全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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思いの外戦闘シーンの描写が下手でしたwこんな感じだろーなーってくらいのニュアンスで読んでくだされば幸いです。


第四話 復讐の火種

ーーー

 

 揺れる車内、刹那は先程と置かれている状況が全く違うことに気付き、さっきの一連の出来事は夢だったのかと一瞬絶望しそうになる。だが、横から聞こえてくる声によってその可能性は無いことに安堵する。

 

「ん、心配すんな、明日の朝には戻る。学校は休みだし、五条さんもついてるから問題ない。もう切るぞ」

 

 プツッと電話が切れる音と共にスマホをしまいながら伏黒は刹那が起きたことに気づく。

 

「悪い、起こしたか?肋が折れてたから横にしたほうが良かったんだが、荷物が多くてな。助手席にも荷物置いてあるしこうするしかなかったんだ」

 

 刹那は自分の体勢を確認すると、比較的楽な姿勢で伏黒にもたれかかって毛布がかけられているのに気付く。刹那は伏黒の優しさに少しだけ甘えながら質問をする。

 

「あの、これって今どこに向かってるんですか?」

 

「東京都立呪術高等専門学校。まあ、呪術師の高校だ。あの家にいるわけにも行かないし、しばらくは五条さんが保護するって言ってたぞ」

 

「そう…ですか…」

 

 頭の中がぐるぐると渦巻く思考の波に襲われながら、やはり不安を感じずにはいられない。

 

 伏黒は若いのもあってこのような状況に慣れていない。窓の外を見ながら、刹那にかかっている毛布をもう少し深く被せる。

 

「あんなことがあった後だ、安心しろとまでは言わないが、そんなに不安そうな顔をするな…。向こうについたらお前の怪我もすぐに治してもらえる」

 

 慰めているつもりなのか、伏黒は窓の外の景色を見ながら背中を擦る。

 

「…恵君って、ちょっと不器用ですよね」

 

「ほっとけ、まだ時間かかるから寝てろ」

 

「もう少しだけ…話したいです」

 

 二人の心の距離も近づき、互いに普通の中学生のような会話を続ける。

 

「そういえば…叔父はどうなったんですか?」

 

 自らを苦しめ、呪詛師と判明した者の最期を刹那は見届けていない。

 

「…俺達より先に、別の車に乗せられてた。簡易的だが封印もされてたし高専に五条さんと一緒についてるんじゃないか?」

 

「そうですか…良かった」

 

「…それはあいつが死んでなくて良かったって思ってるってことか?」

 

 予想外な反応に思わず伏黒は刹那に質問する。

 

「…意地悪な質問しますね、恵君。でも、そうじゃないですよ。ちゃんと然るべき処罰をしてくれるんだなって思っただけです」

 

 そう言うと刹那は口に手を当て、あくびを一つする。伏黒の肩に頭を沈め、眠くなってきたので寝ます。と一言発し、穏やかな寝息をたてて眠る。

 

「ふふっ、役得ですね伏黒君」

 

 補助監督の男、伊地知潔高が伏黒に笑いかけてくる。

 

「…そうかもしれないですね」

 

 伏黒の性格から否定されると思っていたが、思いの外あっさりと受け止めた伏黒に対し、伊地知は少しだけ驚く。それと同時に、幼い頃を知る伏黒のことを、子供の成長を感じられた親のように嬉しく思った。

 

「あと一時間程です」

 

 伏黒も疲れていたのか、その言葉を聞くより前に眠ってしまった。

 

 そうして山道へと入っていく、しばらくすると前の道がやたらと明るいことに気づいた伊地知は車のペースを落として近づく。

 

「伏黒君!阿頼耶識さん!起きてください!」

 

 突然伊地知の大声が車内に響く、伏黒と刹那もそれぞれの寝起きの表情で起きる。

 

「何かに掴まってください!」

 

 伊地知の声と共に車は急ターンして来た道を戻ろうとする。が、それより早くにタイヤが潰されスリップしてガードレールへと突撃してしまい、そのショックで伊地知は気を失ってしまう。

 

「伊地知さん!」

 

 眠気を振り払うように伏黒は大声で伊地知に呼びかける、呼吸をしているところを見るに死んではいないことに安堵するが、その時刹那は、伏黒とは別の方向を見て戦慄していた。

 

「叔父…さん…」

 

 車の窓から見える人影は男を見てる少女をニタリと笑い見つめ返す。

 

「まだ終わってないぞ、ガキどもォ…!」

 

 ────

 

