全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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まず最初に、クトゥルフのシナリオ書いてサボり気味で遅れました。すいません。
それとUA数9万4千人突破ありがとうございます!!
これからも頑張って書いていきます!


第六十一話 雄々しい花が染まる時

 幾百年も前に生きた術師二人は酷く静かに、奥の手を披露する。

 

「「領域展開」」

 

戦ヶ魅景(いくさがみかげ)

 

十重二十重之霞灯(とえはたえのかすみとう)

 

 両者が領域を展開する。

 

 通常、領域はより洗練された者がその領域を制する。そして二人が包まれたのは、文字通りの死地。

 

 幾千幾億もの武器と、倒れ伏したであろう者達の亡骸。焦げた後から煙が上がり、暗雲と霧が深く立ち込め、死が五感を明確に刺激する。

 

 

 

「どうやら、、、制したのは某のようだな」

 

 ビュッォンッ!! 

 

 紫龍は立ち上がり槍を取ると、それを空に向けて投げる。空から全て種類の違う武器が繊に向かい、無数の紫龍が繊に襲いかかる。

 

「最後だ、、、手向けに受け取れい」

 

 ドドドドッッッ!!! 

 

「、、、、、、これでも私は、最も狂った一族の長でね」

 

 ガガガガガッッッ!! 

 

 しかし、その攻撃のどれもが虚空を斬る結果となった。

 

 繊はそこに直立していた。

 

「守るべき阿頼耶識の誇りがある。負けるわけにはいかないのさ」

 

「馬鹿な、、、!?領域は必中!術式で受けなければ当たるはず、、、!」

 

「あぁ、受けてるさ。私の術式でね」

 

 阿頼耶識繊の領域は必中のみとなっている。そもそも、領域とは一朝一夕で身につくものでもなければ、初めて領域を会得した者が熟練者の領域に勝てるはずもない。

 

「私の領域は(かすみ)、私が見ている景色がそのまま領域となり、霞が立ち込める。その条件によって特定の結界の形を保たず、それ故に殺傷能力も低い。しかしながら、君に私の領域は破れない」

 

「ぬぉう!!」

 

 相手の人数に縛られない紫龍は多数に増えて全員が武器を捨てて拳を振るう。しかし、全ての攻撃をスルリと躱して領域の本体へと向かう。

 

「肉は透けない、私は私の弱点をよく理解している。だから最初に体術を鍛えた」

 

 バキイッ!! 

 

 紫龍の顔面を拳が鋭く貫く。紫龍が領域を展開する限り、必中必殺のアドバンテージを失った今の状況は悪化を続ける。

 

 ガクンッ

 

(これが領域!!保つだけでも莫大な呪力を持っていきおる!!)

 

「向かえ!!」

 

 紫龍は再び武器を大量に生成して向かわせるが、当然のように繊の身体を透けていき無意味と化す。

 

「幾重もの壁や術が私の邪魔をしようとも、何処まででも抜けてみせよう、、、誰にも私は縛れない」

 

 ダァンッ! 

 

 説明しながらも歩みを止めなかった繊は急激に距離を詰める。満身創痍の紫龍には反応できなかった。

 

 左胸に鉄棒を真っ直ぐ突き出して心臓を掻き回す。

 

 ドリュッグリュリュッ!! 

 

「ヌグァァァァァッ!」

 

「残念だけど、これでおしまいだ」

 

 繊は目に見えぬまま領域を解除する。

 

 だが、紫龍の心臓を貫いても領域は解除されず、その形を保っている。

 

「、、、何故、領域が解除されない? 止めは刺したはず、、、」

 

 繊は紫龍の死体を確認するが、死体は煙のように呪力を霧散させてその姿を消す。

 

「っ!」

 

 ードゴンッ! 

 

 繊は横から飛んでくる拳に気づき咄嗟に防ぐが、紫龍の膂力に吹き飛ばされ、横受け身を取る。

 

 ダンッガンッゴロロッ

 

(分身、、、)

 

「なんだい、その無敵じみた術式は」

 

「戦は何百人もの命の散り際を魅せる。戦場を駆ける某の魂は、、、一度や二度では決して死なん」

 

 ボゥッ

 

 再び呪力を練りだし、兜の奥の瞳に殺意を宿す。

 

「いいだろう、、、だったら、死ぬまで殺し続けるだけだ」

 

 ドヒュッン!!! 

