全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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投稿期間が大分空きました!すいません!
そして最初に言わせてください!お気に入り登録六百人突破!ありがとうございます!!感想やお気に入りなどこの小説を書く活力になっています!ありがとうございます!
遅れた理由は今回の話が中々難しくて本を読みまくってたのでかなり遅れてしまいました、すいません!そのくせに内容は以外と変わってないので所々流し読みで問題ないと思います!


死滅回遊 開遊
第五十四話 死滅回遊


 最初のルールは読み飛ばし可能

 

 総則(ルール)

 

 1、泳者(プレイヤー)は術式覚醒後、十九日以内に任意の結界(コロニー)で死滅回遊への参加を宣誓しなければならない

 

 2、前項に違反した泳者からは術式を剥奪する

 

 3、非泳者(ひプレイヤー)は結界に侵入した時点で泳者となり、死滅回遊への参加を宣誓したと見做す

 

 4、泳者は他泳者(ほかプレイヤー)の生命を断つことで(ポイント)を得る

 

 5、点とは管理者(ゲームマスター)によって泳者の生命に懸けられた価値を指し、原則は術師五点、非術師一点とする

 

 6、泳者は自身に懸けられた点を除いた百点を消費することで管理者と交渉し、死滅回遊にを1つ追加できる

 

 7、管理者は死滅回遊の永続に著しく障る場合を除き、前項によるルール追加を認めなければならない

 

 8、参加または点取得後、十九日以内に得点の変動が見られない場合、その泳者からは術式を剥奪する。

 

 阿頼耶識刹那の死刑完了後に通達すること。

 

 呪術総監部より再び通達。

 

 一 宿儺の器、虎杖悠仁の死刑執行猶予を取り消し速やかな死刑の執行を行うものとする。尚、執行人は選ばず、確認次第執行すること。

 

 ニ 夜蛾正道を阿頼耶識刹那を天元殺害の計画に唆したとして死罪を認定する。

 

 ──

 

 十一月八日 午後十時三十分

 

「まずは明日、薨星宮に行って天元様と接触する。獄門彊の封印の解き方、加茂憲倫の具体的な目的と今後の出方を聞く。死滅回遊は未曾有の呪術テロだ、事態を収拾するにはこの二つの回答がマストだ」

 

 やっと一年生四人が揃った所で伏黒はこれからの方針を話し出す。

 

「虎杖と釘崎には既に説明してある。一応、今回の関係者全員には伝えるつもりだが、表向きには刹那は死んだことになってるから、高専内では俺の影に入っててくれ」

 

「え…ぅ、はい…」

 

 ヴーッヴーッ

 

 突如として伏黒の携帯が鳴り出し、それを手にとって確認する。

 

 メールを確認する伏黒の顔は、スクロールするごとに顔がどんどん苛立ちに歪んでいく。

 

「………」

 

「どうした伏黒?」

 

「なんとか言いなさいよ」

 

「…悪い、計画変更だ、今すぐ地下室に行くぞ。虎杖と刹那は二人共俺の影に入れ」

 

「どうした伏黒、何があった?」

 

「既に皆地下に集まってる、どこに耳があるか分からん、詳しくはそこで話す」

 

 伏黒は強引に三人を連れ出して地下室へと向かう。

 

 コンコン

 

「真希さん、俺です」

 

 ガチャッ

 

「おう、恵か。入れ」

 

 伏黒と釘崎は部屋の中へと入り、虎杖と刹那を影から出して話し合いを始める。

 

「お、目ぇ覚ましたんだな。おかえり」

 

「しゃけー! 明太子!」

 

「お帰り、刹那さん!」

 

「え、なんで皆知ってるんすか。俺言ってませんよね?」

 

「野薔薇が連絡くれたからな、ここにいる奴らは全員知ってるぜ」

 

「しゃけ」

 

「ただいま、です…」

 

 顔を合わせずに俯いて相槌を打つ刹那に真希は近付いていく。

 

「…おい刹那、湿気たツラすんじゃねーよ。呪術師なら我を通してなんぼだ。それでもまだ気にするようなら今の問題の解決に尽力しろ」

 

 クシャッ

 

 少しバツの悪そうに刹那は答えるが、それを見た真希は刹那の頭を少し乱暴に撫でて言う。

 

