全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

57 / 90
本編で大阪が出た場合はこれ全部消して書き直しますのでそこだけご了承をお願いします!
主人公組は原作に遅れがあったときとかにもしかしたら書くかもです。
それではどうぞ、お楽しみください〜。


第五十六話 突入、大阪結界

 十一月十二日 十二時 大阪

 

 十ある結界の内が一つ、関西の中枢都市にして日本最大の商店街が存在する日本の第二の要、大阪。 

 

 刹那達は秤達の説得を終え、天使捜索とは別に百点保持者の仲見世心を説得してルールを追加する為に大阪の結界へと入る所だ。話し合いになれば、交渉に長けた刹那の瞳は大きな武器となり、荒事であっても実力に不足は無い。

 

「これが結界。彼岸に渡す儀式…間に合って良かった」

 

 ヴー、ヴー

 

 結界を見上げていると伏黒からの連絡が入る。

 

「こっちは問題ない、入るぞ」

 

「こっちも問題ないです…死なないでくださいね」

 

「お前こそ、勝手に死ぬのは許さないからな」

 

「刹那も頑張れよー!」

 

「頑張りますよー」

 

 電話の向こうで虎杖も声を上げ、それに返答して会話は終わる。

 

 プツッ

 

 電話を切り、結界へと足を踏み入れようとすると泳者一人一人に取り憑く式神、コガネが現れて刹那に警告する。

 

「よぉ、俺はコガネ!!この結界の中では死滅回遊って殺し合いのゲームが開催中だ!!一度足を踏み入れたらお前も泳者!!それでもお前は結界に入るのかい!?」

 

「問題ありません、参加します」

 

「阿頼耶識刹那が死滅回遊へ参加しました、ルールを参照しますか?」

 

「いえ、必要ないです」

 

「ありゃー、つまんね」 

 

 コガネは小さくつまらなさそうにそっぽを向く。その間刹那は刀を改めて確認し、再び結界を見上げる。

 

「さて、行きますか」

 

 トプンッ、パッ

 

 刹那は結界内へと意を決して入る。その瞬間、入った場所とは違う地点へと転送される。

 

「ん?」

 

 泳者は結界に入るとそれぞれの九つの固定されたポイントへと転送される。

 

 刹那はどこかの橋の下へと転送されるが冷静に状況を把握する。

 

(転送…人を散らすためか、呪具は問題なし。捜索を継続っと)

 

 ドブンッ!! 

 

 前方の車の陰に隠れていた一人の術師が地面に手を当てて術式を発動させ、刹那が歩き出した瞬間に地面が流動状に隆起する。

 

「んー、いるとは思いましたが早いですね」

 

「死ねぇ!!」

 

 直後に別の術師が橋の上からコンクリートごと落下してくる。

 

 ズダンッ!! 

 

「…一つ聞いてもいいですか?」

 

 脚を呪力で強化して流動状になったコンクリートを蹴り、一瞬で距離を詰めると前方の術師の首に抜刀した刀を当てる。

 

「うぁッ」

 

「動いたら頭と胴が泣き別れですよ、後ろの貴方もです」

 

 もう一刀を取り出し、後ろの術師に向ける。

 

「わ、分かった! なんでも話す!! だから命はっ」

 

 二人は手を上げて無抵抗の意思を示す。

 

(随分あっさり…まぁ、好都合か)

 

「手、降ろしていいですよ。話をしましょう」

 

「…俺達が反撃をするとは思わないのか?」

 

「僕が首を飛ばす方が速い、嘘だと思うなら試してみればいいんじゃないですか?」

 

 冷徹に二人を見てそう言い放ち、納刀する。

 

「俺は苦菜哲人(にがなてつと)、向こうの落ちてきたやつは濱口陸人(はまぐちりくと)だ」

 

 死滅回遊泳者 苦菜哲人 濱口陸人

 

「僕は刹那です、苗字は長いので気にしないで下さい」

 

