全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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ありがとうございます!!
最初は数十人見てくれるだけで満足だと思っていたのが、今ではお気に入りも数百人、評価も赤をなんとか維持できていて感謝の気持ちでいっぱいです!
ここまで見てくださる方、これからも完結までよろしくおねがいします!


第六十三話 最悪の呪霊

 ズバンッッ! 

 

 血飛沫とともに腕が宙を舞い、刈柳はそれをキャッチして煙とともにくっつける。

 

「だァァッ!!! 何回腕ぶった斬るつもりだよクソジジィ!!」

 

「お前は何回くっつけんだよ、面倒くせぇな。あと俺はまだジジイって歳じゃねぇ」

 

 ガギンッバゴッ! ギンッ! 

 

 荒々しく拳や蹴りを繰り出していくのを刀で流していく。

 

(どう考えても生身で出る音じゃねぇんだよなぁ…)

 

「止 ま れ!!」

 

 ビタッ! ビキビキビキッッ! 

 

「効くかぁ! こんなもんん!!」

 

 狗巻の呪言を有り余る膂力と溢れ出る呪力で無理矢理抜け出し、拳を振りかぶる。

 

 ザンッ!! 

 

「させるかよ」

 

 日下部は振りかぶられた腕を斬り落とし、瞬間的に刈柳は落とされた腕を持ってニ人から離れる。

 

「悖乱!!」

 

 バシュウッ! 

 

 腕をくっつけ、腰の盃に呪力を流して酒を満たしてグビグビとあおる。

 

「大して手応えないな」

 

「しゃけ、すじこ」

 

「問題はあの盃から出るお酒よね」

 

「そうだ。正しく使えば無制限に呪力が溢れる。金次の術式と似たもんだ。だがその反面、特級呪物たるが所以だな、中毒性があり過度に飲めば戻れなくなる…はずなんだがなぁ」

 

 既に刈柳はここに来てから五回程、盃を空けている。明らかな呪力の供給過多に違和感を覚えるが本人はピンピンとしている。

 

「また呪力が増えてんなぁ」

 

「お喋りは終わりか? だったらまだまだいくぜぇ!!」

 

 ダガンッ! ゴォゥ!! 

 

「怪、異ぃ!!」

 

 地面を強く踏み込み、拳から人魂のような炎を出しながら日下部に向かって殴りかかる。

 

「離れてろ」

 

 ガギンッ!! ドッッ!! ガシッ

 

 日下部は二人に指示を出して拳を受け止め、呪力で強化した前蹴りを繰り出す。

 

「ゲホッ、掴んだぜ」

 

「やべっ──」

 

 ブォンッッッ!!! 

 

 蹴りは確実に鳩尾の部分を捉えた。

 

 しかし、刈柳は裏町のファイター。痛みには常人以上の耐性を持つ。日下部は全ての斬撃を回避されなかったことから目に見えて慢心していた。

 

 刈柳は片手で日下部の足を持ち上げて振り回し、高専の方向へとぶん投げる。

 

 ガジャァンッッ!!! 

 

「「!!」」

 

「やっと一人、イくぜぇ!!」

 

 ダォンッ! 

 

「っ簪!!」

 

 バララッ、バキバキバキバキンッ!! 

 

 釘崎は持っている釘を数本ばら撒き術式を発動させる。

 

 ドズズズッ!! 

 

 刈柳の身体に、巨大化した釘で無数の穴が開くが勢いは衰えることなく刈柳は突撃していく。

 

「ふっとべ!」

 

 ビュンッ

 

「うわっ!」

 

 狗巻は刈柳ではなく釘崎に向かって呪言を放ち、重力を無視して吹き飛ぶ。

 

「やっぱ邪魔だなお前…!」

 

 血管が浮き出て、狗巻に向かって突撃する。

 

「オラァ!!!」

 

 ビキビキッビキキッ

 

 腕が膨張した刈柳は腕を振るい、狗巻はそれをしゃがんで回避し、呪言を放つ。

 

「う ご く なっ!!」

 

 ビタッ、ドゴッ! バシンッゴヂャッ

 

 動きの停止した刈柳の顔面に蹴りを叩き込み、鼻血が出る。そのまま足狩りで転ばせ、顔面に拳を叩き込む。鈍い音とともに血が吹き出すが、刈柳は不敵に笑う。

 

「この痛み! 良いぜお前ぇ!」

 

 ダンッ! 