 

 ガギィンッ!! 

 

 お互いが全力で駆け出し、二人の得物が激しく火花を散らす。

 

 ギンッガンッガガガッ

 

 ザグッッ! 

 

「ゲポァッ」

 

「二回目!!」

 

 首に鉄棒を刺して二度目の殺害。しかし再び死体は霧散し、完治した紫龍が現れる。

 

「フンッヌゥ!!!」

 

「無駄だ!君の武器は私には当たらない!!」

 

 "ォ"ンッッブワァッッ

 

 ギュンギュンギュンギュンギュンッッッ!!! 

 

 既に術式効果が回復していた繊はそれを避け、戦斧は巨大な弧を描く。しかし、遠心力を利用してその場で紫龍は大回転を始める。

 

 やがてその回転は竜巻を起こし、術式効果を乗せてあらゆる武器がその場を舞い始める。

 

「ォォォォオオッ!!!!」

 

 ゴォォォォォォーッッ!!!! 

 

(領域を展開していない今はまずいっ! これは透かせないッ!)

 

 繊は全力で後退するが、紫龍の大回転がそれを許さず緩やかに引き寄せられていく。

 

 ザリ、、、ザリ、、、

 

 ドッ、、、ギュンッ!!! 

 

 武器が舞う竜巻の中から一度に大量の武器が飛び出す。

 

(まずっ、、、)

 

 それは偶然だった。いや、偶然か必然か、運命か。とにかく、繊にとっては最悪の偶然だったに違いない。紫龍の武具は透麗呪法のもう一つの最大の弱点を的確に突いた。

 

 ギィンッドブチュッ! 

 

 咄嗟に防ぐために出した鉄の棒は真っ二つに斬られ繊の左目は僅かに霞めた刀に抉られた。

 

「ぐっあぁぁ!」

 

 ドフンッ! 

 

 紫龍は回転をやめて薙刀を取り出す。

 

「なるほど、、、! そういえば最初からおかしかった。必中の領域を展開する意味は某から見れば無かったのだから」

 

 紫龍は頭をコンコンと叩きながら酔を覚ます。

 

「あらゆるものを透かすその術式、強力過ぎる。だからこそ、才が全てといえどなんの縛りも無しに成立するとは考えにくい、、、貴様、術式を使用している部位はその間機能しないのだろう」

 

 透麗呪法の弱点。他者は透けず、術式使用時のその部位の機能は脳などの一部を除き著しく消える。

 

「鎧を透かして殴る時も腕まで透かさず、手首や透ける位置までを透かしていた。目が見えなければ攻撃を避けれぬ、だから常に目だけは残していた。違うか?」

 

「、、、、、、お見事、ここまで看破してきたのは家族にもいなかったよ、たった一人を除いてね」

 

 ボタタッボタッ

 

 左目を抑えながら呪力を練りだし、鉄の棒を捨てる。

 

「だが、君も限界だろう、、、徹夜明けでの全開戦闘、黒閃の一撃、初の領域展開、かつ継続、、、あと一撃、かな」

 

 ポイッカシャンッ

 

「やってみせい」

 

「言われずとも、さ」

 

 ドゴッバキッゴンッガンッドゴゴッ

 

 ガッギュルッゴドッ

 

 武器を捨てた両者は殴り合う。戦場のど真ん中、およそ戦とは言えぬ殴り合い、二輪の雄々しい花がその花弁を散らし紅く染めていく。

 

 バキイッガンックルンッ

 

(崩した! 顔面を砕いて終わりだ!)

 

 ボゥンッ!! 

 

 紫龍の体重を利用して前後に揺さぶりうつ伏せに倒し拳を打ち込もうとするが、その瞬間に煙玉が紫龍の腹から爆発する。

 

「煙幕っ!?」

 

 白い煙に紛れて紫龍は姿を消す。

 

「どこから、、、くそっ!」

 

 繊の頭上から再び大量の武器が降り注ぎ、繊は身体の全てを透かして対応する。

 

 ズドドドドドドッ! ドズッ

 

「凌ぐと信じていたぞ」

 

 身体すべてを透かした繊は紫龍を目視できていない。

 

(貰った!)

