全てを無くした少女に呪いを授ける   作:レガシィ

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異物はイレギュラーと読みます


第六十七話 東京第二結界 異物

 ──ー

 

 東京、大阪突入時

 

 東京第二コロニー

 

 パンダは秤と同時に突入したにも関わらず、結界の暗黙のルールによって離されていた。

 

 埠頭のコンテナの上にパンダは座って考え事をしている。

 

(なんて濃い血の匂いだ…! 三人くらいはバラバラになってるんじゃないか? だがこの状況を作った本人の呪力は微弱、こういうonとoffが出来るやつは手練の可能性が高い! 俺の役目は天使の捜索と交渉、戦闘は秤に任せるつもりがこんな方法で離されるとはな…。さっさとここを離れるべきだが、下手に動いて見つかるのは勘弁、このままテディベアでやり過ごす…いや!)

 

 ゴロゴロ! ポインポインっ

 

 しかしパンダは自分の考えを一瞬でひっくり返して行動に移し、コンテナの上から転がり落ちる。

 

(俺はパンダだぜ!?)

 

「ふぅ~」

 

 周りを見渡し一息ついたパンダ。秤と行動するためのその判断は、裏目に出た。

 

「あ」

 

 たった一言、言葉のその方向にいたのは100得点保持者、件の人物。

 

 鹿紫雲一(かしもはじめ)

 

「なんだ? 上野から脱走したか?」

 

(そうです!!)

 

 鹿紫雲の独り言にパンダは内心肯定し、四足歩行になって動物のパンダに擬態を試みる。

 

「お、やっぱ二足歩行はしんどいか。コガネ、あれ泳者か?」

 

(そんな使い方ー!?)

 

「泳者、デス!!」

 

 フッッバゴォッ!! 

 

 初手の不意打ちでパンダの顔面に呪力と共に拳がくり抜かれる。

 

 パチチッ

 

「ツッッ」 

 

(伏黒の鵺と同じ! 呪力が電気のような性質を持ち、奴自身常に帯電している!)

 

 ボンッ!! 

 

(とんでもなく速く! 重い!)

 

 続けざまにパンダは胸を貫かれて綿が体から飛び出る。その瞬間、パンダはゴリラモードへと変形する。

 

(でもなぁ! 防御無視はお前だけじゃないんだぜ!!)

 

激震掌(ドラミングビート)!!!」

 

 ドッ! ビリビリ…! 

 

(内部破壊か…!!)

 

「悪くない、が」

 

 クンッギチッ

 

「良くもない」

 

 バギィッ!! 

 

 鹿紫雲は腕を棒で絡め取り、骨格ごとゴリラモードのパンダの腕を無理矢理引きちぎる。

 

 パンダには痛みがないため、怯むことなくもう片腕で鹿紫雲に拳を振るう。

 

「普通すぎる」

 

 トンッ

 

 そして鹿紫雲は棒を地面に投げて刺し、パンダの腕を放り投げてフェイントをかける。パンダは咄嗟の判断が効かずに鹿紫雲に一方的に顔面にラッシュを叩き込まれ、コンテナに叩きつけられ動けなくなる。 

 

 ドドドドドッ!! ゴウンッ!! シュゥゥウ

 

「弱い、弱すぎる……宿儺、お前、宿儺がどこにいるか知ってるか?」

 

「!!」

 

(宿儺!? 何が目的だ、どうあれ虎杖にプラスにはなんねぇよな)

 

「知らんな」

 

「…知ってる間だなぁ」

 

 笑みを溢す鹿紫雲に、パンダは臆すことなく適当なことを話す。

 

「…叔父がそんな名前だったかな」

 

「舐めてんのか?」

 

 シュルルルッッ

 

 鹿紫雲の殺気が電気のような呪力として現れる。

 

「お前こそ舐めんなよ、俺のお姉ちゃんはシャイガールだから」

 

(目があった奴はみんな、照れ殺しだぜ…!?)