 

 刈柳は飛び上がり狗巻に全力の蹴りを繰り出す。

 

 ゴォッ!! バゴンッ!! 

 

「止まれ!」

 

 狗巻は呪言を放ち、動きを一瞬静止させる。しかし、止めきれずに風圧で後ろへと吹き飛ぶ。

 

「大分弱くなってきたなぁ〜?」

 

 ニヤニヤと刈柳は笑い、狗巻を一旦無視して吹き飛んだ釘崎の元へと酒を飲みながら優長に歩く。

 

「…女ならもっと怯えろよ」

 

「お生憎さま、アンタなんかちっとも怖かないのよ。上等、その頭かち割ってやる」

 

「威勢がいいなァ!! お望み通り頭ブチ割ってや──」

 

「堕 ち ろ!!!」

 

 ズンッッ!!! ヴァゴンッ!!! 

 

「ゲボォアッ」

 

 ボタダッ

 

 重々しい音と元に刈柳は地面の大きく空いた大穴に沈み込み、高専全体が揺れる。威力の高く、さらに呪力量がバカにならない相手に呪言を放った反動で狗巻は膝をつく。

 

「狗巻先輩!!?」

 

 沈み込んだ地面の音と共に一瞬、静寂が流れる。時間にして二十秒程だろう。堕ちた地面の底から、血を流しながら刈柳は這い上がってくる。

 

「痛ってぇ…」

 

 けして軽くはないダメージ、だがそれは盃に満たされる酒を飲むことで回復されていく。 

 

 グビッグビッ

 

 酒を煽る音は徐々に静かになり、刈柳の傷は完全ではないが治っていく。

 

「あの野郎…まだ生きてたのか」

 

 カインッバズンッ! 

 

 刈柳は気絶した狗巻に向かって歩き出すが、後ろから釘崎は釘を飛ばし、術式を使用する。

 

 背中に刺さるが、ダメージは殆ど見受けられない。

 

 しかし、この場で釘崎の才能が光る。

 

「あら、この私のオーラに当てられて戦うこともできないのかしら。それとも…ただの弱腰なのかしらね?」

 

「……あ"? てめぇ今なんつった?」

 

「弱虫はとっととしっぽ巻いて帰れって言ってんの。やっぱり見た目通り頭悪いわね」

 

 ビキビキビキ

 

 けして上手いとは言えない煽り文句。しかし釘崎の一挙手一投足は見る者の目を引く、天性の煽りの才能。刈柳は理論で動くタイプではないこともあいまって誘導に成功する。

 

「てめっー!」

 

「抜刀っ」

 

 ズバンッ! 

 

 刈柳の腕が瞬間的に斬撃で飛ぶ、血は殆ど流れずに呪力が僅かに霧散する。

 

「チッ、勘弁願いたいぜ全くよぉ」

 

 呪力で身体を守っていた日下部は殆ど無傷で高専の校舎から飛び出し、斬撃で腕を斬り飛ばす。

 

「まだ生きてやがったのかテメェ!」

 

「お粗末なもんだ。馬鹿正直すぎるぜ」

 

 釘崎の元へと納刀して向かい、アイコンタクトで釘崎は意思を汲み取る。

 

「鬼なんだろ? 追いかけてきなさいよ」

 

 カラランッバチンッバズバズバズッ! 

 

 釘をばら撒き術式を発動して砂煙を発生させ、釘崎は広い高専の内部で文字通りの鬼ごっこを始める。

 

 ブチンッ

 

「クソがァァァァァァァ!!!!!」

 

 二人の背後から鬼の怒号が鳴り響く。

 

 タッタッタッタッ

 

「硝子さん、狗巻先輩に気づくかしら」

 

「あぁ。俺たちはこのまま隠れんぼを続けりゃいい。もう簡易領域を展開しなけりゃ腕は斬れない。もともと首や胸は硬かったが呪力の供給が増えたせいでまともに斬れる部分がなくなってきやがった」

 

「時間稼ぎ…どのくらい稼げばいいの」

 

「最低でも五分は稼ぐが、まぁ十分程度でいいか」

 

(あそこまで変異したらもう少しだ。あと四、五回ってところか)

 

 二人は話しながら高専の奥の方へと走っていき、釘崎は適当に釘をばら撒いていく。

 

 バゴンッ!! ドガァァンッ!!! 

 

 その間にも障害物や壁を構わずに破壊し続ける音が聞こえてくる。

 

「ここでいい、呪力を抑えろ。やつは術師としては二流もいいとこ、残穢の追い方すら知らんだろ」

 

 二人は息を潜めて入り組んだ道で姿を隠す。

 

「もう! いい!! かーい!!!」

 

 バゴンッ! 

