全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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ハーメルンの仕様を全く知らなくてどのくらいの人が読んでるかわからずほぼほぼ自己満足で書いてて笑える。
書いてたらどんどん長くなっていって、自分の考えてるところまでいったいいつ行けるんだろうか。


第三話 刹那の選択

「助けられる準備が出来てる奴じゃなきゃ、救えないんだよ」

 

 五条の重たい言葉。現代最強だからこそ、人一倍人間の死というものに向き合ってきたからこその言葉。しかしそれでもなお、納得がいかないのか、伏黒を五条は見つめる。

 

「はぁ、全く。いつからこんなに恵は駄々っ子になったんだい?」

 

 プルル…

 

「あ、もしもし伊地知?」

 

 静かになったその場でなる高音。五条のスマホが、伊地知と呼ばれる補助監督から電話がかかってきたことを示す。

 

「五条さん、今どちらに?」

 

「渋谷で可愛い教え子と、あと歌姫といるよー。なに、緊急の案件?」

 

「いえ、寧ろ逆です。明日の任務ですが、昇級試験も兼ねて京都校の生徒が行くことになりましたので、明日はオフになりました」

 

「そりゃそうでしょ、どう見たって二級案件じゃん。そんなことに僕を呼ばないでよ殴るよ?」

 

「はヒッ! すみません! すみません!」

 

「まぁそう謝るなよ伊地知、今僕は機嫌が良いんだ。後で呼ぶからそれまでに報告書適当に書いといてよ。それと、厄介な案件持ち帰るから覚悟しとけよー」

 

「五条さっー」

 

 プツッ

 

 五条の傍若無人ぶりは変わらない。不憫な後輩は、わざわざ"面倒事"と教えられた案件の準備のために胃を痛めることだろう。しかし横目で、少し嬉しそうに歌姫はため息をつく。

 不敵に笑う五条を見て伏黒は思う、この人はやっぱり信頼できる大人なんだと。

 

ーーー

 

 刹那は自身の住むアパートへと戻る、足取りは重い。理由はわかってる。あの人が帰ってくる。一日遊び回っていたからきっと、家で休むために帰ってくる。普段ならこんな感情はさしてないが、今回は違う。隠していたお金がバレてしまったから。もしかしたらもう家にいるかもしれない。また、殴られるかもしれない。お金のことで何か言われるかもしれない。ほんの少しの想像なのに、胸の奥からくる負の感情で吐き気がしてくる。

 

「…ただいま」

 

 家の鍵をあけ、2DKほどの広さの部屋の畳へと荷物を置く。叔父は帰ってきておらず、安堵し、深呼吸を一つつく。その瞬間、ガチャリと音を立ててドアが開く。血の気が全身から引いていくのを感じると、ドアの方からこの家の主が現れる。

 

 小太りで、アルコールによって赤く染まった頬。いつも見る姿が今日はより一層の恐怖を伴ってくる。

 

「せつなぁ…帰ってたのか」

 

「は、はい、お、おかえりなさい」

 

 無意識に声が震え、手が震え、心が潰れそうになる。

 

「そんなに震えるなよ、家族だろう?」

 

 刹那の叔父は隣に座り肩をぽんと叩く。ゾクゾクと背筋に嫌な鳥肌が立ち、身体を震わせる。

 

「怒られる心当たりがあるから震えてるんだろ? そうだろ? 当ててやろうか?」

 

「あの金のことだろ」

 

 今最も触れて欲しくない話題が叔父の口から発せられる。突如として声を荒らげ始め、肩を握る力が強くなる。

 

「てめぇ! 金のことは全部俺に言えっつったよなぁ!!?」

 

 叔父は立ち上がり刹那を蹴りばす、床に転がった刹那の腹に向かって何度も蹴りを入れる。

 

 ガッ! ドッ! ゴッ! 

 

「なんでてめぇがあんな大金持ってんだぁ!? とっとと吐けよ! あぁ!?」

 

「ヴゥッ」

 

 口から溢れ出そうになる吐瀉物を、口を抑え無理矢理飲み込む。

 

「ハァッハァッハァッ」

 

 刹那はその場から動けない程蹴られ抵抗する気力もない。彼女の力なら簡単に抗えるのにそれができない。彼女は、恐怖感によって縛られていた。呪いのように恐怖が体に纏わりつき、抵抗することができないのだ。

 

 力なく喉の奥から息がひゅーひゅーと漏れる。肋が折れ、呼吸の音がおかしくなり、声も満足に出せない。

 

「なぁ、せつな? お前が悪い子だから俺はお仕置きしてるんだぞ? 分かるよなぁ?」

 

 コクコクと刹那は涙を流しながら力なく頷く。特級の呪霊でさえくだせる彼女の実力は、今この場において一切の力を持たない。ただ無力な少女が、力ある強者に嬲られるだけ。

 

「鞭の後は飴が必要だよなぁ?」

 

 そう言った刹那の叔父は、制服を無理矢理に脱がし始める。

 

「い、いや…!」

 

 足をバタつかせて抵抗するが力が入らず、恐怖のためか呪力も練れない。呼吸がまともにできないため、声も出せない。

 

「お前は美人だからなぁ。安心しろ、痛くはしないからなぁ」

 

 助けも呼べず、抵抗もできず、涙を流すことしかできない。今の感情は絶望。身を守る術を持たぬ少女に出来るのはその感情に身を任せることのみ。

 

 スカートと上着を雑に脱がし、半裸にしたところで叔父は自身のズボンに手を掛ける。その時。

 

 ドガシャアァァァ! 