 時は遡り、あの一件の直後。

 

「五条、刹那の処遇とそいつはそっちの高専に任せるわ、ここから距離も近いし」

 

 玉犬に噛みつかれ体の至るところから血を流して気絶している男を指差し、歌姫が五条に告げる。

 

「オーケー、伊地知は二人を送るのに呼ぶから別の人呼んどくね」

 

 そう言って携帯を取り出し、電話帳を開くと急に何かを思いついたのかニヤニヤと笑いだす。そして高専の学長へと電話をかける。二回程コールしたあと学長が出る。

 

「なんの用だ悟」

 

「今から送る場所に呪詛師回収用の車回してくんない?」

 

「ん、了承したが、任務外で働くとはらしくないな」

 

「ひどいなぁ、僕はいつだって世のために働くGLGだよ。あ、それとさぁ、良い知らせ二つと悪い知らせ一つあるんだけどどっちから聞きたい?」

 

 通話越しでも聞こえるくらい大きなため息、通話の向こうではきっと、眉間に皺をよせ頭を抱えてることだろう。

 

「そっちが本題か、全く。悪い知らせから聞こう…」

 

「学長がよくお世話になってるSってフリーの呪術師いるじゃん?」

 

「お前よりも仕事と報告書が丁寧だから重宝しているな」

 

 嫌味のように五条との違いを耳元で言ってくる。

 

「その人さー、フリーの呪術師辞めちゃったよ」

 

「…………」

 

「んー、どしたの学長?あ、嘘だと思うなら掲示版確認してみ、もうないから」

 

 黙る理由が分かっている五条はあえて答えをあおる。実際、特級案件を引き受けてくれる数少ない術師でありながら、三級程度の任務や経理等も引き受けてくれる親切な術師がたった今、辞めたと知らされたのだ。当然のように通話の向こうからは学長や五条の親友、数少ない他の関係者の小さくない絶叫が木霊する。

 

「ククッ、呪術師の闇を感じずにはいられないね」

 

「良い知らせはなんだ…?」

 

 ため息をもらした学長がせめてもの救いを求めるように、良い知らせを聞こうとしてくる。

 

「んとねー、僕明日休みになったんだよね!」

 

「凶報じゃないか」

 

「酷くない? 僕頑張ってるのに。まぁ、こっちはそんなに重要じゃないさ。重要なのはもう一つの方、聞いて驚いて倒れたりしないでよー、まだ葬式は執り行いたくないよ?」

 

「いいから早く言え」

 

「なんと、なんと、なななんと!S本人の説得に恵が成功したよ! やっぱり僕の教え方がいいのかなー? 流石GT五条だね! 褒めてよ学長ー」

 

「それは本当かい悟!?」

 

 学長と違う声が電話越しに聞こえてくる。先程まで絶叫していた件の五条の親友。夏油傑の声だ。

 

「もちのろん! ホントよー褒めて褒めてー」

 

「良くやったぞ悟!」

 

 夜蛾の声と共にわぁァァ! と革命が起こったがごとく通話越しに歓喜の声が湧き上がる。

 

「伊地知に迎え頼んでるし、多分11時位にはそっち着くんじゃない?どうせ皆徹夜でしょ?」

 

 時計を見ると9時30分になるところだった。

 

「あいわかった、Sが来たら出迎えればいいんだな?」

 

「そゆことーんじゃヨロシクー」

 

 プッと電話を切る。

 

「あんたねぇ…」

 

「ん?どしたの歌姫?」

 

 会話を聞いてた歌姫が五条に向かって呆れたようにおでこに手を当てる。

 

「わざと刹那の年齢のこと黙ってたでしょ」

 

「ありゃりゃ~うっかりー」

 

 舌を出し、頭をコツンと叩くぶりっ子のポーズを取る。

 

「きっしょ。まぁいいわ、私は帰るからね」

 

「あ、待って歌姫、ハイこれ」

 

 五条が小切手を渡してくる。

 

「今回歌姫タダ働きでしょー? 準一級は給料少なくて大変だろうからね。優しい五条さんからの特別手当♡」

 

「いちいち一言多いんだよ!」

 

 歌姫は小切手を突き返す

 

「別に私はお金欲しさに呪術師やってるわけでもないし今回動いたわけでもない!てゆーか、それはあんたも一緒でしょうが」

 

 そう言い切ると歌姫はさっさと壊れたドアから出ていく。

 

「ハハッ、敵わないね、弱っちい先輩様には」

 

