全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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久し振りの投稿です!
この前の話の読者数を見て、、、、自分は醜いんだなぁって感じます。
大分減ってしまって評価ばかり追ってしまっていて自己嫌悪に落ちてる次第です。完結は絶対にするのでご安心ください!


第五十八話 魂人形

「じゃあ、少し遅れましたが情報をお願いします」

 

「そのことなのだが…実は某、ほとんど何も知らぬのだ」

 

「別にこの結界内のことでもいいですし、羂索に関することは出来ればで構いませんよ」

 

「結界は死滅回遊が始まり、ここから大して動いてないから分からん。羂索は某の死の間際に生きたいなら呪物になりこの遊戯に参加しろと言ってきた男だ」

 

「…え、ほんとにそれだけですか?もっとこう…術式とか、羂索の真の狙いみたいのは…?」

 

「うむ、他の者は某が始めの頃に戦ったのを見て寄り付かなくなった、羂索のことも全く知らん!」

 

「……そんなぁ…」

 

 激戦で得られた情報が酷く意味のないもので、情けない声を出してガックリと肩を落とす。

 

「あれだ、その、すまない」

 

「使えないおっさんだなーアンタ」

 

「…代わりと言っては何だが、某に可能なことであれば協力しよう」

 

「今の得点を全員足しても百に届かない…やっぱり交渉に行くしかないのかな…」

 

「まぁまぁ、アイツは話結構通じるし、理由話したら意外とあっさり協力してくれるかもよ」

 

「…それに賭けましょうか。あと八時間…。ふぁ…」

 

 流石に疲れてきたのか、無意識にあくびをかいてしまう。

 

「刹那殿が寝ている間、某が見張りをしよう。休むといい」

 

「…心遣いは嬉しいですが、遠慮します。今は休んでる暇は無いので…僕は少しでも友達に報いなければいけないんです」

 

 刹那は術式で無理矢理眠気を無くして歩き出す。

 

 しかしそれを許さないと言わんばかりに不知火が刹那の後ろ襟を掴む。

 

「はいストップ、そういうのはお姉さん良くないと思いまーす。なのでお休みしましょうねー」

 

 そのままズルズルと刹那を引きずりベンチに座らせる。

 

「ほら、膝貸したげる」

 

 ポスッ…

 

 不知火は隣に座り、無理矢理膝の上に刹那の頭を乗せる。

 

「…テコでも動かないつもりですね」

 

「まーまー。子供は固いことばかり考えてないで、少しは息を抜きなよ。子守唄でも歌ってあげようか? 歌は自身あるんだよね」

 

「気持ちだけで充分…ですよ……」

 

「え、寝た? はやー」

 

 刹那は規則的に呼吸をしながら動かなくなる。

 

「………」

 

「不知火といったか」

 

 壊れた鎧を直すために回収した紫龍は不知火に話しかける。

 

「なにさ、お昼寝デートの邪魔しにでも来たの?」

 

「刹那殿は貴様を信用しきっているようだが、某はそうは思わん。貴様…何が目的だ?」

 

「…さぁ、ね。私は本心しか言ってないよ。覚えときな、イイ女には秘密がつきものなのさ」

 

 思わせ振りに不知火は妖しく微笑む、それを見て紫龍もこれ以上聞き出すのは不可能と悟り、鎧の修理に取り掛かる。

 

 ──

 

 午後十時三十分

 

 刹那と不知火は目的の場所へと出発していた。

 

「…紫龍さんはなんでついてきてるんですか?」

 

「言ったであろう、協力はすると。それに某、あんなのに好かれる不幸体質の貴殿といると、次はどんな面妖な強者に出会えるか楽しみなのだ」

 

(自分がその"あんなのに"含まれてる自覚あるんでしょうか…意外に自由だ、この人)

 

「私と刹那の真夜中デートの邪魔すんな、せめてビルには入って来んなよ。来たら燃やしてやる」

 

 いがみ会う二人を横目に刹那は冷静に判断を下す。

 

「そうですね…敵対されたと見られても面倒ですし、ついてくるなら入り口か少し離れた所で待機しててほしいです」

 

「某が勝手についていったのでは駄目なのか?」

 

