ゴッドォォォ──ンン!!
目の前を一瞬にして包み込む業火。熱を感じた瞬間、ほぼ無意識に発動させた術式と血吸による斬撃は遅れながらも間に合い、ビルから落下するという事態は免れた。
しかし、窓が壊れた付近で刹那は一瞬だけ気を飛ばし、血吸を落としてしまう。
ヒュルルル、、、、、、
キ──ーン
「、、、、、、、、、、、、、、、ぅゥぇあ、、、ゲホッゴホッ」
ゴロッポゥッ、、、
(、、、やられたなぁ、、、呪力はあるから直せるな、、、)
目を覚まして身体を仰向けからうつ伏せに直して窓から離れると、状況を理解して反転術式で身体の傷を治して全快する。
「スゥーッハーッ、、、」
(よし、まだ動ける。刀、、、でも、得点を使わせてもらえない以上は奪うしかない、、、優先事項は仲見世、逃がすわけにはいかない)
「、、、やるしかない、か」
キンキンキンッガラガラッ、タンッタンッ
刹那は立ち上がって階段を使おうとするが、壊れているために直接フロアの天井をビルにダメージがないように、正確に選び壊して上へと上っていく。
(外から登るのは危険。得点の変動がないから僕が生きてるのは知られてるはず、、、上に残ってるなら、逃げ場のないこのビルで仕留める)
ヒュッ、ゴンッ
「! 、、、やっぱり」
数体のマネキンが武装して刹那に襲いかかる。
「邪魔、押し通りますよ」
ギンッキンッ、、、バララッ
全てを一瞬で斬り刻み、再び上を見据える。しかし、途端にコガネが反応する。
「四点が入りました」
ピタッ
「、、、、、、は?」
仲見世心の術式の正体、靈魂呪法。死した身体から抜ける魂を回収し、人形などの無機物に入れて命令するもの。死に際の後悔や怨恨が深いほど人形に込められる呪力は多くなり、新鮮なほど、生前の状態に近くなる。
刹那の脳裏によぎった、最悪の回答。
「まさか、、、回遊に巻き込まれた非術師、、、?」
不意に刹那は通り過ぎた人形を、右眼で見つめてしまう。
無力な者たちの最期の嘆き、幾度も見てきた死の感覚。何度見ても慣れないものは慣れず、弄ぶかのような態度の仲見世に怒りが湧いて出る。
ギリィッ、、、ダァンッ!! ガララッ、、、
「本当に、、、僕の心を煽るのが上手い」
手袋越しに刹那の血が滲み、怒りを壁へとぶつける。
──ー
ドガッべギィッドンッ!
「ほらほらッ! 口先だけか!?」
「ふんぬっ!」
ボゴォンッ!
紫龍が縦に振った金砕棒を横にずれながら回転して躱し、頬へと裏拳を叩き込む。
クルンッドガッ
「ムォッ」
「痛いだろ? 俺の術式の前じゃ鎧なんて無意味だ。殺す気はねぇ、負け認めて退きな」
「フンッ安い拳一つで吠えるでない」
(全く、クネクネと戦り辛い手合いだな)
ズンッッバゴォッ
紫龍は地面を踏み割り、目の前にコンクリの壁を作りだす。壁の後ろで武器を生成しようとすると、ニ発の銃弾が紫龍の肩と足に命中する。
バンバンッガクンッ
「!?」
(何故生身に、、、)
「驚いたか? 鎧は無事なのに肉体だけが銃弾に当たる。不思議だろ? 勿論俺が持ってる銃はその辺で売ってるような普通の道具だ」
紫龍は脚をさすりながら立ち上がる。
「、、、、、、ふむ、物を通過するのか」
「! へぇ、気付いたか」
「この厚みの壁を破壊なぞできるわけでもなし。最初の三流術師を撃ち殺した時も、明らかに高所からの狙撃。大方、どこか近くの建物から覗いていたのだろう。正確に当てられるところを見るに、どうやら透視することも出来るようだな」
(おいおい、マジかコイツ? 二、三発位しかまだ殴ってないのにもう術式をほぼ看破しやがった)
