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一同が刹那との激闘を終え、束の間の休息を取っている時、パンダは山を駆けていた。夜蛾は刹那を天元殺害に誑かしたとして死罪。それが表向きの判断。だが実際は個で軍隊を容易に所持できる可能性があるとして永久補僕、ないし死罪。パンダは実の父親を助ける為に万が一の為に高専から離れた所へ補僕されている夜蛾を助ける為に駆けている。
「…まさみち…!!」
夜蛾は保守派の会議の為に東京高専へと赴いていた楽巌寺と対面していた。ただし、血まみれの夜蛾が楽巌寺を見上げる体勢で。
「これは呪いですよ…楽巌寺学長」
「何故今更…! 何故もっと早く! 何故生き延びなんだ!!」
楽巌寺は旧友にも等しい夜蛾を、自ら手にかけた。
個のために集団の規則を歪めてはならない。楽巌寺は自分の言ったことを曲げなかった。感情を抜きにするのなら、それは高専という集団のコミュニティにおいて正しい選択であった。
ザァッ!
「まさみち!!」
「「!!」」
「パンダか…」
ブンッガシャン
楽巌寺は壊れたギターを放り投げて格闘の姿勢をとるが、それをパンダは素通りしていく。
「まさみち!」
「パンダ…」
途切れかけの意識を保ち直し、僅かな言葉を紡ぐ。
「────」
呪骸のパンダに向かって放った一言、それは人間の魂のコピーが中に入っているパンダにだからこそ言える遺言かもしれない。その後にも夜蛾は口を開くが、終ぞその言葉がパンダの耳に届くことは無かった。
「儂が憎くないのか」
「パンダはお前らと違ってそんなものに囚われん、俺に取っちゃアンタはそのへんに落ちてるナイフみたいなもんさ。どうせ、上の指示だろ? アンタまさみちと仲良かったもんな…。でもな、これだけは覚えておけ、パンダだって泣くんだ」
うぉおぉぉぉ──ん!!
山に、夜蛾正道の息子の泣き声は木霊する。
──ー
十一月十二日、禪院真希帰省
禪院家。それは五条家、加茂家と並ぶ御三家の一つ。禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ずと呼ばれるほど封建的な家。しかしそれは、齢十六の一人の女子高専生によって壊滅的打撃を加えられ、最早持ち前のその権力も風前の灯となっていた。
「よぉ真希ちゃん、いらっしゃい」
「…何だその気色悪い顔」
やけに上機嫌な直哉がわざわざ家の門の前で真希をにこやかな笑顔で出迎える。
「中は今ゴタゴタしててなぁ、だから当主の俺が出迎えたんやで?」
「ふーん…まぁなんでもいいけどよ。で、約束のもんは?」
「あー、ちょい待ち。まずこれは言わせてもらうで」
直哉は袖から腕を抜き、先程までの軽い雰囲気とは打って変わって真面目に話し出す。
「呪具をやるのはえぇ。せやけど、今までのは貸せんよ」
「あ? 何でだよ、お前当主だろ」
「話は最後まで聞こな、足がついとんねん。悟君の開放に協力しとる言われて当主を降ろされるのは俺は流石に勘弁や。だから妥協案、高専の忌庫にある呪具の中から阿頼耶識家が寄付したものだけくれたるわ」
「なるほど…呪詛師が使ってたものだから処分するって建前がつくわけか」
「そういうこっちゃ。ちゅーわけで、これ鍵な。回収は自分でやったってや。一応俺は色々あるさかい、ここでおさらばや」
「あぁ…サンキューな」
「おおきに。あっ、も一個聞かせたってや」
「なんだ?」
「元気?」
「? …! あぁ、元気だ。お陰様でな」
「そんなら…良かったわ」
真希が生まれてからの因縁。少しずつではあるが、冷え切った心は溶けていく。
実家の門をくぐり、廊下を通って地下室へと歩いていく。
「真希。戻りなさい、忘れたの? 忌庫への立ち入りは私達に許されてないの」
「当主様がいいって言ってんだよ」
「戻りなさい!! …どうして? どうしてあなたはいつもそうなの? 一度くらい産んでよかったと、思わせてよ…真希」
鍵をみせて真希は自身の母にそう言い放ち、無視してスタスタと歩いていく。
ガキッゴゴゴッ
真希は呪具の回収の為、武器庫までの真っ白な大理石の道を歩く。しかし、そこにいたのは思いがけない二人の人物だった。
「親父…!!」
刹那に斬り飛ばされた右足首と左腕に義手義足をつけてそこに鎮座する、真希の実の父、扇がいた。
さらにその後ろには真希の妹、真依が血を流して倒れている。
「なんで来たのよ…!」
「真依っ!!」
「お前達を呪術規定に則りお前を誅殺する」
扇は立ち上がって刀を抜き、真希に切っ先を向ける。
「刹那にボコられたことの腹いせか? 向ける相手が自分の娘ってのはいかにも禪院家らしいな」
「真希、私が何故前当主になれなかったか分かるか?」
「てめぇが自分の子供を殺せるクソ野郎だからだろ」
ビキキッ
扇は刀を納め、落下の情を転用した居合の構えに入る。
一方真希も袋に入っている呪具を抜く。
組屋鞣造の傑作、竜骨。
刃で受けた衝撃と呪力を蓄積し、使い手の意図に合わせて峰から噴出する。
隠し玉の呪具を引き抜く、加えて真希は今、言いようのない全能感に満たされていることにより、負けのビジョンが無かった。
(居合勝負に乗ったと見せかけて二撃目三撃目で斬る)
ダンッ
ギィンッ!!