 名前だけの自己紹介をしたあとに質問を始める。

 

「まず一つ目、貴方達は今回の件で術師になった人ですか?」

 

「あ、あぁそうだ」

 

「ポイントは?」

 

「お互いポイントは無い…」

 

「なるほど」

 

(二人共素人、大した情報は望めないかな…)

 

「じゃあ最後。仲見世心という術師を知ってますか?」

 

「いや…知らないな」

 

「俺もだ」

 

 期待していた情報は手に入らず、気を取り直してその場を離れる。

 

「そうですか…」

 

「でも…一人、とんでもない奴を知ってる」

 

「へぇ、どんなのですか?」

 

「道頓堀の近くの小さな公園で見たんだ、鎧の大男が十人位の俺らと同じような奴らと戦ってるのを」

 

「鎧? 随分古風な。でもそうか…仲見世心が必ずしも女性とは限らない…」

 

「少なくともそいつは五十点以上持ってる、君の目的の人か分からないが、アイツだけはやめておけ」

 

「取り敢えず覚えておきます。ありがとうございました。僕はもう行きますが、手を出さなければ何もしませんのでお気になさらず」

 

「なぁ、アンタはこのクソゲーを終わらせるつもりなのか?」

 

「何もせずともいつかは終わります。僕はルールを追加して殺し合いの制度を否定したいだけです」

 

「そうか…殺そうとした俺がいうのもあれだが、頑張ってくれ、応援してる」

 

「頑張りますよ、友達も待っていますので」

 

 刹那は立ち上がってその場を離れる。

 

「俺達も、早いとこ点をとらなきゃな…」

 

「あぁ…」

 

 その場を立ち去ろうとする刹那の背後で二人はボソリと呟く。それを聞いた刹那は一度振り返って二人に情けをかけていく。

 

「…僕の目的にはルールの追加にポイントの受け渡しを追加することも含まれています。ポイントの変動…誰かに取り入ればあるいは…」

 

「何で…?」

 

「情報のお礼、僕は不平等が嫌いなので。生きる希望くらいは持った方が心が楽ですから。頑張って一ポイントでも稼げばゲームが終わるまでの時間は稼げるかもですね。それじゃ、頑張って下さい」

 

 刹那は建物が並ぶ住宅街の方へと向き直る。背後から感謝の声が聞こえるが、刹那は知らぬふりして歩いていった。

 

 ──ー

 

 かなりの距離を一時間程かけて歩き、おおよその広さを把握する。

 

(結界はかなり広い…半径五、六キロってところでしょうか。中心は分からないけど)

 

「コガネ、大阪にいる好戦的な術師の数を開示できますか?」

 

「OK…リストアップした人数、ニ十七人だ」

 

 コガネは口の下の部分を開いて名前を掲示する。

 

「約百人がそれぞれに入ってると考えると、最短二十人の術師を狩ってるのか。だとしたら実力からして千年前の術師の可能性が高いかな…」

 

 目的もなく歩いていると日本一の商店街、道頓堀の入り口へと到着する。

 

「何人かくらいはいそうだけど…」

 

 ピクッ

 

 上から視線を感じて飲食店の看板を見上げ、刹那は刀に手を掛けて警戒する。看板に座っている女性は赤と白が混じったセミロングの髪に、ジーパンと背に不死鳥が描かれたスカジャンといったボーイッシュな格好の女性が見下ろしている。

 

「あぁストップストップ、敵じゃないよ」

 

 手を上げながら女性はフワリと着地して手を上げる。

 

「さっきの見てたよ。強いね、お嬢さん」

 

 近付こうとする女性を手で静止する。

 

「それ以上は近づかないで下さい」

 

「おっとと、私は不知火燐(しらぬいりん)。一応泳者だけど、あんまり争いごとに興味は無いんだ」

 

「コガネ、ポイントの掲示を」

 

「おう、不知火燐、所持ポイントは二十五だぜ」

 