 

 ドプンッ

 

「!?」

 

「透麗呪法、、、大墓穴」

 

 繊は降り注ぐ武器を一本、手の甲から貫通させて掴み取り地面に刺した。

 

 そのまま術式を流し続け、紫龍が踏み込むのを待っていた。

 

「殴る時は随分力を入れて踏みこむ、、、悪い癖だね」

 

 お互い余力はない。ここで決めなければいけない極限の状況下で一歩上をいったのは、繊だった。

 

【黒閃】

 

 ──ーッヂィィィ!!! 

 

 鋭く黒い閃光が紫龍の腹を再び抉り、すさまじい衝撃波が生まれる。

 

 身体を前のめりに、全力で殴り飛ばした繊は膝をつく。

 

 そんな一撃を受けた紫龍には、もはや立つことは不可能だった。

 

「こんなに動いたのは初めてだ、、、君は強かったよ、短い私の人生で一番ね」

 

 ジュゥゥゥ

 

 紫龍の領域は閉じ、同時に繊は立ち上がる。

 

「ハァ、、、ハァ、、、」

 

 ビチャチャッ

 

 紫龍は血を吐きながら仰向けになり天を仰ぐ。

 

 繊は鉄棒を胸から抜き、隣に座って語りかける。

 

「君に、、、、、、一つ聞きたい」

 

「、、、なんだ」

 

「呪術師になって、、、未練や後悔はあったかい?」

 

「、、、、、、、、、、、、」

 

 紫龍は宿儺との戦争を思い出す。宿儺が本腰を入れて鏖殺を始めた時、"仲間全員"を対象にみなして肉壁を大量に作り、紫龍は辛うじて生き残った。

 

 怨嗟と絶叫と悲願と絶望。あらゆるものが入り交じる戦争で、命を賭して戦うと決めた男は見苦しくも生き残り、生き恥を晒し続けた。かつての戦友達の姿を、消えかかる意識の中に見る。

 

「、、、未練はある、後悔もある。思い出すだけでも吐き気がするほど、何度も自刃しようと思ったほどの罪もある。だが、最期くらいは見栄を張ろう」 

 

 紫龍は身体を起こして胡座をかき、両手を広げ霞の晴れた天を見上げて大声で高らかに宣言する。

 

「我が生涯に!一片の悔い、無ァし!!!」

 

「、、、なんとも。丈夫だね、君は」

 

 得点の追加をコガネは告げず、紫龍は動かなくなる。

 

「あぁ。ここまでやった君を殺すのは避けたかったが、、、兵に止めを刺さないのは、逆に失礼か。君も、輪廻へと還るといい」

 

 ドズッ

 

 今度こそ、的確に心臓を貫いた。そう、死体となった紫龍の心臓を。

 

 ドズゥッ!!! 

 

 紫龍の身体が呪力となって霧散する横で、繊の身体を槍が貫いた。

 

「!!? ゴポッゲボッ、、、そうか、、、そういう術式だったね、、、」

 

「某は稀代の卑怯者で通っていてな、勝つためならば誇りなど捨ててみせよう。まぁ、元より守る尊厳など持ち合わせてはおらんが」

 

 最後の最期、繊と戦っていたのは紫龍の分身だった。

 

「はは、、、完敗。かな」

 

 ブゥンッ、ザンッ

 

 紫龍は刀を生成し、繊の首は宙を舞う。コガネは機械的にアナウンスを流した。

 

「五点が追加されました」

 

「、、、お主は強かったぞ、某の短い歴史で"二番目"にな」

 

 紫龍は繊へと称賛を贈り、その場に胡座をかく。

 

(まずいな、、、全く動けん)

 

 空を見上げながらそんなことを思うと、朧気に紫龍に近付く人物が見えてくる。

 

(、、、、、、誰だ? 敵意は感じぬ、、、)

 

「勝ったのは君なのか、正直意外だった。あぁ、喋らなくていいよ。全部見てたからね」

 

 紫龍は不思議な安堵感に満ち、大人しくなると眠気が誘い出し、言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。

 

「私──ん──もう逝って──った──ね」

 

 紫龍の頭を兜越しに撫でると、反転術式で身体の傷を治し、一言呟く。

 

「──頼むよ。私達の──なんだ」

 

 ガバッ

 

 紫龍は気絶していたことに気付き飛び起きる。

 

「傷が、、、?」

 

