全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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新年明けましておめでとうございます!!
本年もどうかよろしくお願いします!!
呪術廻戦0素晴らしかった!!あと三回は見たい!
雑談はこれくらいにして、本年も鋭意制作していこうとおもいます!それではどうぞ!


第五十ニ話 未だ思う

 万代は一人、卯一刻(現代の五時)頃に起床し、台所へと向かっていた。

 

(今日から一応世話? になるんだから何かしらをしなければ)

 

 障子を開けて中に入ると、裏梅が既に準備を始めていた。

 

「おや、万代様。おはようございます」

 

「おはようございます、遅起きで申し訳ない。なにかやることはあるだろうか?」

 

「やること…ですか?」

 

「一応恩人に世話になるわけですから、何かはして当然だと思うのだが」

 

「そうですね…ですが、宿儺様はそういったことは望まれていないかと」

 

「そうだとしても何もしないのは俺がいたたまれない。何でもいいんだ、こき使ってくれ」

 

「では…宿儺様を起こしてきてくれますか?」

 

「あい分かった、行ってくる」

 

 万代は宿儺を起こしに部屋へと向かっていった。

 

「まぁ、まだ早い時刻ですがね」

 

 誰もいなくなった台所で、裏梅は一人ポツリと呟いた。

 

「よし…失礼します」

 

 シャッ

 

 一言声をかけて障子を開けるが、宿儺は大きな布団をかけて寝ている。

 

「起こしにきました」

 

「……なんだ貴様か」

 

「朝なので起こしに参りました」

 

「なんだその喋り方は。不愉快だ、戻せ」

 

「え、じゃあ、うん。起こしにきたぞ」

 

 宿儺は欠伸をかきながらのそのそと体を起こす。

 

「今は何刻だ?」

 

「卯一刻くらいだけど…」

 

「起こすのが早いわ戯けが」

 

「えぇー、だって裏梅さんが起こしに行けって…」

 

「だっても何もあるものか。全く、目が覚めてしまったではないか」

 

 ボリボリと背中をかきながら再び欠伸をかく。

 

「じゃあ、いつも何刻に起きるんだよ?」

 

「知らん、好きなように起きる」

 

「身体に悪いな、これからは毎日この時間に起こしに来てやるよ」

 

「いらん、そんなことをしてる暇があるなら大人しく寝てろ」

 

「いつまでもお客様扱いされるわけにゃいかんだろ。少しでも役に立たせろよ」

 

 宿儺は少しの間黙り込み、そして急に何かを思いついたのか、不敵な笑みをこぼす。

 

「なるほどなるほど。役に立ちたいか?」

 

「まぁ、そうだけど。お前が今考えてることはなんか嫌だな」

 

「そう構えるな、お前が言ったのだ。毎朝起こしに来ると」

 

「ん? それだけでいいのか? 毎朝余興をしろとか言わねーの?」

 

「それの何が楽しい?」

 

「いや楽しかないけどさ、お前なら無駄なことさせそうだし」

 

「……まぁいい、とにかくお前は毎朝ここにこい、いいな」

 

「はいはい、んじゃ、時間も丁度良いし行こうぜ」

 

 二人は居間へと向かう。裏梅は宿儺が早い時間に起床したことに驚きつつも朝食の準備を終わらせる。

 

「万代、貴様が役に立ちたいと言うのならまずはその傷を治せ。そんなボロ雑巾のような見目では見るに耐えん」

 

「分かったよ、分かったから」

 

(…不器用すぎる)

 

 裏梅は心の中でそんなことを呟きながら家事に取り掛かっていった。

 

 それからの万代の生活は一変する。時間に追われることも、命のやり取りをすることもなくただ日々を過ごしていく。朝は宿儺をおこし、他愛ない雑談と下らぬことで喧嘩し、昼晩の食事の準備を手伝う。

 

 しかし、それは色褪せる暇などないほどに退屈を殺し、孤独を殺す日々だった。

 

(…宿儺に世話になってから約三週間、身体は訛っていないだろうか)

 

 木々の葉が紅く色づき、終わりを迎える準備の為にその葉を散らす。そんな鮮やかな庭で二振りの刀を構える。

 

 ズズズッ…

 

 術式を発動し、白い触手を出現させる。

 

「術式は問題ない、呪力への反転も…問題ないな」

 

 身体を部分ごとに分け、からくり人形のように自身の体の駆動を確認する。

 

 深く深呼吸を一つ、舞い落ちる枯れ葉を次々に空中で斬っていく。

 

 スパパパパッ

 

「うんうん、若干筋力が落ちてるけど問題なさそうだ」

 

 ゾワッ

 

 キキキン バキンッ! 