 コガネを呼び出してポイントの掲示をさせるが、予想外の数値に警戒を強める。

 

「結構殺してるじゃないですか」

 

「違う違う、襲われたから正当防衛だって!」

 

 依然として手を上げたまま弁明を続ける。拮抗状態が続くかと思われたが、刹那は敵意がないことを判断するために眼帯をほんの少しずらして色を確認し、あっさりと膠着状態は破られる。

 

「どうやら、本当みたいですね」

 

「お、分かってくれた?」

 

 手を上げるのを止め、刹那は静止したままで話そうとするが大胆にも刹那に近付いていく。

 

「全く、出てくるタイミングが…何ですか」

 

「名前、私だけじゃ不公平だろ? 教えてくれよ」

 

「…刹那です」

 

「刹那ちゃん? 一瞬を大事にしようっていう親の心が伺えるね。いい名前だ」

 

 ペラペラと褒め文句を口にしながら横に並び、するりと首に手を回してさらに距離を詰める。

 

「えっと…何ですか…?」

 

 予想外の行動に流石に刹那もたじろぐ。

 

「私さ、可愛い女の子が好きなんだよね。特に君みたいな子」

 

 チュッ

 

「キャッ!」

 

 ドンッ

 

「あ痛っ」

 

 感情を確認する暇もなく、こめかみに急に口付けをする不知火を思わず突き飛ばす。

 

「あっ、すいません、でも、えっそのなんで…えっ…?」 

 

 動揺を隠せずに頭上にハテナマークを浮かべる。頬を紅く染めながら胸に両手を当てて混乱する刹那を見て、座ったまま胡座をかいて不知火はニコニコと笑う。

 

「今どき珍しい純粋な子だねー、あんなに強いのに。いや、強いからこそ?」

 

 さらに不知火は立ちあがって近づき、顎に手を掛けて顔を近付ける。

 

「一目惚れだ、私と──」

 

 そこまで言いかけたところで不意に地面が揺れ出す。地震というより、何者かの大移動といった感じの揺れに二人の動きは止まり、刹那は冷静さを取り戻す。

 

「地震…?」

 

「いや違う…全く、不粋だなぁ」

 

「何か知ってるんですか?」

 

「詳しく説明はできないかな、とりあえず走るよ!」

 

 ダダダダッ

 

 不知火の合図で商店街を走り抜けていく。直後に路地裏や背後から無数のマネキンが二人を追いかける。

 

 ドドドドドドドドッッッ!!! 

 

「何体いるんですかアレ」

 

「さぁね! ずっと執着されて少し参ってるよ! あっ、こっち!」

 

 走る先々の曲がり角からも現れ、方向転換を繰り返していく。

 

(呪骸でもない、洗脳された人とも違う…本当に何アレ)

 

「考え事かい!? 前から来るよ!」

 

 前からも波のようにガチャガチャと駆動音を鳴らしながら人形が襲いかかってくる。

 

「ちっ!」

 

 ダンッ、ゴォオウッ! 

 

 不知火は一歩踏み込み、腕から炎を生み出して目の前を焼き払う。

 

「ここで迎撃しようっ!」

 

「いえ、その必要はありません」

 

「はっ? バカバカバカ何してんの!?」

 

「掴まってて下さいね」

 

 刹那は不知火を抱き上げて靄で二人を包み込み、温度を無くして炎の中を走り抜けていく。

 

 ダッ! 