「でも、僕なんかが…」

 

「でももなんでもなんかも禁止、アンタは笑って私達の輪にいればいーの」

 

「全く、上はやっぱり腐ってるね。だから私は任務なんか受けないんだよ」

 

(それは違う理由なんじゃ…)

 

 釘崎と九十九も真希に続いて刹那の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「…高菜!」

 

「あはは、こういうのは同性の方がやりやすいよね」

 

「まぁ、早速ですけど話しましょう、時間が惜しい。真希さんの方には連絡来ましたか?」

 

「あぁ、直哉からだろ。多分、恵と私だけだ」

 

「ツナ、明太子」

 

「そう、それよ。さっきの連絡ってなんなのよ?」

 

「簡潔に言うとな悠仁、お前死刑だってよ」

 

「マジすか?」

 

「「「マジ」」」

 

 乙骨と伏黒と真希は声を揃えて言うと脹相は怒りを顕にする。

 

「俺の弟になんてことを…!!」

 

「弟じゃないけどな?」

 

「まぁ、それは今から連れ回すんで問題ないです。それよりも問題なのはもう一つの、夜蛾学長まで死罪になることです」

 

「学長もですか?」

 

「うめ」

 

「そう、上層部は今学長を特級に認定して危険人物としてみなしてるらしい。さっき僕達と離れた時に拘束されたんだと思う」

 

「なんでこのタイミングで…」

 

「嵌められたんだろうな、俺達は」

 

「どういうこと?」

 

 脹相が呟いたのを九十九が補足していく。

 

「刹那が天元を殺すって予告したじゃん? それがマジなら上は戦力が足りないと思ったんだろうね」

 

「一度戦った俺から言わせてもらうと、お前は五条悟並の規格外だ」

 

 脹相は刹那に指を指しながらハッキリと言い放つ。

 

「いやないないない、アレはさすがに超えてないよ」

 

 腕をブンブンと横に振って九十九は全力で否定し、周りも同調する。

 

「勿論あの男の実力を知ってる者からすればそうなる。しかし禪院家は瞬殺、高専生はお互い殺す気は無かったとはいえ真っ向から戦ってやっと悠仁達が勝利する程の術師。オーバーな発言でもあるまい。それに、悠仁を殺すとなればそちらにも特級レベル…現状では乙骨を送り込む必要がある」

 

「そっちに戦力を割いてしまえば刹那は止められない。かと言って虎杖君を放置するわけにもいかない、だから上は優先度をつけたのさ。刹那を殺してから虎杖君を殺せばいいってね」

 

「とことん…腐ってやがる…!!」

 

 虎杖は拳を握りしめて呟く。

 

「ん? じゃあパンダ先輩がいないのはそのせい?」

 

「おそらくだが、パンダも捕まったんだろうな。夜蛾さんのことになれば暴れかねないし」 

 

「多分?」

 

「急に二人共いなくなった。牢にもいねぇし後で探す予定だ」

 

「夏油先生は?」

 

「アイツな、嘘ついてやがったんだよ。手持ちの呪霊がすっからかんだからその辺で集めるって言ってやがった」

 

「あの人も存外自由ね」

 

「"アレ"の親友だからな」

 

「じゃあ現状を整理すると、現在時刻は八日の夜十一時。学長とパンダ先輩は捕まってて、悠仁君は死刑。夏油先生は頼りにならないってことですか?」

 

 刹那は簡潔に今の状況をまとめ、伏黒は計画を話し出す。

 

「そうだ。少なくとも現状高専で完全なフリーは釘崎と先輩方、逆にグレーが脹相と九十九さんだな」

 

「私は元々グレーだしねー、白に判定してもいいんじゃない?」

 

「それなら俺は悠仁の味方だから黒だな」

 

「ややこしいんで変えないでください」

 

 二人は伏黒の意見を自分勝手に変えていくが、九十九がかここで意見する。

 

「まぁでも、今は高専の結界が緩んでるし天元に会いに行くのは今からでいいんじゃない?」

 

「そうですね、刹那も起きましたし今からそうするつもりです」

 

「待ってください、天元様の隠す結界をどう抜けるつもりですか? まさか総当たり…?」

 