「向こうから見たら一緒です」

 

「なるほど、心得た」

 

(助けて皆…変なのに懐かれました…)

 

 心の中で友達に助けを求めながらそれを顔に出さずに進んでいく。

 

「意外に呪霊少ないんですね」

 

 不知火の炎を明かり代わりに進んでいきながら呟くと、シンプルな答えが返ってくる。

 

「いや、餌は捕食者に襲い掛からないでしょ」

 

「まぁ、それは確かにそうですね」

 

 二人の怪物が不知火の横を歩いている、漏れ出る呪力だけで低級の呪霊は怯えて大人しくなっている。

 

「…お、見えた。あれが目的地だね」

 

「うわ…高い…」

 

 遠目からでも分かるほどの高さ、日本最大の高さを誇るビル。あべのハルカス。

 

「中はどうせもぬけの殻さ、呪霊が沢山いるだけ。自分の所まで来れるかどうかっていう試験みたいなもんでしょ」

 

 ボゥッ

 

 不知火はライターで火を点けたタバコをふかしながらヘラヘラと笑う。

 

「外側登っていくのはありですかね」

 

「ダメダメ、私が登れないし」

 

(別に置いていっても問題ないんですがね)

 

「……ふむ、早く行かなくていいのか? 約束の刻まであと少しなのだろう?」

 

「別に時間はまだありますけど…まぁいっか。行きましょう」

 

「はいはーい」

 

 刹那は不知火と共に中に入っていき、紫龍は入り口で待つことになる。やがて姿と話し声が聞こえなくなる。そこに現れる一人の来訪者。

 

「…もう隠れる必要などあるまい、出てくるがいい」

 

「ふーん、おっさん俺に気付くとか中々やるやん」

 

 厳ついピアスをつけた髪を朱く染めた男が大阪弁で話しながら夜の闇に紛れて現れる。

 

「貴様、我等を尾けてきていたな。刹那殿も気付いていたろうに、無視するのは何故だろうな?」

 

「知らんわ、気づいてなかったんとちゃうん?」

 

「憐れよのう、そこらの虫と同義に見られてるのだろうよ」

 

「その虫に負けるあんさんは何やろな? その辺のゴミと変わらへんのとちゃう?」

 

 二人はお互いに独自の見解を話して呪力を練りだす。

 

 ズズズッ…

 

「後悔するで。この白糸様が殺したるわ」

 

「死の体感ほど生を実感する瞬間などあるまい、遠慮はするな。どんとこい」

 

 白糸は呪力を練り、背後に十六体の式神を生み出す。

 

「ほう?」

 

「チェスって知っとるか? 六種十六体の駒を使って相手のキングを追い詰めるゲーム、アンタは駒のいない裸の王様、負けは決まりや」

 

 ズズズッ

 

「……」

 

 重い音を立てながら式神達は動き、それを静観していた紫龍はあからさまにつまらなさそうに言葉を発さない。

 

「なんや? 負けが分かったから諦めたんか、あないな大口叩きよってからにやっぱり──」

 

 トンッ

 

「負け…は?」

 

 白糸の目の前には既に紫龍が立ち、白糸の肩を叩いていた。

 

「ふむ、貴様程度の呪力でこの数は賄えるはずもあるまい。一番後ろで鎮座し、動かんということは、げぇむとやらから察するに術者は動けない縛りでもあるのか?」

 

「くッ、クイーン!! 引き離せ!!」

 

 ドンッ!! 

 

 チェスにおいて最強の駒、クイーン。この式神は呪力出力だけならば一級以上にもなりうる駒。その駒の攻撃を、紫龍は片手で受け止めて余裕の提案をする。

 

「まぁ待て、折角なら貴様の舞台にあがってやろう。なに、元々先手は譲るつもりゆえ気にするな」

 

 スタスタと歩きながら紫龍は喋り、最初の位置まで戻る。

 

(落ち着け、ビビるな、術式かなんかやろ。でなきゃチャンスを棒に振るわけがあらへん!! 近づかせない、その前に全突撃でぶち殺す)

 

「さて、ここでいいか」

 

 カシャンッズズズッ…

 