一撃目は刀同士がぶつかり激しい火花を散らす。その瞬間、扇の脳裏によぎった、忘れるように努めた一人の男の影。
禪院甚爾の姿。
ゾワァッ
「フンッ!!」
バギンッッ!!
真希の渾身の一振りで扇の刀は音を立てて真っ二つになる。同時に扇はバックステップで距離を取る。
額に流れるのは恐怖ゆえか、想像を超える真希の実力か、扇は震えていた。
(あの時だ…刹那の"アレ"に飲まれてからおかしい、身体が軽い、魂が抜けたみたいに。今まで出来なかったイメージが泉みたいに湧き出てくる)
「フーッ…親父、諦めろよ」
カシャンッ
真希は眼鏡を外して髪をかきあげる。
ビキビキビキ
「………」
怒りで今にも血管が切れそうなほどに眉間に皺を寄せる扇に放つ一言。
「今のアンタは、今の私に勝てねぇよ」
ブチンッ
「良いだろう…この手で骨の髄まで焼き尽くしてくれる!!! 来い! 出来損ない!!」
扇は術式で刀を作り、炎を生成して刀に纏う。
その瞬間、一瞬にして真希は距離を詰め、刀を再びへし折る。
バギンッ!!
「この出来ぞこなっ──」
「あばよ、親父」
ザンッッ!!!
目視することが出来ない速さで刀を折られ、扇の顔は鼻を中心に真横に斬られた。勝負は一瞬、完成したフィジカルギフテッドの前には、呪力の身体強化など無きに等しい無駄な行為だった。
「…あっ、無事か真依!!」
「なんで…?」
真希は倒れている真依を抱えるが、真依は困惑の表情を浮かべる。
「あ? お姉ちゃんが妹助けて何か悪いかよ」
「そうじゃなくて、なんで…!? 私がいる限りアンタはいつまで経っても、どれだけ努力しても不完全な半端者のままなのに!!」
涙を浮かべながら真希の襟を掴み、真依は声を荒げる。
「…死ぬ"かとお"もったんだから"ぁ」
えづきながら話し続ける真依の言葉を、半分以上理解できないまま真希は自分の頭を乱暴にかき、真依を引き剥がす。
「あのなぁ、何言ってるか分かんねぇよ…でも、もしお前が今言った通りに、お前がいなくなって私が完全になるなら私はそんなものいらない。私はこの世界に真依がいなきゃ嫌だ」
プニュッ
真希は真依の頬を両手で掴み、さらに言葉を続ける。
「お前が何を抱えてるのかは知らないし、何を知ってるのかも知らない。だから、私にどんな形でもいいから頼れよ。たまには妹らしくお姉ちゃんに甘えろ、ほら」
トンッ
真希は真依を軽く離し、真依に甘えろと言わんばかりに優しい笑顔を向けて手を広げる。
「──!! ほんっと、大っ嫌い! …馬鹿!!」
真希に抱きついて真依は泣きじゃくる。今この時だけ、二人は素直でいることにしたのだ。
そしてそれを見守るように入口付近の陰で直哉は腕を組む。
「はぁーあ、先にそっち側に行くんは俺のはずやったのになぁ…すぐに追いつくで…甚爾君」
黒閃を決め、遥かに強くなった今でも、はるか昔から今に至るまで憧れ続けた男の名を呟いた。
──ー
一方。虎杖、伏黒、刹那は秤がいるという栃木の立体駐車場の近くの森で高専の制服から普段着に着替えていた。
「なんで着替えんの?」
「秤さんは上とモメて停学食らったんだら呪術規定も進行形で破ってる。高専関係者だってバレたら逃げられるかもしれない」
「ケーサツとドロボーみたいなもんだからな」
「俺達って今高専側?」
「僕が金次先輩の立場だったら間違いなくクロに見えますね」
刹那は顔が割れているため潜入はできず、二人を温存するため、道中の呪霊や警戒を担当していた。
「そもそも協力してくれるような人なの?」
「どうだろうな、やってることがやってることだし。先輩達は皆ろくでなしって言ってる」
「僕はそんなことないと思うんですけどね」
「まぁ、何を思おうが、刹那や乙骨先輩が強いって太鼓判押してるんだ。戦力として絶対に欲しい」
「あれ? 刹那来ねぇの?」
二人は着替え終わり、森から出ようとする二人と反対に森に残ろうとする刹那。
「金次先輩と僕は顔見知りなので接触は危ないですし」
「いや、俺達の体力温存とか言ってここに来るまでの間ずっと不眠不休じゃん。伏黒の影に入って休みな?」
「別にスペースに問題はない、お前の刀も二つとも入れられるし」
「……か」
「? 悪い、もっと大きく言ってくれ」
「体重…バレるじゃないですか…」
「「??」」
伏黒の影は中に入れたものの重さは伏黒が全て背負うことになる。よって伏黒の体重に刹那の体重が加わることになるのだ。
「いや、お前…」
「めちゃめちゃ軽いじゃん」
「重さの問題じゃないんです! 女には色々あるんですよ!」
「はいはい、分かった分かった。取り敢えず入れ」
ズブブ