 

「…ハズレか」

 

 ダゴンッ! ドゴンッ! 

 

 刈柳はメチャクチャに破壊しながら歩みを止めずに探す。

 

 コツーン…コツーン…

 

 戦闘できる呪術師がいなくなった高専には、刈柳の革靴が地面を叩き反響する音が響く。

 

 ……バキンッ

 

 釘崎は術式で音を鳴らす。

 

「ソコかぁぁ!!!」

 

 ドゴォォンッ!! 

 

「? いねぇ…」

 

 釘崎の呪力が弾け、狙い通りにその場所へと誘導され、頭に血が上り始める。

 

「コケにしやがってぇ…!!」

 

 バゴンッ!! ドゴンッ!! 

 

「…今更だけど修理費凄そう」

 

「俺の給料から天引きだけはやめてほしいもんだ」

 

 釘を片手に持ち、警戒しながらも軽口を叩く釘崎の一言に、日下部は禁煙の為に舐めている棒飴を手に持ち、壁に背を預けて言う。

 

「さて、そろそろか」

 

 時計を確認し、十分が経過したのを確認するとスタスタと歩き始める。

 

「えっ、時間稼ぐんじゃないんすか!?」

 

「あぁ、稼いだぞ。十分」

 

「え、は…?」

 

 釘崎と日下部の時間稼ぎは目的が異なっていた。

 

 日下部は初めから狗巻の回復が目的ではなかった。

 

「棘なら大丈夫だ。相性は悪かったが、そもそも別にアイツを倒せないわけじゃないしな」

 

「? …??」

 

「いいか釘崎、今俺達は先を見据えて戦わなきゃならん。夜蛾さんや七海、その他にも多くの一級術師が亡くなってる。そんな中、残った俺達は呪術師といコミュニティを後に繋げなきゃならない」

 

 日下部は刀を持って刈柳の前に登場し、釘崎に現状を改めて伝える。

 

「よぉ…会いたかったぜぇ!!」

 

 満面の笑みと怒気を孕んだ拳は日下部に向かって振り下ろされる。

 

 ドゥンッ! 

 

 ガキンッッグルルッバゴンッ!! 

 

 拳を鞘で受け止め、その力を利用して空中で半回転させ地面に叩きつける。

 

「まぁ、この程度じゃ効かないわな」

 

「温いぬるいヌルイ!!」

 

 刈柳の身体はどんどんと異色に変貌を遂げ始めるのが目に見える。角は更に肥大化し、目は真っ赤な瞳に黄色の瞳孔、腕や身長も元の二倍はある巨躯。

 

「始まったか」

 

「ゴヂ€¶¢=`¶$[¶」

 

「分かんねぇよ」

 

 ズババババンッ!! 

 

「"ォ"ォ"オ"ッ!」

 

 正面から斬撃を連続で繰り出し、動きを抑制させると刈柳は狼狽える。

 

 同時に、後ろから足音が響く。静かに、それでいて慌てずスピーディーに、それは近付いてくる。

 

 コツコツコツコツッ

 

「ご苦労様、ジャスト十分だ。狗巻の怪我は治し終わったから安心してくれ」

 

「あいよ、いっちょ上がりだ」

 

 家入硝子が刈柳の後方から現れる。

 

「硝子さん!? なんで!? こんなとこ来ちゃ駄目ですよ!」

 

「ここは高専の内部だぞ? 私がいても不思議じゃないだろうに」

 

「そうじゃなくてぇ!」

 

「#("+)")#;"))#)91(%!!!!」

 

 刈柳は変質した巨腕を煙草を蒸して薄く笑う硝子に振るう。風を切る音、確実に頭を潰すかと思われた剛腕が地面を叩き潰すことはついぞなかった。

 

 ビダッッッ

 

 ギチギチギヂッ…

 

 刈柳の身体は無数の髪の毛のようなもので拘束されている。動こうとするたびに絡まり、足元にも別の術式による触手が拘束を施している。

 

「硝子、頼むからもう少し大人しく登場してくれないか?」

 

 空から鳥のような呪霊に乗って現れたのは夏油傑。

 

 手持ちの呪霊の八割を消費していた彼は、念の為に保管していた呪霊の玉と各地を高速で飛び回って呪霊を回収していた。

 

「夏油が上にいるのは分かっていたし、問題なかっただろう?」

 

「それは結果論だ。そもそも非戦闘員の硝子が前に出るっていうのが問題で、唯一の反転術式者が──」

 

 バヂンッ!!! 