 

 音のする方から長身黒ずくめの男、五条悟が扉を肌に蹴破って入ってくる。190を超えるその長身は、小太りの男を見下して嘲笑う。

 

 

「おっ邪魔っしまーっす!」

 

「あぁ? 何だてめぇ! 誰に許可もらって入ってんだあぁ?!」

 

「うわっ、酒臭っ! 僕下戸なんだからやめてほしいなぁ、口直しにカフェオレとかないの?」

 

「てっめぇ!」

 

 五条に向かって乱暴な言葉を投げる叔父の言葉を完全に無視し、文句を垂れる。殴りかかる叔父の拳を掌で受け止める。否、掌に当たることすらなく、空中で拳が停止する。

 

「いやね、あんたの経歴かるーく調べたんだけどね。お前さ、呪詛師でしょ」

 

 そう言われ叔父の顔が青ざめていく。先程まで嘲る笑顔を見せていた五条の視線は軽蔑を含めた鋭い眼光へと変化する。

 

(…叔父さんが…呪詛師…?)

 

「いやー、あんたクズだけど、やっぱり血筋ってやつ? 結構良い術式(もの)持ってんね」

 

 アイマスクをずらし双峰の六眼で叔父を見据える。それが答え合わせのようにして、途端に理解した叔父は震えだす。

 

「お、お前、その眼…六眼…!?さっきの術式…まさか五条悟!!?」

 

「お酒の飲み過ぎで目見えてなかったの? それともド近眼? 腕のいい眼科紹介したげよっか?」

 

 アイマスクを戻し、ケタケタ笑いながら煽る五条。すると後ろから女性の声が聞こえてくる。

 

「中野彰、51歳。婿入りしたため阿頼耶識の性から中野になる。7年前に離婚し、以来一人暮らし。5年前に阿頼耶識刹那を引き取り、その際刹那に入った両親の遺産を盗む。そのため呪詛師から足を洗ったと思われる。なお、殺し屋に近い依頼を多く受けていたため見つけ次第即刻排斥対象。術式は保存呪法、エネルギーを割合的に保存して持ち運べる。相伝の術式?聞くだけでも確かに厄介ね、推定で二級程度かしら?」

 

「ヒュー、やるねぇ歌姫」

 

「うちの補助監督に無理言って集めてもらったわ」

 

 腐っても特級と準一級。情報とそれを処理する能力、呪詛師を前にしようと一切臆することない豪胆さを持っている。

 

「てめぇこのやーームグっ!?」

 

「おいおい、もっと喜べよ? お前みたいな雑魚が最強の僕に葬ってもらえるんだぜ?…って、言いたいところだけどさ、文句があるのは僕だけじゃないんだよね」

 

 五条が彰の頬を片手で締め上げ、その怒気のこもった蒼い眼と言葉でで彰を見据える。しかし、その後に雑に床に放る。

 

「玉犬黒、白」

 

 アォォーン! ウォォーン! 

 

 窓から黒い犬が、ドアから真っ直ぐに白い犬が、雄叫びをあげて彰に向かい、噛みつく。刹那はあまりの事態の展開にその場で目をパチパチと瞬く。

 

「"ぅ"あ"ああ"あ"!!」

 

「恵、殺気立つのはわかるけど殺しちゃ駄目だよ。そこから先はまだ君には早い」

 

「……分かってますよ」

 

「帳降ろしてて良かったわ。ドア蹴破った時といい今の悲鳴といい、聞かれたらトラブルに発展しかねないもの」

 

「大家さん以外いないのが救いだったねぇ」

 

 五条と歌姫がここから先は伏黒の番ということを示すように無意味に話す。

 

 伏黒は刹那へと歩み寄る。

 

「あ、あの…ふーー」

 

 パサッ…

 

 刹那の言葉を中断し、伏黒はあられもない姿の刹那に自らの上着をパサリと被せる。少しだけ刹那より大きい少年の服は彼女を覆い隠すのに丁度いいサイズだった。

 

「……刹那、俺は正義の味方(ヒーロー)じゃない、呪術師だ。呪い、呪われる世界に身を置く人間だ」

 

 伏黒は刹那の眼を真っ直ぐに見て話し出す。

 

「これだけのことしちゃいるが、最終的に決めるのはお前だ。俺に強制する権利もなければ、義務もない。お前が決めるんだ。呪いの世界(こっちがわ)にくるか、このまま…"普通"を目指して生きるか」

