職員、生徒、フリーの術師でさえも呪霊の発生と呪詛師の策略に忙殺される日々を送った。
そして時は十月三十一日 渋谷 PM19:00
補助監督から正体不明の者により帳が降ろされた報告が入る。
PM20:14
七海班
七海健人、伊野琢真、伏黒恵
「東京、東急東横店を中心に半径400m程の帳が降ろされました、"一般人のみが閉じ込められる帳"です、一般人は侵入のみ、窓には個人差が、術師は補助監督含め出入りが可能です」
「電波は?」
「断たれています」
「連絡は帳を出て行うか補助監督の足を使ってください」
「随分と面倒なことになっていますね」
「伏黒っ、怪我はもういいんだよな? この間ボロボロだったけど」
「はい、家入さんのお陰で特に何事もないです」
「知ってるか? 反転術式には明確に治せる限界があるからな、あんま重症負ってっと体の治癒が間に合わなくなって、しばらく治るのに時間がかかるようになるんだぜ!」
「あ、はい知ってます」
「二人共無駄話は程々に、それと伊野君、彼は優秀です、先輩風は程々に」
「どーいう意味すか七海さん!!」
「それで、五条さんは?」
同刻 渋谷マークシティ
レストランアベニュー入口(帳外)
禪院班
禪院直毘人、禪院真希、釘崎野薔薇
「人がいない!? 駅前のスクランブル交差点に!? ハロウィンの渋谷よ!?」
「そこで何かがあったみたいっす、皆散り散りに帳のヘリまで逃げてこう訴えています。[五条悟と夏油傑を連れてこい]と」
「「!!」」
「フッ、非術師が奴らを知っているわけがない、言わされているな。帳は壊せんのか?」
「難航してるっす、なにせ帳自体は術師を両側から拒絶していない、力技でどうこうできそうにない、帳を降ろしている呪詛師をとっちめたほうが早そうッス」
「じゃあ私らはその手伝いだな?」
「いいえ! 皆さんはまだここで待機ッス!」
同刻 JR渋谷駅新南口(帳外)
日下部班
日下部篤也、パンダ
「高度な結界術に五条悟を指名したこと、これは交流会を襲撃した連中と同一犯だ。上は被害を最小限に抑えるために五条悟と夏油傑の二人による渋谷平定を決定したっちゅーワケだ。一級以上の術師はみーんな帳の外側で待機、五条のこぼれ球を拾うってわけだ」
「被害を最小限って、術師の被害のことだよな? 一般人の被害はお構いなしか?」
「そうつっかかんなよ、俺もこれが最善だと思う、帳の中ではパニックになってるだけで呪霊や呪詛師が殺し回ってるわけじゃない、でもまぁ、俺はもう帳の中に行くのはゴメンだな」
「なんでだ?」
「あれはヒカリエかなぁ、地下に特級クラスの呪霊がうようよいやがる」
同刻 近所 ビルの屋上(帳外)
刹那班
阿頼耶識刹那、禪院直哉
「一応、帳からニkm圏内の避難誘導は開始してますね」
「せやね、まぁ俺らなんもせぇへんけど」
「……」
「どないしてん? こっち見て、お見合いの件考えてくれてんの?」
「いえ…こういうことに興味なさそうなのに、なんで来たのかなって」
「そらぁ、悟君に傑君もおるやん? それに刹那ちゃんもくるっちゅう話やから見ときたいな思うやん」
「そうですか…その、前はすいません、カッとなって顔を…」
「ん? あ~、気にせんでええよ、あれが不意打ちとかならクソムカつくけど、刹那ちゃんはちゃんと強いやんか、俺強い人には敬意はらっとるつもりなんやで」
「…それなら良かったですけど」
「それよりも禪院家に興味ないん? 刹那ちゃんなら差別全くなしで一生遊んで暮らせるで?」
「あなたがもう少し女性に優しくなったら考えなくもないかもしれないですね、その関西弁、別に僕は嫌いじゃないですし」
「…なるほどなぁ、ますますおもろいわ、せやな、少しは考えたるわ」
直哉がそういった後に刹那はポケットから一つ飴を取り出して舐める。
「お、俺にも一つくれへん?」
「構いませんけど、これサルミアッキですよ?」
一つ手渡しながら注意する。
「なんそれ?」
ぽいっと口に放り込んだ瞬間に説明する。
「世界一甘い飴ですけど…」
「…もうちょっとはよいうてほしかったなぁ、しかもこれ呪力籠もっとるやん」
「まぁ携帯食みたいなものですし、噛み砕いたら一気に呪力が流れるのでゆっくり舐めてくださいね」
「………マジで?」
同刻 道玄坂文化村通り東 (帳内)
五条悟&夏油傑 現着
ドンッ
「あ、ゴメン」
「すまないね」
二人の最強が帳の内に入ってくる。
「おー、こりゃひどいねー」
「悟、呪霊を出すとパニックになるし私も頼むよ」
「ホイホーイっと」