 

「%-+&#%(¥¥-2/;¥!!!」

 

「ちょっ、倒せてないじゃん!!」

 

 刈柳は力任せに拘束を破り、夏油へと標的を変えて襲いかかる。釘崎はいまだに状況を飲み込めずに慌てるが、それを他所に二人は平和に話し込む。

 

「腐っても特級呪物か。これ、もらっても良いんだよね?」

 

「好きにしろ。わざわざそこまで育ててやったんだから、有効に使え」

 

「はは、それは彼次第ですね」

 

 バゴォンッ!!! 

 

 刈柳だったものは夏油が出した虎のような呪霊に吹き飛ばされ、遥か空中を漂う。夏油は呪霊をしまいこみ、高濃度の呪力を纏う別の呪霊を呼び出す。

 

「認定済みの特級呪霊十六体が一体、溶不雪(とけずすすぎ)、極寒を味わうといい」

 

 背後から現れたのは中学女子程度の背丈ほど、白装束に傘帽子を被り、足は半透明で暖簾のように服が揺れている。顔は幼い女児のようだが髪であまり見えず、紅い瞳が刈柳を見つめる。

 

 夏油の顔の横に浮き、ジェスチャーで刈柳に対する意見を求める。

 

「あぁ、好きにしていいよ。でも祓いきらないでね、取り込むから」

 

 溶不雪が腕を振ると天候が傾き始める。空中に放り出された刈柳は拳に呪力を集めて地面に豪速で向かう。

 

 バフンッ

 

「ゆき…ダルマ…好き?」

 

 空中で寒波に晒され、見ただけでも何トンという重さが見て取れる雪が刈柳を包み込む。

 

 ドズンンッ…

 

 地面に落下する頃には、顔だけが飛び出た刈柳が雪に包まれ、今にも凍りつきそうなほど震えていた。

 

 溶不雪の術式は雪と寒波の生成、そして極寒の感覚の強制。たとえ感覚が無くとも対象は寒さに震え、思考能力が下がっていく。

 

 ドンッ! 

 

「雪だるま…つくった!」

 

「あぁ、いい出来だね。少しその辺で遊んでおいで」

 

 夏油は溶不雪を一時的に離し、事情を話し出す。

 

「悪いね、なにせ特級は完全に制御できないから、ああいう風に時々発散させなきゃいけないんだ」

 

「…センセー、どういうこと?」

 

「端的に言うとな、さっき言ったようにコイツはもう人に戻れない。で、折角だからぶっ飛ばされたときに夏油を呼んで回収してもらおうと思ったんだ」

 

「じゃあ初めから…?」

 

「まぁ、そういうこった。相性の悪いやつにグダグダ付き合う必要はねぇしな」

 

「じゃあ最初から首を狙えばよかったんじゃ…」

 

「馬鹿言え、あれでも被呪者だ。出来るんなら人間に戻す努力をすべきだろ。まぁ、途中で諦めたのは否めないが」

 

 日下部ポケットから禁煙用に携帯している棒飴を舐めてはなし、硝子は微々たるものだが釘崎の傷を治していく。

 

「さて、そろそろいいかな」

 

 ズルルゥッ、ゴクンッ

 

 夏油は刈柳改め、酒呑童子を呪霊の玉にして回収し、一口に飲み込む。

 

「いやぁ、欲しかったんだよね。こういうパワータイプの呪霊」

 

 ズズズッッ

 

 ニコニコと満足そうに笑いながら夏油は鳥型の呪霊を呼び出す。

 

「じゃあそろそろ私は呪霊集めに行こうかな。おーい、戻っておいで」

 

 夏油は雪だるまとかまくらを量産する溶不雪を呼び戻して呪霊に乗ろうとする。

 

「待って、私も連れてって」

 

「…君は待機のはずだろう?」

 

「いやよ。このまま行かせたら、先生戻ってこないでしょ」

 

 釘崎は真っ直ぐに夏油の目を見つめ、本心からそう言い放ち、夏油は目を丸くした後に薄く笑う。

 

「前から思ってたけど。君、勘いいよね」

 

「それはドーモ」

 

「いいよ、ほら乗りな」

 

 日下部は特級がついている安心感からか特に意見することもないが硝子は一言夏油に言って二人を見送る。

 

