全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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私の力不足なのは重々理解していますが、できれば、ほんとーにできれば悪いところを教えてほしいです!


第三十話 比叡山(前編)

 ー比叡山サイドー

 

「本当に十分で片付けるし…てかなんで泣いてんのよ?」

 

「ぅうっ呪物の影響かスマホが使えなかったんだ…すまない高田ちゃん! 不甲斐ない夫でっ!」

 

 地面に膝をつき悲しみに打ちひしがれる東堂を横目に銃の整備をする真依。

 

 ガサガササッ

 

「っ!」

 

 バッ! 

 

 真依が音のする方向に銃口を向け、警戒態勢を取る。銃を握る手に汗が滲むと草陰からその正体は現れる。

 

「あっ真依、ってそんな物騒な物向けないでくださいよ!」

 

「なんだ霞か…あれ、メカ丸は?」

 

「ちゃんといるゾ」

 

 三輪の後ろから腕に装備された刃で草木を切りながらメカ丸が姿を現す。

 

「東堂は何をしていル?」

 

「高田ちゃんのYou Tubeをライブで見れなくて泣いてんの」

 

「メカ丸、お前の力で電波とか呼べ」

 

「俺はそういのじゃナイ」

 

「諦めなさいよ、さっさと呪霊狩らないと夜が明けるわ」

 

「そんなことでお前は高田ちゃんのファンとして恥ずかしくないのか!?」

 

 東堂の悲痛な叫びを無視して次のポイントへと三人は向かう。

 

「次のとこ広いし三人で行きましょ」

 

「えっ、東堂先輩は…」

 

「放っておケ、そのうち追いつク」

 

 東堂も追いつき、次のポイントである阿弥陀堂へと到着する。

 

「ここまでの道、呪詛師が用意した最低が準一級の呪霊っていっても、湧いて出た雑魚のほうが多いわね」

 

「一級以上はメカ丸と東堂先輩に任せて私達は雑魚狩りましょうか」

 

 三人に追いついた東堂が話し出す。

 

「ここは死者を追随する法要ができる場所だ、死者を憂う思いは負の感情にもなりえる、もしかしたら特級レベルがいるかもな」

 

「想像には難くないわね、嫌よ私はそんなやつ相手にすんのは」

 

「……」

 

「どうしタ三輪? やけに静かだガ」

 

「えっ? あぁいえ、勘違いなら良いんですけど…」

 

「言いたいことあるならはっきり言いなさいな」

 

「んー、なんかここ呪霊全くいなくないですか?」

 

「ん? 確かに…これだけ中央近くならいてもおかしくないはずだな」

 

 四人が奇妙な違和感を抱くと突然それはやってきた。

 

 プァ────!!!! 

 

 突然ラッパのような音が山に響き渡り全員動きを止める。

 

 キ──ン

 

 耳鳴りが暫くの間鳴り響き、その間思考を曇らせる。耳鳴りが止むと開口一番に真依が言い放つ。

 

「…うるっさ」

 

「これって交流会の時の音ですよね? なにかの合図でしょうか」

 

「分からん、分からんが、俺の直感がこれは人為的な音だと告げている」

 

「直感かどうかは知らんガ、その考えには同感ダ、恐らく呪詛師…呪霊の調教に使ったのではないカ?」

 

「どちらにせよ一旦戻って報告しましょうか、五条先生とかが原因突き止めてるでしょうし」

 

「Heyガール! そりゃちと早計じゃないか?」

 

 真依の意見に賛同し、下山を始めようとする一行の前方、建物の上に突然ラッパを持ちフードを被った人間が現れる。

 

「誰だ?」

 

「この状況下でそれマジで言ってるん? ウケるだけど」

 

「その口ぶり、呪詛師ですねアナタ」

 

「そうそう! こういう時は相手の確認よりも先に手を出すべきじゃないかい!?」

 

 ドゥッ、ドン! 