 

 納刀して手の平を見つめながら頷いていると、舞う枯れ葉が一瞬にして全て両断され、斬撃の一つは万代に向かって飛び、それを斬り弾く。

 

「何をしている?」

 

「こっちの台詞だ大馬鹿野郎、急に殺しに来る奴があるか」

 

「その程度で死ぬわけ無かろう?」

 

 宿儺は本気で首をかしげて疑問を口にする。

 

「この野郎…はぁ」

 

 ため息一つと共に怒りを鎮め、宿儺の質問に答える。

 

「身体が訛ってないのか確認してるんだよ、完治したらお前と呪い合うことになるだろうしな」

 

「ん? 何故呪い合う必要がある?」

 

「何故って…?」

 

 長く宿儺の側に居すぎたためか、それとも純粋に恩人だからか、いずれにせよ殺し合う理由が万代の中に見当たらなかった。

 

「ふむ、呪詛師と呪術師、呪い合うのは必然。しかし、貴様は俺に敗北を決している、挑む資格も意味も無い」

 

「……確かにな…」

 

 秋特有の澄む空を見上げながらポツリと呟く。

 

「そんなことよりだ、貴様ほどの術師が何故そんな安っぽい呪具を使っているのだ?」

 

「安っぽいって…一応こいつらで一般的な家なら買えちまうんだぞ?」

 

 宿儺に刀身を見せるが、手入れされているとはいえ、歴戦の傷たちは隠すことができずにいる。

 

「そんなこと知るか、満足に術式も施されていない呪具など玩具に過ぎぬわ」

 

「大枚はたいて買ったんだぞコラ」

 

 癪に障ることばかりツラツラと並べる宿儺に若干キレかかっている万代とそれを愉快そうに眺める宿儺。その場にもう一人の声が響く。

 

「お二方、朝から無駄なことをなさるのはやめたほうがよろしいかと」

 

「裏梅さん、だってこいつがさー」

 

「万代殿…いえ、なんでもありません」

 

 裏梅はなにか言いかけてスタスタと屋敷の中へと入っていく。

 

「えっちょっ、待ってってば!」

 

 続いて万代も中に入り、宿儺はその場に取り残される。

 

「…主を置いていくとは、不躾な駄犬共め」

 

 ────

 

 さらに二週間。

 

「やっっと、完治したぞ!」

 

 パチパチと拍手する裏梅と、その横でまるで興味がなさそうにお茶をすする宿儺。

 

「どうだ宿儺、多少跡は残ったが完治してみせたぞ!」

 

「煩いぞ。治ったから何だというのだ、興味はない」

 

「お前が治るまでいろっつったんだろうが」

 

「治っても相変わらずですね…」

 

 不意に宿儺は胸周りの包帯に気がつき、それに対して煽り文句を垂れる。

 

「ケヒヒ、なんだ、まだ治りきっていないではないか」

 

「え? どこ?」

 

 クルクルと回りながら、自身の体を確認する万代を嗤いながら宿儺は頭を掴む。

 

「包帯を巻いてることさえ忘れるとは、犬ではなく鶏だったか」

 

「!宿儺様っそれはっ!!」

 

 そのまま宿儺は胸の包帯を触る。男の胸からはおよそ感じることの無い感触が宿儺の掌に伝わる。

 

 ムニュッ

 

「………」

 

「………」

 

「………太ったか?」

 

 ブチッ

 

「最ッッッ低だぞお前!!」

 

 バチンッ! 