 身体は完全に治癒され、疲れも抜けていることに状況を飲み込めないまま立ち上がる。

 

「夢、、、、、、頼む? 何をだ、、、?」

 

 言葉を朧にしか覚えていなかった紫龍は顎に手を当てて再び考え込む。

 

 グゥゥ〜

 

「ムゥ、腹が減っては戦はできん。なにか探すか」

 

 立ち上がり、紫龍は歩きだした。

 

 ──ー

 

 場面を変え、コロニー突入時の高専。

 

 高専内には術師はほとんど出払っていて居らず、高専関係者が数人に学生二人。いつも騒がしいわけではない。しかし、静かに鳴く夜鳥の声が今夜はことさらに静けさを演出していた。

 

「狗巻先輩、さっきから何してんの?」

 

「高菜!」

 

 狗巻は折り紙をずっと折っており、釘崎は対面に座ってそれを見ていた。何をしてるのかと聞かれた狗巻は自慢げに羽根が非対称の鶴を見せてきた。

 

「まさか千羽鶴?」

 

「しゃけ!」

 

「ふーん、、、、、、下手すぎない?」

 

「うめ、明太子」

 

「違う違う、そこは折るんじゃなくて開くのよ。あぁもう、私もやるわ」

 

 狗巻の折り紙を釘崎がとり、お手本を見せながら鶴を作っていく。

 

 静かに折り紙を折る時間が流れていく。しかし、その静寂は突如として別の静寂へと変化する。

 

 ゾワッ

 

 二人の危険信号が警鐘を鳴らし、同時に感覚から理解する。高専内に相当な実力の術師が侵入したことを。

 

「狗巻先輩!」

 

「しゃけ」

 

 二人は戦闘の準備を整え、呪力の元へと駆け出す。

 

 そこで目にしたのは、まるで隕石が降ったかのような惨状に数人の術師が倒れ、中央には術師の頭を軽々と片手で掴んで持ち上げる人間とは思えぬ異形な腰に盃をぶら下げた術師。

 

「おい、そこのお前!」

 

「ん? その格好、、、おぉ、ここの生徒か」

 

「しゃけ、いくら」

 

「あ? 腹減ってんのか?」

 

 カインッ! カンッ

 

「うぉ危ね」

 

 釘崎の放った釘を軽々と弾きながら狗巻と釘崎を見据える。

 

「おい待て待て、聞きたいことがあんだよ。それまで殺し合いは無しで行こうぜ」

 

「どう見ても話し合った後には見えないけどね」

 

「まぁ、利害の不一致ってやつだ。ズルはしてねぇ。気にすんな」

 

「、、、、、、」

 

(どうする? 狗巻先輩)

 

(昆布、すじこ)

 

「いいんだな? 沈黙は肯定と受け取るぜ?」

 

 その場に胡座をかいて座り、話し始める。

 

「俺は苅柳、ここには二つ用事があって来た」

 

「聞くだけ聞いてあげるわ」

 

「一つは夏油傑の死体の回収、出来れば勧誘」

 

「はっ! アレを殺すとか、やれるんならやってみなさいよ」

 

 釘崎は鼻で笑い飛ばして煽り、苅柳にトンカチを向ける。

 

「おいおい、女を殴るのは趣味じゃねぇんだ。その物騒なもんしまいな」

 

「嫌よ、アンタはまだホールドアップ。動くなよ」

 

「気の強え女だな、別に嫌いじゃねぇけどよ。ほら、これでいいか」

 

 苅柳は手を上げて、無抵抗の意志を示す。

 

「で、だ。二つ目はよ。何だったか、、、肋折り? あらましき? まいいや、刹那っていう餓鬼の死体を回収したいんだわ」

 

「「!!」」

 

「どうせ死体だろ? 燃やすくらいならくれよ」

 

 釘崎はトンカチを握りしめながら冷静に思考を巡らせる。

 

(刹那は表向きには死んだことになってる。向こうには情報がまだ行ってないのね、、、だったらここは逆に情報を絞り取る)

 

 狗巻へアイコンタクトをすると、頷いて襟から手を離す。

 

「それは出来ないわ」

 

「あ!? なんで!?」

 

「何も渡さずに何か得るなんて虫がいいと思わない?」

 

「んん?? つまりどういうことだ?」

 

