──ー
壮絶な戦いを経て、特級術師夏油傑は阿弥部に敗北し、五条悟の封印へと至った。
「いい眺めだね、五条悟」
「お前…去年憂太を狙った呪詛師だな?」
「あの時確実に殺されたのにーとでも言いたそうだね、答えは簡単だよ、中身が違うんだ」
阿弥部は額の紐を解き五条に本体の脳みそを見せる。
「そういう術式でね、乗っ取った対象の記憶や術式も使えるんだ」
「どうりで、去年とは違ってるわけだ…それで、傑をどうするつもりだ?」
怒気の籠もった声と怒りに震える六眼で阿弥部を睨みつける。
「そう怖い顔をするなよ、取り敢えず作戦の第一段階…君達は負けて私達が勝った、これからも色んな策を弄するけど、それがどんな結果になるかは運命の神だけが知ることさ」
(そろそろだな…)
「おいクソ呪詛師、一つだけ言っておいてやる…精々後悔して、吠え面かきやがれ」
五条は舌を出して挑発すると、阿弥部が獄門疆を閉じる合図を出す。
「閉 門」
バシュシュシュシュッ!
阿弥部の合図と共に五条は小さな箱の中に収納される。
「それ、もう使えないんだっけ?」
「うん、定員一名。死にかけの夏油は私が管理しよう、計画の最後に使うからね。さて皆、次は……?」
阿弥部の周りに真人達が集まり、次の指示を出そうとするが、阿弥部は獄門疆を落としてしまう。落とすと同時に、地面が陥没し動かすことができない状態になる。
「っ!!なんて奴!」
「ねー阿弥部、これどういうこと?」
「封印は完了したけど、獄門疆が五条悟という情報を処理しきれてないんだ、しばらくは動かすことができないね」
「ふーん…」
ビリッ
その場にいる一同に走った嫌な予感、真人がその方向にいるソレを叩き潰す。
「っ!! つくづく、やられたね」
──五条封印直後の虎杖──
「うわっ!」
「どうしたんだい虎杖君?」
「いや、なんか耳に…」
三人は真人を追うべく地下鉄の線路を走っていた。虎杖が耳からソレを剥がすとミニメカ丸がいた。
「息災カ、虎杖悠仁」
ガシッ、ギリギリギリ
虎杖はミニメカ丸を掴み乱暴に破壊しようとする。
「待て待て待テ、落ち着ケ! 確かに俺は縛りの元デ向こうに情報を流していたガ、本体は十日前二既に死んでいル!今のこの姿は生前の俺が残した保険に過ぎなイ、虎杖悠仁は高専関係者の中で最も内通者の可能性が低イ、不発のリスクを低減するためこの傀儡を忍ばせるのも三箇所までとした。かなり高度な保険だ、時間が惜しい、怪しむのハ分かるが今だけは信用してくレ、頼ム」
「冥さん…」
「いいよ、話してごらん」
「感謝すル、まずは落ち着いて聞いてくレ五条悟が封印されタ」
「「「!!!」」」
「さら最悪なことニ、恐らくだが夏油傑も再起不能だろウ」
「その話、信じる証拠は?」
「すまないガ無イ、強いて言うなラ俺ガここにいることダ。俺が殺された後、五条悟が封印されタ時に限定するしかなかっタ、そして冥冥、アンタもこの状況で確実に白と判断しタ」
「なんでそう言い切れるんだい?」
「索敵に長ける人物が渋谷で暗躍せずに明治神宮前に派遣されているからダ」
「いやいや、体よく協力を拒むためかもよ、それにすぐに渋谷に向かおうとした虎杖君を今の今まで止めていたのは私だ」
「では何故、呪詛師がアンタを始末しに向かっている?」
バッ!
二人は殺気と呪力を感じて暗がりの向こうを覗く。
「一、ニ…二人だね、虎杖君、コイツらと君がさっき戦った呪霊どっちが強い?」
「……多分さっきのバッタより強い」
「そんな連中がウヨウヨいるのか、呪詛師は無視して進もう、五条君の安否確認が先決だ」
「駄目ダ! 向こうの結界術はコチラの数段上手ダ、いま渋谷には四枚帳が降りていル。この先もそのうちの術師を入れない帳が降りていル。頼ム、指示に従ってくレ」
「仕方ない、言ってごらん」
「まず、今こちらガすべきことは五条悟と夏油傑の奪還ダ。五条悟封印もそうだガ、夏油傑もまたこの世の呪霊の抑止力であることに変わりはなイ。この二人を失うことは確実に人間の時代に大きな影響を与えル。そしてこの東京にはもう一人時代に影響を与えル人物がいル」
「刹那のことだね?」
「そうダ、だが彼女は頭が回ル。恐らく緊急事態ということは察しているはずダ、五条悟封印を知らせるだけでいイ」
「虎杖は来た道を戻り地上から渋谷に向ってくレ、五条封印を術師全体に伝達、五条奪還を共通目的に据えロ」
「冥冥は虎杖が抜ける隙を作ってくレ、呪詛師撃退後はこの線路を取り敢えず抑えておいて欲しイ。だがまだ相手の出方が分からんン」
「臨機応変ね、ところでメカ丸君、君の口座はまだ凍結されてないね?」
「…エ?…まあいイ五条悟が消えれば呪術界も人間社会ひっくり返る、済まないガ命懸けで頼ム」
「僕は?」
「好きな方にツケ」
「じゃあ姉様!」
ジャラジャランッ
呪詛師が二人の元へと近づいていく。
「好きに動いていいよ、合わせるから」
「押忍!」
──
「…困りましたね」
ザンザンザンッ
「困ったなぁ」
ヒュパパパッ!