 

 ボコボコボコボコッッ

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」

 

 シュルルルッッ

 

 パンダはお姉ちゃん核の人間型トリケラトプスに変形する。

 

 パリッ──

 

 その瞬間、鹿紫雲は棒を振るって呪力を飛ばす。

 

 鹿紫雲は電気と同質の自らの呪力を電荷分離する。打撃とともに対象にプラス電荷を移動させ、自身に蓄えたマイナス電荷を地面への放電をキャンセルしつつ対象誘導する。この一撃は、領域を展開するまでもなく必中の、大気を割く稲妻である。

 

 ポパァッ!! 

 

 パンダの身体は半身が弾け飛び、中の骨格や呪力が霧散する。

 

「で、何処だよ宿儺…は?」

 

 シュルルルッッ

 

 鹿紫雲の視線の先は半身が弾け、変形が解けたパンダではなかった。鹿紫雲の背後にある、謎の回転する赤いリンゴ。

 

「林檎? いつから…? おい、お前の仕業か?」

 

 そこにパンダの姿はなく、破壊された痕跡すらもない。

 

(どこ行った? 姿が無い…いや、違うな。俺が移動してんのか?)

 

 鹿紫雲が今いるのは、パンダに遭遇する前の埠頭の角。

 

「なんだ、瞬間移動系か?」

 

 鹿紫雲はそう遠くない戦闘の場所へと戻る。

 

 そこにいたのは短めのシルクハットを被って黒いステッキを持ち、黒スーツをはだけさせた術師。

 

「あら? アナタ人間じゃないの?」

 

「…アンタは…?」

 

「アタシ? フフン、時代の先を行く"女"元一級術師梦覚真慈、真ちゃんって呼んでねん♡」

 

 死滅回遊泳者 梦覚真慈(むきさめしんじ)

 

 ポンッ! 

 

 自己紹介の後に掌から青い林檎を出現させる。

 

「なんでもいいが逃げたほうがいい…アイツはやばい…」

 

「アナタ見かけによらずハードな声じゃない、アタシ好みよ♡」

 

 梦覚は全く意に介さぬようなテキトーな返事を返すと、鹿紫雲が会話に入ってくる。

 

「おいおい、折角宿儺のことが分かりそうなのに邪魔すんなよ」

 

「アナタこそパンダちゃんをイジメるのやめなさいよ、日本のお宝よ? 動物愛護団体にも叱られちゃうわ」

 

(呪力はそこそこ、手には青い林檎…俺と同じじゃねぇだろうな。面白そうな手合いだが今は…)

 

「今はお前に興味はねぇ。とっとと失せろ」

 

「アタシいなくなったらこの子殺すでしょ?」

 

 シュルルルッッ

 

 梦覚は手の青い林檎を指で回転させながら質問する。

 

「ソイツ次第だな」

 

「映画とかだと、そういう子は大抵殺すのよ?」

 

 ダンッ! 

 

 ドゴッ!! パリリッドドドッ!! …ドサッ

 

 痺れを切らした鹿紫雲は駆け出して距離を即座に詰め、梦覚の顔面を殴りつけ、ラッシュを叩き込む。

 

 血飛沫が舞い、その場に梦覚は倒れ込む。

 

「戦う理由もない雑魚がイキがるからだ」

 

 リワインド

 

 ドゴッッ! 

 

「!!?」

 

 倒れた梦覚に向かって言い放った鹿紫雲はその瞬間、腹から殴り飛ばされていた。

 

 ザリィー…

 

「戦う理由ねぇ…アタシ、子供の頃からパンダが大好きなのよ、それで充分かしら?」

 

 パンッ、シュルルルッッ

 

 青いリンゴが弾け、同時に梦覚は赤い林檎を回して地面に放る。梦覚は傷がなくなったかのように全快している。鹿紫雲のダメージは軽微なものの、実力を測り誤ったことを悟り、呪力を練りだす。

 

「いい感じじゃん?」

 

 パリリッ…!! 