 

 過去最後の怒りと呪力で強化した力で宿儺の頬を平手打ちし、万代はその場を去っていく。

 

 その場には宿儺の頬の平手跡と音が証拠と残響として鳴り響く。

 

「裏梅」

 

「申し訳ございませんが、今回ばかりは宿儺様が全面的に悪いかと」

 

「あいつは…女だったのか?」

 

(まさか…そこからとは)

 

 宿儺は一月間万代と共に生活を共にしていたが、常に男として振る舞う万代が女性だということに気付けなかった。

 

「宿儺様、万代殿は完治した身です。一度無事を報告するために帰還なさるかと」

 

「何が言いたい?」

 

「謝るべきです、人格を男に矯正していても根は女性。今回の過失は確実に宿儺様にあります」

 

「裏梅、貴様随分偉くなったものだな。この俺に指図とは」

 

 宿儺はギロリと裏梅を睨むが裏梅は怯むことなくいつもの様子で返答を待つ。

 

「はぁ…。茶菓子を用意しておけ。あいつと話してくる」

 

「御意に」

 

 裏梅は表情を明るく変え、パタパタと台所に行く。宿儺も立ち上がり万代の元へと向かう。

 

「入るぞ」

 

「入んな」

 

 シャッ

 

 短くノック代わりに呼びかけ、否応なしに宿儺は入っていく。

 

「………」

 

「………」

 

「何しに来た」

 

 互いをいがむような重い空気を先に打ち破ったのは万代だった。

 

「全く、あの程度のことをいつまでも気にするでないわ」

 

「あの程度?嫁入り前の生娘の胸を触って嘲るのがあの程度か」

 

「だからすまなかったといっているだろう」

 

「今初めて聞いたわ」

 

「そもそも、女の癖に言動を偽っている貴様にも否があるのではないか?」

 

「謝る気あるのないのどっち?」

 

「…すまなかった」

 

 話し合いの末、結局全面的に悪い宿儺は渋々と折れ、謝罪する。

 

「…言動に関しちゃ言ってないのは悪かったよ、話すから少し待ってくれ」

 

「ならば茶の間で裏梅が菓子を用意している、お前も早く来い」

 

 宿儺は指をちょいちょいと動かして誘導するが、次の瞬間には防御の姿勢を取っていた。

 

「!!!」

 

 ミシィッ、バォンッ! 

 

 ドガジャァンッ! 

 

 不意の一撃に宿儺の巨体は宙を舞いながら外へと放り出されるが、足に力を入れて停止する。

 

 ザザァ──ッ

 

「…なんのつもりだ?」

 

「なんのつもりって、見りゃ分かんだろうよ」

 

 刀を二本携え、壊れて土埃が舞う中から万代が現れる。

 

「俺は呪術師でお前は呪詛師。呪い合いだ、俺とお前のな」

 

「フン、傷が癒えて俺に再戦か。いいだろう、最近退屈し初めていたところだ、本気で来い」

 

 この場で二人の術師は再び呪い合う。

 

 嘘だらけの戦いの幕が切って落とされた。

 

 ガギィンッバギィンッ! 

 

 暫く戦っていなかった万代だが、一ヶ月間何もしなかったわけではない。宿儺の動きを余すことなく観察し、術式を使用するときの癖、一歩の踏み方、果ては呼吸のタイミングに至るまで全てを観察して戦いを有利に勧めていた。

 

「ほらどうした!? 守ってばっかじゃ俺は殺せねぇぞ!!」

 

 宿儺の身体に直接のダメージは無くとも、術式の発動タイミングや息継ぎの瞬間を狙った連撃は宿儺の体と精神に確実にストレスを溜めていく。

 

「解、捌」

 

 ギギギギンッ! ボギンッッ

 

 四本の腕で二種類の斬撃を不規則に繰り出す宿儺に対し、二分の一の数でそれを受けきって見せるが、小太刀は負荷に耐えきれずに鈍い音を響かせながら折れてしまう。

 

 一本になった刀を横に回転しながら前宙し、宿儺の首を狙って刀を振るうが反対に刀を掴まれて投げ飛ばされる。

 

「ケヒヒ、勘違いも甚だしい。ほら、頑張れ頑張れ」

 

「…甘く見んなよ」

 

 バヅンッ、ボトッ

 

 余裕を見せつけ、嘲笑する宿儺の腕が万代の術式の発動によって不意に一本斬り落とされる。

 

「ほう…!」

 

「やっと良いのが入ったな」

 

 その機を逃さないと言わんばかりに、一本減った左側に再び連撃を加えていく。

 

 ギギンッ! 