 

「うわぁっ!?」

 

 そのまま走り抜けていき、商店街を無理矢理横に抜けて神社の階段を登り人形達を撒く。

 

 ドサッ

 

「はぁ…疲れた」

 

「凄いね…一体どんな術式なの?」

 

 目を丸くして驚く不知火の質問を無視して質問し返す。

 

「あなたこそ、その術式は何なんですか」

 

「私は見ての通りだよ、炎を身体から出すだけ。呪力量に応じて熱さや範囲を広げたり上げたりできるオプション付き」

 

「僕は説明が難しいので省きます」

 

「それずるくないか?」

 

「少なくとも、今はあなたの敵に回ることはないので安心していいですよ。味方してくれる限りあなたは僕が護ります、少なくとも現状その価値がある」

 

 立ち上がって足の砂埃をパンパンと払いながらそう言って見せる。

 

「…やば、格好良い…」

 

「さて、恐らくあれの術者が仲見世心…」

 

「ん、アレを探してるの?」

 

「知ってるんですか?」

 

「まぁ、今のやつの犯人だし。てゆーか勧誘されたし」

 

「勧誘…? 一体何の?」

 

「…見たほうが早いんじゃないかな」

 

 不知火が指差す方には一体の飛行する人形、それにマイクが付いている。

 

「やぁ、また勧誘か? 忙しないね」

 

 不知火が話しかけるとマイクとは別のスピーカーから、甘美な声が聞こえてくる。

 

「初めまして刹那さん…で、あってるかしら?」

 

「……盗撮は趣味が悪いですよ」

 

「ごめんなさいね、私本体は弱いから情報線に持ち込むしかないのよ」

 

「でも丁度良かった、あなたにお願いしたいことがあってきたんです」

 

「私もあなたにお願いがあってきたの。お互い、話し合いが目的のようだしどこかで会わない?」

 

「…構いませんよ。ただし、罠などがあればあなたを敵とみなしますので、精々お気をつけて」

 

「フフ、素晴らしい胆力ね。不知火、あなたも来ますか?」

 

 懐から煙草を取り出して吸おうとする不知火に話を振る。

 

「この子の横が今は一番安全だからね、行かせてもらうかな」

 

「嬉しいわ、あなたとも話せるなんて。それじゃあ日付けが変わる頃、誰にも邪魔できない場所。そうねぇ、あべのハルカスで会いましょう。展望台で待ってるわ」

 

 人形はパタパタと小さな羽根を動かして飛び立っていく。

 

「…大体、丁度半日ですか」

 

「てことは、それまでは安全は保証されるってことだね」

 

 不知火は煙草を口に咥えて指先で火を点けて言う。

 

「出来れば今すぐ話したいんですが…まぁ、仕方ないですし、それまで別の情報を集めるとしましょうか」

 

 刹那は神社の階段を降りていこうとするが、それを不知火が肩を掴んで止める。

 

「どうしました?」

 

「いやいや、あれだけ動いたしもう昼時も過ぎてるんだよ? お腹空かないの?」

 

 刹那はスマホを取り出して時計を見やり、分かっている時間を改めて確認する。

 

「いえ、僕は別に…」

 

「まぁまぁ、私はお腹空いたし、折角大阪にいるんだからなんか食べようよ」

 

 ガシッ

 

「うわっ、ちょっとっ」

 

 刹那の手を強引に取り、再び商店街へと向かっていく。

 

 ──ー

 

「非泳者は既にいないんですか?」

 

「最初の頃は何人かいたけどね、最近だと私は見てないなぁ」

 

 流麗な動作で煙草を吸いながら話す。

 

「ポイントの為に狩られましたか、まぁ当然と言えば当然ですね」

 

「そんなことよりさ、君はどんな人が好みなの?」

 

「なんで言わなきゃいけないんですか…」

 

「良いじゃないか、減るものでもないし。ちなみに私はね、強くて可愛い君みたいな純情な子がタイプ」

 

 グイッ

 

「へぷっ」

 

 ずずいと顔を近付ける不知火の顔に手袋で隠れた掌で押し返して遠ざける。

 

「いちいち近いんですよ、少なくとも距離感は大事です」

 

「じゃあ距離感を大事にするよ、他には?」

 

(恵君はどんな感じかな…)

 

 頭に伏黒を思い浮かべ、五条の言葉を思い出しながら曖昧に答える。

 

「はぁ、えっとですね…優しい元ヤン?」

 