「扉から薨星宮の間には忌庫があるはずだ。そこには俺の弟達の亡骸がある。六人も集まれば俺の術式の副次効果で居場所くらいは分かるはずだ」

 

「なるほど…」

 

「それじゃあ早速行くか」

 

 脹相は立ち上がって薨星宮へ向かおうとするが、真希はそれにストップをかける。

 

「それなんだが…棘と野薔薇は待機しててくれ」

 

「えぇ!? 真希さん、なんでですか!?」

 

「おかかぁ!?」

 

「野薔薇は上が好きそうな術式、棘は呪言師、狗巻家の末裔だから上にマークされてる。なるべく高専内のフリーを崩したくねぇ」

 

「狗巻先輩はともかく私はそんな理由でですか?」

 

「野薔薇に関しちゃ半分はこじつけだ。いったろ? 学長もいない今、ここから先はどうなる分からない以上は高専内を自由に動ける人間は最低二人以上欲しい」

 

「し…しゃけ」

 

「納得できません!」

 

「頼むよ野薔薇…」

 

 真希は釘崎の肩を掴み、無事な片方の眼でうるうると見つめる。

 

「ーっ! もう! 全部終わったら私とデートしてくださいよ!」

 

 渋々と折れた釘崎は真希に強引にデートの約束を取り付ける。

 

「…話はまとまったね? じゃあ、行こうか」

 

 脹相を先頭に、虎杖と刹那を影に入れ、天元のいる薨星宮の元へと気配を辿り歩いていく。

 

「真希さん、あの話本当ですか?」

 

「なわけねーだろ、上がいちいちマークするか。だがフリーが欲しいのは事実、野薔薇と棘が適任だっただけだ」 

 

「真希さんも私情を挟むんですね」

 

「私情挟んで死罪を二人も助けたやつに言われたかねぇな」

 

「あっはっは、字面だけ見ればとんでもない子だね」

 

 伏黒は無視してスタスタと歩みを進め、少し歩くと脹相は扉の前で歩みを止める。

 

「ここだ、間違いない。弟達はこの先に眠っている」

 

「出てきていいぞ」

 

 ドプンッ

 

「おぉー、なんか新感覚だった」

 

「……」

 

 ガチャッ

 

「「!!」」

 

 二人を中から出して扉を見つめる。そして見た目は至って普通の扉を開けて中に入ると、手前には倉庫があり、奥には森林が広がっていた。

 

「行こう、この先に昇降機がある」

 

 脹相は忌庫のシャッターに手を当てる。

 

「脹相」

 

「分かっている…後で迎えに来るからな」

 

 ──ー

 

 ゴゥンゴゥンゴゥン

 

 大型の貨物エレベーターのようなものに乗って下に降りていく。本殿への道を歩く途中に虎杖は血痕があることに気付く。

 

「血、なにかあったのかな?」

 

「十二年も前の話さ…思えばあの時、全ての歪は始まったのかもしれないね」

 

「「?」」

 

 本殿へと入ろうとするが、そこに広がるのはひたすらに真っ白な空間。

 

「クソッ」

 

「ここが本殿?」

 

「何もねぇ…」

 

「いや、私達を拒絶しているのさ。天元は普段現に干渉しない、六眼が封印された今なら接触できると思ったんだが見通しが甘かった」

 

(拒絶されているのは私達ではなく私か…?)

 

「行こう、津美紀さんには時間がない」

 

「帰るのか?」

 

 乙骨は踵を返して戻ろうとするが、その場の誰でもない呼ぶ声に引き止められる。

 

「初めまして。禪院の子、道真の血、呪胎九相図、そして…宿儺の器」

 

 天元と呼ばれる人物は、およそ人とはかけ離れた容姿をしていた。天元は四つの眼の名残と思われるものに白い装束に見を包んでいた。

 

「私には挨拶なしかい? 天元」

 

(コイツが)

 

(コレが)

 

(この人が)

 

(人か?)

 

(人…?)

 

(天元!)