 

「褒めてやろう、やるようになったではないか」

 

「──!!!」

 

 連撃と同時に万代は悟っていた、絶対に勝てない。

 

 いつでも一瞬で自身を赤子の手をひねるように殺せる程の力を、目の前の男は持っているということを。

 

「…………」

 

 万代は飛び退いて己の無力さを痛感するように刀を握りしめる。

 

「宿儺…そんなに俺は弱いか…? 殺す価値もないほどに、俺は──」

 

「勘違いするな」

 

 万代の言葉を横入りして塞ぐ。そして腕を拾って治しながら残ったもう一本の万代の刀身を掴む。

 

「貴様を殺さないのは殺す価値がないからではなく生かす価値があるからだ。俺は知っているぞ、貴様はここに来てから毎晩自らの死を渇望し、苦しんでいることを」

 

「……俺を殺そうとは」

 

「望んでいるのに自死もできぬのは、今を想い、生にしがみついているからではないのか」

 

 宿儺は諭すように、呪いの王とは思えないほどに他人の為に言葉を紡いだ。

 

「…もういいな? ほれ行くぞ、茶が冷めてしまうではないか」

 

 スタスタと宿儺は歩いていく。

 

「どこが呪いの王だよ……」

 

 万代も後を追いかけていく。

 

 シャッ

 

「終わりましたか。意外と早かったですね」

 

「奴の刀が折れた。身の丈にあった呪具を用意しろとあれほど言ったのにあの阿呆が」

 

「誰が阿呆だ誰が」

 

「貴様以外おらんだろうが」

 

 互いに悪態をつきながらいつものように座ってお茶を飲む。

 

「あ、そうだ、俺明日ここ出てくから」

 

「あ"?」

 

「いや怖、腕落とされた時より怒るじゃん」 

 

 万代の突然の発言に急に怒りを顕にする。

 

「いや俺だって家持ってるし、流石に死んだことにされるのは勘弁だし生存報告だけしとこうかと」

 

「………」

 

 宿儺の呆気な表情を見て裏梅と万代は思わずクスクスと笑ってしまう。

 

「そんな心配すんなよ、普通にここ来るし。今度は菓子でも持ってくるさ」

 

「そんなに簡単に来れる場所ではないんですがね」

 

 その後は特段変わった様子もなく、翌朝万代は宿儺の屋敷を出ていった。

 

 ──二日後──

 

「お、裏梅さん。二日ぶり」

 

「随分お早いお帰りで」

 

 驚いているのか当然と思っているのか、それを悟らせない表情で万代を迎える。

 

「あはは、帰ったわけではないんだけどね。なんかちょっと宿儺の監視役みたいのに任命されてさ」

 

「…それを私に告げてもよろしいのですか?」

 

「どうせ宿儺は気にしないさ。それより給金が上がって余裕ができてさ、いい菓子を持ってきたよ」

 

「しかし宿儺様が…」

 

「あいつの分もあるから問題ないよ、ほら行こう」

 

 裏梅の手を掴み、勝手知ったる屋敷の中へと足を踏み入れる。

 

 宿儺は所要で出かけており、二人で穏やかな一時を過ごす。

 

「お、宿儺が帰ってくるな」

 

「そのようですね、出迎えにいってまいります」

 

 裏梅はそういって玄関に向かうが、僅かな間で万代の元へと戻り、勢いよく障子が開く。

 

 シャッ! 

 

「おー宿儺、お邪魔してるぞ〜」

 

「…存外早かったな」

 

「おう、座れよ。お茶しようぜ」

 

「ケヒヒ、その菓子は俺が満足できるものなんだろうな」

 

「さーね、俺は好きだけど」

 

 会うだけで自然と笑みが溢れてしまう二人の術師の奇妙な関係はそれから程なく続いた。

 

 ──

 

「だーかーら! 俺はそんなの受け取れないって!」

 

「この俺が生まれて初めて他者に物を贈ると言っておるのだ! 素直に受け取らんか!!」

 

 二人の喧嘩の様子を裏梅は万代の持ってきた煎餅を齧りながら見ている。

 

「お前これどうせ盗んだんだろ!? んなもんもらえるか!」

 

「盗むなどという狡い真似はせんわ!」

 

「じゃあ買ったのか?」

 

「…………」

 

「黙ってんじゃねえよガキか!?」

 

