全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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毎日投稿したかったんですけど遅れてしまってすいません!
次からは戦闘マシマシでお送りしたいと思ってますので、ぜひお読みください!


第二十八話 磑風舂雨

 ──

 

「昨日の任務はしんどかったわね」

 

「やめろ、思い出したくねぇ」

 

「まさか自分の姿をした呪霊を祓うことになるとは…」

 

「五条先生ならすごく文句言いそうな呪霊ですね、それ」

 

「刹那は? 昨日任務あったんでしょ?」

 

「うーん、一言で言うならアリジゴクでしたね」

 

「ははっ、なんだそりゃ」

 

 十月九日、例の日の前日、生徒達は明日に向けて全員休暇をもらっていた。

 

「よっし、今日は荷物持ちが二人いるから山ほど買うわよ!」

 

「大丈夫ですか恵君?」

 

「なんで俺だけなんだよ」

 

「だって伏黒は…なぁ?」

 

「…鵺呼んだら俺のほうが持てる」

 

「伏黒、それ自分が力ないって言ってるようなもんよ」

 

「ハハハ! 確かに!」

 

 釘崎の一言に虎杖は声を上げて笑い、刹那と釘崎もクスクス笑う。

 

「ついたわよマルキュー!」

 

「「おー!」」

 

「…おー」

 

「元気ねぇぞ伏黒ォ!」

 

「買うわよー!!」

 

 釘崎の宣言と共に一同はマルキューの中を散策しだす。洋服屋に入るたびにどんどん荷物が増えていく。荷物持ちがいて良かったとご機嫌な釘崎をよそに、抱えきれない荷物に苦悩する虎杖と伏黒、それをみて苦笑する刹那。

 

「…流石に買いすぎたかしら?」

 

「「どう見てもそうだろ!!」」

 

「仕方ないわね、紙袋一つ持つわ」

 

 そう言って釘崎は小さな紙袋を一つ伏黒からひったくる。

 

「なんっで俺のほうじゃないんですかねぇ!?」

 

「あんたの筋肉を信頼してんのよ」

 

「重さ云々じゃないんだよなー」

 

「どこかで休憩にしましょう。悠仁君、これで暫くの間は我慢してください」

 

 虎杖が釘崎に文句を言うと、刹那は数個の紙袋に触って術式を使用する。

 

「うぉっ! なんかすっげー軽い!」

 

「特に重たい物の重さを無くしたので、あまり持ってる感覚が無くなると思います。けど、落とさないでくださいね」

 

「へぇー、やっぱり便利ねぇその術式」

 

「まぁでもデメリットはありますよ、こういう風に持続的に無くしている間は呪力を常に使いますし、同時に無くせるものの数には限りがあったりしますよ」

 

「じゃあ早くどっかのお店入りましょ、ちょうどお昼時だし」

 

「さんせーい」

 

 四人は最寄りのレストランへと足を運び、大荷物を置いてそれぞれ注文する。

 

「親子丼一つと生姜焼き定食一つ!」

 

「それと季節のパスタと彩りパフェ一つください」

 

「かしこまりましたー」

 

「で、この後どこ行く?」

 

「んーそうねー、四時までには帰らなきゃならないから迷うわね」

 

「これ以上買ったら時間云々の前に荷物多すぎて帰れなくなるぞ」

 

「そうですね、買えてあと一つか二つくらい?」

 

「三人はどこか行きたいところないの?」

 

「いや、俺は無いなぁ」

 

「俺も特に無い」

 

「…無いですね」

 

「ダウト」

 

 刹那に指を指して釘崎が言い放つ。

 

「どうした釘崎、ライアーゲームでも見たか?」

 

「違うわよ、刹那のその不自然な間、あんたどっか行きたいところあるんでしょ」

 

「なんだ、行きたいところあるんなら行こうぜ」

 

「遠慮することないぞ」

 

「少しだけ…化粧品のコーナーに…」

 

 ボソボソッと呟くように言いながら頬を染める刹那に、釘崎は過剰に反応を示す。

 

「よし野郎共、食べたらとびきり良いやつ買いに行くわよ」

 

「「了解」」

 

「いや、フツーので良いです」

 

「駄目よ、折角皆で来れたんだし、普段使えない分使える時に沢山使わなきゃ損よ」

 

「確かにあまり使う機会は無いですけど…」

 

「いくらぐらい溜まってんの?」

 

「今まで必要最低限しか使ってないので…このくらい…」

 

 刹那は指を三本立てる。

 

「「すっご」」

 

「そんなに溜まってんの!?」

 

「使わなさすぎじゃね!?」

 

「多分お前ら勘違いしてるぞ」

 