 

 ドゴンッ!!!!! 

 

「「!!」」

 

「随分ボロくなったんじゃねえか!? パンダ!!」

 

「秤!!」

 

「おいおい…大漁だな!」

 

「アラ、またいい男」

 

 一触即発の雰囲気の中、コンテナを踏み砕き、膨大な呪力を立ち昇らせて秤が参戦する。

 

 それを見た鹿紫雲は汚れた笑みを零す。

 

 既に一戦を終えて全開状態の秤、実力未知数の梦覚、過去から黄泉帰った最恐の術師、鹿紫雲一。

 

 三人の泳者が出逢って起こるのはただ一つ。

 

 三つ巴の呪い合いが、始まる。

 

(パンダ助けてるとこ見ると味方か?)

 

「ンフフ、実践は久々だわぁ。報酬の分頑張らなくちゃねぇ」

 

 秤は梦覚の隣に歩いて向かい、反対に鹿紫雲は正面から二人を睨む。

 

「お前等、名前は?」

 

「俺は秤金次、金ちゃんって呼んでもいいぜ」

 

「私は梦覚真慈、真ちゃんって呼んでねん。貴方は?」

 

 スッ…

 

「鹿紫雲だ」

 

 鹿紫雲は戦闘の構えを取り、顔を綻ばせる。同じように秤も少し驚きながらもニヤニヤと舐めたように笑いながら提案する。

 

(! コイツが百点保持者、鹿紫雲一!)

 

「おい、俺が勝ったら百点使わせてくれよ」

 

「好きにしろよ、お前あのパンダの仲間だろ。宿儺について知ってることを吐け、この後生きてりゃな」

 

「なんだか物騒ねぇ、世の中ラブアンドピースの時代よ? ねぇ、金ちゃん…金ちゃん?」

 

 秤の意識が飛びかけるようにして目玉がグルリと上を向く。

 

(漲る呪力(ボーナス)で…トぶぜ…!!)

 

 ダンッ! 

 

 バシンッ!! 

 

 鹿紫雲の先制攻撃が秤に当たりかけるのをギリギリ手で掴み、秤に呼びかける。

 

「ちょっと!! 何意識飛ばしてんの──」

 

 バゴォンッ!! 

 

「「!!」」

 

 ♪ 〜♪ 〜♪ 〜

 

 突然の呪力の爆発的な上昇と一撃、鹿紫雲と梦覚は秤の溢れ出る呪力と鳴り響く音楽を見聞きして驚嘆する。

 

 秤は領域展開直後、私鉄純愛列車主題歌[あちらをタテれば]が流れている四分十一秒間、ボーナスとして膨大な呪力を得られる。端的に言うと呪力の制限解除に加え、自身の体を溢れた呪力で壊さないように常時完全自動(フルオート)の反転術式が付与され、実質的に不死身となる。

 

 ザリィィ! 

 

「アラ、イイ身体してるじゃない」

 

「二体一か…卑怯とか思わねぇのか?」

 

「とか言う割りにはよぉ…随分いい顔してるじゃねぇか鹿紫雲ォ!!」

 

 バリッバリリリッ!! 

 

 ズダァンッ!!! 

 

 笑顔を漏らした三者は、一切の予兆無しに一斉に走り出した。

 

 ドドドドッッ!!! 

 

 グルルッ! ガシッグリュッ

 

「!」

 

「さっきのお返しだ!!」

 

 梦覚が踏み込んだ瞬間、後方へと飛び上がり鹿紫雲は二人の背後を取る。秤よりも先に反応した梦覚は振り向きざまに裏拳を繰り出すのを鹿紫雲は腕を絡めて止め、そのまま強引に手折ろうとする。

 

「真慈ィ!!」

 

 シュルルルッ、パンッ! 

 

 リワインド

 

(コイツ、またっ!?)