「うわっ、ちょっ!」
トポンッ
伏黒は自らの影と刹那の影を繋げてそのまま影の中に収納する。
「中は大丈夫なん?」
「俺もよく入るから問題ない…アイツちゃんと食ってんのか?」
「そういやまともな飯食ってるとこ見たことねぇよな」
虎杖は疑問を抱き顎に手を当てる。その間に伏黒は影を確認して歩き出す。
「行くか」
既に稼働していないゲートバーを上げて中に入ると、明らかな関係者のタンクトップの男と小柄なスーツの男が座って時間を潰している。伏黒達に気づき、タンクトップの男が近づいて牽制してくる。
「帰れガキンチョ、ここは溜まり場には向かねぇよ。一二の三で回れ右だ、それ以外の選択肢は俺に殴られる」
「金がいる、ここでやってる賭け試合に出場させてくれ」
ブンッ
タンクトップの男は伏黒に殴りかかるが、目の前で寸止めし、本題に入りだす。
「ルールその一、賭け試合について口にしてはならない。答えろ、誰に聞いた。お前を殴るのはその後だ」
「名前は知らない、殺したから。一月くらい前だ、威勢だけのクズがいただろ」
(そっか、いきなり会わせてくれって言っても警戒されるか、秤って名前も知ってちゃダメか。黙ってよ)
伏黒が堂々とハッタリをかますと、男達は胴元の連絡と確認を始め、虎杖は余計なことを言わないために口を閉じる。
「そこまでだ、胴元からお許しが出た。今日のシード枠にそいつを当てる。ただ、出場するのはソッチだ」
「駄目だ、俺が出る」
(試合は虎杖の方が適任だ)
スーツの男は虎杖を指さしてそう言うが、伏黒達にとっては好都合、少しの駆け引きでリアリティを持たせ、監視されてることを確認すると話を終わらせる。
「胴元はてめぇが食えねぇとよ、嫌ならこの話は無しだ」
「……分かった、それでいい」
試合が始まるまでこれからの動きを再び確認するため、少し離れた場所で時間を潰す。
「伏黒危ねーなぁ、ハッタリが過ぎるって」
「そうでもないだろ、呪詛師も参加してるならそれなりに入れ替わりもあるハズだからな」
「防犯カメラで俺達を見てたってことは秤先輩は多分あそこにいる、俺は試合で信用を得ればいいんだよな」
「それでいい、高専関係者ってバレるなよ」
「恵君は今晩潜入するんですか?」
「あぁ、多分な」
「「多分?」」
「俺は多分泳がされてる、潜入がバレれば芋づる式に虎杖の信用も消える」
「そんときゃもう力尽くだな」
「それは本当の最終手段だ」
「俺達はあくまで協力をお願いに来てる立場、今後の関係にヒビが入る事態は避けたい」
「今晩動くのは危ないかもですね」
「でも津美紀の回遊への宣誓期限まで、時間は無駄にしたくない」
「今…十日の十七時、期限まで九日か」
「僕が使った呪霊が使えれば速かったんですが…高専近くの適当な所に放置してしまったので」
「元々は俺と虎杖は体力を消耗してここに来る予定だったんだ、それが省けたのは大きい。それに刀の呪力のストックも出来たし、この先で活躍してもらう。今は秤さんの説得を優先するが警戒されててヤバそうならすぐ退く、だから多分だ」
「了解」
「じゃあ僕はその辺で…」
ガシッ、トプンッ
その場を離れようとする刹那の肩を掴んで腰まで沈める。
「だんだん雑に入れるようになってきましたね」
「お前より刀の方が重い、気にするなめんどくせぇ」
「むぅ…」
トプンッ
──ー
虎杖はルールの説明を先程のタンクトップの男から受け、試合の会場へと向かう。
「階ぶち抜いて下で試合、上が客ってわけね」
「あぁ、そしてアレが今回のお前の相手だ。昨日の夜の部から入ったんだが、初めて見たときは驚いたよ」
「なるほど、まさに客寄せってわけね」
虎杖は静かに笑う。登場した相手はパンダだった。
「早速ゴキゲンな対戦カードを紹介するぜ!! 突如現れた刺客!! 三角の次も四角!! デンジャラス火の玉ボ──イユゥウウジィィイタドリィィイ!! 立てばパンダ! 座ればパンダ! 歩く姿はマジパンダ!! パ!! ン!! ダ!! だァァアア!!!」
一人と一匹は向かい合い、意図を即座に理解する。
「貼ったか!? 貼りましたか!? 最高に熱いバトルがの幕開けだぁ!! レディ!! ゴー!!!」
ドドドドドドッ
「おおお!? コイツは確実に俺の実況人生ベストバウだぜ!! まだ実況初めて半月だけどね〜!!」
パンダと虎杖は客に魅せながらも拳で語り合う。
(パンダ先輩は秤先輩に会えた?)
(いや、知った仲だから警戒はされてないが避けられた、あとはもう一人の三年の術式が問題でな。高専生ってことは隠してるんだろ?)
(うん)
(よしよし、後は分かるな?)
ドッ!