 

「君は初対面じゃないだろう、九十九由基」

 

「…何故薨星宮を閉じた」 

 

「羂索に君が同調していることを警戒した。私には人の心までは分からないのでね」

 

「羂索?」

 

「かつて加茂憲倫、今は阿弥部高聡の肉体に宿っている術師だ」

 

「慈悲の羂、救済の索か…皮肉にもなってないね」

 

「天元様はなんでそんな感じなの?」

 

(こいつよく割って入れるな)

 

「私は不死であって不老ではない、君も五百年老いればこうなるよ」

 

「マジでか」

 

 真面目な雰囲気の中で的はずれな質問をする虎杖なやニコリと笑いながら天元は答える。

 

「十二年前、星奬体との同化に失敗してから老化は加速し、私の個としての自我は消え天地そのものが私の自我となったんだ」

 

(あの時星奬体がもう一人いたわけじゃなかったのか…)

 

「どうりで"声"が増えないわけだ」

 

「すみません」

 

「僕達はその羂索の目的と獄門彊の解き方を聞きに来ました。知っていることを話してもらえませんか?」

 

「勿論…と、言いたいところだが──」

 

 天元の話を遮り刹那は問いかける。

 

「あのっ…私情を挟んで本当に申し訳ないんですけど、天元様は…阿頼耶識を知っていますか?」

 

「そのことについては答えたいのは山々なんだが…残念なことに、私は阿頼耶識の一切を知らないんだ」

 

「そう…ですか…」

 

「いや、知らないという表現は正しくないな。私はおそらく会ったことも話したこともある。だが、その一切の記憶が無いんだ」

 

「記憶が無い? 忘れたわけではなく?」

 

「禪院の子、君なら直に体験したことがあるんじゃないか?」

 

 結界を通して伏黒と刹那のやり取りを見ていた天元は話を振る。

 

「体験…刹那の術式のことですか?」

 

「確かに記憶は消せますが…できて数分間が限界です。リスクが高すぎて脳に長くは干渉できません。数分の会話の為だけにここに侵入したとは考え難いと思いますが…」

 

「さて、質問には答えた、話を戻そう。そして先程の答えを出す代わりに一つ条件を出させてもらう。乙骨憂太、九十九由基、呪胎九相図、三人の内二人はここに残り私の護衛をしてもらう」

 

 天元は条件を掲示し、一同は疑問を顕にする。

 

「護衛…? 不死なんですよね?」

 

「封印とかを危惧してるんですか?」

 

「フェアじゃないなぁ、護衛の期間も理由も明かさないのか?」

 

「…では羂索について語ろうか。あの子の目的は日本全土を対象とした人類への進化の強制だ」

 

「それは聞きました、具体的に何をするつもりなんですか?」

 

「羂索はなぜあの時天元様の結界を利用して無為転変で日本の人間を全員術師にしなかったんですか?」

 

「それをやるには単純に呪力不足だ。ジュカイで精製した呪力は術師に還元できない。一人一人進化を促すことはほぼ不可能だ。羂索が取る進化手段は、人類と私との同化だ」

 

「あれでも同化ってホラ、アレ…」

 

「星漿体だけができるハズですね」

 

 当然の疑問を虎杖は抱くと天元はそれに答える。

 

「以前の私なら不可能だ。だが、十二年前に進化を始めた今の私なら星漿体以外との同化もできなくもない」

 

「だがお前は一人だろう、どうやって複数の人間と同化するんだ?」

 

「今君達の前にいる私も私じゃない、進化した私の魂は至るところにある。天地そのものが私の自我なんだ。私と同化してしまえば術師の壁を超え、そこにいてそこにいない新しい存在になる。私は結界術があったからこうして自我を保ててるが人類が私と同化しその内の誰か一人でも暴走すればお終いだ」

 

「何故」

 

「個としての境界がないんだ、悪意の伝播は一瞬、一億人分の穢が流れ出る、先の東京が世界で再現されるんだ」

 

「なんの為にそんなことすんだよ」

 

「さぁね。さっきも言った通り、私に人の心までは分からない」

 

「でもそれって天元様が同化を拒否すればいいだけじゃないっスか?」

 

「そこが問題なんだ、今の私は組成としては人間よりも呪霊に近い。今の私は、呪霊合術の術式対象だ」

 

 一同は目を見開き、戦慄する。術式対象、その一言で最悪のシナリオが優に想像できる。

 

「だが、これに関しては最悪の事態は回避できている」

 

「……夏油先生が向こうにいないことですね」

 

「その通り、あくまで私と人類を同化させるには私を操る必要がある。私と彼を合わせてしまってはそれは叶わない」

 