刹那と直哉は避難が終わっていない非術師を逃がすためにビルから群がるように現れた改造人間と呪霊を祓い殺して回っている。
「キャァァ!!」
ゴッ、ザンッ
「早く逃げてください、向こうにスーツの人がいますからその誘導に従って」
メキョッバゴォ
「アカンわ、死にたなかったらお猿さんははよう退き、邪魔や」
「もうちょっと言い方ないんです?」
「いちいち丁寧に言ってたらそれこそ戸惑うやろ、邪魔やから早く退けで充分や、そないなことより上のアイツどうすんねん」
直哉は空を指さして刹那に問いかける。
「非術師の方々も捌けてきました、全員いなくなり次第叩きましょう、それまで現状を継続しましょう」
「そろそろかねぇ?」
空弥が空から降りて低空飛行を行うと呪力を練り始める。
「…予定変更です、アレは確実に厄介な何かを始めるつもりです、祓いましょう」
「やっとかいな、飽きてきたところやで」
「その判断はもうちょっと早くするべきだったねぇ、子供たちぃ?」
「「!!」」
二人は防御の姿勢を取る。
ビュウォォォ!!!!
空弥は両手で空を振り払うと大きな真空の斬撃が発生する。しかしその攻撃は刹那達にではなく横のビル群に向かって放たれ、真っ二つにされたビル群は重たい音をたてながら崩れ落ちる。
「っ!! クッソ! とんでもない技使いよって! 刹那ちゃん、逃げるで! このままじゃ二人まとめてペタンコ焼きや!!」
「……できない」
「あ"ぁ"!? 何言うとんのや!? 自殺願望でもあるんか!?」
「だって…まだ避難が終わってない、補助監督も非術師もっ!」
「アホ!!どうやっても無理やろ!?俺達まで死んだらどないするつもりなんや!!」
直哉は刹那の肩を掴んで説得を試みるが刹那はそれを聞こうとしない。
「できないよねぇ??」
空弥が地上に降り立ち、ニヤニヤと笑いかけてくる。
「金髪の坊やは弱いからその判断しかなくなるんだよぉ? 何故なら自分の身しか守れない弱者だから。でもねぇ、強者は自分以外の人間を守る力があるから、弱者を守る選択肢が出てきてしまうんだよ。ほら刹那、人間を助けたいならいーっぱい呪力を使わなきゃあねぇ??」
「るっさいわボケェ!!」
直哉が術式を展開し空弥の顔面を蹴り飛ばす、空弥はそれを物ともしない様子で飛び上がりニヤニヤ笑う。
「クッソ! 刹那ちゃん!」
刹那は手袋を外して全身から黒い靄を発生させる。
その靄でビル群を全て包み込み、内部から重力を消しさり緩やかにビルは落下する。
シュゥゥゥンギュンギュンギュンッ──ーズズゥゥン
パチパチパチパチ
「おおー流石は特級術師だねぇ、呪力は空っぽになってくれたかなぁ?」
「何しとんねん…!」
唖然と空を見上げる直哉と拍手をしながら称賛の言葉を送る空弥。
パッ
ガシッドゴォッ!!
「…は?」
瞬間的に距離を無くした刹那は空弥の頭を掴み空弥を地面へと投げ落とす。空弥は刹那の呪力量を完全に甘く見ていた。
「なんっで!? 呪力は空っぽのはずだろう!?」
その出来事に一瞬だけ呆気にとられるが、自身の射程範囲内に入った空弥を見てやるべきことが脳内を高速回転する。
(今、祓う!)
ヴゥン、バリン! ドパパパパパパパパパ!!!
(完全に呪力量を推し量り間違えた! まさかこんなに多いなんて!!)
投射呪法を用いて空に飛ばせないように四方八方から攻撃を加え続ける。時間が経つごとに直哉の速度と攻撃力は鋭さを増し、空弥は身動きが出来ない状態に追い込まれる。
バサァッ!!
