全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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三日空きましたすいません!
少し用事が建て込んでいたもので、、、


第三十七話 一難去って次は二難

 ──

 

「ねー、最近会議多くなーい?」

 

「仕方ないだろう、先日の虎杖君達の報告にあった十月三十一日、次から次へと問題は山積みだ」

 

「僕だって疲れてるんだけどなぁ、特級を酷使し過ぎじゃない? 僕らがその気になれば上の奴らとか皆殺しに出来るんだよ?」

 

「私を含めるんなら硝子も誘わなければね」

 

 会議室に向かう廊下を歩きながら二人が話していると夜蛾が部屋から現れる。

 

「物騒な話をするな、お前達ならやりかねん」

 

「流石にやんないってー、なぁ傑」

 

「まぁね、もしするなら生徒達が巣立ってからだ」

 

「本当に止めてくれ…」

 

 こめかみを抑えながら夜蛾は呟き、会議室へと入室し、既にメンバーは揃っているため会議を始める。

 

「それでは、双山悪童事変の結果報告及びそこで発覚した十月三十一日についての会議を始める」

 

 夜蛾の挨拶と共に会議が始まった。

 

「ではまずは比叡山の報告は庵歌姫殿から」

 

「はい、今回比叡山では最終的な結果として呪霊の殲滅、廻城を含めた約五十の呪物の回収に成功しました、しかし被害は大きく、廻城の外にいたメンバーと五条悟を除く大多数が負傷、さらには呪詛師が散布した神経毒ガスによって三日間は比叡山周辺を立ち入り禁止区域とする方針です」

 

「ご苦労、では大江山は傑から報告を頼む」

 

「大江山では結果として呪霊の殲滅には成功しましたが、二つの特級呪物を取り逃す結果となりました。また、特級術師阿頼耶識刹那を私の判断ミスにより致命的な大怪我に追い込むこととなりました、誠に不甲斐ない限りです」

 

「…大江山の最後の特級仮想怨霊二体、あの時はそれが最善だった、気に病むことはない、死者がいなかったのだ今回はそれでいい」

 

「傑、さっきもいったけど気にすんなよ、それに僕としては結構嬉しいんだよ」

 

「嬉しい? あんた自分の教え子が死にかけて嬉しいって言うの?」

 

 五条の発言に歌姫は苛立ち睨みつける。

 

「怖いなー歌姫、目つき悪いとモテないよ?それに関しては僕だって皆と同じ気持ちさ、僕が言ってるのは刹那の成長だよ」

 

「成長?」

 

「どうやらね、今回で刹那は黒閃を決めたらしい、確実に呪力の核心を摑んでる、それに僕や傑、憂太にあって刹那にはなかった命の危機、怪我以上に得たものは大きい」

 

 五条は笑いながら嬉しそうに話すと夜蛾が会議を再び進行する。

 

「個人の話はあとにしろ、続いて十月三十一日についての話だ、東京校の生徒数名から出た日付だ。なにか心当たりがある者は?」

 

 夜蛾がその場の全員に問いかけるが誰一人として意見を出さず反応もない。

 

「…やはり分からない…か」

 

「現状、情報が少なすぎる、向こうの目的は何なんだ?」

 

「非術師が死ぬのは確かだな」

 

「呪霊と呪術師と呪詛師でハロウィンパーティーでもする気かな?」

 

「とんだ三つ巴大戦争だな」

 

「笑い事じゃないぞ、これだけの規模を仕掛けてくる連中だ、前回は事前に知らされたせいで非術師の被害がなかったが、このままだと今回は確実に死者が出ることになる」

 

「そういえば…何故刹那は殺されなかったんだ?」

 

 不意に硝子が呟く。

 

「それに関しては傑がなにか知ってるんじゃない?」

 

「いや、私も詳しい目的は知らないな…でも確かに考えてみると不自然だ、向こうは最後の最後まで刹那を死守していた、最終的には逃げるのに囮にしていたが、それまでは連れて帰ろうとしていたように見えたな」

 

「考えれば考えるほど分からないな、しかし例の日のことを考えても呪霊はもう残ってないはずだろう」

 

「いーや、夜蛾学長、それは間違いだね」

 

 五条は手をひらひらと振ったあとに腕でバツ印を作る。

 

「間違い? 、どういうことだ、説明しろ悟」

 

「皆さぁ、勘違いしてない? 今回は前座なんだよ、前座。向こうにとってのメインは十月三十一日。特級呪霊だって今回二体しかいなかったし、少なくともあと四体…いや、あの術式のことを考えたら二桁はいる可能性すらある」

 

「そんな…! 高専の術師を総動員したのよ!? それなのにあれが前座だなんて…」

 

「それがもし本当なら…最悪、呪術が世に知れ渡る結果になるぞ…!」

 