 

 再び梦覚の位置が戻り、鹿紫雲の背後を取った形へと替わる。

 

「乱暴なオトコはモテないわ、よっ!!」

 

 バシンッ!! バリッッ!! 

 

 鹿紫雲は梦覚の拳を受け止め、呪力による電荷を移動させる。同時に秤の拳が鹿紫雲へと向けられ、梦覚の蹴りも繰り出されるのを鹿紫雲は片足で軸をずらして防ぐ。

 

 ブォッ! ガガッ!! 

 

(あそっから防御すんのかよ!)

 

(電荷は溜まった! 喰らえ!!)

 

 バリリリッバチュンッ! 

 

 梦覚の腕から秤の腕へと電荷移動による稲妻が走り、秤の片腕を吹き飛ばして梦覚の動きも痺れて鈍る。

 

(二択だが! 狙うは攻め時の秤!!)

 

 バキィッ!! 

 

 鹿紫雲の標的が秤に絞られた瞬間、秤からのカウンターが鹿紫雲の頬にヒットする。

 

(あそこから反撃して見せるか!! だが片腕じゃ──!?)

 

 完全自動の反転術式、秤の意識は攻めの一手へと向き続ける。

 

 バキイッ! 

 

(反転術式!!)

 

 ガシッブンッグリッ

 

「寝技は得意かしら!?」

 

 梦覚は鹿紫雲の股から腕を通し、もう片方の手を首に引っ掛けて柔道の寝技の姿勢に入る。

 

 受肉し、知識として知っているが受肉先は一般人。鹿紫雲には新しすぎる技術。

 

 ビキキッ

 

(! 抜け出せねぇ!!)

 

 さらにここで音楽が凪ぎはじめ、秤のラウンドが終了する。同時、秤は掌印を結ぶ。

 

 秤の四分十一秒のラウンドの間に焼き切れた術式が回復するため、秤は何度でも領域を展開できる。

 

「良いぞ真ちゃん! そのまま抑えてろ!!」

 

 領域展開 坐殺博徒(ざさつばくと)

 

 バララララッッッ!! 

 

 一瞬にして全ての光景がゲーム台の中の演出へと替わる。

 

 秤の領域は領域内の者に害が無い分、押し合いに強く、展開スピードは渋谷での真人をも凌ぐ。

 

 鹿紫雲は彌虚葛籠(いやこつづら)の発動を諦めるよりも早くにルールを理解させられた。彼の状況としては最悪の一言。

 

「チッ! 離れろ!!」

 

 バリリリッッ!!! バチンッ! 

 

 ダッ! シュルルルッ

 

 電撃で筋肉が弛緩したのと同時に横に転がって脱し、梦覚も近くの設置物へと飛び乗って避け、秤の元に向かいながら赤い林檎を生成する。

 

「確率変動突入!!」

 

 ドパンッパンッパンッ!! 

 

 演出が三人の背後で弾けて気分の高揚が誘われる。

 

「景気良いじゃねぇの」

 

「俺はな、お前はどうかな?」

 

「抜かせ。お前今不死身じゃねえだろ」

 

「金ちゃん、アナタ未成年じゃないの?」

 

「博打に歳なんて関係あるかよ。賭けてなんぼ、勝ってなんぼの人生さ」

 

(この一回は大当たりを引くのが既定路線…この間なら殺れる!)

 

 ダッ!! 

 

 ガッドドッゴゴンッ!! 

 

「させないわよ!!」

 

(こっちのカマの体術は捉えにくいが無難な接近戦である以上どうとでもなる! 問題は秤!)

 

 ガシッブンッバゴッ!! 

 

「ぐぅっ」

 

 梦覚との一瞬の攻防、鹿紫雲は演出内である電車の吊り革を利用して顔に蹴りを叩き込み、奥にいる秤を狙う。

 

 バキイッゴチンッ! グラッ…

 

 鹿紫雲の連打の後、秤への頭突きが決まり脳震盪を引き起こす。

 

 バキィンッ!! 

