全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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ひっさしぶりの投稿です!ちょっと修学旅行の準備とかでバタついてまして(汗)本誌の展開がめっちゃやばいことになってますね!
今回の話は独自解釈が多めなので、そこは大目に見てください。
それではどうぞ楽しんでください!


第五十一話 宿儺の追憶

 骸の山、そこに足を組み、宿儺は座っている。

 

 阿頼耶識刹那に自身の呪力を練り込み、元いた場所へと送り届け、宿儺は目を瞑って(彼女)を想っていた。

 

 ──千年前──

 

 見渡す限り広がる術師の死体の海。その中央にて呪いの王、両面宿儺はつまらなさそうに曇天の空を見上げ突っ立っていた。

 

「……つまらん、この程度の実力でこの俺に挑んでくるとは…帰るか」

 

 踵を返し、欠伸をかきながら自身の住む山へと帰ろうとする。しかし、宿儺は異質な呪力を感じ、その歩みを止める。

 

「…ほう、あの状況から生き残ったか」

 

 振り向くと、真っ白な髪で二刀を携えた重瞳の術師が宿儺を見据えている。

 

「流石は呪いの王だ、俺も自分を守るので精一杯だったよ」

 

 刀を宿儺に向け、術式を展開して背中から白い触手を出現させる。

 

「ケヒッ、少し痩せてるが今日の晩飯には丁度いいな、少しは足掻いてみせろ」

 

 バギィ"ン"ッ!! 

 

 宿儺の術式と術師の刀がぶつかり、鈍い音が死体の海の上に鳴り響く。

 

 ギュルルルッッ、キンキンキンキンッ

 

 術師は触手で宿儺の視界を塞ごうと伸ばすがいとも容易く斬り伏せられる。

 

「[開]」

 

 ボゥッ!! ドゴォン!! 

 

 ジュバァン! 

 

 宿儺は四本の腕から炎の矢をつがえて放ち、火柱を二本立たせる。

 

 術師もその柱を真横に切断し、豪炎の中から現れる。

 

「これも耐えて見せるか、面白い」

 

(チッ、こんな威力のものバンバン撃ちやがって)

 

「貴様、名は何と言う?」

 

 宿儺は不敵に嗤いながら術師に名前を問う。

 

「…良いぜ、答えてやるよ、万代だ。お前の本名も聞きたいものだがな」

 

「名などとうに捨てたわ。そうか、万代か、覚えたぞ。今から死にゆく強者の名をな」

 

 宿儺は四本の腕で印を結び、術師の到達点である技を惜しみなく披露する。それと同時に万代も術式を行使する。

 

「領域展開、伏魔御厨子」

 

「我流、対領域術、弥勒(みろく)

 

 宿儺の背後に牛、人骨で組み立てられた建造物が出現し、超広範囲の死体や呪具達を破壊しだす。

 

 バヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅバヅ

 

 それと同時に万代は黒い触手で自らを覆い、外からの攻撃を触手でガードする。触手の中身は完全に孤立した空間になり、その空間ごと宿儺に向かって走り出す。

 

(俺の領域に抗って見せるか!)

 

 ズバンッ! ブワッ

 

 警戒を解いていた宿儺の腕が一本、宙を舞う。しかし、同時に斬れた腕を宿儺はくっつけて再生させ、炎の矢を撃ち込む、先程とは違い、連続して五発撃ち込み万代の防御を突破する。

 

 ボォンッ! ドゴォッンッンンン

 

 万代は後方へと吹き飛び、頭から血を流す。それでも立ち上がって再び刀を宿儺に向ける。

 

「良いぞ、実に良い、そこらの有象無象とは違う。実に良い術師だ。褒めてやろう」

 

「心にもない言葉をべらべらと…っガボッ」

 

 突如として万代は吐血し、言葉を止める。

 

「? どうした? まさか終わりではあるまいな?」

 

「そんなわけ無いだろう…!」

 

 ギギンッガギッ、バキイッ! 

 

 万代は斬りかかり再び宿儺に剣撃を見舞うが、先程までのキレは全く無く、軽く迎撃される。

 

「……」

 

「はぁッはぁッッ、ゲホッ」

 

 ビチャチャ

 

 万代は再び吐血し、ついには膝をついてしまう。

 

(視界がっ…次の攻撃がくる…!)