 

 呪詛師に向かって真依は拳銃をニ発発砲し、弾は胸部と足部に命中するが、男は直立したまま話し続ける。

 

「驚いたかい? 俺の本体は山の何処かにいるぜ、コイツは俺の術式による偽物さ!」

 

「チッ…何が目的よアンタ」

 

「目的? お前らは理解してないなぁ、ビデオ見ただろうが、これはゲームなんだよ! この山には俺の仲間が躾けた呪霊がわんさかいて、そいつらは呪術師を殺しに行く、お前らは俺らを殺しにくる、シンプルだろ! 俺らの目的は殺し合いだよ」

 

「そのラッパで呪霊を操作していると見た、俺の至福の時を邪魔したんだ、望み通りお前を今からぶちのめしに行く」

 

「威勢が良いねぇ! 流石は京都校のトップランカー! 楽しみにしてるぜぇ!」

 

 男はそう言うと建物から力なく転げ落ち、四人の前方に転がり落ちる。

 

「…消えないってことは呪骸ですか、あれ?」

 

「いヤ、そんな感じはしナイ、というよりあれは…もしかしテ死体カ?」

 

「…はっ?」

 

 東堂が男に近寄り確認する。

 

「…間違いないな、人間だ」

 

「じゃあ私は…人を撃ったっていうの?」

 

「……勘違いするな真依、足元に固定具がついていて首に切り傷がある、元々この男は死んでいたんだ、お前が殺めたわけじゃない」

 

「…そう」

 

 俯く真依に東堂がフォローを入れ、真依は項垂れる。

 

「どうしましょうか、多分これ本人はそんなに強くないですよね」

 

「本人が姿を隠しているということは撹乱するようなタイプの術式だろうな」

 

「あのラッパの音の出どころが分からないのモ気になるナ」

 

「多分それも術式の効果だろう、俺はこのままあいつを探す、お前達は戻って補助監督と先生達に報告しろ」

 

「達って全員ですか?」

 

「全員だ、メカ丸がいるからある程度下山はなんとかなるだろ、真依は少し休め、元々呪力の濃度が異常なんだ長居はできれば俺だってしたくない」

 

「この場の一番の実力者は東堂ダ、指示に従おウ、戻るついでニ、加茂にも知らせた後、俺も合流しよウ、発信機用にミニメカ丸を渡しておク」

 

「頼んだ、奴の余裕の態度からして俺の手に余る可能性もあるからな」

 

「そうと決まれば一度外に出ましょう、大丈夫ですか? 真依」

 

「…いつまでも感傷に浸ってるほど弱くないわ、行きましょう」

 

 東堂は三人に下山を指示し、呪詛師を探し始める。

 

「高田ちゃん、俺を見守っていてくれよ」

 

 高田ちゃんの写真が入ったロケットペンダントにキスをして山を登り始める。

 

 東堂の脳内の様子

 

(状況を整理しよう、比叡山は三つのエリアからなっていて、俺がいるのは東塔のエリアだ。俺が今まで周った建物は二つ、Mr.五条は結界ギリギリの空から西を、Ms.冥はカラスによる超広範囲偵察で東を、西宮達は横山、西宮は他の二人に比べて索敵能力は低い、と、いうことは横川の可能性が高い、裏をついてカフェなどの建物の中と考えるが妥当か)

 

「よし、横川に向かうか」

 

 ダッダッダッ

 

 東堂は横川に向かって駆け出していく。

 

 ──

 

「ここを真っ直ぐ行くと出口ダ、二人は待機中の学長と冥さんニ知らせてくレ」

 

「分かりました、お気をつけて」

 

 三人は呪霊を祓いつつ出口に到着するが、三輪と真依は途中で遭遇した一級によりダメージを負ったため、一時的な戦線離脱を判断していた。

 

 二人は重たい門を開け、学長の元へいく。

 

「おや二人共、怪我だらけだが無事だったか良かったよ」

 

「冥冥さん、すいません真依と私は少しの間離脱します」

 

「あぁ、早く硝子の所へ行っておいで」

 

「その前に中であったことの報告をします」

 

「つい先程、中で交流会の時に鳴ったラッパような音が鳴り、そのラッパの犯人と思しき呪詛師と対話しました」

 