「今殺さなかったこと後悔するで、次は確実に…殺…!?」

 

 白糸はあまりの衝撃に自身の目を疑う。それもそのはず、何故なら白糸の目の前に現れたのは十七人に増えた紫龍の姿だったからだ。

 

「なっえっそんな…どういう術式だよてめぇはぁ!!」

 

「これが某の術式、戰場よ」

 

 紫龍の術式、[戰場]の真価は集団戦にこそ発揮される。武器を生成するのはあくまでもサブ効果であり、本来の術式は相手の数に応じて全く同じ自分を生成するというもの。これこそが個人で戦争を引き起こせる彼の術式の本来の姿。

 

「限定的な状況下ではあるが、一度発動すれば貴様が死ぬか某が解除するまで止まらない」

 

 ギリリィ……

 

 十六人、本体以外の全員がそれだけの弓をつがえる。八十本の矢が白糸に向けられる。

 

「やっ、止めっ…!!」

 

「放て」

 

 バシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!!! 

 

 ドドドドドドドッッッ!!! 

 

 式神は一瞬にして蹂躙され、同時に多数の紫龍も消えていく。しかし、状態は文字通りのチェックメイト。丸裸のキングに自らを守る術はもう無い。

 

 ガクッ

 

 白糸は膝を着き、負けを認めるかのように手を上げる。

 

「何だ、つまらん」

 

 武器を生成しながら白糸に向かって歩いて近づく。

 

 目の前まで来て人思いに首を斬る瞬間、白糸は最後の意地を見せる。

 

「っ!! 変則ルール! ギガチェ──」

 

 バチュンッ! 

 

「む?」

 

 意地を見せようとした白糸の頭は何者かに撃ち抜かれる。そして一人の男とコガネが現れる。

 

「五点が追加されました」

 

 大きめの灰色のコートに真っ黒な短髪、手に握られた拳銃と静かな瞳はその冷徹さを物語る。

 

「…ふむ、某と同じだな」

 

「…分かるのか」

 

「殺しや呪いに対しての貴様の目が他と違うからな」

 

「なら話は早い、そこ退きな」

 

「悪いがそれは出来ぬ、せめて理由は話せ」

 

「……阿頼耶識刹那っているだろ?」

 

「いるな」

 

「そいつ殺そうと思って」

 

「理解に苦しむな、貴様は刹那殿のなんなのだ?」

 

 紫龍は問う、その回答は誰も予想だにしない衝撃の一言。

 

「俺は阿頼耶識繊、九代目阿頼耶識家当主だ」

 

「ほぉ〜…それが本当だとして、だ。なおのこと理解できん、何故刹那殿を狙う?」

 

「それアンタに関係あるか?」

 

 至極真っ当、赤の他人の紫龍に話す理由は繊には無い。

 

「無いな。が、興味本位と忠告のつもりだ」

 

「あ"? 忠告? なんの?」

 

「何故命を投げに行くのかと不思議に思ってな」

 

「…は? 俺が死ぬ?」

 

「うむ、戦えば貴様は負けるぞ、確実に」

 

「オイオイ、本気で言ってんのか? 俺は九代目当主だぞ? 昔と今じゃ術師のレベルが違う、俺が十歳そこらのガキに負けるって?」

 

「お前からは死の味がせん。それだけで戦う価値はない」

 

「何だ、俺よりお前のが強いとでも言いたいのか?」

 

「…? 逆に何故勝てると思った?」

 

 紫龍は煽るかのように声のトーンをあげてそう言い放つ。

 

「上等だ、お前を殺して証明してやるよ」

 

「ならば某からの忠告だ。去ね、某に弱者を嬲る趣味はなし」

 

 ──ー

 

「いやー、すっかりお化け屋敷みたいだねー」

 

 ビル内部へと入っていった二人は階段が壊れていたため、迂回して登れそうな場所から階層を登っていた。

 

「六階…間に合いますかね」

 

「のんびり行こうよ、道中の露払いはしたげるから」

 

 ゴォォオッ! 

 

 低級の呪霊しかいないため、軽々と術式で祓っていく。

 

(普通に術式を使えてる…ニ級か、準一くらい?)