 

「続行!!」

 

「!!」

 

 擬似連、ワンシークエンスのやり直し。私鉄純愛列車では一度目の発動で大当たり確率が二十%を超える。期待度の高い演出であり、秤は基本確変時以外では使用しない。

 

 ガチッバキンッ!! バリリリッ!! 

 

 ドギュゥゥン!! 

 

「継続!!」

 

 チュインッ! 

 

「リーチだ!!」

 

(うっかり特快リーチ! 主人公が何事もなく新百合ヶ丘まで辿り着ければ大当たりのリーチアクション!!)

 

 バァン! バァン! バァン!! 

 

 ドキュドキュドキュ!!! 

 

(大当たり! 金ちゃんのラウンドが始まる!!)

 

 ザァァァッ

 

「音楽…」

 

 領域の解除、同時に流れ出す音楽、そして溢れ出る呪力(ボーナス)!! 

 

「スタートォ!!!」

 

 ズァァッ♫♫

 

(始まったな! 呪力の制限解除にフルオートの反転術式!! だが! この後に領域を展開しても確変は既に終了、スピーディーに当たりを引けはしない! この四分十一秒をいなし、不確定要素のカマ野郎は時間をおいて再戦。これで俺の勝ち…それは、雑魚の思考だ)

 

 鹿紫雲の戦闘経験の高さ故に一瞬の思考、勝ち筋が見える。しかし、鹿紫雲が求めるものとは違ったのだ。彼は生粋の戦闘狂、彼に常に生の実感を与えるのは血湧き肉躍る呪い合い! 

 

「まとめてだ…!!」

 

「「?」」

 

 ゴァァァッッッ!!! 

 

「お前らまとめて!! 俺の相手だ!! 音量上げろ!! 生前葬だ!!!!」

 

(この四分十一秒の間に! 不死身のお前とカマを両方殺してみせる!!)

 

「妬けるじゃない!! アタシを忘れないでチョーダイな!」

 

 ガッ! バキドゴゴッ!! 

 

(動きがさらに鋭く! 底知れないわね!)

 

 ドゴンッ!! バゴンッ!! 

 

 押される梦覚を助けるために秤はコンテナを蹴り飛ばしたのを鹿紫雲が殴り飛ばしてコンテナは空を舞う。

 

 バギッドゴバゴンッドドドッ!! 

 

 二体一という明らかなハンディをものともしない鹿紫雲の攻撃はさらに密度を増し続けていく。

 

「もっとだ!! もっとアゲてけ!!!」

 

「アゲるわよぉ!!」

 

 ゴッ、バギャッッ!!! 

 

 梦覚は地面のコンクリートをくり抜くように踏み割り、放り投げて地面と空を逆転させる。

 

「馬鹿力め!!」

 

 シュルルルッ、パンッ!! 

 

 さらに赤い林檎が弾け、秤だけがコンクリートの天井から逃れるように位置がズレる。

 

「「!?」」

 

 ダッ!! 

 

(やるな! 秤を攻撃範囲から離脱させ自らを巻き込んで自滅に近い特攻! これなら確実にダメージを俺に与えられる!)

 

「さぁ!! 逃げ場はないわよ!!」

 

「逃げるってのは! 雑魚がすることだ!!」

 

 ダッ!! 

 

(まさか! 直にアタシを叩いてそのまま盾にするつもり!?)

 

 ガガガッ!! ガジンッ! ッ! 

 

 僅かなコンマ数秒の戦闘、制したのは誰でもない。

 

 二人の呪力と蹴りが衝突して二人は弾き飛ばされ、瓦礫が積み上がる。

 

 ズゥンッ!! バリリッ!! 

 

「楽しいなぁ!! 梦覚!!! 秤ィ!!!」

 

「こうなりゃとことん付き合うぜ鹿紫雲ォ!!」

 

「久し振りよ!! ここまでハートが熱くなるのは!!」

 

 三人のギアが更に段階的に上がるのが呪力と集中の砥ぎ具合でで分かる。

 

 バヂョォォォンッッッ!! 

