呪霊一体にここまで長引く話はもうないでしょう。(多分)
──ー
「これで全部、思ったより時間がかかった、、、」
別行動していた刹那は呪いを全て祓い終えて呟く。
(大した数じゃない。でも強い呪霊が姿を現さないのはなぜ?)
刹那も四音と同じ疑問に行き着いていた。
しかし、その疑問はすぐに最悪の形で解消される。
「だってただの囮ですもの。下手に実力が左右して仲間内で減らされたら意味ないじゃない」
ゾクッ
「チッ!」
バッ、ガシッ!
刹那の真後ろに突然現れ、頭と肩を優しく撫でながら、覚は囁くようにして答える。離れようとする刹那の腕を掴み、掌に直哉のピアスを乗せる。
「!?」
「しっかり握ったほうがいいわよ、大切なお友達でしょう?」
「直哉、、、さん、、、?」
「あぁ、貴方の右眼で分かると思うけど嘘じゃあないわ、ちゃあんとこの手で、、、殺したわよー♪」
満面の笑みで覚は刹那にありのままを告げた。覚は自ら刹那の地雷を踏み抜き、心を濁らせた。
ブワァァッ!!
自身の心を体現するかのように、真っ黒な靄は刹那と覚を包み込む。八色を包む漆黒、無謀な呪力の出力勝負。当然のごとく刹那は負ける。だが、その状況下でさえ、刹那は冷静だった。
「良ぃ!!!! 色! ねぇ!!!」
ツルンッ
(!! 地面がッ、、、)
覚に直接効果を及ぼせないことを理解していた刹那は地面の摩擦を無くし、覚の機動力を奪った。
(おそらく二度目は通じない! この一瞬で僕のペースに持ち込む!!)
二刀に呪力を大量に込め、距離を無くして詰め、身体を極限まで低く保って跳び、横に回転する。
「無駄よ! 攻撃する場所は手にとるように分かる!」
(足と腕、胸と首を同時、、、!?)
刹那の術式だからこそ可能な同時四箇所狙いの斬撃。足を取られたこの状況下、覚はどれだけ効率よく避けようともどちらか片方の斬撃を捨てることになる。
「ーッッ!!! 素晴らしい!!!」
キキンッ! ガッ!
覚は致命傷となり得る胸と首への斬撃である刹那の右腕を防ぎ、足と腕の機動力を捨てた。
覚は斬られた手足を瞬時に再生し、地面へ流れる領域の呪力をさらに送り込んで二度目の奇襲を封じる。
しかし一度隙を与えたが最後、刹那の連撃は止まらない。
ザンザンザンッドガバキメゴバゴゥキキンッゴゴッドドドドッドギュッ!!
(考える頃には既に次の動作が始まってる!! 斬撃だけじゃなく打撃も織り交ぜて回復に遅延をかけてくる、この上なくやり辛い!)
チュドォン!!
覚は地面に呪力をぶつけて煙幕を作り、一瞬で後退する。
「でもねぇ!! 忘れてないかしら!? ここは私の領域!! 貴方の深いトラウマを掘り起こす場所!! さぁ奏でましょう、過去が彩る哀の歌を!!! 極の番ッ!!」
(!! させない!)
刹那は刀を投げ飛ばし、距離を無くして斬りかかり首を飛ばす。しかし、全力で反転術式を回した覚は、首を斬られたそばから再生させてそれを無意味にする。
(なんて再生力、、、!!)
「
フッ、、、、、、
瞬間、刹那の脳裏によぎり、眼の前に現れたのは、自らの手で殺めたはずの叔父の姿。気づけば自分の服装も高専の制服ではなく、昔のセーラ服の姿。
「よぉ、、、せつなぁ」
小太りで、アルコールによって赤く染まった頬。感情も、動きも、声も、何もかもが全て同じ。
乗り越えたはずの絶望が、苦しみが、噴火した火山から流れ出すマグマのように止まらない。
息をするのも辛い、目を開けるのも苦しい。
「はっ、、、はぁっ、、、」
ポタッ、、、ボタタタッ、ガクガクガクッ
過呼吸になり、冷や汗と涙が止まらない。今すぐに逃げ出してしまいたいのに体が動くのを拒否してしまう。
(なんでッ、、、乗り越えたはずなのに! なんともないはずなのに、、、!!)