「夏油、あのバカを早く連れ戻してくれ。お陰で禁煙も失敗した。アイツの金で一番高い酒でも買おう」

 

「それはいい、今回ばかりは猛省してもらわないとね」

 

 夏油は呪霊でそのまま空中に飛び、考え込む。渋谷事変の一件から考えていたこと。何故自分は呪詛師ではなく術師の道を歩んだのかを。

 

(私は今まで忘れていたんだ。あの時、名前も知らない術師のアドバイスを聞いたことを…)

 

 友達の誘いは断らない方がいいよ。君は難しく考えすぎだ。たまには、馬鹿な友達の理想論に従うもまた一興だろう。

 

(どことなくミステリアスな人物だった。彼女に会えれば、何かが変わる気がする…)

 

 夏油の横顔を見ながら、釘崎は不安に駆られていた。明らかに夏油はどこかタガが外れているかのように見えたから。

 

 ──ー

 

 大阪コロニー

 

 大阪、日本の第二の要。一つの結界につき百人、それは理論値である。そんな場所によもやそこにいる強者が二人? そんなことはありえない。紫龍も仲見世も、"術師"を大した人数、殺していない。

 

 しかしポイントも大きな変動はみられない。つまりはどういうことか、こういうことになる。

 

 大阪 屋外倉庫

 

 四十七人の術師が、植物状態で放置されている。換算すると総ポイント数、約二百。それだけの数を生け捕りにしている呪霊がいた。

 

 未登録特級呪霊、(さとり)

 

「…コガネ、ルールはどの程度まで許容される?」

 

「死滅回遊の永続に関わらない範囲であれば、無制限に許容されます」

 

「…同じ答えばかり、いい加減別な答えを返しなさい」

 

 真っ黒な着物に身を纏い、コガネを見据える瞳は三つ。通常の人間の瞳の位置ともう一つ、彼女の周りを飛び回るもう一つの瞳。

 

「…相変わらず心を読めない、所詮は式神ね」

 

 リンゴンリンゴン

 

 瞬間、コガネに付属される鐘が鳴る。

 

「ポイントの大幅な変動が見られました。閲覧しますか?」

 

「…下らないわね、どうせあの仲見世とかいう女か武士でしょう? 放っときなさいあんな雑魚」

 

「現在トップの泳者にその特徴は見られません。閲覧なさいますか?」

 

「…なら見させてもらうわ」

 

「死滅回遊泳者、阿頼耶識刹那。昨日0点〜本日朝92点」

 

「…92…!? 一体何人…あぁ!! もしかして見つけたかもしれない!」 

 

覚は呪力を意図せずして放出する。様々な人間の感情が入り混じったかのような発色の呪力、それは次第に大きくなる。

 

「どんな心根をしてるのか知りたい! 見てみたい!!」 

 

 ぼたぼたぼたッ

 

 覚は口から涎を大量に垂らし、笑みを溢れさせる。

 

「あぁ! 千二百年!! 待ち望んだ…!! 両面宿儺は強すぎたから食えなかったけれど、それと同等の心根の術師!!! どうしても食べてみたい!!!!!」

 

 千二百年、両面宿儺という最恐の術師が生まれる前、遥か昔から存在していた超古参の呪霊の一人。

 

 覚は人間の感情から生まれた呪霊。現在確認されている呪霊の中でも折本里香に比肩する最悪の呪霊。

 

「今、会いに行くわよ…!! 阿頼耶識刹那!!!」




最強ランキングを出してもどんどん更新されるランキングw
禪院直哉(覚醒)
投射呪法発動中に掌に触れたら対象も動きを作らねばならず、作れなければ一秒のフリーズというデメリットを強制させる。その条件を掌ではなく、自身が創り出す画面の箱に触れ、動きを作れなかったらという条件に改ざんする。
ただし、一秒のフリーズから0.5秒に停止時間が減少する。
投射呪法
24fps、己の視覚を画角にし、一秒を24分割してそれを後追いするという術式。
簡略化すると一秒間に24回、無理のない範囲で動きを刻むというもの。
これを直哉はさらに動きを細かく多く刻めるようになる。
60fps、一秒を60分割する。一秒間に60個の動きを刻み、音速を遥かに超える超スピードで動く直哉の奥義。
ただし、人間の反射神経では間に合わない速さで動きを作り、肉体も全力の呪力強化を必要とするため、四秒間しか発動できない。
(因みに四秒間で刻める動きは通常二百四十回)
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