「へぇ! 意外だなぁ、ピアスとか開けてる人?」

 

「なんで耳にアクセサリーする人を好きになるんですか」

 

「アッ、そういうのじゃない」

 

 一般的な元ヤンとはだいぶかけ離れた伏黒のイメージに刹那と不知火との常識にズレが発生する。

 

「あとは、覚悟をちゃんと決めれる人…とか?」

 

「なるほど」

 

 ガシッ

 

「私は君の為ならいつでも死ねるよ」

 

 不知火は刹那の手を両手で掴んでキリッとした目つきのドヤ顔で答える。

 

「ハイハイドーモ」

 

 そっぽを向きながら棒読みで答え、刹那は手を払って再び歩き出す。

 

「ホントだよ? 嘘じゃないよー!?」

 

「はいはい分かりましたから。そんなことより、まだ着かないんですか?」

 

「え、とっくに着いてるけど、何処に入りたいの?」

 

 既に飲食店街には入っており、大きなカニの看板や店頭販売のタコ焼き、それ以外にも思わず目を引いてしまう綺羅びやかな景色が広がっていた。

 

「貴方のオススメとか無いんですか」

 

「さぁ? 私だって旅行客だし」

 

 不知火はさらっととんでもないことを暴露する。

 

「…えっ、そうなんですか!?」

 

「あれ、言わなかったっけ」

 

「聞いてませんよ! じゃあ術式は!?」

 

「何だったかな、なんか使えるようになったんだよね…詳しくは覚えてないけど、和服の怪しげな男? がいたのは覚えてるよ」

 

(…てことは脳をいじられた人間?)

 

「何か食べさせられたりしましたか?」

 

「いや別に。男には興味ないから食事なんて行かないし」

 

「そういうことじゃなくて…」

 

「ていうか作る人いないからまともなモン無いね」

 

 不知火は話題を変えてため息をつく。

 

「まぁ確かに、作り置きの物くらいあるといいんですけど…」

 

 二人はキョロキョロと周りを見渡していると、刹那は一つの店を発見する。

 

(いやいや、こんな時に僕は何をしているんですか、最低限の食料で我慢しなければ…)

 

「おっ、エッグタルトか。良いねー、私も好きだよ」

 

 ボゥッ

 

 刹那の視線に気付いたのか、煙草を燃やしてスタスタと店内へ入っていく。

 

「えっ、ちょっと!」

 

 ──ー

 

「刹那は甘いもの好き?」

 

 ジュヴゥゥドロ…コトンッ

 

 流されるままに店内の席へ座り、不知火はショーケースを熱で溶かして商品を取り出し、紅茶を淹れて机に置いていく。

 

「…ここにいる僕が言うのもなんですが、こういうのなんて言うか知ってます?」

 

「さぁ? ランチデート?」

 

「火事場泥棒って言うんですよ」

 

 口では小言を吐きながらも不知火が運んできたタルトを小さく口に運んでいく。

 

「まぁまぁ、細かいこと言わないの。こんなゲームしてるんだから癒やしは必要だよ」

 

「貴方といると調子が狂います…」

 

「えなに、期待していいの?」

 

「そういう意味じゃないです」

 

 空いた腹を満たし、再び少しでも情報を集めるために適当に目立つように歩き出す。

 

「忙しないねぇ、どうせすぐに会えるのにそんなに焦る必要があるの?」

 

「まだです、僕の目的はもう一つありますから」

 

 刹那の今回の目的は二つ、一つ目は百点を持つ仲見世心との接触、ないしルール追加の要求。

 

 もう一つは千年前の術師からの情報収集。

 

(羂索との関わりが絶対にあるはず、しかも大阪には仲見世以外にも高ポイント保持者がいる。その術師は千年前の術師の可能性が極めて高い…)

 

「あっ! ほらお城があるよ、疲れたし休んでいかない?」

 