 

「「「!!?」」」

 

 しかしここで、招かれざる客が招待される。

 

 この結界は大半が海で覆われており、秤達の付近で大きな呪霊が祓われた時と同様の呪力が爆ぜる。

 

 同時に、海上に大きな式神と共にオールバックで礼服に身を包んだ男が現れる。

 

「役者は揃ってるな! 宴の始まりといこう!!!」

 

 死滅回遊泳者 継愚那岐(つぎぐなぎ)

 

 ガシッブンッ!! バリリッ!! 

 

「邪魔だ!!!」

 

 一瞬の動揺こそあったものの、鹿紫雲は瞬時に瓦礫に呪力(電荷)を溜めて投擲、稲妻を伝わせて那岐に攻撃する。

 

「甘い!」

 

 バヂャンッ! 

 

 瓦礫を呪霊と水の壁で防ぎ、呪力を当てて相殺する。

 

「極の番!! イザナギ!!」

 

 ゴォォォッッ!! 

 

「岩!?」

 

(! まずい避けきれない!)

 

(クソっ! ラウンドが終わる!! 間に合わねぇ!!)

 

 シュルルルルッッパンパンッ! 

 

 二つの巨大な岩が空から降ってくる。

 

 梦覚は隠し持っていた青と赤の林檎二つを爆ぜさせる。

 

「リワインド!!」

 

 ズゥゥンッ!!! 

 

 …………

 

(死んだか? 羂索が言ってた割には呆気ないな)

 

 ──ー

 

「二人とも無事ね?」

 

「あ? なんだここ」

 

「さっきアタシがくり抜いたコンクリの空間よ」

 

 シボッ

 

「煙草やめててもライター持ち歩く癖抜けなかったのよねぇ」

 

「…おい、なんで俺を助けた?」

 

「別に善人を気取ってるつもりはないわよ。百点を失いたくないのはこっちも同じなの」

 

(今更だが反応を見るに真慈は白でいいな。一級辺りか? 一瞬だけだがあのオールバック術師、かなりやり手っぽかったな)

 

「詳しい話をしてる暇はねぇ。鹿紫雲、取り敢えずでいい、一時停戦しようぜ」

 

「俺になんの得がある?」

 

「宿儺について知ってることを洗いざらい話す。少なくとも現代ではパンダは一番詳しいやつらの一人だ」

 

「「一人?」」

 

「んなとこ食いついてくんな。俺は今漫画脳だからよ、多分お前の呪力海水と相性悪いんだろ? 俺等とアイツを相手にするのは流石に厳しいはずだ」

 

 秤の洞察力による鹿紫雲の弱点を突かれ、鹿紫雲は考え込む。

 

「………術式を明かすつもりは無いぞ」

 

「充分だ。あいつの相手する間は裏切んなよ」

 

「そんな下らねぇことしねぇよ」

 

「じゃ、話はまとまったわね。アタシは先にパンダちゃんを助けに行くわ。回収が終わり次第すぐに合流する」

 

「オッケー。鹿紫雲、同時に飛び出すぞ。俺のラウンドは既に終わってるからな。即座に領域を展開する」

 

「分かったよ。まぁ、敵として問題はなさそうだったしな。妥協してやるよ」

 

 バゴォンッ!! 

 

「生きてたか!! 嬉しいぞ!!」

 

 三者の利害の一致。昨日の敵は今日の友などという綺麗事も呪術の世界に存在したと思わせる瞬間。

 

 羂索の息がかかった呪詛師の一人、継愚那岐へ向けて秤と鹿紫雲は走り出し、梦覚も同時にパンダの元へと林檎を生成して走り出した。

 

「さぁ!! 浮世つくまま! 宴を始めよう!!」

 

 




蛇足感ある話ですが、二次創作なんでね。
後々に関わってきますんで
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