夏油と五条は空中を話しながら歩く。
「んー、地下にはあの富士山とか雑草がいるね」
「スクランブル交差点にもいるみたいだね、あいつには少し聞きたいことがある、下は悟に任せていいかい?」
「どっちでも構わないさ」
「流石は現代最強の術師様だ、期待しているよ」
「クックッ…僕とお前、俺たちで最強、だろ?」
拳を突き出して夏油に笑いかける。
「臭い言葉を言うね悟…でもまぁ、こういうのも悪くはないか」
コツンッ
拳を軽く打ち付け、互いの無事を祈る、直接言葉にしないのは彼らなりのルーティンであり、お互いに死ぬことはないという絶対の安心感の元での合図。
コッコッコッ
夏油は交差点に向かう、そこに立っていたのは予想通りの人物、阿弥部だった。
「やぁ、この間振りだね」
「…聞きたいことがある、君等の目的、というか野望はなんだい?」
「下賤な言い方だな、大義だよ、これは」
二人は対面して話し出す。渋谷のハロウィン、本来ならばむせ返るような人の喧騒があるはずのその場所は、今この時に限り世界中のどこよりも静寂が訪れていた。
「お前のことは生徒から報告を受けているしどんな術式かも分かっている、最後だ、大人しく目的を吐いて投降しろ」
「フッフッフ…答えはNOだよ、特級術師、夏油傑君、聞き出してみたまえ」
バキバキバキッ
ダッ!
短い言葉の応酬を終え、その場に多種多様な呪力と殺気が充満する。
夏油は準一級以上の呪霊を三体呼び出し距離を詰めていく。
「私の呪力が見えていないのかな? 呪力での身体強化では絶対に勝てないと分かっているだろう?」
「あぁ、勝てないな。だから、対人間の得策でいくことにしたよ」
ギュオォォ
ブワッ!
真後ろに呼び出した呪霊が距離を詰めた夏油を吸い込んで一瞬で距離をとる。
その瞬間、夏油は手榴弾のピンを外して阿弥部の前に置いていく。
カッ ボォォン!!
激しい閃光と共に前方が激しい爆風に包まれる。
普通の人間ならば確実に死んでいるであろう威力、煙の中から現れたのは身体の一部を甲殻のように変形させた阿弥部だった。
「なるほどね…私も現代兵器は呪詛師相手には積極的に使うべきだと思うよ」
「…やはり呪霊合術は"呪霊と呪霊"ではないね。"呪霊と呪力を持った何か"をかけあわせる術式、その呪力量、お前の身体の異様な気配…一体、何体合成させた?」
「ふむ…これから殺すわけだしね、いいよ、教えてあげよう。準一級百二十二体、一級二十五体、特級三体、下級を含めると数は五百を超える…ここまで集めるのは苦労したよ、元々の体も貧弱だからね、ここまでの数を合成するのは少々骨が折れた」
「…下の特級呪霊共にも同じことを?」
「彼らは下手に合成すると質が落ちるからね、下級を合わせて呪力を増幅させた程度にとどめているよ」
そういって様々な呪霊を継ぎ合せたような姿を見せる。
「君の呪霊操術と私の呪霊合術、似ているが君の術式は明らかな私の下位互換だ、勝てるわけ無いだろう?」
「下位互換かどうかはこの戦いで決することだよ」
ズズズズ
「それもそうだね、さて…存分に呪い合おうか、現代最強の片割れ」
──同刻──
「そんなに心配しなくても逃げやしないよ」
地下鉄の線路、ホームや上に繋がる人で一杯の通路は花御の術式によって塞がれていた。その空間で五条は二人の呪霊と九相図の一番、脹相と向き合っていた。
「初めての言い訳は考えてきたか?」
「おいおい、僕がお前ら如きに負けるとでも思ってんの?」
「その策があるからこうして貴様を待っているのだ」
「無理無理ー君弱いしぃ。上には傑、少し離れた場所には刹那、かわいい生徒達だって総員で来てるんだ、ダルいし大人しく祓われてくんないかな」
「はっ、戯言を! 今この場で尻尾を巻いて逃げれば許してやらんでもないぞ?」
「逃げたらお前らここの人間全員殺すだろ?」
「逃げたら…か、回答は…」
ズロゥゥッ
「逃げずとも、だ」
一斉に花御の術式が解除され、せき止められていた人間が線路にどんどん流れ込んでくる。
ズバンッ、バシュジュッドジュドジュドジュッ
漏瑚と花御、脹相がその場の人間を大量に殺し始める。
「うわァァァ!!」
「ひぃぃぃ!」
「退いて、死ぬよ」
その場にいる人間は阿鼻叫喚の地獄絵図を目の当たりにし逃げ場のない地下鉄を逃げ回る、悲鳴と喘鳴が鳴り響く中五条はその場に立ち次の一手を模索していた。
ドウッ ピタッ
花御と漏瑚が同時に五条へと殴りかかるが無下限により遮られる。
「「領域展延」」
ゴリゴリゴリゴリゴリ!!