 

「その術式、誰かに教えてもらったんですか?」

 

「んー、というよりは、一応これでも科学専攻だからね。火の扱いならお任せあれってわけ」

 

「燃やしすぎて酸欠になっても知りませんよ」

 

 道中の物や床もろとも気にせずに燃やしていく不知火を見て別な意味の不安感があるが、それとは裏腹にたんたんと階層を登っていく。

 

 百貨店のフロアを超え、業務関係のオフィスまで到達する。既に半分以上を上り終え、やっとのことで壊れていない階段を発見し、そこからさらに展望台へと上っていく。

 

「ゼェ…ゼェ…やっと着いた…」

 

「もう少しですからもうちょっと頑張って下さい」

 

「体力凄いね君…煙草やめようかな」

 

 息を切らしながら不知火はスタスタと歩く刹那の後を追う。

 

「!」

 

 展望台へと近付いてくいと、一体の小さな西洋人形が会釈をして案内を始める。

 

「ついてこいってさ」

 

「……」

 

(傀儡操術かと思ったけど違う…この人形、なんで色があるんだろう)

 

 刹那は案内する人形の後を追いながら目の前の人形の異様さを改めて理解する。

 

 全面がガラス張りになったそこは、ガラスに反射しないように本来の役割を充分に果たさぬ照明により暗く、響く音もどこか悲しげに満たされている。

 

 カタカタと木材の音を立てて歩き、やがてその音は止む。人形が止まった先にいたのは、三人分の椅子と机が並ぶ中、その一脚に座り、ほとんど灯りを失った、何も見えぬ大阪の景色を見つめる女性。

 

「いらっしゃい…阿頼耶識刹那さん」

 

「貴方が仲見世心さん…ですね」

 

 薄暗い照明からでも分かるような落ち着いた出で立ち。フワリとしたスカートに三編み、フレームのない眼鏡をかけて見る者全てに優しく微笑むような雰囲気を纏っている。

 

「呪術師なら、警戒するのもされるのも当然のこと。椅子は用意したけれど、どの距離で話すのかは貴方の自由よ」

 

「いえ、ご心配には及びません。僕は交渉に来たんです、呪い合いをするために来たんじゃない」

 

 刹那は堂々と目の前の席に座り、不知火は仲見世の隣の席へと座る。

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「あらら、やっぱり気付いてたんだ」

 

「そういうのもいると思っていましたし。会ったことがあるとはいえ、身内口調過ぎます」

 

「あちゃー」

 

「おっちょこちょいね、相変わらず」

 

 クスクスと口元に手を当てて笑う仲見世は、本題を切り出して指を組む。

 

「さて、交渉だったかしら? 不躾に呼んだのは私の方だし、お先にどうぞ」

 

「では…単刀直入に言わせていただきます。貴方の百点を使わせてください」

 

「理由を聞いても?」

 

「僕の大切な…友達のお姉さんが死滅回遊に巻き込まれてます。なんとかして死滅回遊から抜けるルールを追加してたいんです」

 

「となると、昼間のルール追加も貴方のお友達がやったのね」

 

「そうですね」

 

「お友達の為…ね。話は変わるけれど、貴方は死滅回遊についてどこまで知っているの?」

 

「儀式ですよね、結界内の泳者の呪力を利用して人ならざるものへと変えるための」

 

「あら? 貴方、羂索と知り合いなのね」

 

 仲見世は予想だにしない人物の名前を突然口にし、刹那は一瞬硬直して頭を回す。

 

(やはり昔の術師、しかも羂索との関わりがある術師…! 口振りからして紫龍さんより詳しそうだし、話はしっかり聞いておかないと)

 

「その泳者の呪力を利用するっていうの、多分嘘よ。というより、保険に近いんじゃないかしら? だって、各結界の泳者の実力も数もおかしいもの。鹿紫雲や日車みたいな強い泳者が一人いるだけで結界内の均衡は崩れる。まぁ、かくいう私も、その一人には違いないだろうけれど」

 

「確かに…より長くゲームを続けた方が呪力は利用できるはずとは思いましたが、強者だけが生き残って膠着する状況こそが羂索の狙いだとでも?」

 