簡潔に意図を伝え終え、パンダは吹っ飛びノックダウンのフリをする。
「ぐあっ! 動けんなんてパンチだ!! 動けん!! これは動物愛護団体が黙ってないぞ!!」
(演技下手ぁ……)
虎杖は右手をあげて勝利を宣言する。
「んぅ〜!! 勝者!! 虎杖ィ〜!」
虎杖はそれを皮切りにして順調にトーナメントを勝ち進む、その間に伏黒は集めた情報を共有するためにパンダと刹那と近くの森に潜んでいた。
ガサガサッ
「お、いたいた、伏黒に刹那」
「「パンダ先輩」」
「僕達より大分早くこっちに来たんですね」
「あの後、俺は真っ直ぐこっちに来たからな、場所も知ってたし。それより、虎杖は秤と接触できそうなんだな」
「パンダ先輩はなんでまだ秤先輩と会えてないんですか?」
「居場所は分かってんだけどな。屋上にあるモニタールーム、そこが定位置だ。でも近付けないんだ」
「近づけない?」
「屋上に出てからドアに近づいても距離が縮まらないんだよ、歩いても走ってもダメ、感覚は悟の術式と近い気がする。多分綺羅々の術式なんだが俺はよく知らん、刹那は知ってるか?」
「…すいません、僕も正直よく分かってないです。星座に関係してるみたいですけど、戦ったことがないので。でも、その現象は綺羅々先輩で間違いないですね」
「二人が来てくれて良かった、深追いして逃げられても困るからどうしようかと思ってたんだ」
「虎杖は上手く説得できると思いますか?」
「厳しいな、虎杖よりも秤の問題だ。でも時間の問題だとも思ってるよ。虎杖の根明な性格は秤と相性いいと思う、でもアイツ嘘下手だろ」
「下手っていうか嘘をつく発想が出にくいタイプですね、ある程度指示は出してますよ」
「悠仁君がすぐに高専関係者ってバレたとしてもある程度の時間さえ稼げれば問題はなさそうですね」
「そう、だから俺は虎杖がモニタールームに入った時点でアジトを速攻コッソリ制圧、ドア前固めて二人が話す時間を稼ぐべきだと思う」
「いや、それは……」
「大丈夫、殺すわけじゃないし寝ててもらうだけだよ」
「防犯カメラはどうするんですか? モニタールームだとすぐバレると思いますけど」
「カメラの位置と死角は把握してる、俺は多少見られても平気だし、まともな術師は秤と綺羅々だけだしな」
「見張りの人数は?」
「入口四、屋上以外の各フロア二人だ」
「…いけますね」
「懸念事項は綺羅々さんの術式ですね」
「もうそれは仕方ない、ワープとかではないんだろ?」
「見てた限りは。僕も制圧に動いた方がいいですか?」
「話に聞く程度の見張りなら俺とパンダ先輩で充分、念には念をいれる。刹那が出てくるのは秤さん達の説得が全部終わった時か、向こうが完全に敵対した時だ」
「了解です。じゃあ…」
「おう」
刹那は渋々と伏黒の足元の影をトントンと踏む。
トプンッ
「…伏黒、頑張れよ」
「もう自分の気持ちは打ち明けましたよ」
パンダは伏黒の肩を叩いてニヤニヤと笑うが、伏黒はサラリと言い放ちスタスタと歩いていく。
「えぇっ!? 俺聞いてない!! ちょっと待てよ伏黒ォー!」
──ー
トーナメントが終わり、デジタル時計が夜中の一時を表示する頃、虎杖は三年の綺羅々にモニタールームへと案内されていた。
「悠ちゃん高一なんだぁ、若いねぇ。金ちゃんは中学ダブってるんだよ」
「…なんか嬉しそうっスね」
「フフ、まぁね。金ちゃんが久し振りに熱くなってるの、私は熱い金ちゃんが大好きだから」
二人は会話をしてモニタールームへと入っていく。
一方で、虎杖が呼ばれたのを見計らい伏黒とパンダは拠点の制圧を終え、屋上へと集まるところだった。
ターン!
勢いよくパンダは屋上の扉を開けて伏黒と合流する。
「よ!」
「パンダ先輩、本当に大丈夫ですか? これが原因で後でモメたり…」
「ダイジョブダイジョブ〜♪ さっさとドア前固めちまおう」
二人はモニター室のドア前へと向かおうとする、しかし二段構造になっている屋上駐車場の下の段、そこには警備に出された綺羅々が二人に気付いていた。
「パンダちゃん!?」
「ゲッ」
(と、トゲ頭の子…!! パンダちゃんの手引きで侵入したってことは高専の人間! 金ちゃんが危ない…!!)
「玉犬…渾!!」
ズァッ、ドッ
「伏黒!?」
伏黒は秤に連絡を入れようとする綺羅々を止めるために玉犬をだすが、綺羅々の手にほんの少し触れた瞬間に伏黒の元へと勢い良く玉犬が戻っていく。
(玉犬がふっ飛ばされた!? いや、話からするに近づけなかったのか!!)
チカッチカッ
「ん?」
「お?」
三人の術師の頭で僅かに光が点灯し、綺羅々はモニタールームへと駆け出す。
「待て綺羅々! 俺達は敵じゃない!! 秤に頼み事があるだけだ!!」
「信じられない! 見損なったよパンダちゃん」
「あっこれ俺もお前に近づけないヤツだな」
「玉犬!!」
「!!」
グンッドカッ
「伏黒!?」
玉犬が綺羅々の前に立ち塞がり、三者は一定の距離で立ち止まる。その時、伏黒も先程と同様に玉犬の元へと吸い寄せられる。
(綺羅々さんに近づけないだけじゃない……玉犬と離れられない!? どういう術式だ? でも膠着状態! 丁度いい…!)