極の番、銷魂浄土。攻撃性は全くと言っていいほどない。本人のトラウマを呼び起こし、その感情を増幅させる。たとえ既に克服していようと一度沼へハマれば、抗うことは出来ない。
「あぁ、痛かったなぁ。親代わりの俺に逆らう悪いガキには、、、お仕置きだよなぁ?」
気付けば自分の周りの空間も昔の部屋の光景。
刹那は蹴り飛ばされ、呪力の強化も意味をなさないままに腹を何度も蹴られる。
ドガッドガッドガッ!!
「ゴボッゲホッ」
(動いて、僕の身体、、、! 動いて動いて動いて動いて動いて動いて動いて動いて動いて動いて動いて!!)
「、、、動いてよ、、、」
ビリビリィッ
虚しく木霊する刹那の声。
明は刹那のセーラ服を乱暴に脱がせて半裸にする。
刹那の嘆きは届かない。無力の声がその場に流れ、心が濁る音が覚の耳に届く。そして、覚の欲望が満たされる。
「最ッッッッッ高だわ!!!!! 心の濁り!! 他者を簡単に蹴落とす強者が!! 自らの心に敗北するその瞬間!! もうっ! 我慢できない!!」
覚の周囲を飛び回る目玉が大きな口へと変化する。
「味見! 味見だけだから!!」
自分に聞かせるように覚は涎を垂らしながらそう言って刹那の頬を瞳から出た舌が舐める。
ベロォッ
「!? オ"ェ"ェ"ッ"ッ"!!」
ビヂャヂャッ
刹那の心を舐めた瞬間、舌を駆け巡った味。ひとえにそれは、不味いである。それもそのはず、刹那の過去も魂も、常人には耐え難い悲痛の連鎖。加えて、羂索が刹那に当てた呪物により初代の魂、さらに追い打ちをかけるように、宿儺の魂さえも刹那の魂に混ざっている。三人の
「ォェッ最低、、、でもっ! だからこそ、最ッ高♡」
覚は狂った味覚を持つド級の変態。不味いものが大好物だった。
「あぁ! 舌を刺激する痛み! 駆け巡る悲痛! 口に充満する自らや他者の犠牲を顧みない残虐さ! 吐き気を催す邪悪な余韻!! なにをとっても最高だわ!!! フフッ、もう一手間♡」
この技にはさらに次の段階がある。術者の最もされたくない記憶を捏造し、眼の前に顕現させることができるという、まさしく極楽の反対側を行く技。
ガギッ、、、ヴァリンッ!!!!
覚が食レポを終えると、再び眼が口を開く。しかし、それを許さない人間が、極の番の記憶内に侵入してくる。
術式を持たず、呪力すらも一切持たない。完成されたフィジカルギフテッド。
「お、なんかいた」
死滅回遊泳者 禪院真希
(邪魔されないと思ったから極の番を使ったのに、なによこのおん、、、)
メキイッ、、、バォンッ!!!!
ドゴッガジャッッバゴンッ!!
「何だお前、私の後輩泣かせんなよ」
「てっめっ」
ドガッ!!
真希の一撃で明の姿は呪力となって霧散し消える。
直後に刹那の服も戻り、周りの景色も消える。
「真希セン、、、パイ、、、?」
「おう、私だ。ぶっ飛ばしたけど敵でいいんだよな?」
「、、、、、、」
パアンッ!!