紫龍は歴戦の術師。戦ってきた呪霊、術師は並の術師の数倍はいる。その優れた洞察力と経験から相手の術式を看破していく。加えて、紫龍は奥の手を残している。
「して、どうする? 呪具でないと分かった以上、その短筒は某の呪力の守りを突破はできん、消耗戦で朝まででも戦い続けるか?」
「、、、チッ、仕方ねぇ。見逃してやるよ、だから退きな」
紫龍はビルの前で再び立ちふさがるが、纖は無駄を感じて戦いを放棄しようとする。
「断る、そもそも通りたいなら通ればいいだろう。その術式で」
「あくまで決着つけようってか。仕方ねぇ、少し本気で行くか」
ピッボウンッ! グニャア、、、
纖は札を取り出して地面に叩きつける。その場からは煙を巻き上げて粘土のような式神が出現し、大鉈の形に姿を変える。
「いいだろコイツ、俺の好きなように姿を変えるんだ」
ガシャガシャッ
「透過するのならば鎧を着る必要はないな」
紫龍は鎧を脱ぎ捨てて槍を構える。
(俺の術式は俺以外の生物は無機物を透過出来ねぇ。式神も生物に含まれるからな、自分で肌さらしてくれて助かるぜ)
「これは忠告ではない、命令だ。大人しく地に這え、さすれば見逃してやろう」
ズンッ!!!
紫龍は一際低い声のトーンでそう言って死の重圧を強制する。
紫龍は縛りを付している。一度目は忠告、自ら先手は絶対にとらず、向こうが敵対するのを待つ。そして奥の手、忠告を無視した者には命令し、断ったときも同様、縛りによる身体能力の強化が行われる。
「ほざけ、お前みたいな鈍い術師、一瞬で刻ん──」
ヒュッッ
(!! 速──ー)
ドフッ!
鎧を着た状態で刹那に速いと言わしめる紫龍が遅いはずはなく、さらに縛りでも強化されている。纖は自らの読み違いを痛感する。
「ほぉ~、貴様の服は破れたが体は槍をすり透けた。しかも、微かに肉の感触があったぞ」
飛び退いた纖は途端に冷や汗を滝のように流す。
(あと三寸ッ! あと三寸近ければ俺の身体には穴が空いていた!! 槍をすぐ抜いてくれたから後ろにも跳べた、幸運だ! つかあの速さ、さっきまでは手ぇ抜いてやがったのか!!)
纖は腹を抑えながら思考を巡らせる。
「しかしどうしたものかな、すり抜けてしまうのでは倒しようがない」
(まだ術式の弱点には気づいてない、、、畳み掛けるのなら、今!!)
ガジャンッ! ドゴォッ
「むっ?」
纖は紫龍に車を蹴り飛ばして目を眩ませ、一気に距離を詰める。紫龍は車を殴り飛ばすが、纖は車の下から低姿勢で紫龍に斬りかかる。
ギィンッ!!
「オラ!!」
ギィンッ! ドドンッギンッギンッ
紫龍は大鉈を槍先で器用に回して受けていく。
ダンッジャラララッ
「ハァッ!!」
大鉈を瞬時に鎖分銅へと変形させて紫龍の足に巻きつける。それを紫龍は槍で突き刺して分断して回避する。
「まだまだぁ!!」
「全く、元気だな貴様は」
パンッ
ガイガイガイガインッ
紫龍は持つ武器を刀に切り替えて高速で回す鎖を受け流す。
ガシッ
「おっ?」
ブゥンッバンバンッッ
胸ぐらを掴んで投げ飛ばし、宙を舞う紫龍に左手で銃を発砲、右手で渾身の大鉈の一振りの準備をする。
ギュルルドズズッ、フュオンッ!!
呪力で強化した腕で銃弾を受け止め、刀で横に一閃する。しかし纖はそれを避け、直後に股下に潜り込んで斬り上げるが、紫龍はその場で跳び上がり、落下しながら刀を突き刺す。さらに纖はそれを前宙で避けて向き直る。
パンッ
「ハァッハァッ」
「ヌゥンッ!」
シュシュシュシュシュッ!