「綺羅々さん!! 俺達は今正確には高専側ではありません!! 東京が現状どうなっているか知ってますよね!? 各地で発生してる結界も無関係じゃない! 未曾有の呪術テロがあったんです!! 秤さんの協力が必要なんです!!」
「そっちが先に私達をハブったんじゃん、自業自得でしょ」
伏黒の説得も虚しく綺羅々は聞く耳を持たない。
「……上と何があったんですか?」
「保守派と揉めたんだ。でもって、保守ってのは規定に対してのスタンスの話だけじゃない。呪術とはこうあるべきみたいな思想があんだよ、釘崎の術式なんかが分かりやすい、呪術らしい呪術。時代が進めば呪術だってニューテクと絡むことがある、それが術式にまて及ぶと保守派はうるせぇのよ」
「金ちゃんの術式はその典型だからね、上のバカ共そんなんだから負けんのよ。でもさ、アンタらは五条悟にいくらでもケツ拭いてもらえるじゃん、それこそ一年には特級で上からの信頼もあるようなせっちゃんだっているんだし、私らに頼る意味が分かんない。ってことは頼ってきたのは嘘で他に目的があるって考えるのが普通じゃない?」
(ここで刹那を出すのはまずいな、敵だと思われかねない…)
「五条先生は封印されました、だから負けたんです。終わったすぐ後に刹那も死刑が執行されました…だから協力を頼みに来たんです」
その言葉の後、綺羅々はまるで信じていないようなポカンとした表情で一人と一匹を見る。
((あぁ~~〜信じてねぇなあ!!))
(まぁ、気持ちは分かるけど)
(でも、この人は秤さんに一番近い人だ。この人を説得できれば、秤さんとの交渉が楽に進む…脱兎!!)
ポポポポ
(アクルックス!?)
伏黒は脱兎をだして術式の情報を集めることを試みる。その時、脱兎の体の一部位にアクルックスの文字を見つけ、扉も同時に注視する。
(ガクルックス…!!)
綺羅々の術式は呪力にマーキングするため、式神は術者と同一に扱われる。
(このままだと自分の式神で押し潰されて窒息するよ)
ドロォッパシャッ
「パンダ先輩!! 脱兎どうでした!?」
「俺の次にカワイかった!!」
「何に近付けて何に近づけなかったか聞いてんですよ!」
「! 俺とそっちの二階は問題なく行けてた!! 綺羅々とモニタールームの扉は駄目だ!」
「体のどこかに星マークと名前がついてませんか!?」
「え………? あ!? I…MAI…イマイ!? 今井って書いてるー!」
パンダは自身の体を確かめ、伏黒も自身の仮説に当てはめて身体の星を探す。
「あった!!」
(脱兎と同じガクルックス!! 確かに刹那の言う通り星座だ。まだ何も分からないがここは…)
「分かりました! この術式のタネは星座です!」
(そこまでなら分かるやつは分かる)
「星座?」
「モチーフは……南十字星」
伏黒はブラフを堂々と張ってそう言い放つ。それに対して綺羅々は驚愕に近い表情を顔に出して伏黒に確信を与える。
「クソ!!」
(顔に出た!! お互いに! マジかって顔をお互いにした! 確信を与えちゃった!! このまま術式を看破されれば部屋に入られる…ここで足止めする!!)
(マジで南十字だった、津美紀に感謝だな。でもこれ以上は何も知らん…つーか、南十字座って四つじゃないのか??)
お互い睨み合いの最中、パンダが伏黒に近付いていく。
(やっぱり先輩とは近付ける)
「先輩、南十字座って四つですよね?」
「え…そりゃ十字だし…」
(刹那なら分かるか? …いや、星の話は聞いたこと無いな、リスクは無くすべきだ)
「綺羅々さんの術式は多分、それぞれに星を割り振ってスタンプラリーやすごろくみたいにそれぞれに近付ける順番があるんだと思います。そんで同じ星はくっ付く」
「術師本人は術式対象外なんじゃないか?」
「それはないです、本人も玉犬と距離を取らされてました」
「単純に俺たちの星とは反発するとか」
「だったら綺羅々さんが今部屋に逃げ込まないのはおかしいですよ」
「あ、そか。内側で扉にべったりされたら詰むもんな」
「今綺羅々さんは俺達が何かしらで条件を満たして自分の目の届かないところで部屋に侵入されることを警戒してる」
「となると…星は五つ以上だな」
「はい、スタンプラリー説が正しかったとしたら俺かパンダ先輩は近付けるはずなんで、間に五つ目の星があってそこを経由しないと綺羅々さんに近づけない」
「…いっそ刹那を呼ぶのはありか?」
「ないと信じたいですが六つ七つあったらさらに信用が薄くなるだけです、それに…このくらいやれなきゃ笑われる」
伏黒は術式を情報を集めて看破しにかかる。しかし、それに呼応するように綺羅々も防から一転して攻めに移り、近くの車を踏み壊す。パンダはそれに気付いて下に降りて綺羅々を止めに行く。
タンッグジャッ!!
「パンダ先輩!!」
車にパンダと同じイマイの星がつけられ、パンダの元へと飛んでいく。
ガッ、バンッ!!
「問題ない!! 伏黒は星を探せ!! ふんっ!」
「あっ投げちゃ駄目ですよ!! 同じ星がついてるんですから投げても戻ってくるか引っ張られますよ!!」
そこからさらに伏黒は頭を回転させて星を探し始める。
(星をつけるには多分対象に触れなければならない、でも俺も脱兎も触れられてない…!! 触れられたのは玉犬だけ、つまり綺羅々さんは物ではなく呪力に星をつけてる!! 扉や車に星をつけるには予め誰かの呪力を込めなければならないんじゃないか…!?)