「乗っ取りってどの程度自由なんですか?」

 

「少なくとも相手は死亡した状態でかつ、時間と安全をそれなりに要するはずだ。そうでもなければ渋谷の時点で取られている筈だからね」

 

「夏油君は高専内で護ったほうが良いかもね」

 

「あぁ、だが何かしらの手段があるのかも知れない、だから私の本体は今全てを拒絶している」

 

「その上で護衛を?」

 

「羂索は私に次ぐ結界術の使い手、ここの封印もいつ解かれるか分からない」

 

「何故今なんだ…星漿体との同化を阻止、オマエを進化させ、呪霊合術で自身と同化、羂索は宿儺とも関わりがあるようだった少なくとも千年術師をやっている何故!! 今なんだ!!」

 

「私、星奬体、そして六眼、これらは全て因果で繋がっている。羂索は過去に二度六眼に敗れている、どれだけ策を弄しても同化当日に六眼持ちと星漿体は現れた。そこから封印へと方針を変え、獄門彊の捜索に切り替えた。六眼持ちは二人同時に現れないからね」

 

 天元は知られざる過去を淡々と話していく。

 

「しかし十二年前、予期せぬことが起こった。禪院甚爾の介入だ」

 

「!!」

 

「?」

 

「天与呪縛のフィジカルギフテッド、その中でも特異な完全に呪力から脱却した存在。呪縛の力で因果の外に出た人間が私達の運命を破壊してしまった。そしてそこには二人の稀有な術式を持つ青年達、意図せずして獄門彊以外のピースが揃ったんだ、そして獄門彊も羂索の手に渡った」

 

「じゃあ死滅回遊はなんの為に行われるんですか?」

 

「同化前の慣らしだよ、泳者の呪力と結界と結界で結んだ境界を使い、この国の人間を彼岸へ渡し、私との同化をより強固にするものだろう」

 

「でもそれだけ巨大な儀式を成立させるためにはそれ相応の縛りがあるはずですよね?」

 

「あぁ、その一つとして死滅回遊の管理者は羂索ではない。しかし、これは君達にとって不利に働くな、羂索を殺しても死滅回遊は終わらないのだから。泳者がどんな理由にせよ全員死ぬまで死滅回遊は終わらない。死滅回遊の総則にある永続も儀式を中断させないための保険だよ」

 

 ほぼ全ての情報が揃い、伏黒は苦悶の表情を浮かべながら考える。

 

「となると…」

 

「…だね」

 

「僕らも参加してルール6を利用、ゲームに消極的な人や津美紀さんが抜ける穴を作るしかない」

 

「五条先生の解放も平行しましょう、あの人がいれば一人でも全て片がつく」

 

「天元様、教えてくれよ」

 

「その前に誰が残るか決めてくれ」

 

「「俺(私)が残ろう」」

 

 天元の催促に九十九と脹相が一歩前に出て答える。

 

「悠二には乙骨かこの女の協力が不可欠だろう、加茂憲倫…羂索がここに来るのなら尚更だ。奴の命を断つことが弟たちの救済だからな」

 

「私はまだ天元と話足りなくてね、乙骨君と刹那もそれでいいかな?」

 

「はい! 僕はもう皆と離れたくないので!」

 

「僕は…自分のした落とし前をつけなければならないので」

 

 意見がまとまると天元は今回の解決策となる"それ"を取り出す。

 

 ズズッ…

 

「ありがとう…これが五条悟の解放、そのために必要な、獄門彊、[裏]だ」

 

 ズルッ

 

「裏!?」

 

「初耳だね」

 

「裏門ってこと?」

 

「そうなるね。羂索に見つかる前、獄門彊は恐らく海外にあった。この裏門を封印することで表の気配を抑えていたんだが無駄だったね。これにも勿論五条悟は封印されている」

 

「じゃあこれを開けることができれば!」

 

「いや、あくまでも開門の権限は表の所有者である羂索だ。これをこじあけるにはあらゆる術式を強制解除する呪具、天逆鉾。あらゆる術式を乱して相殺する黒縄、これらのどちらかが必要だ。だが十二年前天逆鉾は五条悟が破壊してしまった」

 

「何してんの先生!!」

 