 唖然としていた五条は頭をポリポリと掻きながら独り言を呟いた。

 

 

 階下から車の音が聞こえ、外にでてみると伊地知より先に回収車が到着したようだ。

 

「じゃあ恵、あとはよろしくね」

 

 そう言うと五条は、彰を引きずり回収用の車に連れて行く。補助監督と封印、兼護衛の術師が車からおりて五条に挨拶する。

 

 五条が車に彰を放り込むと、術者が簡易的だが動けないように封印を施す。

 

「あ、僕ご飯食べて帰るから先行っていーよ」

 

 五条の発言に返事を返し、車は発進する。

 

 回収車が山道に差し掛かる頃、彰が目を覚ます。

 

「あ? あーー?」

 

 彰は状況を分析し、記憶をたどる。フツフツと湧き出る怒りの矛先は、伏黒と刹那へと向いた。

 

「なぁ呪術師さん」

 

「喋るな呪詛師」

 

「あいつ…俺の姪は無事か?」

 

「何故そんなことを聞く?」

 

「俺は元呪詛師だけどな、姪は、刹那は大事に思ってたんだよ」

 

「五条さんから話は聞いた、何が大事に思っていただ、人間のクズが」

 

「そう呼ばれても仕方ないな、妻に捨てられてその後に刹那を引き取ることになってなあんときの俺は気持ちの整理がついてなかったんだ」

 

「はっ!犯罪者の戯言だな」

 

「愛し方が分かんなくてな、手も上げちまったから怖い思いをさせた。反省してる」

 

「…」

 

「なぁ呪術師さんほんのちょっとでいい、会えないか? 謝りたいんだよ。許されなくてもな」

 

「…向こうに行ったら少しだけ面会できるか相談してやろう」

 

「あんた良いやつだなぁ、ちょっとばかし顔見せてくれよ。この体勢からじゃ、バックミラーも見えやしない」

 

 助手席の術師が後ろを振り向く、その瞬間術師の顔が文字通り爆ぜた。大規模ではないにしろ顔に爆薬を受けた術師は昏倒、補助監督がその音と衝撃に驚き車をスリップさせる。

 

「呪術師ってのは正義感がどうたらで動く連中ばっかだからな、すーぐ情にほだされる」

 

 爆薬の影響で封印が吹き飛び片手が自由になる。

 

「カミさんは邪魔だから俺が殺したし、あのガキ引き取ったのも遺産目当てだ。俺だって呪詛師やってたんだ、捕まったときの備えくらいしてるさ」

 

 口の中に仕込ませてた小さな爆弾、それを術師に向かって吐き出したのだ。

 

 彰は封印効果を失い紙同然と化した封印を無理矢理破り復讐の準備を始める。

 

 ───

 

 まだ終わってない、その一言と、燃えた車をバックにこちらに歩み寄る男を前にし呼吸が苦しくなる。

 

「はぁっ…はぁっ」

 

「刹那、落ち着け深呼吸だ」

 

 伏黒が背中を軽く叩き刹那をなだめる。

 

(泣いちゃいけない、駄目だ泣くな)

 

 刹那は心の中で何度も唱え、落ち着きを取り戻す。

 

 彰はそのまま歩いてこちらへ向かってくる。

 

「車から出るぞ、奴の狙いは俺達だ。危険だが伊地知さんはここに置いておく」

 

 コクコクと頷き、幸い車体は曲がっていなかったため車の扉を開け距離をとる。

 

「よぉ、クソガキ共。どっちから死にたい?」

 

 彰は術師に抵抗されたのか左肩から血が出ており、ブラブラと揺らしている。

 

 伏黒は冷静に判断していた。向こうの術式は割れている、対処が分かっていてかつ自由に動ける自分は囮になるべきだと。相手は自分より経験も多いプロの犯罪者、逃げることに神経を集中させる。

 

「刹那、俺が囮になる、お前は逃げろ」

 

 小声で刹那に指示するが、刹那は逃げようとしない。ここで刹那が逃げれば、伏黒が死ぬ可能性の方が伏黒が彰を撒く可能性より断然に高い。直感で伏黒は分かっていたが、刹那を戦わせる選択肢は今の伏黒には無かった。

 

「俺の携帯だ、五条さんに連絡すればすぐにでも助けにくる。ここは圏外だが高専の方に行けば電波が通じてるから使えるようになる」

 

「でも、でもっ!」

 

「いいか、はっきり言うぞ今のお前は足手まといにしかならない、二人揃って死ぬより片方が生き残る可能性にかけるべきだ」

 