 伏黒がスマホをいじりながら二人に言う。

 

「あっそっか! 流石にそんな多いわけないか」

 

 虎杖と釘崎は納得したように手をポンと叩くが伏黒の答えにさらに驚く。

 

「想像より二桁くらい多いと思う」

 

「…釘崎何桁想像した?」

 

「七桁くらい…?」

 

「五条先生の財布考えてみろ、今まで俺らが強請った分、全部含めても特級の任務一回分いくかいかないかくらいだぞ」

 

「「うっわ」」

 

 驚愕の事実をカミングアウトされ二人は目を点にする。

 

「おまたせしましたー」

 

 店員が料理を運んできて二人は現実に戻る。

 

「そっかぁ、刹那も特級だもんなぁ、忘れてたわ」

 

「そんなにあっても使わないんじゃもったいないわね」

 

「それは本人の自由だろ」

 

「任務帰りのお土産くらいにしか使ったことないですね」

 

「この近くで良いところ知ってるからそこ行きましょ」

 

 四人は頼んだものを食べながら次の計画を立てる。

 

「「「「ごちそうさま」」」」

 

 食べ終わり、件の店へと向かう。

 

「野薔薇ちゃん、こんなに必要なんですか?」

 

「必要よ! 買っちゃいましょう!」

 

 そう言って釘崎はドサドサと決して安くはない化粧品をカゴに放り込んでいき、店員や周囲の人に若干引かれながら買い物を済ませる。

 

「…店員さん、ドン引きだったな」

 

「口紅一つで五千円するのは流石にビビったわ」

 

 嬉しそうに買った化粧品のことで話す二人を見ながら伏黒と虎杖は話す。

 

「あ、あれ食おうぜ!」

 

 虎杖はクレープの屋台を指差す。

 

「良いですね。けど、結構並んでますね」

 

「俺と虎杖で並んでくるからお前らはベンチで待ってろ」

 

「あら伏黒、気が利くじゃない」

 

「四人で並んだら邪魔だろ」

 

「流石は都会っ子、慣れてんなぁ。んじゃ、行ってくるわ」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 二人は歩いてクレープの屋台に並びに行く。

 

「…野薔薇ちゃん」

 

「んー何?」

 

「今日、皆で遊びにこれて凄く楽しかったです」

 

「あの二人にも言ってあげれば? きっとバカみたいに跳ねて喜ぶわよ」

 

「恥ずかしいじゃないですか、だから野薔薇ちゃんに言ったんですよ?」

 

「素直なんだか違うんだか、分からないわねぇ、あんたは」

 

 クシャっと髪を撫でながら釘崎が笑う。

 

「頭撫でてもらうのって心地いいですね」

 

「フフフ、私の天才的なテクが無意識に出ちゃったのかしら」

 

 二人がじゃれ合っていると、見知らぬ二人の男の影が二人を覆う。

 

「おねーさん達今暇ー?」

 

「俺らと遊ばね? 金あるからなんでも奢ってあげるよー」

 

「遠慮するわ、連れがいるのよ」

 

 二人のナンパに釘崎はキッと睨みながら言い放つ。

 

「おっほ! 強気な女ってのも良いね!」

 

「もう一人の眼帯ちゃんは? 遊ばない?」

 

「すいません、見ての通り友達と遊んでいるので他を当たってくれますか?」

 

「まぁそう言わずに、さ!」

 

 男の一人が釘崎の腕をグイッと引っ張ると刹那は立ち上がって男の手を弾く。

 

「…あ?」

 

「やめてください、さっきからしつこいです」

 

 刹那は隠れた右目からも視線を感じるほどの眼圧で男を睨みつける。

 

「このっ!」

 

 ガシッ! 

 

 男は腕を振りかぶるが、空中で手を掴まれピタリと止まる。

 

「おい…しつこいぞ」

 

「っ! なんっだ、てめぇ!」

 

「伏黒、遅いわよ」

 

「恵君っ」

 

 男の手を掴みながら睨みつけ、怒気のこもった声で威圧する伏黒、男は怯むが反省の色は見せない。

 

「伏黒〜味聞いてきてって言ったのに遅くねー?」

 

 そこへ虎杖も駆けつけてくる。

 

「悪い、こいつらがしつこくナンパしてたから」

 

 逃げようとするもう一人の男は冷や汗をかきながら、その場に直立する。

 

「あ、そうなの? 、オニーサン達ごめんな、ナンパなら他当たってくれ、俺らが先なんだわ」 

 

 虎杖は笑顔でそう言うが、腕を気にする釘崎を見て、怒りを隠せずにいる。

 

「ちっ!」

 