バッ! ドゴッ!!
無下限が中和され、五条はその場から飛び上がり電光掲示板の上へと着地する。
「ナルホド、というか呪詛師と組んでるんだからそう来るか」
「逃げるなと言ったはずだぞ、こうでもせんと分からんか?」
ぺきッ ボゥッ
漏瑚はそういって近くの男性の首をもぎ取り掌の上で燃やす。
「……正直驚いたよ」
「なんだ? 言い訳か?」
「違ぇよハゲ、この程度で僕に勝てると思ってる脳みそに驚いたって言ってんだよ」
五条は黒いアイマスクを外して憎悪の相を露わにし、花御を指さす。
「そこの雑草、会うのは三度目だな? ナメた真似しやがって。まずはお前から祓う」
ザッザッザッ
電光掲示板から線路に降り立ち、二人の呪霊に向かって大胆に距離を詰めていく。
「ほら来いよ、どうした? 逃げんなっつったのは…お前らの方だろ」
戦闘が始まり二人は同時に五条に殴りかかる、しかし五条は漏瑚の腕を掴み、花御の攻撃を容易く避けると力任せに漏瑚の腕をへし折る。
ババッ、ゴリっベキッッ
五条は無下限術式のオート防御を解き、呪力操作のみのコンパクトな攻めに回る。そのまま腕を再生する漏瑚を狙い駆け出すと、花御は術式を使い五条に向かって殺意を向ける。しかしそれは、自殺にも等しき行為だった。
パキキッ
「展延を解くな!! 花御!!!」
五条は振り向きざまに跳ね、花御の目に当たる部分の根を掴むとそれを抉り出す。
ドリュリュリュリュリュ!!!
「やっぱりな、展延と生得術式は同時には使えない」
大きなダメージを受けながら二人は五条に攻撃を再開するが今度は無下限よって防がれる。
「いいのか? お前が展延で僕の術式を中和する程僕はより強く術式を保とうとする。こっちの独活はもうそれに耐える元気ないんじゃない?」
五条は花御に狙いを定め、壁面と無下限による二つの壁で圧縮させて潰しにかかる。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!!!!!!
「五条悟! こっちを見ろ!!」
漏瑚は花御を助けるために人質を使おうとするが時すでに遅し、次の瞬間に花御は爆発四散する。
ボチュンッ…、
「花御…」
「…次」
──同刻──
「…妙ですね」
「何が?」
「呪霊の気配がするのに一向に姿を見せない、非術師の避難もそろそろ完了する頃合いなので攻め時は今だと思うんですが」
「呪霊にそんなこと考えよる頭あるん?」
「少なくとも向こうには頭のキレる呪詛師がいます。五条先生と夏油先生で手一杯なんでしょうか…」
「んで、どうするん? 俺は班長の指示に従うだけやけど」
「…何か胸騒ぎがします。非術師の皆さんの避難が終わり次第、帳の中に入りましょう」
「そうこなくちゃなぁ、暇すぎて死にそうやったわ」
二人は立ち上がってビルを降りようとすると突風が吹き付け、その場から動けなくなる。
ビュオォォッ!
「それは困るなぁ、私の役目は君の足止めなんだよぉ?」
バサッバサッ
「特級ですか…」
「ビンゴみたいやね、帳内でなんかあったみたいやな」
「だったら、さっさと祓って皆さんの加勢に行きましょう」
シュラッ
刹那が刀を抜き、直哉も術式を使用する準備をする。
「悪いねぇ、まともに戦って勝てないことは知ってるよぉ」
ブワァァッッッ!!
立っていられないほどの突風が二人を襲う。刹那は術式効果を打ち消そうとするが、足場ごと吹き飛ばされ二人は空中へ投げ出される。
「うわっ!」
「うそやろ!?」
「あくまでも俺は足止めだからねぇ、バイバーイ」
大量の改造人間、多数の呪詛師、呪霊との戦いが至るところで始まりの鐘を鳴らし始めていた。
渋谷事変 開幕
渋谷事変開幕〜なるべく全員の活躍シーンを作りたいんですが、かなり時間が掛かりそうで、、、オリジナルの場所以外は若干省略しようかと思ってますが読者の皆さんが望むのであれば書こうと思います。失踪は絶対しませんがこれからもお願いします。