伏黒は車の残穢を辿り、車のストッパーに最後の星、ミモザを発見する。
(あった! 五つ目の星!! 俺達三人以外の残穢はもう見当たらない、綺羅々さんは既に自分の呪力に星をつけていて、物に俺と同じアクルックスの星をつけるために自身の呪力は使えないから俺に物は飛ばせない!! 俺の読みが正しければこれで近付け──)
パシッ
しかし、伏黒の読みを否定するように車のパーツが飛んでくる。
伏黒の仮説は正しい。綺羅々の術式、星間飛行は南十字座をモチーフとして伏黒の予想通りの挙動をする。そして順序とは、星座の奥行き。地球から遠い順に近づけるようになっており、伏黒はアクルックスをつけられたことにより、扉に到達するためにはミモザ、綺羅々のギナンを経由する必要がある。
「君凄いじゃん。マジで私の術式のこと分かってるんだ。でも物分りが良すぎてもう物は飛ばせないって思い込んでない? 私の呪力についた星…ギナンを外して君と同じアクルックスの星をつければいいだけじゃん」
ズズズッ…
「まだ出てくるな、信じろ」
ドドドドンッ!
伏黒に向かった車のパーツは伏黒を包み込む。しかし、最初から伏黒は一度も玉犬を解除していなかった。
「なっにぃいい!??」
(なんで!? どこから!? まさか!! 一度も犬を解除してなかったんだ!!)
「くっ!!」
綺羅々の背後から玉犬が伏黒に綺羅々ごと吸い寄せられていく。綺羅々は星間飛行を解除し、同時に伏黒に組み伏せられる。
「話…聞いてください」
「君、本当に今の狙ったの? 犬と君、どっちが引っ張られるかなんてわかんないじゃん」
「そこは賭けでしたが今分かりました、呪力出力の高い方に引っ張られますね? 初めは俺が玉犬に引っ張られたのに、攻撃を防御しようとした今回結果は逆になった」
「君一年生? ホンット可愛げな…」
スッ
伏黒は拘束を解いて綺羅々に向かって深く土下座して頼み込む。
「お願いします時間がありません、話を聞いてください」
「……分かったよ」
ドンッ!
「「「!!!」」」
「虎杖!?」
虎杖がモニタールームから突如として屋上へと吹き飛ばされて出てくる。
顔面が血だらけの虎杖を見据えながら薄着で呪力を錬っている秤が出てくる。
「伏黒、パンダ先輩、手ぇ出すなよ」
「!!」
「ナメるじゃねぇか」
ヒュッ バチィッ!!!
虎杖は秤の右振り回しを顔面で受け止める。
「モロッ…!!」
バンッ、グンッ、ブシュッ!!
虎杖は地に背をつけず、すぐに立ち上がり、鼻血を無理矢理出して止血する。
(このガキ、さっきから…避ける気がねぇ…!!)
「イカれてんな」
(これは渋谷での戦いとは違う…!!)
(秤先輩に俺を認めさせるためのいわば儀式だ、避けねぇ、反撃もしねぇ…!! この人が、折れるまで…!!)
「面白ぇ、話は聞いてやる。オマエが立ってるうちはな」
「金ちゃん!! この子達金ちゃんに助けてほしいんだって! 話を聞いてあげて!!」
「今聞くっつったろ」
「……じゃあいいのか?」
「なぁ虎杖、なんで俺だよ? 俺達初対面だよな? なんで俺を頼る?」
「先輩達とダチがアンタを強いと言ったからだ」
「だと思ったよ」
ドガッ
虎杖を殴り飛ばし、虎杖は違和感を覚える。
(何だこの人の打撃は…!? 威力の大小以前に痛い!! ヤスリのついたバットでぶん殴られてるみてぇだ…!)
「術師が術師にするお願いは"一緒に命を掛けてください"が前提だろーが!! テメェは俺に命を落とす賭けさせるだけの熱を今!! ここで!! 伝えなきゃなんねぇんだよ!! それを言うに事欠いて人に言われてきましただぁ!? 夜蛾のオッサンは何してんだよ!! こういうヘタレは間引いとけや!!」
「俺に熱なんてねぇよ…」
「"あ?」
「俺は部品だ。術師が呪いを祓うため、祓い続けるための、部品」
「オイオイオイ、マジかオマエ。超つまんねぇじゃん」
(まずいっ、これ以上は……!!)
「虎杖!! もういい!!」
秤は殺意にも似た熱を虎杖に向け、もう一度全力のパンチを見舞う。
ゴッ…ドドッバンッ…
虎杖は鉄柵まで吹き飛び、暫くの間立ち上がることなくその場に倒れ伏す。
「痛ぇだろ。五条さんが言うにはな、俺の呪力は他のやつよりザラついてるらしいぜ…死んだか?」
「待て…虎杖を信じろ…!!」
伏黒は影に手を突っ込んで今にも出てきそうな刹那をなだめる。虎杖を伸した秤は伏黒達に向き直る。
「おいパンダ!! …とウニ頭!! さっさと虎杖連れて失せろ、二度と…"あぁ!?」
秤の背後には真っ直ぐに秤を見つめる虎杖が立っていた。
(ノーガードで三発だぞ!? その前にもしこたま殴った…!)
「何製だよオメェは」
「俺は部品だ、部品には役割があんだろ。呪いを祓い続ける俺の役割。それに秤先輩が必要だっていうのならアンタが首を縦に振るまで付き纏う」
(コイツ…!! これが部品の熱かよ……!!)
「いいぜ、何発でも──」
「金ちゃん、熱くなってるんじゃない?」
(……熱に嘘はつけねぇ!!)