「黒縄も近年五条悟が全て消してしまった」

 

「何してんだあの人は!!」

 

 伏黒と虎杖が声を荒げるが、脹相は疑問を口にする。

 

「阿頼耶識の術式では開けられないのか?」

 

「あっ、そうだよ! 刹那なら開けられないのか!?」

 

「残念ながら、術式そのものを無くすことは出来ないんです。僕が無くせるのは術式発動前後の現象やその他の自然法則に限られるので…」

 

「領域展開も駄目なのか?」

 

「あくまでもあの空間は起こったことを無かったことにするので、常時発動してるものは駄目なんです。それに、悪戯に試して獄門彊を破壊する結果になったら目も当てられない」

 

「そっかぁ、それもそうだな」

 

「お役に立てず申し訳ないです…」

 

「気にするな、他で挽回してくれればいい」

 

「俺なんて殴ることしか出来ないから気にすんなよ!」

 

 落ち込む刹那を二人は慰め、話は続いていく。

 

「黒縄の残りは僕がアフリカでミゲルさんと探してたんだけど、これに関しては無駄足だったね」

 

「海外に行ったのってそれもあったんですね」

 

「でも手はあるんだろ?」

 

「あぁ、死滅回遊に参加している泳者の中に天使を名乗る千年前の術師がいる。彼女の術式は、あらゆる術式を消滅させる」

 

 死滅回遊泳者 来栖華

 

「術式を…消滅させる?」

 

「あぁ、天使の術式ならこの裏を開けられる」

 

「そいつは今どこにいるか分かりますか?」

 

「東京の東側の結界だ。回遊の結界は私を拒絶しているからそれ以上は分からない。まずはそこから整理しようか」

 

 ズズズ

 

 天元は結界術を利用して日本の結界がある場所の地図を作り出す。

 

「全国十の結界、それが日本の人間を彼岸へ渡す境界を結ぶ結界と繋がっている」

 

「川や境界を渡跨ぐ彼岸へと渡る行為は呪術的に大きな意味も持ちますからね」

 

「ってことは、逆に彼岸が日本全体を通るのか」

 

「北海道が入ってないのは呪術連の結界?」

 

「そうだ、あの地は既に巨大な霊場として慣らしが済んでいる」

 

「流石は試される大地」

 

「彼岸へ渡すと聞くと仰々しいが日本にいる全員に呪いをかけて同化の前準備をしているのさ」

 

「儀式が終わるまでどのくらいかかりますか?」

 

「回遊次第だが二月もあれば済むだろう」

 

 一同はルールを参照しながら津美紀を助け出す方法を模索する。

 

「総則1のこれ、今十一月八日の午後十一時だ」

 

「泳者の術師が覚醒したのは十月末の二十四頃」

 

「津美紀が回遊に参加するまでの猶予はざっと十一日と一時間」

 

「硝子さんの読み通り、術師持ちは多大なリスク持ちだがな。逆に言えば私みたいなのはノーリスクか。パンダはどうなんだ? アイツ脳とかあんのか?」

 

「これさぁ、始めから結界の中にいる一般の人らはどうなんの?」

 

「少なくとも一度は外に出る機会をあたえられる」

 

「マジ?」

 

「随分と親切ですね」

 

「総則に一つも結界の出入りに関する条項がない。泳者に始め、結界から出るという明確な目的を与えて回遊を活性化させる狙いだろう」

 

「泳者を閉じ込めるためには泳者が自ら望んで入ったという前提が重要だからね」

 

「猪野さんがいってた結界の足し引きか」

 

「人を殺せば得点が得られ、原則術師は五点、非術師は一点…ですか」

 

「総則に原則ってゴチャッてすんな」

 

「……」

 

「伏黒?」

 

「いや、天元様、管理者ってのいうのは」

 

「各泳者に一体ずつ憑く式神、コガネ。コガネも正確には窓口に過ぎない、管理者は死滅回遊のプログラムそのものと思ったほうがいい」

 

「ナルホド?」

 

 半分以上理解できていない虎杖を置きざりに話は続いていく。

 

「ルールの追加ね…既にあるルールを消すのは無しかな」

 

「遠回しに否定ならいけるかもしれませんね」

 

「永続…これありか?」

 

「だよなぁ、判断基準がアッチ任せすぎる」

 