 

 刹那は困惑している。自分の体が穢されかけ、目の前で叔父が呪詛師と判明し、あまつさえ、数刻前にあったばかりの少年にこれからを生きる上での二択を迫られている。頭の後ろを掻きながら目をそらした伏黒はもう一言だけ付け加える。

 

「ここから先はもう完全に俺のエゴだが…願わくば、お前とはこれっきりって関係にはしたくない」

 

 顔を赤らめている伏黒の背後の男。正確には五条が、イジりたいがそういう雰囲気でもないため身を悶ている。

 

 見るべきもの、考えるべき未来。考えることも解することもいくらでもある。だが…今の刹那には、少しだけ目つきの悪い、黒い少年しか見えていなかった。

 

「それは…呪いの言葉ですよ…恵君…」

 

「いや…悪い、そういうわけじゃっ」

 

 刹那は、一言笑って言うとその後に伏黒に体を預ける。そしてもう一言呟くように震えた声で、けれど強く、強く言葉を放つ。

 

「よろしく…お願いしますね」

 

「っっっはぁーっ…あぁ、こちらこそ」

 

 伏黒は責任の重さと人助けの不慣れから深くため息をつき、刹那の背中を優しくさすり二人の大人を確認する。

 

 五条がその光景を写真に収めようとするのを歌姫が止めている。

 

「って、こんなことしてる場合じゃないわ。かなり怪我してるし早く治療しなきゃ、それと補助監督の手配も」

 

「歌姫先輩!あざーす!」

 

「こういうときだけ後輩面すんじゃねぇ 」

 

「五条さん」

 

「ん?どしたの?」

 

「寝ちゃったんですけど」

 

「……あはっ!まぁ色々あったしねぇ、伊地知が来るまで寝せてあげな」

 

「え"、俺、伊地知さん来るまでこのままですか?」

 

「なにか問題でも?」

 

「いやその…色々と辛いんですけど」

 

 伏黒も呪術師といえど思春期に入ったばかりの中学生。同い年で、美少女とも言える刹那から押し倒されるような形でずっといるのは色々当たったりして辛いものがあるだろう。当然、五条がそれを見過ごすわけもなく、途端に新しい玩具をもらった子供のように変化する。

 

「んふふ、写真取っちゃおーっと」

 

「ばっ!やめっ!」 

 

「騒ぐと起きちゃうよー?」

 

 刹那のことを考え、大人しくする以外の選択肢がない伏黒は、せめてもの抵抗と言わんばかりに二体の式神を体に纏わせた。

 

「さて、悪ふざけはこれまでにして、と」

 

 五条がスマホの写真機能を閉じて衝撃の一言を放つ。

 

「刹那は、特級の案件を受けたりしてたみたいだけどあくまで受けたことがあるってだけで、多分倒すのはいつもギリギリなんじゃない? 正直、僕や傑の強さには程遠い」

 

「何当たり前のこと言っ「でも!」」

 

 歌姫の発言に五条が口を挟む。

 

「刹那が眠ってか安心してか、無意識の術式の発動が緩んでさ。見つけちゃったんだよね。刹那が実力に反して呪力がなんでこんなに少ないのか」

 

「少ない? 特級クラスが?」

 

「あくまでそれは二年もすればの話。今はなんていうかね、言うなれば体に対して心が追いついてない状態みたいな感じかな」

 

「んで? その原因は?」

 

 焦らす五条に痺れを切らした歌姫が問いかける。

 

「彼女、自身に縛りを付してるね。それも、恐らく強力なのを産まれつきだ。本人さえ知らない縛りを無くすのは至難の業だ。このままじゃ実力が肝心なときに発揮できない、せいぜい一級止まりだね」

 

 まぁそれでも歌姫よりは強いけどー。そう再び歌姫を煽り手を広げる。こんなやり取りの最中でもふざける五条に対し、怒りは湧きながらも話を続ける。

 

「…本人も気付けないのは厄介ね、彼女が自分の何を縛っているのか分からないけれど、心身に影響があるのならなんとかしてあげたいわ」

 

「どんな縛りか分からないんですか?」

 

 五条は伏黒の問に首を横に振り答える

 

「言ったでしょ。術式の自衛機能が緩んでるだけだって、詳しいことは分かんないや」

 

 話が終わると五条が無責任なことを言い出す。

 

「まぁなんとかなるでしょ、高校生になったらなんとかするさ」

 当たり前のように無責任な言葉を放つ五条(バカ)

 伏黒は数刻前の自分の発言を心のなかで取り消した。




次回からいよいよ戦闘シーン入ります。
原作の流れには沿っていくつもりですが、作者の脳内はお花畑なので何人か死なないですし、何なら平和なエンドすら目指します。
正直大まかなシナリオ以外はその場のノリなんで多めに見てください。
大変な矛盾を見つけたので直しました。
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