槍を生成して持ち手を中腹に変え、リーチを捨てて連続して突きを繰り出すのを、纖は硬直して術式を展開し、それを透過する。
(好機ッ! その首落としてやる!)
裏拳気味に大鉈を横に振りかぶる。その瞬間、纖の意識は暗転した。
ドッ、、、ガアンッ!
ドゴッドンッドゴォォンッ!!
「ガボッッ、ゲボッッ」
コンクリの床に跳ねられて十m程吹っ飛んで建物の外壁に受け止められ、顔を抑えて理解する。
(まさかッ)
紫龍は目の前に悠々と歩いて登場する。
「貴様、人間はすり抜けられないのだろう。その使い方から推し量るに、術式を正確に使えていないのが原因か」
紫龍は既に術式を完全に看破していた。纖の術式は自分、もしくは自分に触れた無機物が対象であり、自分以外の生命体は対象外だ。
「大体さっきからおかしい、術式を常に展開すれば俺の武器など怖くないものをわざわざ避けるなど。大方、対象を選択出来ないから一瞬しか発動できないとかそういったところだろう? 恥じらいを無くしてマッパなら勝てたかもしれんな? ハッハッハ!!」
「クソッ、クソが!!」
紫龍は目の前で堂々と笑い飛ばし、プライドに傷をつけていく。
「齢三十も行かぬような小童に負けはせん。敵の言葉を鵜呑みにするとは、術師としての経験も、鍛錬も、全てが足りん。来世で出直せい」
「、、、ハッ! こんなところで終わってたまるかよ!」
纖は飛び上がり、懐から多数の式神を召喚する。
「今日は退いてやるよ、いつか絶対にぶっ殺す。俺が最強だって証明してやる。おい! 時間を稼げ!!」
(下手に動くとやられる、コイツの足を完全に止めてから逃げる!)
式神は命令に反応して紫龍を見据える。
「笑止千万、憐れ極まり笑う気にもなれんわ」
「チッ、ふざけやがって、、、!」
パンッ
「武芸百般、縛法」
(今!!)
紫龍は投網の要領で予め紡がれた縄を投げ、瞬時に式神を縛って動けなくする。
ドススッ
「!?」
「全く、この前に見ていなかったのか? ほとほと呆れるな」
逃げようとした纖の足には幾本もの矢が刺さっている。
「貴様が出した式神は八体」
「ならば某も八人に増えることができる」
「さて、どうしてくれようか」
「あ、、、あぁ、、、あぁぁぁぁ」
「拷問は辛いぞ、、、たっぷりとしてやろう」
「嫌だァァァ!!」
ボゴォォオンッ!!!!
「ム!?」
ヒュルルルッサクッ
後方のビルの中間は突然爆発し、振り向き呆けていると、近くのコンクリに刀が深々と刺さる。
「これは刹那殿の、、、! 交渉は失敗したのか、、、」
(来るなと言われたが、、、まぁいいか、殺すには惜しい。恩を返すとしようか)
「あ、助かッ」
ドチュッ
「砲術」
ドォンッ!
増えた紫龍の一人が止めを刺し、残りの式神も大砲で爆散させ、紫龍は一人になる。
「五点が入りました」
「刹那殿は生きておるか?」
「検索、、、生きてるでごさるよ」
「うむッ、それでこそ某が認めた
腕を組んでそう高らかに笑うと、刀を地面から抜いて準備を素早く整え、紫龍は内部へと突入する。
──ー
「人形全てが非術師、、、」
ギギンッ
刹那に殺意を向ける人形達をあしらいながら上層を目指していく。
(数が多い、一体何人の非術師が、、、いや、考えるのはよそう。きっと仲見世を倒せばこの魂達も天に還るはず)
最上階は六十階。落ちたのは三十階、上り始めて現在刹那は五十階にいる。窓の外を見ても秋も始まったばかり、まだまだ朝日が上る気配はなく、照明のないフロアは深い暗闇に満たされている。
キキキンッガラガララッッ
ピクッ
ゴォォォ!!