綺羅々の指摘され、秤は自らの信念を貫く。
「……オマエら降りてこい」
「「!!」」
「取引だ」
「「??」」
「え?解決してもらえたんですか?」
「うん」
「ありがとうございます?」
「いいよ。上の連中は嫌いだけどね、なんやかんやで人助けしてた金ちゃんが一番熱かったから」
ゴンッ
「イデッ」
「うーん?」
秤の説得を終え、全員落ち着いたところで話しを始める。
「マジで? 五条さん封印されたの?」
「「「マジ(です)」」」
「かぁーっ!!」
「金ちゃん、それだけじゃなくてせっちゃんも死刑になったみたい…」
「はぁ、マジでか!? 上の奴らは何考えてんだよ!?」
「あっ、スイマセン、それに関しては嘘です」
伏黒は自身の影から刹那を呼ぶ。
「刹那」
「…忘れられたかと思いましたよ」
「せっちゃん!」
「おぉ、久し振りだなオイ」
「お久しぶりです…一年半ぶりくらい? ですかね」
綺羅々は刹那に抱きつき、秤も四人が思うよりもあっさりと刹那の存在を受け入れる。
「先に言ってくれたら良かったのにー」
「顔割れしてますし逃げるかもしれなかったので」
「…話しを戻すが、これは言っておいたほうがいいよな。ついでのようで悪い、学長も死んだ」
「!!」
「パンダ先輩?」
「スマン黙ってて、だが本当だ」
「渋谷でじゃない、あのあと上とゴタついたんだ。虎杖は関係ない」
「なら良かったとはなんねーよ。だって学長は先輩の…」
「それも含めて"大丈夫"だありがとな」
「そんな…パンダせんぱっ」
クシャッ
「パンダがそう言ってんだ、これ以上は俺らはなんも言えねーよ」
「ね」
「にしても世話んなった人らが悉く…こんなに凹んだのはヤックルのケツに矢がぶっ刺さった時以来だよ」
(((いい人生送ってるな)))
「確かにあれはショックでした…」
(((一緒に見てたのかよ)))
「…分かった、死滅回遊の平定には協力する。が、勘違いすんなよ、情にながされたわけじゃない、これは取引だ。分かってるか? 死滅回遊に方がついたらオマエらが俺に協力すんだぞ」
「呪術規定の改定に乗じるんですよね?」
「呪霊の存在が公になった以上、改定自体は確実なんだろが、具体的にはどうするんだ?」
「どうあれ、そこまで難しくはないと思いますよ」
「あぁん? テメェに何が分かんだよウニ頭コラ」
「俺、一応禪院家の元当主ですし、今回の件にかなり現、禪院家当主が噛んでます。説得、もとい恐喝は多分容易です」
(オイオイマジか、御三家の当主と元当主だと…!? しかも揺するネタがいくつかあるとなりゃあ…)
「ウニ頭!!」
「伏黒です」
「伏黒君!!仲良くしようネ」
「…はい」
態度が一変した秤にズレを感じつつもそれを受け入れる。
「あ、そうだ。恵君、傷を」
「ん、いや別にこれくらい構わないが」
ポゥ…
「それと悠仁君…」
「あ、いや、これくらいは」
パンッ
刹那は傷の上から虎杖の頬をかなり強めに叩く。
「え!?」
「刹那!?」
「えっと…セツナサン?」
「僕は…死んでほしくないんですから…悠仁君も例外じゃないんですから…」
トンッ
虎杖の胸に頭を押し付け、顔を見せないようにして虎杖に怒りを表す。
「す…スイマセン…」
影の中で見てることしか出来なかった刹那は、怒りと不安を虎杖の胸の上で発露し、涙が溢れ出しそうになるのを伏黒と虎杖で慰める。
「すいません、もう少しだけ待ってください」
「ご、ごめんって、もうしないから、な?」
「泣き虫は変わってねーなぁ、お前」
──ー
落ち着いたあとに虎杖を治療し、パンダが話し始める。
「よし、後は各々が出向く結界の割り振りだな。憂太は宮城だっけ」
リンゴンリンゴンリンゴン!!!