 伏黒から厳しい言葉だが、真実を突きつけられ反論できずに伏黒の指示に首を縦に振る。

 

「作戦会議は終わりかぁ? じゃぁ、パーティーの始まりだ!」

 

「刹那走れ!!玉犬!」

 

 刹那の合図とともに、手を犬の形に象り式神を影から出現させそのまま、五条から教わった体術を用いるために近づく。

 

「式神使いのくせに自分も突っ込んでくるのか」

 

 玉犬白が足に噛みつこうとするが、彰はそのまま足を口に突っ込ませるようにして蹴り飛ばす。

 

「キャウンッ!」

 

 吹き飛ばされた玉犬白に続く玉犬黒は、腕に噛みつくことに成功するが地面に叩きつけられ鈍い音が響く。が、その隙をねらって伏黒が彰の鳩尾に助走をつけ、呪力で強化した横蹴りを放つ。

 

 式神二体と伏黒、三体一のハンデをものともせずに応戦する彰。

 

「ガキだと思ってたがやるじゃねぇか、んじゃ、こっからは術式ありな」

 

 伏黒に正面から拳を振る、伏黒は腕をクロスさせてガードするが思いがけない方向から衝撃が走る。

 

 ドウッ

 

 鈍い音と共に伏黒の体が横によろめく

 

「かはっ」

 

 玉犬白に受け止められ直ぐに体勢を立て直す。

 

 横腹から入った一撃に口内を深く切ったため、血を地面に吐き出す。

 

「やっぱ、蹴りの力なんてたかが知れてるな」

 

 保存呪法、彰は玉犬に対する蹴りと叩きつけを保存していた。伏黒は前もって術式を知っていたが、最初の命中により警戒を解いていた。

 

(だが、今のでやつの手持ちは叩きつけだけ。同じ力の方向にしかあの術式は発動しない、加えて左肩の負傷で動きは鈍い)

 

 伏黒はダメージを負った玉犬黒を戻し、手を別の形に象る。

 

蝦蟇(ガマ)

 

 大きな蛙を影から出現させる。

 

 蝦蟇を伏黒の後ろに構え、彰に向かって玉犬と駆け出す。

 

「何回やっても同じだ、ボケがぁ!」

 

 彰が構えると同時に、伏黒と玉犬が横に飛び退く、

 

 狙いが分散した彰は一瞬混乱する、その隙に蝦蟇が舌を伸ばし右腕を拘束する。

 

「これでやつの術式を封じたーなんて思ってんだろ?」

 

 直後に蝦蟇の舌が燃え上がり彰は拘束から抜ける、彰に攻撃の準備をしていた伏黒は防御しきれず頭に強い衝撃を受ける。

 

 ゴンッ

 

「──!!」

 

 一瞬視界が暗転する。まだ呪術師として未熟な伏黒は長時間術式を使用するのに慣れていない。

さらには対呪詛師、人間との戦闘は初めてなのも伏黒が不利な要因だった。

 

「種明かししてやるよ」

 

 伏黒の頭を踏み地面に擦り付ける。頭からは血が相当量流れ出ており、地面にゆっくりと広がる。

 

 伏黒の腕を掴むとその場所が激しく熱を帯びる。

 

「ぐっ!あぁっ!」

 

 伏黒は遠のきつつある意識を火傷によって無理矢理に覚醒させられる。

 

「俺の術式はエネルギーを保存するんだ。エネルギーってのは、何も吹き飛ばしたり潰すだけじゃない。そこで燃えてる車からだって熱エネルギーが発生してんだぜ? まぁあくまでも割合だから、俺の蹴りやあれっぽっちの炎じゃ大した威力にならないのが玉に瑕だがな。それでもあの式神の緩い拘束なんてちょっとばかし炙ってやればすぐ解けるさ」

 

 彰はマジシャンが種を明かすがごとく詳細に術式を説明する。さらにこの時、自らの術式と弱点を説明することによる縛りでの術式強化も彰は考慮していた。

 

「お前は殺すつもりは無かったがやめだ。その年でそれじゃ放置したら危険だからな、今この場で確実に殺してやるよ」

 

(術式は使えない、体も脳震盪でまともに動けない、刹那がいくら走ったとしてもこの程度の時間じゃ助けは呼べてない)

 

 伏黒は静かに目を閉じてその時を待った。




回をまたぐごとに長くなるなぁwどっかで区切ったほうが良かったかな?
主も学生なもんで許してください。
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