(この炎、、、)
廊下の曲がり角が突然炎で満たされ、即座にバックすると、廊下に不知火の声が満たされる。
「どうした刹那、例の術式で速く突破すればいいじゃないか」
「、、、、、、」
「なんで踏み込めないか、当ててあげようか?」
(こんなところで、、、やるしかないか)
「刹那、君実は、、、私のことが好きなんだろ!」
「、、、は?」
「いや、言わなくてもいい! 私を殺すことができないんだろ? そうだよな、半日一緒にいて愛の一つも芽生えるのが人間だよな。性別の壁なんて無いも同然だよな!」
不知火は廊下で呪術師らしく、どんどんと意味の分からないイカれた口上を述べる。
「縛りを結べば、心は信用してくれるみたいだ! 今からでも遅くない! 両手をあげてこっちに来なよ!」
刹那は廊下の曲がり角の壁越しに話しを聞く。
「三秒だ! 私だって人を殺した経験くらいある。願わくば君を殺したくない! いくよ、、、さん! に!」
「、、、はいはい、今出ますよ」
チャキンッ
刹那は音を立てて刀を納め、そう言う。
そして陰から近くの瓦礫を放り投げると、それは熱戦に貫かれる。
ピュンッバジュゥッ
「!!」
「嘘が下手すぎですよ、、、あまり僕を舐めないでください」
キキキキンッガラガラッッ
刹那は真上の天井を破壊して上り、上層へと上っていく。
「、、、、、、あ~あ、バレちゃったか、、、追わないと」
タッタッタ
不知火も刹那の後を追うためにもと来た道を戻っていく。
(全く、僕も甘い、、、二人が合流する前に上に行かなければ)
キンキンキンッガラッタンッタンッ
刹那はビルの耐久力を気にしながら、穴をあける場所を選んでいたが、スピードを重視してほぼ直上に上り続ける。
ヒュンッタンッ
バンバンッ
「!」
キキンッ
上る途中のバーへと跳び上がって辿り着くと、突然銃撃され、それを斬り飛ばして後退する。
「素晴らしい反応速度ね。この短筒、人を殺すのには充分な威力と弾速なのに」
ポイッガシャン
「分かってるなら人に向けないでくださいよ」
「あらあら、、、ところで、刀はどうしたのかしら?」
キュインッ! ザンッ
刹那は瞬時に距離を詰めて下から斬り上げるが、人形に邪魔をされ、斬りそこねる。
「一点が追加されました」
「うふふ、あなたも人殺しね?」
「、、、否定はしませんよ」
「貴方があの術式を使わないのはその刀が関係しているのかしら」
刹那の身体能力はかなり高い。しかしそれでも特級術師としては貧弱も良いところ。常に呪力で底上げしなければならず、術式もかなりの呪力を要する代物、二刀の片割れれがない今、使うのを躊躇っていた。
「一体何人の命を奪ったんですか」
「奪ったなんて人聞きの悪い、貴方達も好きな言葉でしょ? 必要な犠牲。
「無関係で無力な人を巻き込むな、、、!」
「私に貴方の価値観を押し付けないでちょうだい。覚えておきなさい、この世に正しいや正義という言葉はあれど、万物にとって正しくて正義になる行いなんてものはないの。神なんて不確かなものは、都合のいい偶像を創り出せる愚か者にしか見えないのだから」
刹那は怒りの頂点にいた。ある意味、羂索よりも目の前の術者に対しての今、この瞬間の方がそれは大きいかもしれない
「無力な者を巻き込み、無差別に人を殺すことを正しいとするのがお前に見えてる神だというのなら、僕は喜んで神を殺そう。喜んでお前にとっての悪へと成り下がろう、、、覚悟しろ、僕がお前を殺す」
ド ロ ォッ、、、
刹那は抑えきれぬ殺意を呪力の靄で具現化していき、殺意と呪力でフロア全てが満たされた。
近いうちにオリキャラの最強ランキングを投稿しようと思ってます。次の次くらい?、、、予定は狂うためにあるんで戯言くらいに受け取ってください。