「そいつは処分しなかったのか?」

 

「…真依が二発発砲しましたが、それは死体を使った偽物で呪詛師の術式によるものとのことです」

 

「中ではそんなことになっているのか…まずいな」

 

 冥冥が呟くと空から五条が歌姫を抱えて降りてくる。

 

「何がまずいの?」

 

「降ろせぇ五条!」

 

「五条、お前の方はどうだったんだ」

 

「まず説明してほしいんだけど、まぁいいや、ダメだね、呪力が蔓延しすぎて何も見えないや、ってか冥さんは? カラスなら色々見えるでしょ?」

 

「今回連れてきたカラスは五十羽、呪物の中にカラスを七割投入した、呪物の回収は多分粗方終わったと思うけど全部殺されたから今は何も見えないね」

 

「じゃあ今は中の状況なんも分かってないの?」

 

「そうなるわね」

 

「んー、中の呪霊の数は結構減らしたし一回休憩ってことで集める?」

 

「言い方が軽いのよ、てか山に入ってるのは三人? まとめて行動してるの?」

 

「…あ、メカ丸と東堂先輩は単体行動ですね」

 

「まとめて行動しなさいって言ったのに、もー…」

 

「仕方ない、カラスを四羽送り込んで道案内をさせる、なるべく早く四人をまとめるようにしよう」

 

 冥冥はカラスを門から入れていく。

 

「仕方ない、面倒だけど空からの索敵が機能しない以上歩くか。ほら、歌姫行くよー」

 

「ちょっと、五条!」

 

 歌姫と五条は門を開けて再び比叡山へと入っていく。

 

「報告はもうないね? 早く治療を受けて来なさい」

 

「「はい」」

 

 ──ー

 

「ねぇ加茂君」

 

「…なんだ」

 

「そろそろ血が足りなくなるんじゃないの? 輸血パックあと何個?」

 

「…あと二つだ」

 

「ここから一番近い門探すから一旦出ようよ、加茂君倒れたら運ぶの私なんだからね」

 

「仕方ない、予備の輸血パックを取りに戻るか」

 

「次は横川中堂の予定だけど仕方ないよ、一度戻ろう」

 

 二人が下山の判断をすると、近くの木にぶら下がっている呪物を発見する。

 

「うわっ、見つけちゃったよ、これあの箱だよね?」

 

「間違いないな、手土産に持っていくか」

 

「呪霊を呼ぶ箱がこんなとこにぶら下がってていーのかなー、私なら見つかんないとこに隠すけど」

 

「…待て西宮、さっきのラッパの音、私もお前も出どころが分からなかったと記憶しているが、間違いないな?」

 

「? 、そーだけど、なんで?」

 

「…あの音の後、呪霊を見かけたか?」

 

「…? えっ見てない…見てないよ!」

 

「こんなところに呪物があるのに呪霊がいないなんてありえるか? …何か嫌な予感がする、急いで下りるぞ」

 

 二人が異様な気配を察知して下山を急ごうとすると全速力の東堂が茂みの中から現れる。

 

「加茂! 西宮! 登れ! 下はまずい!!!」

 

「「東堂(君)!!?」」

 

 ──ー

 

「あのラッパはそういう合図かー、やってくれたなー」

 

 青ざめた顔で苦しむ歌姫を横抱きにして呟く。

 

「呪術師相手に科学の毒ガスとか反則じゃない?」

 

 五条の眼前には一目で毒と分かる色をした煙が漂っており、カラスの死骸が足元に転がっている。

 

「低級の呪霊がやたら沢山扉の前に集まってると思ったら…こんなもん持ってるとはね、迂闊に吹き飛ばすんじゃなかったなー。硝子治せるかなぁ」

 

 歌姫の状態を悪化させないように無下限の内側に入れて慎重に山を登っていく。

 

「どうしよう、マジでヤバいなぁ、蒼使ったら呪霊が爆散して被害広がるし、門を開けたらガス漏れるし、外への通信手段もないし…とりあえず皆と合流するか。歌姫、あまり揺らさないように歩くけど頑張ってね」

 

 




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