全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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第三十一話 比叡山(後編)

 ──

 

 二人は息を切らしながら走り、西宮は箒に乗って飛びながら上へと向かっていく。

 

「ねぇ東堂君、下はやばいってどういうこと?」

 

「さっき下の様子を見に行こうとしたが、カラスが腐り落ちていくのを見かけた、恐らく毒だろう」

 

「呪術的な物じゃないやつ?」

 

「多分な、近くに行くまで呪いの気配が極端に薄かった。状況から考えて上に登るタイプだろう」

 

「…証拠はあるのか?」

 

「無い、死にたきゃ下にいけ」

 

「…本当なんだな。だが登ったとしてどうする? 時間稼ぎにしかならないんじゃないか?」

 

「メカ丸が俺と合流することになっている、あいつの"大祓砲(ウルトラキャノン)"なら毒ガスを吹き飛ばせるだろう」

 

「でもそんなことしたら呪力の無差別放出でまとめてやられちゃうんじゃないの?」

 

「毒ガスよりは生き残れる可能性がある分マシだろ、それに山頂にこの異常を察してMr.五条が居れば無下限で解決する」

 

「了解した。西宮、山頂への道は?」

 

「んーと、こっちかな」

 

 地図を見ながら箒に乗って二人を案内する。

 

 ダッダッダッ! 

 

「建物が多いから迷わずに済むのが救いだな」

 

「夜だし人がいないから灯りなんて無いけどね」

 

「にしても呪霊が全くいないな、まさか祓い尽くしたか?」

 

「この広さだ、面積に対して呪霊の数があってないのかもしれん」

 

 三人は山頂へと向かって走りながら、周りを見渡していく。

 

「山頂ってガーデンミュージアムだよね、観光で来たかったなー」

 

「高田ちゃんとのデートに花畑か…悪くない」

 

 三人は二十分程走り、目的の場所へと到着するが、そこには先刻対峙した呪詛師と四体の肥満な人型と腐った犬の姿をした呪霊が列をなして待ち構えていた。

 

「何これ…」

 

「全部一級だな、特級ではない」

 

「偶然の産物だが、見つけたぞ呪詛師」

 

「Hey! ガール&ボーイ! 俺からのプレゼントは楽しんでもらえたみたいだな」

 

 呪詛師は自らの首を締めて舌を出すポーズをとるとケタケタと嗤って言い放つ。

 

「生憎だが、真依と美輪は下がらせた、誰一人として被害にはあっていないぞ」

 

「うーん、それはおかしいなぁ?」

 

 呪詛師は目を覆い隠すと話す。

 

「袴を着ている女呪術師が毒ガスを吸ったみたいだけどぉー? 五条悟のおかげでなんとか無事みたいだけど時間の問題じゃないかぁ?」

 

「「「!!」」」

 

「おい呪詛師、山頂から吹き飛ばしてやるよ」

 

「女のタイプを聞くまでも無い、お前は殺す」

 

 西宮は激昂し、中指を立て、東堂は指をポキポキと鳴らす。

 

「おー怖い怖い…そんなに憎いんならよぉ! 思う存分呪い合おうぜ!!」

 

 プァップァップァー! 

 

 呪詛師はラッパを規則的に鳴らすと呪霊が襲いかかってくる。

 

 西宮は空に飛び上がり、加茂は弓矢を構える。

 

 東堂が先陣をきって先頭の肥満呪霊の頭を掴み顔面に膝蹴りを叩き込む。

 

「ふんっぬ!」

 

 メゴォッ! 

 

 "お"ぉぉぉ

 

 東堂の着地を狙った犬型の呪霊が二体襲いかかるが加茂と西宮が払い飛ばす。

 

「赤血操術、刈払い!」

 

「付喪操術、鎌異断」

 

 ゴウッ!!! 

 

 ギャゥンッ! 

 

 三体の呪霊を跳ね除けるが猛攻は続き、もう一体の肥満な人型呪霊が口から汚濁液を東堂に向かって吐き出す。

 

「遅い! …んぉ!?」

 

 犬型の呪霊が一体東堂の足に口から長い舌を出して絡ませる。

 

 汚濁液が動きを抑制されている東堂にかかる直前。

 

 バァン! 

 

 東堂が手を叩き術式を発動させてもう一体の犬型の呪霊と位置を交換する。

 

 ギャウン! 

 

 オブォォォゥゥ

 

 汚濁液を浴びた二体の犬型呪霊はドロドロに溶けていく。

 

「毒が好きだな、お前は」

 

 ビリビリビリ

 

 制服に汚濁液がかかり、溶けていくのを見て東堂は制服を破き上裸になる。

 

「ここからは少し傾向を変えていこう」

 

 東堂が呪霊に向かって走り出し、目の前まで走る。

 

 バァン! 