 夜蛾が発した言葉にその場の全員、動揺を隠せずにざわめき出す。そして追い打ちをかけるように会議室のドアが乱暴に開かれ、顔面蒼白で冷や汗をかく補助監督から報告が入る。

 

「失礼します!! 大変です!」

 

「落ち着きなよ、何が大変なの、災害でも起きたー?」

 

 五条が机に足を乗せながら冗談交じりに笑って話す。

 

「はいっ、その通りです」

 

「……は?」

 

「原因不明の力で津波が発生! 地震などの前触れもないため被災者の数が超多数!」

 

「傑、テレビをつけろ」

 

 ピッ

 

 静岡に原因不明の津波発生、地震などの前触れも無く逃げ遅れた被災者の数は三十万人以上に登るとのこと、これに関して政府は──

 

 その場の全員は再び言葉を失い、テレビを観る。

 

「津波の大きさは大規模では無いものの死者が出るには充分、加えて原因不明という恐怖の感情が…」

 

「もういいよ、状況は分かった」

 

「本来、呪霊によって災害が起こされる時は大規模な呪力の流れでわかったはず、しかし高専のメンバーや上層部もこっちに夢中で感知できなかった…前座どころじゃない、あれは全部囮だったんだ…!」

 

 ダァン! 

 

 夏油は状況を理解し、悔しさからか机を叩く。

 

「これはまんまと…出し抜かれたね」

 

「件の日まで二週間、呪霊が発生するには充分すぎる時間だな。術式の特性上、確実に現場に呪詛師は現れる、傑、お前は今から大至急任務の準備、静岡へと向かえ」

 

「定期報告と呪霊の殲滅が任務で良いですね?」

 

「そうだ、新幹線は今使えないだろう、なるべく最速最短の手段を取っていけ、必要なら二級以上の術師も何人か同行させるように補助監督に伝えろ」

 

「了解、では」

 

 夏油はそう言い残して会議室を去っていく。

 

「今回の件、私達で話し合って結論が出せるものではない、上層部に全てを伝えて決定を待とう、異論がなければ会議はこれで終わる、解散だ」

 

 会議が終わると東京校の教師陣は仕事に戻っていき、歌姫は京都に戻るための帰り支度を整えていると五条が歌姫を呼び止める。

 

「歌姫、ちょっと時間いいかな」

 

「いいけど手早くね、どうしたの?」

 

「例の内通者の件だよ、何か手掛かりは?」

 

「…目ぼしい人物は大体洗った、疑いたくないけど生徒も調べてみるわ」

 

「OK、くれぐれも気をつけなよ、歌姫は弱っちいんだから」

 

「いつも一言多いのよアンタは、早く任務に行きなさい」

 

「はいはーい、じゃあね歌姫」

 

 歌姫はスタスタと廊下を歩いていき、五条は手を振って見送る。

 

「さて、任務の前にかわいい生徒達の様子でも見に行くかな」

 

 五条は医務室へと向かい、扉を開ける。

 

「やーっぱり皆ここにいた」

 

「げ、悟」

 

「すじこ」

 

「アンタの分のプリンは無いわよ」

 

 医務室にはプリンを食べながら談笑する、一、二年の生徒達がいた。

 

「一応怪我人いるんだから静かにしなね〜、てか宿儺はいつになったら帰んの?」

 

「小僧が起きん、疲れたのか眠っているのだろう、小僧が起きるまでは俺の番だ」

 

「縛りがあるから今日はまともに何もできないのでとりあえずは自由にさせてます」

 

「ふーん、ま、いいけどさ上の老害たちに感づかれちゃ駄目だよ、下手すれば悠二はその場で死刑だからね」

 

「はいはーい、あ、今から任務行くんならお土産よろしくー」

 

「悟がまともなこと言ってるぞ、明日は槍が降るな」

 

「皆疲れてるのは分かるけどもうちょっと先生に優しくしない? こちとらGLGよ?」

 

「「「関係ない」」」

 

「しゃけ」

 

「だな」

 

 真希と釘崎と伏黒の言葉にパンダと狗巻も賛同する。

 

「ケヒッ、哀れだなぁ現代最強の術師よ」

 

 嬉しそうにプリンを頬張りながら嗤う宿儺。

 

「はいはい、うるさいおじいちゃんですねー、じゃ、さっきも言ったけど医務室では静かにね、刹那が起きたらよろしく言っといてねー」

 

 ガラララッガコン

 

 手を振りながら引き戸を閉めて五条は出ていく。

 

 コツコツと足音を聞き、任務に行ったことを確認すると宿儺が口を開く。

 

「だ、そうだぞ、刹那よ」

 

 シャッ

 

 ベッドの横のカーテンを開けて刹那は顔を出す。

 

「……おはようございます…」

 