 不知火を無視して暫く歩いていくと、術師同士が争った形跡が見られる場所へと辿り着く。大阪城が間近に見え、呪いの気配が蔓延するなど、高専に近い雰囲気を感じるその場所へと足を踏み入れる。

 

 爆弾のようなもので無差別に破壊した跡が見られ、薄いながらも血の匂いがこびりついていた。

 

「残穢が複数ある…もし、これで戦った相手が単体で勝ったのなら…」

 

 探す必要もなく、目的の人物は不自然に暗い公園の中央から姿を現す。

 

「去ね、某に女児を痛ぶる趣味は無し」

 

 男は古い口調で警告してくる。180程度の長身。口元までの黒い鎧と紅い兜に眼だけが見える面をしている。

 

「…ビンゴ」

 

 刹那は自然と笑みを浮かべ、交渉を始める。

 

「その口調にこの惨状。貴方がコスプレ好きで殺し合いが好きな変人でもない限りは、千年前の術師とお見受けしますが、合っていますか?」

 

「左様、しかし馴れ合うつもりはない。そこから一歩でもこちらに踏み込めば敵とみなす」

 

「僕は交渉しに来たんです。貴方が望むものを可能な限り提供します。なので…貴方の点と情報を下さい」

 

 刹那はそう言って呪力を練りだす。

 

「!!」

 

 男の纏う雰囲気が一変し、同時に呪力を練りだす。

 

「フッ…フッフッフ、ハッハッハッハッ。感じる、感じるぞ、濃厚な死の味を。よもや、戦場と同じ死の味を現世で味わうことになろうとは」

 

 パンッ、ズルゥゥッ

 

「所望するは貴様との血湧き肉躍る死合ッ!思う存分に呪い合おうではないか、大海を知らぬ蛙よ」

 

 紫龍は手を叩き、ゆっくり手を離していくとそこから薙刀が形成される。

 

「手伝おうか?」

 

「いえ、これは僕の問題なので」

 

 ザッ、ボゥンッ!! 

 

 刹那も刀に手をかけながら一歩を踏み出す。その瞬間、足元から煙が巻き上がる。

 

「武芸百般、罠術。戦いは既に始まっているのだ」

 

 パンッ、ギリリ…ドシュシュッ! 

 

 バキキッ! 

 

 薙刀を手放して紫龍は手を叩き弓を形成し、早業で矢を五本つがえて煙の中へと撃ち込む。

 

 なんの反応も見せず、戦いは決したかに見えた。

 

「フンッ、他愛ない。そこのお前はこれを見て死地へと踏み込むか?」

 

「アンタこそ目大丈夫か?」

 

 煙草を呑気に吸いながら目も合わせずに不知火は答える。

 

「奇襲からの矢五つの同時速射、小娘に防げるはずも──」

 

 ブワァッ! 

 

 煙が刀によって払われ、そこからはもう片手で尖端の斬られた矢を五本持っている刹那が現れる。

 

「防げるはずも…何でしたっけ?」

 

「…やりおる」

 

「ほーらね」

 

 弓を放り、手を再び合わせて刀を形成する。

 

 死滅回遊泳者 南雲紫龍 得点65

 

 宿儺と術師の全面戦争の際、ほぼ全てを犠牲に生き延びた術師。全盛期の実力は現代のものさしで特級を含むニ級以上の呪霊、157体を"個人"で相手取り勝利する。現代においても、まごうことなき強者。

 

「では、続けるとしようか」

 

「時間は取らせませんよ」

 

 二人は改めて得物を構えて向かい合った。




次回、激突!紫龍VS刹那
はい、てことでね、不知火さん、実は主人公になるかもしれなかった人物です。
性格はちょっと大人しめだけどレズビアンになる予定は若干ありました。
でもなんか違うなぁってなってなってこうなったわけです。
漏瑚と戦わせて「ぬるいな、業火ってのはこうだろ?」とか言わせるつもりでしたw。
次回もほぼ出来上がってるのでぜひ楽しみにお待ち下さい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。