無理矢理翼を広げて飛ぼうとする空弥の背中を、刹那と直哉が再び蹴り飛ばし地面へと叩きつける。
ドゴォォォ!!
「アブォがァァ!」
「雑魚が飛び回んなやっ!」
ドパパパパッ!! ザンザンザンッ!!!
(あぁ、死ぬ…でも、最高にッッ)
「自由を感じるなぁ!!」
空弥は羽を広げると両手の指先を合わせて印を結ぶ。
「領域展開、
ブワァァァァ
一瞬にして地を踏む感覚が消え去り、まばらに足場が浮かぶ全てが青空の世界に染まる。夜なのに偽物の太陽が天高くに浮かんでおりその日照りは身を焦がし始めるのに時間はかからない。
「さっきの飴のお陰で直哉さんの中には僕の呪力が蓄積されています、一時的ですがあなたに術式を遠隔で発動しますので、ある程度は動けると思いますがそんなに長くは続きません」
「明らかに暑いもんなぁ、短期決戦っちゅうことや」
直哉は秘伝、落花の情を発動させて駆け出していく。
日照りに続き、鷹や鷲を模したような呪霊が二人を襲う。刹那と直哉は少ない足場を器用に利用しながら呪霊を祓い、空弥に攻撃を加える。
「この領域は時間をかけるほど辛くなる、空に憧れたものが上へ上へと向かうために下から這い上がろうとする、堕ちればお終いだ」
「あっそ」
ガインッ!!
「ウグッッ」
刹那が刀で直哉の方向へ空弥を弾き飛ばす。
「ネットリ喋るだけやないんかい、呪霊の癖して人様の真似しとんのちゃうぞコラ」
グァッ、スカッ
直哉が投射呪法による超高速のパンチを放とうと足場を強く踏みつけるが、足場が一瞬で消え去り足は空を踏み落下していく。
空弥は愉しそうに笑い一言呟く。
「じゃあね、金髪の坊や」
落下先には無数の呪霊が口を開けて直哉が落ちるのを待っている。
パッ、クルリッ
「……は?」
「食らえやボケナス」
背中から落下していった直哉が空弥の目の前に突然出現する。
「…感謝してくださいよ、危ないですね」
落下する一瞬の時、走馬灯などよぎらなかった。
ただ直哉は信頼していたのだ。自らがその身をもって体感した刹那の術式、ただその時のために精神を研ぎ澄ませ、落花の情に全神経を注いで準備していた、自分に出せる最高の一撃を。
呪術師は死の淵、走馬灯が脳裏をよぎる状況、その瞬間にこそ最大の成長を遂げる。
1000000分の1の黒い火花は架空の青空に咲き誇った。
【黒閃】
──ーィィィンッッパァァン!!
直哉の黒閃によって空弥の顔面は弾け飛び、それと同時に領域は解除され、二人は地面に降り立つ。
「おっと、感覚おかしくなりますね、あれ」
「これが黒閃…めっちゃ気持ちええなぁ、悟君も刹那ちゃんもズルいわぁ、こんなん先に経験してたなんて」
カリッ
「良かったですね、暴れられますよ、帳の中に急ぎましょう」
「了解や」
パキキキキン!!
二人が走り出そうとすると突然目の前に氷塊が現れる。
「次から次へと…」
氷塊の上に白髪で袈裟姿の人物が立っている。
「……阿頼耶識殿?」
問いかけるように言葉を放つとその人物は氷塊麓に降りる。
「なんや自分、まずはおどれの名前言うのが筋やないんか」
「私は裏梅、金髪のお前には興味は無い」
「あ"ぁ" 」
敵意を剥き出しにする直哉を刹那は抑える。
「確かに僕は阿頼耶識刹那です、そっちの親玉にでも指示されたんですか?」
「やはり…!」
裏梅は刹那に近付くと嬉しそうに笑みを溢し、話しかけてくる。
「本当に
「えっと? あの、貴方は敵ですか? 味方ですか?」
「私は宿儺様、そしてあなたの味方だ」
「「!!!」」
「ちょぉ待てや、なんでそこで両面宿儺が出てくんねん」
直哉が裏梅の肩を掴むが裏梅は悪態をつく。
「貴様に教える義理は無い、
「ちょちょ、ストップストップ!! 直哉さんもです!」
ピタッ
二人は間に入った刹那により動きを止める。
「聞きたいことは沢山ありますけど、取り敢えずなんで僕の味方なんですか? 今ので呪術師じゃなくて僕と宿儺個人の味方だってのは分かりましたけど」
裏梅に向かって刹那は問いかける。その答えは、思いもよらぬ、突拍子もないことだった。
「…刹那殿、それはあなたが、阿頼耶識家初代の人間、阿頼耶識万代の子孫であり、宿儺様の血が通う人間だからだ」
「………は?」
オリキャラ退場!次の更新は来週かなぁ。