 二人の男は萎縮し、舌打ちとぶつぶつ文句を言いながらその場から立ち去っていく。 

 

「…大丈夫か? 二人共」

 

「やっぱ一人残すべきだったなー」

 

 虎杖と伏黒が二人に向かって問いかける。

 

「もし止めなかったら全身釘だらけにしてたわ」

 

「止めてよかった…」

 

「……」

 

「どうした刹那?」

 

 ガクッ

 

 その場で直立し、微動だにしない刹那に伏黒が話しかけるとその途端に膝から崩れ落ちる。

 

「ちょっ!」

 

「どうしたの!?」

 

「…すいません、腰が…抜けちゃって」

 

 地面にぺたんと両足をつけてヘラリと笑う。

 

「普段もっとやばいの相手にしてるじゃないの」

 

「高圧的な男性はまだ少し苦手でして…」

 

「あぁー、そういやそうだったな」

 

「ほら伏黒! いつまで地面に座らせてるつもりよ、早く手を取ってやんなさい」

 

「なんで俺に名指しなんだよ」

 

「虎杖がやると肩すっぽ抜けるでしょうが」

 

 虎杖の力加減はほぼ完璧なのでそんなことが起きるわけは無いだろうが、釘崎は伏黒を促す。

 

「ったく、ほら、立てるか?」

 

「ありがとうございます」

 

「お前、手…」

 

 クスリと笑いながら伏黒の手を取り立ち上がる。

 

 伏黒は手を取った時に違和感を感じる。

 

「あんたと刹那はここで待ってなさい、ほら虎杖行くわよ」

 

「りょーかーい」

 

 伏黒と刹那はその場に取り残され、手を繋いだままベンチに座る。

 

「…手、離さないの怒らないんですね」

 

「……震えてるのに離すほど俺は薄情じゃねぇよ」

 

 刹那は昔のことを克服できたわけでもなく、未だに高圧的な男との対面にはトラウマが蘇り体が震え、それを分かっている伏黒は無理に手を離そうとはしない。

 

 目を逸らしながら答える伏黒の顔を見ようと刹那は顔を近づける。

 

「おい、なんだよ?」

 

「今の顔を見てみたいなぁって」

 

「おい、やめろ今は見るなっ」

 

「お~い、味聞いてなかったからテキトーに買ってき…た…ぞ」

 

「あら、お邪魔だったみたいね、そのクレープは宿儺にでも食わせましょう」

 

「ちょっ、待て待て! そういうわけじゃねぇ!」

 

「あ、僕イチゴが良いです〜」

 

 伏黒が慌てふためくのに対し、刹那は何もなかったかのように虎杖の持つクレープを手に取る。

 

「なんだ、伏黒が男を見せたのかと思ったわ」

 

「俺のは抹茶だけど、伏黒はコーヒーで良いよな?」

 

「…あぁ」

 

 四人で並んでクレープを食べながら、なんとなく雑談をして時間を潰す。

 

「刹那の美味しそうね、一口交換しない?」

 

「野薔薇ちゃんのは桃ですか、それも美味しそうですね」

 

「コーヒー味って上手いの?」

 

「俺は好きだけど」

 

「小僧のような童舌では分からぬのだろうな」

 

「なんで出てきてんだよお前」

 

「伏黒恵、俺にもそのくれぇぷとやらを寄越せ」

 

「おいコラ無視すんな」

 

「なんでお前にあげなきゃなんねぇんだよ…」

 

「よいではないか、さして減るものでもない」

 

「食べ物はちゃんと減るんだよなぁ…」

 

 渋々クレープを宿儺の口に一口分放り込む。

 

「ふむ、まあまあだな」

 

「上手いなら素直に言やいいのに」

 

「よし、食べ終わったなら帰るわよ」

 

「へーい」

 

「はーい」

 

「おー」

 

 四人は明日の決戦に備えるため、高専へと戻って行く。

 

 ────

 

「相変わらず交通悪いわねぇ、この学校」

 

「そこばっかりは仕方ないですよ」

 

「釘崎ぃ〜これどこ置けばいいん?」

 

「流石に買いすぎじゃないか?」

 

「部屋に運んでー」

 

「あと一時間で会議なのでゆっくりできますね」

 

「おー、荷物運んだら共有スペースいってなんか飲もうかな」

 

 荷物を持って歩きながら話す四人の前に夏油が現れ、軽く会釈して挨拶する。

 

「随分大荷物だけど、今日は買い物に行ってきたのかい?」

 

「折角の休暇ですもの、有意義に使わなくちゃね」

 

「呪術師とはいえ高校生、楽しめる時に目一杯楽しみなさい。それじゃあ、会議には遅れないようにね」

 