「万代殿、少なくとも貴方達の思うような危険な手段は取っておりません。ここは一つ、騙されたと思て受け取ってみてはどうでしょう」

 

 裏梅のフォローによって万代は絆されて渋々二振りの刀を受け取る。

 

「最初からそうすれば良いのだ頑固者が。どれ、抜いてみろ」

 

 スラッ

 

 銀の刀身に紅い紋様が走る小太刀、血吸。それと同じく銀の刀身に波の刃紋がついた太刀、童子切を手にして見つめる。

 

「……」

 

「どうだ?」

 

「…どっちもとんでもなくいい呪具だ。付与された術式だけじゃあない、刀もさぞ名のある名工が打ったものだろう…ほんとに良いのか? こんな良いものもらって」

 

「いらぬなら捨てるまでだ」

 

「いや、じゃ貰うよ」

 

「ついでだ。裏梅、アレも持ってこい」

 

「御意に」

 

 宿儺が裏梅に指を指して指示する。

 

「え、流石にこれ以上は不味いって」

 

「案ずるな、次のは特段高価な物でもない」

 

「…おい、なんで急にお前の色が明るくなるんだよ」

 

「持って参りました」

 

 裏梅が持ってきたのは女性物の鮮やかな配色の着物。万代が生まれてから今まで絶ってきたものだった。

 

「おい…着ないからな」

 

「女なら身なりに気を使うべきだと思ってな、俺なりの思いやりというやつだ」

 

「女物の着物着てるお前に言われたかねぇわっ、てか楽しんでるだけだろ」

 

 万代の眼には明らかに楽しさを表す黄色が色濃く映っている。

 

「私が万代殿の為に選びましたゆえ、似合わないはずがございません。ぜひとも袖を通してみてください」

 

「裏梅さんもかよ、、、今回だけだからな」

 

 渋々純粋な善意の裏梅と、弄り倒そうと嘲笑する宿儺の前に着物を着て出て見せる。

 

 真っ白な髪に朱と黄色の華やかな着物はよく映える。髪が短い万代にはよく似合う着物だった。

 

「「………」」

 

「……なんか言えよ、いたたまれないだろ」

 

「なんとも…馬子にも衣装だな」

 

「第一声がそれかよ」

 

「とてもよくお似合いです、是非とも普段使いにしてみてはいかがですか?」

 

「冗談はよしてくれ、俺には似合わないよ」

 

 その着物の姿で一日を過ごし、万代は宿儺の監視(一緒にいるだけ)を日課として、万代が帰る前と大して変わることのない日々を過ごしていった。

 

 しかし当然、最凶の呪詛師と謳われた両面宿儺の元へ赴き何度も何もなく生還している。そんな呪術師を、世間は疑わない訳がない。

 

「♪〜♪〜」

 

 ヒソヒソ

 

「アレが例の化け物の仲間だ」

 

「よくも堂々と日の本を歩けるものだ」

 

「苗字をもらえたからと調子に乗りおって」

 

「聞けば性別を偽っているらしいではないか」

 

 街を歩けばそういう噂話が万代に聞こえてくる。

 

 聞こえずとも見えてしまう。

 

 万代は極力気にしないように努めている、しかし精神というのは本人の預かり知らぬ間にすり減るもので、顔に出てしまうのが人間だ。

 

 ──

 

「でさぁこの間の呪霊がな──」

 

「万代よ」

 

「? どうした?」

 

「最近寝ているか? 目元の隈が酷い、先の反応も鈍かったではないか」

 

 宿儺は万代の頬を撫でながらそう話す。

 

 普段ならば振り払う万代だが、今回はそんな様子も見せず、大人しく宿儺の優しさに身を委ねる。

 

「……依頼が多くてさ、寝れてないんだ。疲れてるだけさ」

 

「…今夜は泊まっていけ、久方ぶりに酒でも用意させる」

 

「あぁ、ありがとな…」

 

 万代の心はどんどん疲弊していき、その日を堺に、万代は宿儺の前から姿をパタリと消した。




宿儺の過去が原作で詳細には語られていないので半分以上、というか八割は作者の妄想です、これから先、原作と酷い矛盾がでるようなら直しますが、それまではこんな感じかなーくらいで見てやってください。それではもう一度、今年もよろしくお願いします!!
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