「うおっ、どうした!?」
「、、、ただの気合入れです。気にしないでください」
刹那は立ち上がりながら頬を叩く。先程までのことを払拭し、真希と刹那は互いの事情を簡潔に話す。
「アレは呪力なしの肉弾戦が可能な呪霊です。呪力はほぼ無限の上に心を完璧に読んできます。結界はアレに領域化されたので、なんとかして逃げるか祓うしかありません」
「、、、色々聞きたいけどとりあえず分かった。私が向かう予定だった桜島には傑が向かってるって連絡が来た。私は結界を素通りできるからな、サポートに来た。つーか携帯どうしたよ。今なら連絡できんだろ」
「気付いたら壊れてました」
ビキビキビキビキ
覚は顔を修復させながら怒りを赤色の呪力を漏らすことで体現する。
「ちょっと、、、私は食事の邪魔をされるのが一番嫌いなの、、、!! 骨も残らないと思いなさい、、、!!」
ドゥッ!!
グルッッドゴンッ!!
覚は再び呪力を濃密に練り、真希に仕掛ける。真希はそれを見切り、カウンターの蹴りを繰り出した。
(速い!! 金髪の坊やや阿頼耶識刹那とは違う! 純粋すぎる速さ!! まさか私よりも、、、!?)
「そうだ。刹那、感謝しとくぜ。自覚は無いだろうけどな」
「? 、、、受け取っておきます?」
突如として乱入した真希の力を添えて二対一、形勢は再び均衡へと戻った!!
バサッ
真希は背に携える竜骨を引き抜き、刹那も二刀をつがえ、怒りを赤い呪力として漏らす覚を迎え撃つ。
「
ギュオッ!! ギギキキンッ!!
赤い呪力が糸のように連なり、二人の元へ豪速で飛んでいくが、二人は呼吸を合わせてそれを受け流して斬り刻み、懐へと詰めていく。
(前より格段に速い!)
ドドッ! ギキンッ! ガガガガガガッ!!
「アッハハハ!!! 貴女も中々やるじゃない!!」
真希と刹那の挟撃に、心を読んで先読みするといえども劣勢を強いられる覚。しかしそれでも、余裕の色は消えない。
(チッ、このままじゃ平行線だ! どこかで必ずボロが出る!)
「真希先輩!!」
「分かってる!!」
ギュルルッグルンッ!
「その程度の呪具じゃあ! 私は斬れないわよォ!!」
ドゴッ! クルンッガンッッパシッ!
真希は空中に弾き飛ばされた刀をさらに蹴り飛ばし、反対側にいる刹那へと渡す。同時に刹那も、刀を真希の手に距離を無くして送る。
「だったら」
(!? これは刹那のっ!?)
「これなら効くんじゃねぇか!?」
(しかも後ろから彼女の斬撃もくる!!)
二人の挟撃、再び覚は片方を捨てる選択を強いられた。
(読めた!! 先に瞬間スピードの早いこっちを潰す!!)
完全同時ではない攻撃により時間差が生まれる。先に攻撃がくるであろう真希を狙った覚の全力の一撃が、真希の顔面をくり抜く。
──ッザンッ!!!!
「ゴポッ、、、何故、、、!?」
「術式順転、虚。最大出力」
膨大すぎる覚の呪力による打撃、それは天与の肉体さえも無事では済まない。そう判断した刹那は最大出力の術式で打撃のエネルギーを消し去った。
ザザザザンッ!!!
それと同時に覚への血吸による連撃、使った呪力の分の補填も僅かではあるが完了する。
「ッゥ!
深い海のような青い呪力が、覚を中心に螺旋状に爆ぜる。当然のごとく二人はその場を離脱している。
「さぁ、仕切り直しよ! 貴方の心も食べてあげるわ!!」
「遠慮しとくぜ。女に食われる趣味はねぇからな」
カキンッポイッ、カッ!
「! あぐっあァ!? 目! 目ぇ!!」
ビュォォッ! ボフンッ!