「泳者による死滅回遊へのルール追加が行われました!! 総則9!! 泳者は他泳者の情報ー"名前""得点""ルール追加回数""滞留結界"ーを参照できる」
一同の前に突然一体の式神が現れ、そう告げる。
それを聞いたあとにあらゆる疑問は式神本体が解消していく。
「俺はコガネ!! 泳者と死滅回遊を繋ぐ窓口さ!!」
「なんかさっきとキャラ違くねぇか?」
「さっきのは死滅回遊からのアナウンス!! 今は虎杖悠仁個人に憑いてる窓口として喋ってるぜ!!」
「天元様が言ってましたね…あれ、でもおかしくないですか?」
「そうだ、なんでお前が既に泳者としてカウントされてんだ! 羂索が弄ったやつ以外は結界に入って初めて泳者になるだろ」
「………宿儺だ、あいつも羂索と契約した術師だったんじゃねぇかな」
「でもやっぱりおかしい、宿儺の指はお前の意思で取り込んだだろ、俺が証人だ…後にしよう」
ただ一つの疑問を残して話し合いを続ける。
「虎杖、コガネに早速泳者の情報を開示させてくれ」
「できる? コガネ」
「あいよっ」
コガネは口の下あたりにある液晶画面のようなものを下に伸ばして情報を見せる。
「……いた、コイツだ」
「元々二百点…何故こんなルールを…?」
「ここ数日で少なくとも四十人殺してるってことだろ? 気持ちの良い理由じゃねんじゃねぇか?」
「でも、これで俺達は人を殺さずに死滅回遊を進められるかもしれない。コガネ、百点以上持ってる奴をリストアップできるか?」
「俺は虎杖悠仁に憑いてるからなぁ」
「あ、いいよいいよ、伏黒の言うことは聞いてあげて」
検索中の文字を映してコガネは黙り、伏黒はその間に説明する。
「津美紀みたいに巻き込まれた人間は焦って結界から出たがらない限り……受肉した過去の術師も各々何か思惑があって契約しただけで、必ずしも死滅回遊に対するモチベーションが高いわけじゃない。鹿紫雲のように点を持て余している奴がまだいるとしたら」
「…そっか、百点以上持っててルール追加をする気がない奴!! そいつを伸して」
「津美紀が回遊を抜けるルールを作らせる!!」
「出たぜ」
コガネの一言で目的の百点を持っている人物をリストアップする。
そこに載ってたのは鹿紫雲の他にもう二人。
得点102 日車寛見 滞留結界東京第一
得点104 仲見世心 滞留結界大阪
「もう二人…!! よし、まずは総則8を逆手に取る」
「「総則8って何だっけ」」
「得点の変動が無ければ術式が剥奪されるっていうのですよね」
「ルール追加で泳者間での点の譲渡を可能にする。これで身内で点を回り続ければ術式を剥奪されて死ぬことは無くなる。できればルール追加はもう一つ、点を消費して死滅回遊から離脱できる」
「それは例の永続に抵触するんじゃねぇか?」
「俺もそう思います、でも」
「…何かしらの、例えば非泳者を身代わりにする。とかならいけるかもしれませんね…」
非泳者の身代わり条件。あまり人道的に良くないと分かっていながらも、それを選択肢に入れ、最善と思う刹那はなんとも言えない気持ちになる。
「確かにな、その辺はコガネが決めんのか?」
「何にせよ、やることは決まったな」
「あぁ。天使を捜索しながら、ここに載ってる三人を狩る」
方針を確定したところで詳しく計画を練りだす。
「その天使ってのの姿は分かってんのか?」
「見れば分かるそうです」
「大丈夫かそれ」
「ま、いいや。俺とパンダが東京第二、伏黒きゅんと虎杖が第一、刹那は大阪で綺羅々は結果外で待機でいいな」
「根拠は?」
「得点だけ見れば一番強い鹿紫雲と俺がやんのが順当だろ。刹那でもいいが、今から大阪まですぐに移動できるのは刹那くらいなもんだから抜きだ」
「呪力も休養もたっぷりだったので、充分皆さんと時間は合わせられますよ」
「えー、私仲間はずれぇ?」
「乙骨から連絡ねぇってことは結果の中じゃ携帯は使えねぇ。外の状況を把握出来る奴はいたほうがいい」
「はぁい」
「高専に一年の釘崎って奴と狗巻先輩が残ってます。一応連絡先渡しとくので必要になったら合流してください」
「女の子?」
「凄く格好いい女の子ですね」
「…(我が)超強い女の子です」
「(物理的に)釘を刺してくる女の子ッス」
「なにそれ逆に会ってみたい」
三人は釘崎の特徴を簡潔に説明すると、虎杖は不安要素を話す。
「あ、宿儺と伏黒は話した方が良いかもってか…ぶっちゃけ刹那も伏黒もコイツに近づけたくねぇ」
「うるせぇ、先輩と刹那の役割は動かせない。我儘言うな」
「ワガママ!?」
二人は互いの元ヤン気質を見せ合いながら睨み合うがそれをパンダがなだめ、一旦休息をとる。
「ケンカすんな」
「こっから東京まではそれなりに時間がかかる。近くまで電車は一応走ってるからそれまで休め」
「あ、僕は先に走ってますね。でなければ間に合いませんし」
刹那は結界に入る時間を合わせるために全員が休んでいる間に移動することになる。
「かなり無理難題を押し付けてるつもりではあるが頼んだ。埋め合わせは必ずする」
「フフ…期待してますよ」
刹那は淡く微笑み、下へと降りていく。
「…なるほど、そういうことか」
「金ちゃん、しっ」
二人を見て秤は例のアレを察し、モニタールームへと入っていった。
次回はほぼ完成済みなので明日明後日にでも。
おまけ
刹那、影の中にて。
最初に影に入れられた時。
「嫌だって言ったのに、、、」
トーナメントスタート
「暗い影の中、、、宿儺は何百年もこんな感じなのかな、、、。あっ
悠仁君の相手パンダ先輩なんだ」
虎杖優勝。
「まぁ、パンダ先輩以外に悠仁君に勝てるわけないか」
モニタールーム前
「綺羅々先輩、警備に出されてたんだ」
戦闘
「星座、、、ガクルックスってことは、南十字星?だったっけ、、、どんな決まりなんだろ?」
「スタンプラリー?あぁー、だから距離が縮まらないのか」
「あれ、南十字星って五つじゃなかったっけ?」
「そろそろ行っちゃだめなのかな、、、」
伏黒に車が当たる直前。
「恵君っ!!」
虎杖が吹き飛ばされた時、刀を構える。
「金次先輩、、、!!止めないでくださいよ恵君!!」
「死んだら絶対に許さない、、、」
「良かった、、、生きてた、、、!」
まぁ頭の中で考えてた刹那だったらーっていう台詞なんで、実際に言ってるかは他は自己保管でお願いします。