「私の質問に全部答えなさい、そしたら刹那がいる場所を教えてあげるわよ」

 

「なるほど、そりゃ公平だな。縛りか」

 

「あら、存外馬鹿でもないのね」

 

「いいからほら、何でも来い。答えられるもんは答えてやるよ」

 

「じゃあ早速一つ目、アンタの仲間は誰?」

 

「それは答えられねぇな、阿弥部に言うなって言われてるし」

 

「、、、、、、獄門彊はどこ?」

 

「知らん」

 

「死滅回遊の狙いは?」

 

「知らん」

 

「おいコラァ!何にも知らないじゃないの!」

 

「おかか!!」

 

 有力な情報を何一つ持たない苅柳に声を荒げる二人。

 

「俺だって大した事知らねんだって、ただの裏町のファイターにんなもの求めんな」

 

「あー、納得。取られても問題ないやつをこっちに回したのね」

 

「話はしまいでいいか? じゃ、場所を教えてくれ」

 

 苅柳は立ち上がって手をクイクイと動かして向ける。

 

「えぇ、教えてあげるわ。刹那は今、、、大阪よ」

 

「オッケー、大阪、、、大阪ァ!!?」

 

 苅柳は大声で繰り返し、明らかに慌て始める。

 

「すじこ?」

 

「問題ないわよ。遅かれ早かれバレるんだもの。きっと刹那は向こうでも大暴れしてるだろうしね」

 

 釘崎は狗巻の問に答え、苅柳の出方を伺う。

 

「まじかー、、、じゃあ、良いか。ここら辺全部ブチ壊しても」

 

 ゾワッッ

 

 急激に呪力を増幅させて殺気を漏らす苅柳に二人は臨戦態勢になる。

 

「俺と殺りあう気ならよぉ、、、オメェらじゃ約不足だぜ、ガキンチョ」

 

 ズズズッ、、、グビッ

 

 苅柳が呪力を練ると、盃に酒が満たされる。それを飲んだ苅柳は、その姿はどんどん人のそれとはかけ離れていく。真っ直ぐと天を衝く二本の角に、赤紫色に変色して肥大化する腕、瞳は黒目が真っ赤に染まっていった。

 

「俺はそこらのやつとは違うぜぇ!?」

 

「ぶ っ と べ」

 

 ドゥッ!! 

 

 苅柳が拳を振り上げた瞬間、狗巻の呪言が炸裂して後方へと吹き飛ぶ。

 

「うわ、いきなり、、、」

 

「しゃけ!」

 

(喉が枯れてないってことは、実力はどっこいって感じね、、、)

 

 バキバキバキ、、、

 

「何だぁ、今の、、、? 急に身体が後ろにぶっ飛んだぞ」

 

 キンキンッ! 

 

「んぉ?」

 

 パシッ

 

 釘崎は釘を数本飛ばすが、苅柳は簡単にそれをキャッチする。

 

「手、離したほうがいいわよ」

 

「そう言われて離すやつが──」

 

「私の呪力が流れ込むから」

 

 パチンッードズズッ!! 

 

「──っ痛ってぇ!!」

 

 苅柳の手の中にある釘に呪力が流れて呪力の釘が手の中で弾け、声を上げて痛がる。

 

「オマケよ、取っときなさい」

 

 カインッ! バキンッ! 

 

 釘崎は釘を一本飛ばすが、苅柳はそれを殴り飛ばして防ぐ。

 

「掴んじゃいけねーんだろ! そこまで馬鹿じゃねーぞ!」

 

「いいえ、馬鹿よアンタ」

 

「落 ち ろ!!」

 

 苅柳の真上には釘崎が投げたであろう大量の釘があり、同時に狗巻の呪言が釘達に向かって放たれる。

 

 釘は物理法則を無視して地面に高速で落下し、その殆どが苅柳の背へとヒットし、釘崎の簪が打ち込まれる。

 

「簪!!」

 

 ドズズズズッッ!!! 

 

「痛っっだだだだだだ!!」

 

 ゴロゴロと転げ回りながら痛がる苅柳を見て二人は同じ考えになる。

 

「手応えなしね」

 

「しゃけ」

 

「オイコラァ! 馬っ鹿痛てぇじゃねぇかこのアマァ!!!」

 

 背中の釘を地面に叩きつけながらキレる苅柳は、拳を握りしめて釘崎に狙いをつける。

 

「まずはテメェだ、、、」

 

 グビグビッ

 

 苅柳は盃から湧き出る酒を飲むと、さらにその姿は異様な変態を遂げる。

 

「行くぞオラァ! 怪異!!」

 

 ──ドゥッ!! 