突然上から強烈な光を放つ道具が投下され、二人の身体は風に運ばれるように誘導される。直後に水が蒸発して水蒸気が発生し、覚の視界から二人の姿は消える。
「刹那君、離れるぞ。手応えがあってもすぐに回復される。私に少しだけ考えがある」
「えっと、、、四音さん!」
「そこの君もこっちだ!」
ダッダッダッ
二人は四音の力を借りてその場から走って離脱する。
「四音さん、そっちで何があったか教えて下さい」
「、、、すまない、私の気が抜けていた。私は軽傷ですんだが、彼は恐らく殺られただろう、、、。呪い達も祓いきれていないが、大した強さではないからそこは問題ないと思う」
俯き気味に四音は話すが、術師としての矜持ゆえか、彼女は現状を打破する方法を伝える。
「向こうに心は読まれているから作戦は真っ直ぐだ。刹那君、君に
シン・陰の原型、"結界"を中和する領域を持たぬ者の対領域の術である。
「これは完全な推測だが、奴の術式は飛び回る瞳に見られることが恐らく条件だと思う。領域を中和してしまえばどこかに穴ができるはずだ」
「、、、おい、私は呪力が無いからよくわかんないけどよ、そんなすぐに使えるもんなのか?」
「、、、通常は絶対に無理だ。しかし、彼女なら出来るはずだ、阿頼耶識を冠する術師である、君なら」
「、、、、、、いずれにせよ、やらなきゃやられるだけです。教えて下さい、その技を」
刹那に拒否の選択は無い。決心した瞬間、頭上から無数の瓦礫が降ってくる。
「「「!!」」」
ツイツイツイッ
「
メショッ!!
瓦礫を横からの力で潰すが、三人の懐に覚は侵入していた。狙いは、先程面倒で仕留めなかった四音。
「しまっ──」
ガギンッ!
「邪魔ねアナタ、さっきから」
「悪いな、あんたと踊るのは私だ」
覚の呪力を纏った拳と真希の竜骨が衝突し、鈍い音を立てる。
「時間稼ぎは任せろ」
「お願いします!」
ダッ!
二人はその場から一時的に離脱し、真希と覚が向かい合う。
「彌虚葛籠、賢い選択ねぇ。でも私はね──」
「飯の邪魔されんのが嫌いなんだろ。心なんざ読めなくても、いちいち言ってくりゃわかるぜ。心を読める呪霊さんよぉ」
ビキキッ
「、、、小娘が」
ドゴォンッ!!!
異常な呪力の強化と、人から逸脱した天与呪縛の衝突は風を斬り、衝撃波を生む。
ビリビリビリ、、、!!
(今の私ならいける! でも長くは持たねぇ、頼むぜ刹那)
「フンッ、下らない! 直ぐにすりおろして肉骨粉にしてあげる!!」
ドドドッがガガガッ! ギギンッズドッ!
「呪霊のくせして人間らしい動きしやがって!」
「あら失礼、私はこの世で最も貴方達に近い存在。幾多の人間の心を読んで学習を続けてきたんですもの、貴方と似た動きの人間は私の長い歴史の中にもいたわ」
真希の戦い方は自己流ではあるが、中国拳法や太極拳などのベースは存在する。
それを嘲笑うが如く、覚も似た動きで真希を追い詰めていく。
ギュルルッバビュンッ!
「
緑の呪力が無数の球となり、真希に向かって飛んでいく。それを真希は斬り落とし防いでいく。
不意に一発、真希の腕に当たったそれは、腕を大きく弾いた。
(クソッ! やっちまった!)
「あぁ、考えてみればその通りね。わざわざ直接戦う必要なんて無いわねぇ。貴方、呪力ないんだものね」
確定的なチャンスを発見した覚は、邪悪な笑みを溢した。
チュドドドッ!!
呪力の球を主体に切り替え、さらに攻勢へと移る。
バギンッ!
(竜骨がっ!)