「いや、ある程度は公平な判断が見込めるハズだ。既に泳者にここまでの総則を強いているんだ。呪術的にこれ以上羂索に利益が偏ることはない」

 

「得点の変動って、また人を殺さなきゃいけないのか…」

 

「いや、いくつか考えがある」

 

「とりあえず情報は整理できたな。あとはそれぞれの役割」

 

 伏黒がそう言うと、真希は各々の役割をまとめる。

 

「由基さんと脹相はここに残って天元様の護衛。私は禪院家に戻って呪具の回収。悟が封印されて間もなく高専忌庫の呪具は加茂家と禪院家が持ち出してスッカラカン、でも直哉が一応味方だ。数個くらいは持ち出せるだろ。でも、その前に…」

 

 真希が天元に目配せすると、天元は意図を組む。

 

「分かっている、組屋鞣造の工房だろう?」

 

「助かります」

 

「学長はどうするんですか?」

 

「野薔薇と棘を対処にやってる。リスキーではあるがどの道悟解放に関わるんだ、学長関連ならパンダが見つかれば協力するだろ」

 

「いつの間に」

 

「津美紀さんや伏黒君達が回遊に参加する前に少しでも情報を集めたい。万が一身内で潰し合うことがないように…それから津美紀さんに何かあった時のために近場の結界は避けるね」

 

「スンマセン」

 

「結界で電波が絶たれるかもしれないから暫く連絡取れないかも」

 

「「あっ」」

 

 虎杖の惨劇を止めるためには乙骨がいなければ危険だと言うことに二人は気づく。

 

「問題ない。なぁ刹那」

 

「信頼はありがたいんですが…まぁ、善処します」

 

 伏黒は刹那に目配せをするが、刹那はなんとも言えぬ感情で返答する。

 

「先輩」

 

「あぁ、お前らは予定通り金次のとこ行け」

 

「金次?」

 

 聞き慣れない人名に虎杖はハテナマークを浮かべる。

 

「秤金次、停学中の三年生だよ」

 

「今はとにかく人手が足んねぇ、何が何でも駆り出せ」

 

「その人強いの?」

 

「ムラッ気があるけど、ノッてる時は僕より強いよ」

 

「「それはない(です)」」

 

 乙骨の発言に刹那と真希は即座に否定する。

 

「そうか、刹那は知り合いか」

 

「同行しますけど、高専関係者なのであまり見られないほうが良いかもしれませんね」

 

 各々やるべきことを頭に入れ、その場を立ち去ろうとする。虎杖は最後尾をついていくが、一度立ち止まる。

 

「脹相!!」

 

「!」

 

「ありがとう、助かった」

 

「…死ぬなよ」

 

 虎杖の感謝の言葉に、脹相は兄として笑って送り出す。弟を溺愛する脹相は思わず涙をこぼし、左手で顔を覆い。それを見ている九十九と天元を手で払う。

 

「……」

 

「泣いてんの?」

 

 ──

 

「あっ、あざっした」

 

 パチ…パチ…

 

 まばらな拍手が静かに鳴る劇場で、ネタが終わった芸人は裏へと戻っていく。

 

「高羽ァ!! いつまでそないしんねん!! やめーや! こっちまで辛気臭ぁなるわ!!」

 

「…うす」

 

「オマエいくつやったっけ?」

 

「三十五ッス」

 

「ほなもうやめてまえ。この業界。遅咲きのやつよー分からんキッカケで売れる奴ぎょうさんおる。でもそいつらは急におもろなったわけやない。元々おもろかったけど埋もれてただけやねん」

 

 高羽の先輩芸人は控室から出ていく時にもう一つ言い放つ。

 

「オマエはそうちゃうやろ。東京があぁなってん、悪いことは言わん、お前にできる向いてることをせぇ」

 

 ガチャッバタンッ

 

「……俺は嫌いや無かったで、高羽のネタ」

 

「ケンさん…」

 

 控室で新聞を読んでいたもう一人の先輩も持論を述べる。

 

「アイツもオマエも勘違いしとる。おもろなくても売れるやつは売れんねん」

 

「一発屋的な話っすか?」

 