 

 苅柳が腕を振る、たったそれだけの動作で風が刃をなして二人に襲いかかる。

 

「ッ!」

 

「すじこっ!」

 

「っこらぁ! 新調したばっかの制服に雑な切込み入れてんじゃねーよ!!」

 

「うめ、、、」

 

 釘崎を心配した狗巻だったが、それをよそに元気にギャンギャンと吠えている。

 

「悪かったなぁ! 勇力ゥ!!」

 

 ドゴォンッ!!! 

 

 地面を叩きつけて地震を引き起こし、そのままの勢いで狗巻を殴りに行く。

 

「止 ま れ」

 

 ビタァッ、、、ビキビキビキッ

 

「どうしたぁ!! さっきより温いぞぉ!?」

 

「ゴホッゲホッ」

 

 呪力が増した苅柳に呪言を使うと、消耗が目に見えて取れる。

 

 バチンッ

 

「しゃあ! 一人目ぇ!!」

 

 クンッドゴォッ

 

 苅柳が狗巻に拳を振り下ろした瞬間、何者かによって受け流される。

 

「誰だテメェ?」

 

「オイオイ勘弁してくれよ、、、」

 

「あ!? えーっと、先輩の先生!」

 

「日下部だ、、、つーか、何だコイツはよ」

 

 日下部が刀で受け流し、苅柳に疑問の視線を向ける。

 

「俺は苅柳だ。面倒だからここにいる夏油傑をとっとと寄越しな」 

 

「欲しけりゃくれてやるよあんな問題児。お前さんに制御できるとは思わんけどな」

 

「、、、夏油ってやつはそんなに人望が無いのか?」

 

「「無い(わ)」」

 

「しゃけ」

 

「えー、、、」

 

「でも、間違いなく信頼できる人間よ」

 

 釘崎は真っ直ぐと苅柳を見つめて言い放つ。

 

(おいおい煽るんじゃねぇよ面倒くせぇ、、、)

 

「へぇ、、、お前らぶっ殺した後に楽しませてもらおうじゃねぇか」

 

「上等! かかってきなさいよ!」

 

「生きのいい女だ、、、術式解放、勇力」

 

 ビキッ

 

 右腕の筋肉が膨れ上がりゆっくりと歩き出す。

 

「は〜ぁ、面倒くせぇ。でも残業は勘弁だが、上に叱られんのはもっと勘弁だしな。退いとけ、殿くらいはやってやる」

 

 日下部は納刀し、カウンターの姿勢にはいる。

 

「新・陰流、簡易領域」

 

「そんなひょろっこい刀で防げると思ってんじゃあねぇぜ!!」

 

 ゴォッッ!! 

 

「抜刀」

 

 ヒュザンッ、ボトッ、、、

 

 カウンターの間合いに入った瞬間、苅柳の手首から先が綺麗な断面を作って地に落ちる。

 

「あ、、、? あぁ!?」

 

「トロいなぁ、お前さん。所詮は借りもんだな」

 

 弧を描き刀から血を払うと、斬った手を蹴り飛ばして苅柳へ返却する。すると、苅柳は手を拾って腕に無理矢理くっつけ始める。

 

「、、、悖乱っ!」

 

 バシュウッ

 

 煙が舞い、手がくっつき、動作を確認するように手のひらを開いて閉じてを繰り返す。

 

「反転術式、とは違うな。お前の術式か?」

 

「俺のじゃなくて酒呑童子のさ。怪力乱神。俺でこんな手間取ってちゃ、アイツにゃ勝てねぇな」

 

「アイツ、、、?」

 

「へへへ、、、俺とは違う、ガチモンの怪物だぜアレはよ、今頃は御三家とか言う奴らのとこにカチコミ行ってるはずだぜ」

 

 苅柳は腕をグルグルと回しながらニヤニヤと笑う。

 

「続けようぜ、術師共」

 

 




明日までに前回だが前々回だかにいったオリキャラのランキングを投稿します。
それでは失礼しまーす。
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