竜骨にヒビが入り、真希は呪力の球を防ぐ術を失う。覚はその隙を見逃さない。
「ハッハハァッ♡
チュドォンッ!!!
青い一つの呪力が真希のほんの僅かな一瞬の隙をついて弾けた。
パララッ、、、
「、、、、、、嘘でしょ貴方、流石に驚くわよ」
驚いたと言いつつも覚の口元からは笑顔が溢れている。
真希は刀を犠牲に防ぎきった。身体はズタボロだが、真希は挑発の姿勢をとって継戦の意思を見せるために柄だけとなった竜骨を放り捨てて笑った。
「、、、結構使いやすい呪具だったんだけどな」
カランッ
「ふふふふ、、、良いわね、腸をえぐ──」
ヴェンッ、ビタッ
「「!!」」
ヴァリンッ!! ボゴォンッ!!
「お前、、、直哉!?」
「よぉ、、、真希ちゃん」
直哉は上半身の服が全て破け、体中に斬撃の痕、顔にも斜めに右目上から顎下まで一本傷が入っている。吹き飛ばされた覚は術式を使って二人の前に再び姿を現す。
「なるほどねぇ、、、まさか生きてるとは思わなかったわ。反転術式の会得、おめでとうとでもいいましょうか?」
「正解。吹っ飛ばされた瞬間、全神経を反転術式に注いだ。人間やろう思たらできるもんやなぁ!」
直哉は歯をむき出しにして笑いながら両手を広げて喜びをあらわにする。
(心の中がグッチャグチャ、、、全く、どいつもこいつも呪術師は)
「ぶっ壊ればっかりね」
──ー
「刹那君、まずは深くイメージするんだ。結界のみを広げて、向こうの術式をその中に流し込む。私が少し発動するから、しっかり真似るんだ」
(元々領域を展開できる人だ。ここまでは問題ないだろう。だが課題は次、この莫大な領域を中和するには私では不可能。だからこそ、彼女にやってもらわなければ)
「、、、んー、、、」
「いいぞ、形は出来てる。自分を包むようにイメージするのをさらに広げるんだ」
刹那の周りに結界が作られ、それは術式を流しこんで中和していく。しかし、それを覚が見過ごすはずがなかった。先程までとは比べ物にならない量の数多の呪いが、妨害のために送り込まれる。
ォ"ォ"オ"ー""ア"ゴ"ヒ"レ"ァ"ー
「やはり、簡単にはさせてくれないか。刹那君、そっちに専念して離れてくれ、私が殿を努めよう」
「、、、死なないでくださいよ。会ったばかりとはいえ、知人が逝くのはもう嫌です」
「心配するな、私はそれなりに強い」
(とはいえ、二人分の記憶の呪い。限界はある)
ツイツイッ
「
ズバババ!!
風の刃を連なるように放ち、広範囲を斬り崩す。しかしそれでも呪いの濁流は止まる気配を見せない。
(僅かに強くなっている。記憶の中の雑魚がもしもいなくなったら、、、)
「考えたくもないな」
ダッ、フッ、、、
四音は逢魔ヶ刻を手に嵌め、肉弾戦へと移る。だが、心を読める覚は相手の最も嫌がることを的確に行える。眼の前の呪い達は姿を瞬時に消した。そして、眼の前に最低でも一級を超える呪霊達が姿を表した。
(くそっ! 出し惜しみはなしか! 今までのより格段に強い呪霊ばかり!)
「カッカッカッ!! 強き者よ、そう怯えるな。楽しもう!」
特級呪霊、木の葉天狗は周りの建物を一瞬にして風の刃で斬り裂き、錫杖を四音に向ける。
「構えろ、我と同じ技を持つのだろう? 遊んでやる!」
「チッ!」
ツイツイツイッ
「
「
ドザァッ!! バォンッ!!!!