「そう、これは確信よ。強者だけが残った回遊に、羂索はなにかの爆弾を落として死滅回遊は役割を終えるわ。そして、きっと他の結界内にも同じ考えの術師はいる。その爆弾が何かは知らないし、遠くない未来…今この時にも起こり得る可能性すらある。だから私のお願いは強く、そして信頼できる仲間を集め、点を貯めて備えること」

 

 仲見世は自らの目的を晒し、さらに話を補填する。

 

「そしてその爆弾はもしかしたら、蠱毒のようなこの結界を、さらに他の結界の泳者と戦わせるものなのかもしれない。もしかしたら、呪霊…それ以上のナニカとの戦争の可能性もあるかもしれない。だから貴方の追加するルールのための交渉は…」

 

「点を蓄える……つまり使わせてはもらえない、結果として交渉は…」

 

「「決裂」」

 

 ダンッ! 

 

「火狩呪法、牙炎ッ!!」

 

 ゴッ、ゴォォォ!!! 

 

 静観していた不知火は机を蹴り上げて刹那の視界机で遮り、刹那に向かって超高温の牙を模した炎をぶつける。

 

 キュインッ!! 

 

「炎は僕には効きません、温度のない炎は目くらましにしかなりはしない」

 

 刹那は炎と机を斬り裂き、炎上するトンネルを無傷で悠々と立つ。

 

「いつ抜刀したんだか」

 

「ウフフ。甘いわねぇ、これは呪いあいじゃない。殺し合いよ」

 

 バリリンッ! 

 

 ガラス張りの壁が突如として割れ、外から昼間に見たマネキン達が刹那に向かって襲いかかる。

 

(一体どこにっ、まさか、壁に貼り付いていたのか!?)

 

「ご明察ね、でももう遅いわ…落ちなさい」

 

(この程度っ!斬れば問題ない!)

 

 しかし人形は刹那を狙わずに周りを走り回る。

 

(?…!狙いはワイヤーか!)

 

 ヒュパァンッ! 

 

 人形には鋼鉄のワイヤーが結ばれているのに気付いて斬り落とすが、単純な物量と残ったワイヤーに絡まれて押し切られ、そのまま落下していく。

 

 ビンッ!! ガシッビュオォォ!!! 

 

 マネキンは刹那に掴みかかり、術式の展開が間に合わない刹那は窓からマネキン共々落ちていく。

 

 地上約三百mからの落下、無事で済むはずがない。

 

「あ~あ…好みの娘だったのに」

 

「仕方ないわよ。あんなのと直接やれば確実に負けるし。さ、逃げるわよ。あの子は多分生残るでしょうし」

 

「…ここに上って来る前さ、私が全部呪霊を焼いたんだ。ガラスもひび割れて、ほどよく燃え尽きてる頃だろうさ…バック・ドラフトって知ってる?」

 

「なにそれ?」

 

 ゴッ…ドォォォ──ンン!! 

 

「あらまあ…」

 

「ハハッ、こーいうこと」

 

 不知火は煙草を吸う動作をしながら笑うと階下から想像を絶する爆発音が響き、ビルが揺れる。

 

 ──ー

 

「チッ!」

 

 ヒュッパァンッ!!! 

 

 空中で身体を反らせてワイヤーを断ち切って上を見るが、マネキンが続々と落下してくるのが見え、思考を回す。

 

(まずい、落とされたっ! 一緒に落ちるマネキンのせいで上階との距離を無くせないっ。何処かの階に侵入するしかない!)

 

 クルンッガッバリンッ!! 

 

 刹那は刀を空中に投げ、それを足場にして窓を蹴破ると同時に術式で納刀する。そしてコンマ一秒遅れて理解する。

 

 バックドラフト現象。不完全燃焼により酸素が薄い状態の火災現場にて、急激に酸素を送り込むことで発生する、大爆発のことを指す。

 

 ゴ…ッドォォォ──ンン!! 目の前が業火に包み込まれ、瞬間。刹那は暗黒の世界へと連れて行かれた。




これからも低頻度で投稿していきまーす!
次回をお楽しみに!
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