「ちゃうわ、ずっと売れ続けるやつには二種類おんねん。ずっとおもろい奴と、ずっと自分のことおもろいと勘違いできる奴や。オマエはどっちや?」

 

 ズズズズズッ

 

「五分だ五分だと言うけれど…本当は七三くらいが……」

 

 死滅回遊泳者 高羽史彦(たかばふみひこ)

 

 ──

 

 普段は子供の遊び場、あるいは老人達のウォーキング、もしくはカップルがいるような青い公園。

 

 そんな風景とは全く違う、異様な空間。

 

 十人の術師に囲まれる鎧の大男、阿弥部によって弄られた術師達はみな一様に敵意を向けている。

 

「よぉ、コスプレのおっさん」

 

「……」

 

「悪いけど俺らもここから出たいんだわ、死んでくれよ」

 

「……去ね、某に弱者を嬲る趣味は無し」

 

「はぁ? この状況分かってねぇの?」

 

「怖くておかしくなっちゃったんじゃない?」

 

 若い男女達にからかわれ、鎧の大男は胡座をかいたまま動く気配はない。

 

「嬲られんのはっ、お前だよ!!」

 

 ザンッ!! ブシュゥゥー

 

 男は腕を振りかぶる、直後にその男の胴体は真っ二つに斬られ、下半身のみがそこに直立する。

 

「「「は…?」」」

 

「警告はした。反撃するも良し、出来ぬば疾く逝ね」

 

「いっイゃ」

 

 ドチュッダァンッ! ドドスッ

 

 叫ぼうとする女性の頭は矢に射抜かれる。

 

 皮切りの悲鳴すら起きるまもなく、若い術師たちは銃弾や矢、刀によって即死していく。九人が死に、大男は立ちあがる。最後の一人は腰を抜かして命乞いをする。

 

「たっ、頼む、見逃してくれ。脅されてたんだよ、なっ? 俺は嫌だったんだよ分かってくれよ、なぁ!」

 

「殺そうとして殺すなとは虫がいい話だ。小童はナイフを手にして自分が強くなったと勘違いする、大人になろうとそれは変わらんな」

 

「ひっ、やっやめっ」

 

 パンッドチュンッ

 

「五十点が追加されました」

 

「……ぬぅぁあッッッ! 弱い、弱過ぎるッ!! ここまで衰退したのか呪術師はァ!!!」

 

 ガサッ

 

「何奴!」

 

 癇癪を起こしたように怒りを顕にする大男は音のした方へ振り向くと、萎縮したスーツ姿の女性が必死に土下座する。

 

「あっ、あぁぁ、ごめんなさいごめんなさい! 許しください!!」

 

「…去ね、某に女を嬲る趣味は無し」

 

「はっ、はいっすいません!!」

 

 女性は服装が乱れるのも気にせず公園から走り去っていく。

 

「…フン」

 

 大男は最初の場所に戻り、同じように胡座をかく。

 

 死滅回遊泳者 南雲紫龍(なぐもしりゅう)




戦いが無くてきっと暇だったと思います!長く待ってもらったのにすいません!なのでプチ企画というか疑問解消?として、刹那の実力はどのくらいなのか?ということについてざっくり言います。
領域展開は乙骨が不明なので無しとします。
乙骨は作中情報に加えて術式コピーが出来るものとします。
五条は作者の言う通り天井!
乙骨は多分刹那と相打ち!、、、ではなく、刹那の呪力のストックによりますね。リカちゃん抜きなら刹那の勝ちですが、お互い平常で戦えば乙骨の勝ちです。
呪力オバケの乙骨の身体強化は刹那のチート術式で半分以上無効化しますので、乙骨は当然術式コピー(まだあんのか分からんけど)で刹那の上を行くしかないです。刹那はそれを防ぐために常に呪力の靄で周りを包んでリカちゃんの出現を妨害します。
なので呪力のストックを常に特級呪霊三体分位持たなきゃいけないわけです。
結論 ケースバイケース
そもそもこの二人はもう二度と戦わせるつもりは無いので真相は謎のままということで。それに二人にこれ言ったら多分こんな会話が出ます。
「「(乙骨先輩)(刹那さん)の方が強いよ(です)」」
もしかしたら後書きの平和パート?をやるかもしれませんね。
長くなりましたが、ぜひ!次回も楽しみにお待ちください!
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