「起きてたのかよ」

 

「おはようさん」

 

「今、先生と話すのは少し疲れるので…」

 

「懸命な判断よ、それでいいわ」

 

「お前も素直になってきたではないか」

 

「あなたは少し正直すぎると思いますけどね」

 

「傷はもういいのか?」

 

「宿儺と硝子さんが治してくれたお陰ですっかり良くなりましたよ」

 

 刹那は服をめくり傷跡ができた場所を見せる。

 

「こら服をめくんな、野郎がいんだろうが」

 

「しゃけ、すじこ、明太子」

 

「お、そうだ刹那、プリン食うか? 野薔薇が買ってきたんだと」

 

「あっ、食べたいです」

 

「ちょっと! 起きちゃ駄目だって!」

 

 パンダの言葉に目を輝かせて立ち上がろうとする刹那を美々子が制止する。

 

「あんた絶対安静でしょうが、私が食べさせてあげるわよ、待ってて今──」

 

 釘崎が最後のプリンを持っていこうとすると宿儺が

 

 プリンを持って刹那に近づいていく。

 

「少し前に色々食わせてもらったからな、俺が食わせてやろう」

 

「え…なんか怖いんですけど、別にいいです…」

 

「この呪いの王自らが世話を焼こうというのだ、遠慮することはない、ほれ」

 

「なんであいつあんなに機嫌いいんだ?」

 

「なんか虎杖と入れ替わった時からずっとああなんですよ、薄気味悪い」

 

「縛りあるとはいえ自由だからじゃないですか?」

 

 パンダが当たり前の疑問を溢すと伏黒と釘崎が答える。

 

 満面の笑みを溢しながらプリンを一口すくって刹那の口に近づける。

 

「んむっ」

 

 強引に口に詰め込まれて刹那はプリンを頬張る。

 

「ケヒヒ、上手いだろう、お前はあの男と似て甘味が好きだということは知っているからな」

 

「美味しいですけど…あなたはなんでそんなに上機嫌なんですか」

 

「俺にも喜怒哀楽の感情くらいある、めでたきことがあったのだ、機嫌も良くなるというものだ」

 

「よーするに教える気はないってことっしょ」

 

「心配せんでもそのうち分かる、この意味がな」

 

「いや、そのうちだと遅んむっ」

 

 再び無理矢理にプリンを詰め込まれ、言葉を遮られる。

 

「む、そろそろだな…」

 

 宿儺はピクピクと手を痙攣させて呟く。

 

「やっとか、早く代わんなさい」

 

「全く、貴様は忙しないな釘の小娘。まぁいい、ではまたな呪いの姫、次はお前の嗤うところを俺にみせろ」

 

「またそれ、どういう意味ですか」

 

 頭をぽんと叩き虎杖に姿を明け渡していく。

 

「…ん? どういう意味って?」

 

「いえ…なんでもないです」

 

「あっ! てか刹那無事だったんだな!! 良かったぁ!!」

 

「やっと起きたか、虎杖」

 

「おせぇよ」

 

「おー、無事か悠二」

 

「昆布!」

 

「おかえり~」

 

「あれ? なんで先輩もいんの? つかここ医務室?」

 

「説明は面倒だから宿儺にでも聞きなさい」

 

「悠二君、それ渡してくれませんか」

 

「お? おぉ」

 

 プリンを指さして言うと虎杖は大人しく渡して刹那はプリンを頬張る。

 

「ほんと、幸せそうに食べるわねあなた」

 

「甘党か…五条先生と同じになるなよ」

 

「あの性格はそれが原因じゃねぇだろ」

 

 無駄話をしていると頃合いを見てパンダが帰ろうとする。

 

「さて、そろそろ戻るか、忘れちゃいないだろうが刹那は怪我人だ、俺は呪骸だから平気だけどお前たちは怪我してんだろうし休めよ」

 

「しゃけ、高菜」

 

「特に伏黒君と刹那は重症だし、アタシの術式は完全にダメージ消せるわけじゃないんだから休みなよ」

 

「そういえば身体のあちこちがピリピリする…」

 

「そう? 俺はなんともねーけど」

 

「一回宿儺と代わってるからじゃないか?」

 

「刹那も休めよ、お前が一番重症なんだから」

 

 真希が言った時には既に体を起こしたまま穏やかな寝息を立てて眠っている。

 

「昔から疲れたら突然寝るな、コイツは」

 

 伏黒は寝かせて毛布をかけながらぼやく。

 

「さて、明日からまた学校だ、休むとするかな」

 

「しゃけー」

 

「うーい」

 

 それぞれが休むために自室に戻っていき、一時の平穏を噛み締める。今回の事件が十月三十一日のためのただの囮ということを知らないままに…。

 

 




やっべぇ、テスト期間入るから多分頻度落ちます。
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