四音の術式はあらゆるものに宿る呪いを使役する術。降霊術に近いものであり、特定の物を操るような術式とは衝突するため、極端に相性が悪い。風を操る木の葉天狗に対し、風は使えない。
「カッカッカッ! 悪くないぞ、強き者よ! だが、力不足だ!」
霧を発生させ、四音の視界は塞がる。木の葉天狗の圧で動けなかった呪霊達が、チャンスと言わんばかりに、四音へと攻撃を仕掛け始める。
チュドドッ!!
ツイツイッ
(視界が悪い!)
グヂャッ!
「ァ"グッ!」
最低の視界の中、木の葉天狗の風刃と呪霊達を相手に出来るわけもなく、ついに四音の足に深い斬撃が入る。その隙を見逃さない呪霊達は、膝を着く四音に群がっていく。
四音に群がった呪霊達は、四音の身体を貪ろうとするが、咄嗟に描いた炎の印で身体の周りを発火させて防ぐ。
(今の内に、、、!)
ビュォンッ!!
「つまらないことをするな弱き者よ、そのまま貪られておけ」
木の葉天狗の風は火を斬り裂き、彼女の最後の守りを破った。呪霊達は餌を眼の前にして、笑みをこぼす。
ワ"タ"シ"ノ"バ"ン"ッ"ー"! "! "ォ"ォ"オ"ー""!!
ゾワッ
久しく感じる絶望の恐怖。刹那の助けはない。
この場を打開する術もない。できるのは、醜く抗わず、現実を受け止めることのみ。
「、、、はー、、、詰み、か、、、」
「何勝手に死のうとしとんねん、三度目はないんやで」
ヴェンッ、バリリリリンッ!!!
投射呪法のフレームが割れる音、同時に空気が爆ぜて呪霊達が一瞬で祓われる。そしてそれを見た木の葉天狗が霧を晴らす。
「、、、直哉君!? 生きてっー!?」
「カッカッカッ! 良いぞ、貴様は強──」
パシッ! ヴェンッバリンッ!
木の葉天狗の言葉が終わる前に、直哉は投射呪法で動きを止め、顔面を蹴り上げて空中へと吹き飛ばす。
「ッ! クソガキめぇ!!」
バララッ! ヴェンッダダダダッ!
ヴェンッバリンッ!
直哉は石を投げ、それら全てに術式を付与して空中で停止させ、足場を作ってさらに追撃する。
空中から木の葉天狗をはたき落とし、地面へと叩きつける。
「ゴボッゲォッ」
ビキキッ
「
「
直哉の成長は終わっていない。
木の葉天狗は錫杖を地面に叩きつけると地面から暴れ狂う樹が直哉を襲う。それを直哉は当たる前に動き、反撃する。
(何だこの威力は!? 何かがおかしい!)
チュドドッ
「ゴッボァッ!?」
堕落の動。従来の反撃効果と違い、身体に当たる前の自動反撃、加えて最も呪力強化の薄い部分を的確に狙って攻撃する。
ボゴンッズドンッ! ズダァンッ!!
木の葉天狗を上空に打ち上げ、さらに叩き落とす。
投射呪法で眼の前に瞬時に着地し、さらに直哉の拳は加速する。
60fps
ッッッッドドドドドドドドドドッッッッ!!!
「ォ"オ"オ"ア"ア"ア"ア"アガ"ア"!!!」
ドグンッ!! ドオンッ!!
(なんだ? 彼に何が起きた、、、?)
直哉の呪力は一変して深く蒼色に澄んでいた。
「四音、、、アイツはどこや?」
「、、、奴なら向こうにいる。これを」
真希と覚がいる方を指差し、直哉は呪具を受け取ると笑みをこぼす。
禅院直哉。進化の最終ステージへと辿り至る。
こんな場所でなんですが、初めての完全一次創作小説の投稿をスタートしました![瞳を閉じぬ裁定者]これまでとは違ったアプローチから書いてますので、ぜひこちらの方もよろしくお願いします!