は寝て言うものだよ?」

 

 ピキッ

 

「上等だ、ボコボコにして自慢の前髪切って頭にネギ生やしてやるよ」

 

 一年生を置いて運動場の真ん中まで二人は歩いていく。

 

「…あれが先生達なりの仲良し表現なんだろうなー」

 

「無下限解いて殴り合おうとするあたりそうなんだろうな」

 

「さっき、なんで夏油先生は悪態ついたのかしら」

 

「二人共照れ隠しですね」

 

 四人で五条と夏油の後ろ姿を眺めながら雑談する。

 

「よっしゃ一発ずつな、俺のマッハパンチ見せてやるよ」

 

「安心しな悟、最近寝不足だろ?安心して眠るといい」

 

「「"オラぁ!!」」

 

 ボグォッ! 

 

 完璧に同じタイミングで二人は拳を互いの頬に打ち込む。

 

「おぉ、急に始まった」

 

「てか、音鈍っ」

 

 離れて観戦していると、二人が殴り合いを始める。お互いが同じタイミングで殴るをひたすら繰り返す。

 

「オ"ゥッ、全っ然っ…痛くねぇなぁ、傑くぅーん?」

 

「ヴェッ、猫がっパンチしてるのかと思ったよ」

 

「いつまで続けんのかしらアレ」

 

「一発殴っては謎に煽ってを繰り返してますね」

 

「あ、倒れた」

 

 ドサッ

 

 お互い顔がボコボコになり、その場に倒れる。

 

「え、どうすんのあれ」

 

「ほっとけ、勝手に回復するだろ」

 

「硝子さんにだけでも伝えておきます?」

 

 一年生は立ち上がって寮に戻ろうとすると、高専の方から家入が歩いてくる。

 

「あ、硝子さん」

 

「みなまで言わなくていい、あのバカどもの治療をしにきたよ」

 

「あぁ、そういえば医務室から運動場見えるんでしたっけ」

 

「腐っても二人共特級だからな。こんな時に何してるんだか、ほら、君達は寮に戻ってなさい」

 

「はーい、さよならー」

 

 虎杖の挨拶で四人とも家入に頭を下げて帰っていく。

 

 ザッザッザッ

 

「おら、治してやるからさっさとこっち向け」

 

「わぁ、アリガトウ硝子ちゃん」

 

「すまないね、硝子」

 

「五条は自分で治せよ」

 

「別に良いじゃない、ほらほら早くー」

 

 家入はため息をつきながら二人の顔に反転術式を施して治していく。

 

「ほら終わったぞ。全く、なんで殴り合ったんだか」

 

「…硝子、学生の時のアレ、覚えてる?」

 

「アレ?…夏油のノイローゼか? それとも美々子と菜々子か?」

 

「どっちもだよ」

 

「いやはや、耳が痛いね」

 

「驚いたよね、任務から帰るたびにやつれててさ」

 

「死んだ蛙みたいになってたな」

 

「私のことをそんな風に見ていたのかい?」

 

 三人はそのまま運動場の真ん中で喋りだす。

 

「…あの時、俺は正しい判断ができたと思ってるよ、こうして隣にいるしね」

 

「…そうだね、悟が急に三人分の休みを二日ももらって、誰もいないような田舎に旅行に行ったんだった」

 

「あそこで美々子と菜々子を保護した時、一時はほんとに呪詛師になるんじゃないかと思ったな」

 

「俺が説得したんだよね、確か」

 

「何だったか、"呪詛師になるならあと百年待って! そしたら俺もなるから!"…だったか」

 

「それそれ、我ながらトンチなことを言ったと思うね、百年したら死んでるっての。あの時傑が本気で集落の人殺しそうになったのは焦ったね」

 

「懐かしいねそれ……でも私自身、その思いは今もきっと心にあるんだろう…けど、親友の馬鹿みたいな夢が現実になれば、少しはマシな世界ができるのかと…私はあの時、思ってしまったからね」

 

「世界平和なんて夢物語を、馬鹿正直に信じ続けているのは俺達くらいなもんだよなぁ」

 

「その"俺達"に私を含むなよ」

 

「硝子はお酒があれば幸せじゃん」

 

「…悟、硝子、改めてありがとう、あの時、私を止めてくれて…あれがなければ私は──」

 

「あー、言わなくていいよ、そんな過去のことなんて、思い出は背負って生きて、時々思い出すくらいでいいんだからさ」

 

「ははっ、それもそうだ」

 

「長話してしまったな、私は戻るぞ…それと五条、一人称」

 

「おっといけね、ついつい昔を思い出しちゃった」

 

「私達も戻ろうか」

 

 三人が並んで高専へと戻る姿は、学生時代から何一つ変わっていなかった。

 

 




勝手に過去捏造です!多分夏油生きてたら時々俺って言ってるんじゃないかな。
前回、比叡山と大江山の話が出たんですけど、実際は素晴らしい景観や延暦寺などでめちゃめちゃ心が落ち着くので、一度は足を運んでみてください!
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