 そう言い残しスタスタと廊下を歩いていく。

 

「よーし、キビキビ歩けー野郎ども!」

 

「「へーい」」

 

 荷物を釘崎の部屋へと運び終え、共有スペースへと四人集まりジュースを飲んでいると二年生が集まってくる。

 

「よぉ一年ズ、帰ってたのか」

 

「皆お帰り〜」

 

「真希先輩、訓練してたんですか?」

 

「しゃけ!」

 

「まぁ、やることもねぇしな」

 

「先輩の分のお土産もあるぜ!」

 

「これ、結構高い良いやつだな」

 

 虎杖はお菓子の詰め合わせを机に置く。

 

「お、気が利くな」

 

「俺これもーらい」

 

「ツナ、いくら!」

 

「じゃ、僕はこれもーらい♡」

 

 おなじみのように五条が突然現れ、虎杖と釘崎はビクッと肩を跳ねさせて驚く。

 

「アンタはいつも突然なんですよ」

 

「おっす、五条先生!」

 

「かわいい生徒達が集まってるところに混ざりたいじゃない」

 

 伏黒と釘崎が座るソファにどっかと腕を広げて座り、机にバサッと資料を広げる。

 

「なんだそれ?」

 

「ん? これ明日の資料、会議室行こうかと思ったら皆ここいるし、もうここで会議しちゃおうかなって」

 

「学長とか夏油先生はどうすんのよ?」

 

「今メールしたからそのうち来るでしょ」

 

「相変わらず自由ですね」

 

「そこが僕の良いところだからね」

 

「自分で言ってんじゃねーよ」

 

 そうしている間に、資料を各自手に取り目を通す。

 

 そこに夜蛾と硝子、夏油と日下部が合流する。

 

「悟、君はもう少し私達の都合も考えるべきじゃないか?」

 

「五条、お前さんの振る舞いは少し目に余るぞ」

 

「まぁ、遅刻しなかっただけ良しとするか、資料は手元にあるようだから始めるぞ」

 

 夜蛾が全員に向かって資料の内容を話し出す。

 

「まず、明日の謎の呪詛師が突きつけてきた宣戦布告、これを上が"双山悪童事変"と名付けるそうだ」

 

「ゲームとか言ってくるクソガキじみた奴が考えた悪趣味な事変だからだってさ」

 

「言葉は悪いがそういうことだ、話を続けるぞ。予告が来た二つの山に東京校と京都校の二校、さらに数名のフリーの術師の助力を得た総力をあげて対処にあたる、その資料に書いているから今読んでくれ」

 

 資料の内容

 

 大江山チーム

 

 夜蛾正道

 

 夏油傑

 

 日下部篤也

 

 東京校一、二年

 

 七海健人

 

 伊野琢真

 

 比叡山チーム

 

 楽巌寺嘉伸

 

 五条悟

 

 家入硝子

 

 庵歌姫

 

 京都校一、二、三年

 

 冥冥

 

 憂憂

 

「見てもらった通りだ、我々の目的は二つ、呪物の回収と呪霊の殲滅だ、何か意見は?」

 

「ちょっと待ってよ、京都校の方が大江山近いのに私達が行くわけ? それに五条先生を比叡山の方に行かせるの?」

 

「野薔薇の言うことももっともだけど、なにも考えなしに決めたわけじゃないさ」

 

「あぁ、悟の言う通りだ。まず大江山は確かに京都だが、先日の交流会で勝利した実力からこっちがメインになった。次に、知っての通り、こちらの学校には特級が三人いるため必ず分散する必要がある。今回の状況、一番の適任が傑だ」

 

「広域をカバー出来て、減った呪霊は食べ放題のバイキングコースで補充、傑の独壇場だよね」

 

「その通り、刹那は特級とはいえ学生、悟と傑は分ける必要があるから必然的にこうなった」

 

「硝子さんは?」

 

「硝子は治癒要員だよ、大江山には美々子と菜々子が治療係に専念するし、刹那も反転術式使えるしね」

 

 なるほど、と全員納得した上でさらに夜蛾は話を続ける。

 

「向こうの呪詛師の話が本当なら山の中では準一級以上がゴロゴロしている。よって、絶対に単体行動は禁止だ、どんな罠があるかもわからん、三人、最低でも二人で行動するようにしろ。会議が終わって十分後には向こうに出発する、各自必要な物を揃えて校門に集合、以上だ」

 

 会議の終わりと共に全員が必要な物を揃えに自室へと向かった。

 

 




次回投稿は最短でも三日です、気長に待っていただけるとありがたいです。
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