 

 再び東堂が手を叩き加茂と位置を入れ替え、既に攻撃の態勢を整えていた加茂が攻撃する。

 

「穿血」

 

 バシュウ! 

 

 バァン! バァン! バァン! 

 

 東堂はどんどん西宮と加茂と位置を入れ替え、ものの十数秒で三体の呪霊を祓い終える。

 

 残りの一体が腹部に口を出現させ大きく開く。

 

「俺は美味そうか呪霊! なら、特大のを食わせてやる」

 

 バァン!! 

 

 近くの茂みで隠れて援護の姿勢をとっていたメカ丸と東堂は位置を入れ替える。

 

「大祓砲」

 

 ドゥっ!!! 

 

 メカ丸は口の中に左腕を半分突っ込みながら大祓砲を放ち、呪霊は爆散する。

 

「いたのか、メカ丸」

 

「隠れていたんだがナ、バレていたカ」

 

「呪霊が盾になって廻城の壁に当たんなくて良かったよ」

 

「さて、残りはお前だけだな、呪詛師よ」

 

 四人で呪詛師を見ると呪詛師はフードを取り、ラッパを地面に置き降伏のポーズを取る。

 

「参った参った、降参だ降参、煮るなり焼くなり好きなようにしろよ」

 

「やけに大人しいな、これだけしておいて」

 

「だってー、俺の術式は戦闘向けじゃないしぃ、このラッパだって俺の仲間が躾に使っただけのただの道具だしなー」

 

「…は?」

 

 西宮が呪詛師の胸ぐらを掴んで問いただす。

 

「この呪霊ってアンタの仕業じゃないの!?」

 

「落ち着け、この際だから全部白状するぜ、リトルガール、俺の術式は共有、手元にあるものの音や自身の感覚を、印をつけたものに共有出来るんだ、つまり呪霊の躾には俺は関わってない、ザーンネン♪」

 

「じゃあせめて毒をなんとかする方法を教えろ! 放っとけば自分も死ぬんだ、何か用意くらいはしてるだろ!」

 

 西宮が今にも殴りそうな勢いで問い詰めると呪詛師は舌を出して嗤い飛ばす。

 

「はっ、ねーーよんなもん! 勘違いすんな! 俺はゲームをしてんだ、勝とうが負けようが人生最期の超遊戯を楽しむためにアイツに協力してんだよ!」

 

「そんな…」

 

 呪詛師を掴む西宮の手の力が緩み、その場に座り込むと呪詛師はその表情を覗き込む。

 

「あーーっ最っ高♡良いねぇその表情!」

 

「…どうするんダ?」

 

「毒の範囲ははかなり広い上に遅くはない…やはりメカ丸が吹き飛ばすくらいしか思いつかんな」

 

「それは無理だナ、吹き飛ばしたとしテ下山するほどの範囲は吹き飛ばせなイ、繰り返して使えるほド燃費も良くなイ」

 

「本当に手段がないな、遺書でも書くか?」

 

「加茂、お前がこんな時に笑えない冗談を言うやつだとは思わなかったぞ」

 

 四人は絶対絶命の状況に置かれ、生存を諦める段階までいくと、唯一の頼みの綱がその姿を現す。

 

「やー、皆、無事で何よりだよ」

 

「「「五条(先生)!」」」

 

「庵先生!」

 

「大丈夫、少し寝てるだけだから、てかそいつって犯人?」

 

「今回の犯人であることに変わりはないが直接的な原因は違うようだ」

 

「なるほど…OK、皆僕に近づいて離れないでね、これから君達を無下限に入れた状態で下山する、門を開けた時に毒ガスが漏れるのは冥さんが気づいて対処してることに賭けよう」

 

 プァー!!!!! 

 

 五条が下山しようとすると呪詛師がラッパを大きく鳴らす。

 

「手土産だ五条悟、この山の残り十数体の呪霊全部お前に行くようにしてやったよ、精々足手まとい連れながら頑張んな」

 

「勘違いすんなよ、虫ケラをいくら連れても僕にとってはそこらのハウスダストと変わらない、お前こそ毒ガスで苦しんであの世に行け、それで生きてたら先生がお前の胸にでかい花丸マーク開けてやるよ」

 

「ハッハッハ!! 流石は最強様! 去り際の台詞まで完璧だ! あばよ! 一足先に地獄に行ってるぜぇ!」

 

 ダァン! 

 

 一発の銃声と共に呪詛師の笑い声は途絶えた。

 

「…下りようか」

 

 比叡山サイド、任務開始から五時間と二十三分、多数の負傷者を出したが呪物の回収及び、呪霊の殲滅完了につき任務遂行とみなす。

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