 

 顔をあげると目の前には宿儺が立っていた。

 

「……これまでか」

 

 ボロボロに刃こぼれした刀に目をむけ、現実を受け止める。そしてそのまま刀を納め、その場に正座する。

 

「…邪智暴虐の限りを尽くす呪いの王よ、最期に聞いていけ」

 

 口をゴシゴシと乱暴に拭き、宿儺に向かって言葉を紡ぐ。

 

「勝つぞ、俺達(呪術師)は」

 

 限界を迎えたのか、その場で万代は気絶する。万代は呪いの言葉を吐き捨てるのではなく、ただ一言、宿儺に宣言していった。

 

「……裏梅」

 

「ここに」

 

「コイツを死なせるな、恐らく毒の類だろう。…ここで死なすには惜しい」

 

「御意に」

 

 宿儺は裏梅を呼び、万代を連れて根城へと帰還する。

 

(あの時はほんの気まぐれだった、決着が俺以外による者など許さないなどという、取ってつけたような理由で、俺はあいつを生かした)

 

 ──ー

 

 次に万代が目覚めたのは布団の上。知らない天井を見ながら、かなり上等な物の上に寝かされて着物も着替えさせられ、傷も全て包帯でぐるぐるだが治療がなされている。

 

「ん!?」

 

 当然、疑問符を浮かべて現状を整理しようと務めると、部屋の障子が開き、木箱を持った白銀の髪の人物が入ってくる。

 

「おや、お目覚めですか?」

 

「…貴方が助けてくださったのか?」

 

「いいえ、詳しいことは私の方から申し上げられません。それよりも、包帯をお変えいたしましょう」

 

「あ、あぁ…」

 

 裏梅は軟膏が塗られた包帯を取り替えながら万代に伝える。

 

「包帯の取り替えが終わったら朝餉が出来ておりますゆえ、ご案内いたします。主もそこにいらっしゃるので疑問はそこで解決するのがよろしいかと」

 

「ん、ありがとうございます…えっと」

 

「裏梅にございます」

 

「ありがとう、裏梅さん」

 

 包帯を変え終え、広い屋敷の長い廊下を渡り、件の人物がいる場所へと向かう。

 

「こちらにおいでです」

 

「ありがとう、そう言えば君の主って一体…」

 

「…多少困惑されるかと思いますが、決して危害などを加えませぬようお願い致します」

 

「ん? そりゃそうするけど…」

 

 シャッ

 

 万代は障子を開ける。そこには、つい先刻、文字通り命懸けで呪い合った、両面宿儺の姿があった。

 

「おぉ、中々に回復が早かったな」

 

「あぁお前か…は?宿儺ァ!!!!??」

 

 あっさり受け止めたかと思いきや、急激に宿儺の存在が万代の中で広がり、大きな声で宿儺の名前を呼ぶ。

 

 キーーーン

 

「っさいわ!!馬鹿者!!!!」

 

「いや大声も出るだろうが!! なんでお前が俺を助けてるんだよ!?」

 

 裏梅はなんとなく予想していたのか、万代が叫ぶ前に耳を塞いでいた。

 

「あーあー、うるさいうるさい、取り敢えず座れ」

 

 長机の向かいを指差す。

 

「何故お前の言うことを聞く必要がある」

 

「俺は貴様の命の恩人だぞ?」

 

「同時に殺しかけた犯人だけどな?」

 

 悪態をつき、そう言いつつも仁義に厚い万代は大人しく向かい側に座る。

 

「裏梅」

 

「御意に」

 

 宿儺が名前を呼ぶと、呪いの王が食べる物の割には普通の物がそれぞれの前に盆に乗って用意される。

 

「意外に普通なもの食べるんだな」

 

「俺とて人間と身体の作りはそう変わらん」 

 

「毒とか入ってないよな?」

 

「入れる理由がない」

 

「うーん…」

 

 黙々と食べる宿儺をじっと睨みながら警戒していると裏梅が万代に話しかける。

 

「消化の良いものの方がよろしいですか?」

 

「あ、いや大丈夫大丈夫、いただきます」

 

 手を合わせてそう言うと、意を決して食事を一口、口にする。

 

(南無三っ!)

 

 パクン

 

「………美味しい」

 

 ボソリと自分でそういったのがトリガーになったのか、あっという間に食事を終える。

 

「御馳走様でした」

 

 先に食べ終えていた宿儺はお茶をすすって湯呑みを置くと、万代に質問する。

 

「さて、俺が貴様を助けた理由だったな」

 

「あっ、そうだよ! なんで俺を助けたんだ?」

 

 思い出したように宿儺に質問する。

 

「そうだな…言ってしまえば気まぐれだ」

 

「簡潔な答えをどうも、てかそれ本気で言ってんのか?」

 

「俺は嘘を吐かん。他の血筋や術式を誇示する上辺だけの連中と違い、貴様は俺に命を賭して戦ってみせ、最後の最期まで呪術師でいてみせた。そんな貴様を俺は気に入ったのだ」

 

「?? 何言ったか覚えてないけど、取り敢えず俺はお前に気に入られたってことでいいのか?」

 

 裏梅をちらりと見やると深く頷いている。

 

「今度は俺の方から聞かせろ。何故、貴様の身体は反転術式による治療が効かん?」

 

 宿儺と裏梅の反転術式を用いても治すことの出来ない傷、万代の身体はそれほどの損傷を負ったわけではなく、生まれ持った体質が影響していた。

 

「…心臓、お前はどっちにある?」

 

「は? …さっきも言ったが、俺とて人と対して身体の作りは変わらんぞ」

 

 左胸を左の両腕でトントンと叩いて見せる。

 

「俺はな、生まれつき全ての内臓の位置が逆なんだ。それだけじゃない、髪や瞳の色も術式さえも、全てが逆転してる」

 

 万代はそういって呪力を練ると、反転の正の力が最初から練られる。

 

「ほう、聞いたことがないな。天与呪縛の類か? それによって反転の治療は意味をなさいのか」

 

「そういうことだ。ついでに言えば、そのせいで俺は領域展開を会得できないし、術式順転も使えない」

 

「だとすると、貴様の術式は常に反転していることになる。それを反転させれば使えるのではないか?」

 

「単純な身体強化等はこなせるさ。でもそれも血反吐吐く努力を重ねた結果だ。表の裏の裏は表じゃない。銭を二回ひっくり返せば当然表になるが、呪術的にはその行いはどうやら許してくれないらしい」

 

 ため息をついてやれやれといった風に手をヒラヒラと振る。

 

「で、俺を生かしたのがお前の気まぐれだとすると、俺を気まぐれで殺す事もあり得る訳だよな」

 

「そうなるな」

 

「生憎と俺はお前を殺そうとして敗けたんだ、完璧にな。その上に情けをかけられて生かされるなんざ御免だな」

 

 ダンッ! 

 

 万代は机を叩いて宿儺を強く見つめる。

 

「殺せよ、今ここで」

 

 宿儺は少しだけ驚きつつも、しかし強く言う。

 

「断る。それと貴様は一つ、思い違いをしている」

 

「なに?」

 

 ガシッ、ズダァン!! 

 

 万代の手を掴んで机に叩きつけ、顔を近付けてニヤリと嘲笑う。

 

「貴様は生かされているのだ。同情ではなく、"俺の気まぐれ"でな」

 

「っ! このっ!!」

 

 もう片腕で顔を殴ろうとするが、宿儺のもう三本の腕がそれを許さずに頭を叩きつける。

 

「俺と貴様の力の差が分かったか? 分かったら──」

 

「あー、ごほんっ宿儺様、既に気絶しています」

 

「あ……寝かせておけ」

 

 強く叩きつけすぎたせいで、回復しきっていない万代は脳震盪により気絶していた。

 

 ──ー

 

「!!」

 

 ガバッ! 

 

 万代は飛び起きて周りを見回す、今朝見た景色がその光を暗くしただけの違いで広がっている。

 

「…はぁー」

 

 ボスンッ

 

「また敗けた…」

 

「挑むだけ時間の無駄かと」

 

 万代が布団に顔を埋めていると、裏梅が静かに障子を開けて部屋に入ってくる。

 

「よく見たら君も宿儺と似たようなものなんだな、俺なんかより全然強いや」

 

「…恐らくですが、宿儺様は貴方の実力を買ったのだと思います。自信を無くす気持ちは分かりますが、そう卑屈になる必要もないかと」

 

「……」

 

「もうすぐ酉ニ刻ですが、夕餉はどうなさいますか?」

 

「…いただこうかな」

 

 ため息混じりにそう答えて立ち上がり、再び食事を取るためにあの部屋へと向かう。

 

「貴方の身体は反転術式が効きませんゆえ、せめて治るまでは居てはいかがですか? 宿儺様は貴方を気に入ってる様子ですし」

 

「そうだね…誇りがなんだって言わずに泥臭く生にしがみつこうかな」

 

 シャッ

 

「宿儺様、万代様が起床されました」

 

「あぁ、貴様はいつも飯時に起きるな。そんなに飯が楽しみか?」

 

「何言ってんだ、飯が楽しみじゃない奴なんていないだろ」

 

 宿儺の正面に座り、万代は答える。まともに会話をしたのが初めてだったためか、宿儺は驚く。

 

「明日」

 

「?」

 

「明日からはちゃんとお前の言うことを聞くよ、さっき言われた通り命の恩人だしな。俺に拒否権はない」

 

「いやに素直だな、頭の打ちどころが悪かったのか?」

 

「そうかもな」

 

 急にしおらしくなった万代に疑問を感じ、宿儺は裏梅を見る。

 

「何かしたか?」

 

「私の口からはなんとも」

 

 適当に返事を返し、裏梅は食事を運びその場を後にする。

 

(まぁいい…気まぐれで助けたのも嘘ではない、飽きたら殺すのみ、精々足掻いてみせよ、強き呪術師、万代よ)

 

 これが阿頼耶識家初代、阿頼耶識万代の宿儺との出会いだった。




独自解釈満載ですし、多分宿儺はもっと色々技を持ってると思うんですけど、今はこんなものでお願いします。
しばらくはこの話がつづきますので何卒宜しくお願いします!
PS別作品の方は完全不定期ですが、そちらの方もよろしくお願いします!
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